書評(洋書)


Craig E.Greene
『Infectious Diseases of the Dog and Cat 4th ed.』

2012年・Elsevier Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 内閣府食品安全委員会事務局技術参与 望月雅美

 本書は編者のGreene氏以外に127名の筆者による犬と猫の感染症のバイブルである。厚さ5.7cm、重さ3.5kg、1,354頁、ハードカバーの装丁で、第1セクション(28章)にはウイルス、リケッチア、クラミジア病、第2セクション(25章)にはマイコプラズマ、細菌感染症、第3セクション(16章)には真菌、藻類感染症、第4セクション(12章)には原虫病、第5セクション(19章)にはclinical problems、最後に付録として予防接種、ワクチン、抗菌薬、診断薬等の解説が載っている。そして、これもクラウドコンピューティングと表現してよいのであろうか、ネット上(www.greeneinfectiousdiseases.com)で個々の感染症に関するさらなる情報(診断や治療法をまとめたテーブルや囲み記事、診断や予防接種のガイドライン、参照文献のPubMed要約へのリンクなど)が入手できると解説されている。表紙裏にスクラッチタイプのPINコードが付いていた。本書評を書いている2011年12月18日時点でサイトは新築中のため中身がみられなかった。
 本書の目的は犬と猫の感染症の診断と治療に関する、臨床で有用な情報を網羅的に提供することにあり、1990年の初版以来、書の構成はほとんど変化していない。各セクションの第1章(diagnostic chapter)にはそのセクションで解説される微生物の診断法に関する情報(例えば、サンプリング、検体送付の仕方、結果の理解の仕方、簡易診断キットなど)を、そして第2章(therapy chapter)には治療法が詳述され、その後に各論が配置されている。そして今回の第4版には全般的なアップデートの他に、幾つかの新しい、あるいは再分類された病原微生物、例えば、犬呼吸器コロナウイルスと犬ニューモウイルス(第6章)や豚の腸腺腫症候群起因菌であるローソニア・イントラセルラリス(第37章)など7件が追加された。第5セクション第96章には野生猫の感染症の管理の仕方に関する解説が新しい。
 世界中で使われるようにと、序にも書いてあるように、まさしく、犬と猫の感染症に関する欧米連合艦隊の旗艦的印象があり人種的な嫉妬を感じないわけでもない。しかしこの書を昔から座右に置いてきたことも事実で、この書に書いてなければ、大発見かまったくの「犬の糞」のどちらかであろう。
 編者のGreene氏とは10年ほど前にコーネル大学のシンポで一度お会いしたことがある。多少なりとも教科書の編集に関わったことがある者として、本書のボリュームは驚異的としか言いようがない。編者としては全てに目を通し識者としての査読も必要である。やはり世界は広い。最後にこれは余計なことかもしれないが、本書を最初に手に取った時、重いと思った以上に、初めてMacBook Airを手にしたときと同じく「美しい」と感じた。

「獣医畜産新報」2012年2月号掲載


Tobias Schwarz, Jimmy Saunders
『Veterinery Computed Tomography』

2011年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 帯広畜産大学臨床獣医学研究部門教授 山田一孝

 この10年間、CTはわが国の小動物臨床に急速に普及した。短時間で撮影できる多列検出器CTの出現が、CTの普及に拍車をかけた。今では、1診療圏に1台程度普及し、診断のツールとして重要な役割を担っている。しかし、CTについて調べようと思っても、 CTが系統的に説明されている獣医師向けの教科書はなかった。そのため、学部学生時代にCTの講義を受けていないわれわれの世代は、文献検索をして情報を探し出すしか方法はなかった。そんな中で、本書に出会った。
 本書は、CT画像構成の原理はもちろん、現場で遭遇するアーチファクトについても解説されている。また、三次元ソフトウエア、PACSを利用したデジタル環境、CT導入の費用対効果といった周辺領域についても詳しい。さらに画像については、小動物の各部位別の疾患に加えて、馬、牛、豚、ウサギ、ネズミ、鳥、カメの画像も示されていて、予期せぬ患者さんに遭遇しても慌てない秘密の引き出しである。
 また、日本では施設によってバラバラな断層画像表示(横断画像は、画像の上が動物の背側、画像の右が動物の左)が定義されている。さらに、断層方向(人と動物では頭部のtransverse、 dorsalの表示が異なる)の用語の定義が示されている。毎回同じ向きで画像を表示することは読影の基本である。読影に際し、統一された呼称と画像表示で議論することが、わが国のCT診断の更なる発展のために必要である。
 医学放射線領域とは異なり、われわれの現場には診療放射線技師がいない。CTの操作から読影まで全て獣医師の仕事である。つまり、獣医師はCTについてオールマイティな知識が求められる。鑑別診断リストを頭に浮かべながら、必要な画像再構成関数を考慮にいれてCTを操作し、撮影後はウインドウレベルを操作しながら診断しているのが現実である。本書は、そんな状況でCTを利用している獣医師、これからCTを学ぶ獣医師にとって必見のバイブルである。
 読み進めていくと、私の論文がFurther Readingとして3つ紹介されていた。ますますこの教科書が好きになった。

「獣医畜産新報」2012年2月号掲載


Jorg A. Auer, John A. Stick
『Equine Surgery 4th ed.』

2012年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学類教授 田口 清

 馬の外科と手術全般を扱う1,500ページほどの大著であるこの本も第4版を数える。私は第1版から愛読しているが、以下のような2通りにこの本を使用してきた。
 第一には手術や外科処置の基となる外科学総論の最新情報が臨床と関連するようにコンパクトに記述されている「外科生物学」の第1章から新情報を得ることである。この第4版では新たに再生医療の章が加えられており、多血小板血漿および間葉幹細胞の馬における臨床使用の基礎が記述されている。また「創傷治癒」および「術部感染と抗生剤使用法」の章は動物種を問わずたいへん興味深く、役立つ内容であることは前版と変わらない。また第2章には手術方法の基礎が分かりやすい図とともに記述されている。とくに初学者には手術環境・準備、手術動作・手術器具の取り扱い、縫合材と縫合法、包帯法、ギプス法、凍結手術法、レザー手術法などの基礎事項を幅広く知ることができる。第3章では「最新麻酔法」として麻酔と疼痛管理に関する新情報がよく整理されていて知識を更新することが容易である。
 第二の使用法は第4章以下の身体各部位の外科疾病と処置・手術に関する記述の利用である。外皮系、消化器系、呼吸器系、神経系、眼と付属器、生殖器系、泌尿器系、画像診断、筋骨系の章立てになっており、あらゆる外科処置と手術が写真と図とともに説明されている。写真と図はカラーではないが、どれも見にくいものはなく、問題ない。臨床家であれば現在取り扱っている馬に関する外科診断、処置、手術に関する基本知識・リファレンス・マニュアルとしての使用に最適である。何でも載っているので、困った時にはまずこの本を開くことからはじめるとよい。本が分厚くて重いのが残念であるが、現在では電子版も販売されており(http://pageburststore.elsevier.comから購入できる)、Pageburstという自在なフリー検索ツールとともに利用することができる。全体的には今までの版を踏襲しながら、新しい知識と内容を加え、さらにわかりやすく簡潔に整理されるよう進化した感がある。この新版の出版を機会に是非購入してどんどん活用して欲しい1冊である。

「獣医畜産新報」2012年2月号掲載


Kirk Gelatt, Janice Gelatt
『Veterinary Ophthalmic Surgery』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 トライアングル動物眼科診療室院長 齋藤陽彦

 本著は、
第1章Surgical Instrumentationに始まり、
第2章the operating room、
第3章anesthesia for ophthalmic surgery、
第4章surgery of the orbit、
第5章surgery of the eyelid、
第6章surgery of the nasolacrimal apparatus and tear systems、
第7章surgery procedures of the conjunctiva and nictitating membrane、
第8章surgery of the cornea and sclera、
第9章surgical procedures of the anterior chamber、
第10章surgical procedures for the glaucomas、
第11章surgical procedures of the lens and cataract、
そして12章のVitreoretinal surgeryで構成され、全ての章をGelatt自らが執筆している。“ Mr. Ophthalmologist”の限りのない行動力に、まったく頭の下がる思いである。
 各章とも最新の術式を含むすべての術式が掲載され、著者が前文に述べているように馬や鳥についても相当の頁が割かれている。さらに、解剖、適応症、術後管理、そして成功率までが詳細に記述され、まさに待望の獣医眼科手術の実用的百科事典と評することができる。
 1例として、我々が頻繁に遭遇するチェリーアイにおける記述では、手術前後の瞬膜腺の病態や術後合併症など、今までの成書にない記述は術前の説明に大いに役立つものと確信する。また、ウェブサイトから動画の入手が容易なことも本書の特記すべき利点で、獣医眼科手術に興味のある臨床獣医師や学生教育にも最適の書と位置づけられる。一方、すべての手術において特定の術式を推奨することなく紹介されているため、読者自身による術式の選択が要求される。そして、各章末のreferenceからわかるように、獣医眼科手術の分野では文献が少ないため術式選択が難しいことも否めない現実である。いずれにせよ、本著が獣医眼科手術を網羅する書であり、現在最高峰の書であることは揺るぎの無い事実である。
 最後に獣医眼科に従事する立場の諸兄には、治療コンセプトを明記した手術報告が1例でも多く報告されることを切望する。

「獣医畜産新報」2012年1月号掲載


D.G.Pugh, A.N.Baird
『Sheep and Goat Medicine 2nd ed.』

2012年(書籍の記載どおり)・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 帯広畜産大学臨床獣医学研究部門教授 猪熊 壽

 めん羊と山羊は全世界に併せて20億頭が飼育されており、獣医学の重要な対象家畜となっている。ところが、現在の日本ではめん羊と山羊は、それぞれ562戸12,206頭と2,925戸14,000頭が飼育されているにすぎず(平成21年農林水産省「畜産統計」)、半世紀以上前にめん羊100万頭・山羊70万頭が飼育されていたピーク時に比べて激減している。今の日本では、めん羊や山羊の診療を行ったことのある獣医師は多くないのが現状であろう。しかし国産食材や羊毛などの需要が皆無になったわけではなく、また地域によっては特産品として増頭を図るケースもあり、今後もめん羊と山羊の飼育が日本から無くなることは決してないと思われる。さらに、めん羊と山羊は口蹄疫感染、伝染性海綿状脳症やヨーネ病発生のリスクもあり、臨床獣医師のみならず、家畜衛生行政に従事する獣医師も決して無視するわけにはいかない家畜である。
 問題はこれら小反芻動物の健康相談や診療依頼があった場合にどうするかである。これまで国内には、めん羊や山羊に関する書籍としては、飼養者や畜産技術者が書いた飼養管理法に関するものが数点あるだけで、獣医学としてまとまったものはみあたらない。産業動物獣医師が参考にすることのある洋書(たとえばSmithの『Large Animal Internal Medicine』)をみれば、病気に関する記載は多少みられるが、図も写真もないし、そもそもどこまでが牛のことで、どこからめん羊のことを書いているのか、甚だ不明瞭で実際的ではなかった。
 本書はめん羊と山羊の獣医学に関する数少ない専門書である。米国の大学を中心に34名の専門家が著者として病気の各論を臓器別に詳しく記載しているのはもちろんであるが、そのほかハンドリング、身体検査、栄養学、繁殖学、群管理などの基本的な事項の解説も、それぞれ独立した章として記載されているのが大きな特徴である。これら基本的な事項は、めん羊や山羊に触れる機会の少ない日本の獣医師としては、たいへん心強いものである。さらに、本書には麻酔管理や薬用量、外科的処置、病理解剖法に関する記載もあり、現場で参考にするための実用的な側面が強いのも特徴である。
 本書は2002年に発行された同書の第2版であるが、初版と比べると図や写真の数が格段に増えている。また写真もカラーになって、めん羊や山羊になじみの薄い読者が理解しやすくなっている。ただし、日本の獣医師にとっては、見たことの無い病気の理解のために、もっと写真を増やしてもらいたいところではある。

「獣医畜産新報」2011年12月号掲載


Ford, R. B. & Mazzaferro, E. M.
『Kirk and Bistner's Handbook of Veterinary Procedures and Emergency Treatment, 9th ed.』

2012年(書籍の記載どおり)・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 東京大学名誉教授 長谷川篤彦

 5年程前に本書8版の書評を依頼され、その書き出しを以下のように綴った。1969年にKirk先生とBistner先生が当時の急速に発展する小動物診療の状況を踏まえて、臨床獣医師が要求される諸問題に対処しなくてはならないことを念頭におき、その指針として“診療技法と救急対処法”を刊行した。以来、多くの臨床獣医師に活用され、また改版を重ね、初版から37年目の今年、第8版がR.B. FordとE.M. Mazzaferronoの両先生によって上梓されたのが本書である。診療の鉄則である迅速な対応を主眼とする構成は初版以来貫かれているが、そこには小動物臨床の最新知識と最高水準の技法が包含されている。この書評の第8版もそれ以前の版と同様に江湖に受け入れられた。
 そしてこの度2012年度版として、第9版が発刊されることは誠に喜ばしく思われる。最近の獣医臨床の進歩はこれまでになく加速しているので、改定新版には特別な関心を抱いて通覧した。本書も初版の精神を受け継ぎ、第8版と同様の考えで編纂されており、随所に読者の便を図りながら新情報が加筆されている。ここで著者らは本書を本年1月に亡くなられたKirk先生に奉げるとしている。Kirk先生は何回か来日されているが、コーネル大学の獣医内科学教授を務め獣医界の発展に尽力された方である。また小動物皮膚科の発展にも貢献され、この救急医療書のシリーズやCurrent Veterinary Therapyシリーズの出版を牽引された功績は大きい。
 本書の表紙を開くと先ず緊急時における主な治療対象がアルファベット順に記載され参照する頁が示されている。また裏表紙には緊急時のホットラインと臨床検査の参考値が表示されている。本書は本文のみで700頁に及ぶ大著で、前版同様6章から構成されている。第1章は救急対応の基本的事項に関するもので、即刻診断治療できるように配慮され本書の約40%の300頁を占めている。受診前対応、初診時対応、緊急処置、疼痛の評価と対応、特殊状態の緊急処置について記載さあれている。第2章は初診時対応、カルテの記載、各器官系の精査についての記述である。第3章は主要な臨床徴候の解説で、定義、関連徴候、鑑別診断(主に箇条書きで表示ないし流れ図)および診断計画で、問題中心の対応である。第4章は診断治療の手法の説明で、日常臨床の現場において必須とされる手技の解説で習熟の助けになるものと思われる。第5章は所謂臨床病理で、臨床検査の進め方、検査の手法などが詳述されている。第6章は各種動物(犬、猫、げっ歯類、ウサギ)に関する基礎的情報や臨床検査値が表示されており、100頁にも及んでいる。勿論常用薬剤の適応や用量の表(約60頁)も含まれている。
 以上のような内容の本書であることから、臨床獣医師は勿論のこと、獣医学・獣医療関係者をはじめ獣医師を志す学生にも推奨できる一書である。

「獣医畜産新報」2011年10月号掲載


Kristin Holtgrew-Bohling
『Large Animal Clinical Procedures for Veterinary Technicians 2nd ed.』

2012年(書籍の記載どおり)・Mosby発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 岩手大学農学部准教授 大澤健司

 タイトルの通り、本書はVT(動物看護師)向けに書かれた本である。米国のVTに求められている技術範囲は広く、日本では獣医療に相当する行為のいくつかも担当しているのが現状である。本書も獣医療全般における基礎的な技術について広くカバーしている。
 第2版の本書では前版の内容を網羅しつつ新たに「家畜の産業」をSection 1として加えている。Section1は3つの章(第1章「家畜の重要性」、第2章「家畜の安全とハンドリング」、第3章「家畜の繁殖」)から構成され、獣医療を行う者にとって基本的な畜産に関する背景や知識が示されている。また、動物飼育や健康管理を行う上で必要な手技が丁寧に記載されている。例えば、様々な種類のロープワークや保定の手順が複数の写真で説明されていて、「これですぐに習得できる」と、手を打って喜ぶ読者も多いはずである。これらは従来の獣医学教育で十分に教育されてこなかった事項であるものの、獣医療に携わる者にとっては実際の診療現場において最初に知っておくべき事項である。
 本書は7つのSection(全25章)から構成されている。前述のSection 1に続くSection 2『大動物の診療所の運営』には第4章「診療所における日々の仕事」と第5章「入院、カルテの記録、身体検査」が含まれている。Section 3から7は、それぞれ馬、牛、めん羊・山羊、ラマ・アルパカおよび豚における診療に関する内容となっている。これらのSectionは各動物種における管理・飼育、臨床検査の手順、外科的処置の手順、よく遭遇する疾患、の4つのパートから成っていて、わかりやすい構成である。1冊575頁の中に計約1200枚の図表があり、写真、イラスト、グラフや表の大部分がフルカラーで示されている。しかも本書のウェブサイトにアクセスし、ユーザー登録することで本書に掲載の全図表の電子媒体がPC上で参照できる。オンラインではさらに補足的資料として診療器具類の写真集、馬のX線検査や栄養の章なども閲覧できる。その他、本書には随所に「テクニシャン・ノート」という重要事項が枠付きで示されている。大動物臨床の入り口に立つ人にとってはこの箇所だけを拾い読みするだけでも役に立つだろう。また、各章末には「ケーススタディ」という設問が準備され、復習するための良い材料を提供してくれている。
 以上のように本書は大動物臨床関係者にとって有用な情報が満載されていることから、動物看護師のみならず、獣医学科の学生や新人獣医師、さらには中堅以上の獣医師や獣医学教育者にも手にしてもらいたい1冊である。

「獣医畜産新報」2011年9月号掲載


Dawn Merton Boothe
『Small Animal Clinical Pharmacology & Therapeutics 2nd ed.』

2012年(書籍の記載どおり)・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学教授 桃井康行

 まず、そのボリュームに驚く。本文で1200頁を超え、全体で1300頁を超える大型の書物である。およそ10名の著者で書かれておりこのボリュームにしては著者数が少ない。内容を統一的にして読みやすくするためにはこれくらいの人数がよいのかもしれない。
 書籍内は症例の写真はほとんどなく、本文とその説明のための図表で占められており情報がぎっしりと詰まっている。おそらく診療中に用量や副作用をすばやく調べる本ではない。レベルの高い教科書的な書籍で、腰を据えて毎日少しずつ読み込んでいくタイプの本であろう。特定疾患の治療のための薬剤に迷うときなど、やや詳細に情報が必要な場合にも本書は有用であろう。
 内容としては、基本的な臨床薬理の解説に120頁(全体の約1/10)のボリュームを使っており、残りはすべて各論。基本的には感染症、消化器、循環器などすべての分野を網羅的している。対象動物は犬・猫である。各論の構成は書き手や分野によりそれぞれ若干異なっているが、病態や生理的な解説から始まり、基本的な薬理作用(理論)、各個別の薬剤の効果や副作用、同型薬剤間の比較などが詳細に記載されている。エビデンスに基づく記載をポリシーにしており、本文中には極めて多くの文献を引用している。よくこれだけの情報が集められたものだと、著者らの努力には頭が下がる。これまで動物での情報が手薄であった、各薬剤の吸収(例えば経口投与での利用率)、薬物動態(体内での分布や半減期)などの情報も豊富で、これらの知識は実際の処方の際に役に立つであろう。
 臨床薬理の書籍には薬理作用中心のものもあり、臨床家としてはなかなか読みにくいものであるが、本書は臨床的に有用なものをという立場で書かれているようで、興味深く読み進めることができる。いまから本格的に小動物臨床を学ぼうとする学生(高学年)や若い獣医師には推奨できる。また十分に詳細な情報が盛り込まれているのでベテラン獣医師でも1年くらい時間をかけてじっくり読破すれば、臨床のレベルが1つ(または2つ)上がる、という書籍だと思う。また、このボリュームと内容でこの値段は喜ばしい。

「獣医畜産新報」2011年9月号掲載


R.Eric Miller,Murray E.Fowler
『Fowler's Zoo and Wild Animal Medicine Current Therapy Vol.7』

2012年(書籍の記載どおり)・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本大学教授/日本野生動物医学会会長 村田浩一

 『Fowler's Zoo and Wild Animal Medicine』 のシリーズは、爬虫類から哺乳類までの獣医学的情報を網羅的かつ総論的にまとめて出版した後、数年間はこの分野における最新情報を各論的に提供するのが特徴である。ちなみに、本シリーズの第5巻は、『野生動物の医学』(中川志郎監訳)として2007年に文永堂出版から刊行されている。今回発刊された第7巻は、上記した各論的情報の提供に該当するが、取り上げている内容は魚類から保全医学に関するものまで多様かつ豊富である。とくに、野生動物医学が種の保全に対して如何に貢献するかを、"One Health"という最新の概念を緒言で記しているのは注目すべきことである。近年問題となっている野生動物と家畜と人のインターフェイスにも一章が当てられている。単に希少種保全だけが、野生動物医学の目的ではないことを改めて認識させられた。北米における野生動物医学の方向性を示した選択だと思う。
 本書の頁を開いて最初に目を引くのは、執筆者の多さである(119名!)。野生動物医学に関わっている専門家がこれだけいることに感動する。しかも、シルバーエイジの私が知っている研究者の名前は少なく、世代交代が確実に進んでいることを実感した。国内でも、いつかこのような専門書を出版できるよう、野生動物医学に関わる若い研究者や臨床家の育成と、学術領域における基盤構築を行いたいものである。
 書評の字数が限られているため、83章もあるタイトルのすべてを紹介できないのが残念だが、個人的には第47章の "Haemosporidian Parasites: Impacts on Avian Hosts" と第56章の "White-Nose Syndrome in Cave Bats of North America" に関する最新情報が参考になった。鳥インフルエンザに対する動物園の対応(第45章)も、国内の関連施設にとっては役立つであろう。
 特筆すべき本書の新規性は、これまでになくカラフルであること、写真や図表が多いこと(280点)である。各タイトルの文字色も、分野別に色分けされており、直感的に内容を把握しやすく配慮されている。ビジュアルを重視する若い世代の読者を意識したせいかもしれないが、これらの配慮は英語圏に属さない国の読者にとっても有難い。写真を見てそのキャプションを読むだけでも、臨床や研究の参考になるに違いない。
 本書は、野生動物もしくは動物園動物の臨床や研究に関わっている方々に、かなりお勧めの好著である。翻訳本の出版など期待しないで、早く購入し英和辞書を傍らに置いて読んだ方が賢明だろう。

「獣医畜産新報」2011年8月号掲載


Roger W.Blowey, A.David Weaver
『Color Atlas of Diseases and Disorders of Cattle 3rd ed.』

2011年・Mosby発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学類教授 田口 清

 英国の臨床獣医師であるBlowey氏は相変わらず精力的で、牛疾病アトラスである本書も3版となった。掲載された疾病写真は848枚に及び、第2版より96枚増えている。これらには少なくとも19種類の疾病の写真が新しく追加されている。そうであるのに本書はわずか250頁ほどで見やすく使いやすい。また3版では各写真にはキャプション(短い説明文)が追加されており、よりわかりやすくなっている。本文が簡潔で要を得ていることは前版と同様であるが、とくに第2版(2003年出版)以降においても大問題であり続けている、口蹄疫、ブルータング、BSEの項目は新たな研究成果も追加されて改訂されている。また本文中の他の多くの部位でも疾病管理法や類症鑑別について加筆・修正されている。
 私も診療のときに多くの疾病の写真を撮影するが、ピントがあっているのは当然だとしても、視覚から感じ取った印象を写真に表現するのはなかなか難しい。このアトラスでは実にうまく表現されており、リアルである。食事の時間以外にパラパラと頁をめくって、写真をながめるのも楽しく、そうだったのかと新たな視点を得ることもある。また疾病の視覚的特徴や写真の表現法になるほどと思わせることも多い。つまりどのような感性で疾病を見(診)るべきかを示している。
 この本を購入すると出版元のエルゼビア(Elsevier)のサイトで、pageburstというアプリケーションを用いてebooksにアスセスして、自分だけのポートフォリオを作ることができるようなっている。つまり購入書籍だけからではなくインターネットサイトを介して新しい学びのスタイルを得ることができるというしかけである。ぜひ本書とともに試していただきたい。本書は牛の臨床家のみならず、農場管理者、生産関係者、学生にも幅広く有用な“百聞は一見にしかず”の1冊である。

「獣医畜産新報」2011年8月号掲載


Karen Helton Rhodes, Alexander H. Werner
『Blackwell's Five-Minute Veterinary Consult Clinical Companion Small Animal Dermatology 2nd ed.』

2011年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 ASC皮膚科院長 永田雅彦

 あくまで個人的な意見であるが、獣医師には凝り性が多いと思う。つり、マラソン、車等々、本業を遙かに超えた才に圧倒されることもある。かくいう私も、学生時代にアルバイトをしながら500枚をこえるレコードを収集していた。今はなつかしい思い出であるが、やはりその片鱗がしぶとく残っている。皮膚科で仕事をする以上、この領域のあらゆる情報を集めたく、現在20を超えるジャーナルを購読し、さらに次々に出版される書籍を購入しないと落ち着かない。Five-Minute Veterinary Consult初版ももちろん収集されていたが、本書が活用される場面はほとんどなかった。診察時に有用性を発揮するコンパクトな情報源として、5分で必要な情報が得られるというコンセプトはすばらしかったが、余白が多く活字の小ささに悩まされ、さらに様々な臨床皮膚科情報がいささか煩雑に並べられていた。
 この度出版された『Blackwell’s Five-Minute Veterinary Consult Clinical Companion Small Animal Dermatology 2nd ed.』を手にしたときに妙な感覚に襲われた。これは第2版なのだろうか?最近の獣医出版業界は統廃合がすすみ、初版と第2版が違う出版社になることもめずらしくない。本書もそのひとつであった。新刊は業界大手WILEY-BLACKWELLに移り、表紙のデザインと色遣いはもちろんのこと、ハンディーなB5版ながら実に読みやすくレイアウトされていた。さらに写真も増数し、その質も大幅に向上している。もちろん皮膚科情報もアップデートされ、ポータブル・テキストと呼びたくなるほど整然と構成されていた。初版はDr. Rhodesひとりで執筆されていたが、第2版はDr. Wernertとの共著になっている。著者も、緒言にて「第2版を新書として読んで頂きたい」と記している。リメイクされた本書は、オリジナルを超えていた。

「獣医畜産新報」2011年7月号掲載


Fred Anthony Mann, Gheorghe M. Constantinescu, Hun-Young Yoon
『Fundamentals of Small Animal Surgery』

2011年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 北海道大学獣医学部教授 奥村正裕

 本書には、外科手術学の基本が書かれている。翻訳本、著作本を問わず、国内で入手できる獣医外科手術学に関連したテキストはすべての疾患とその治療法を網羅することに主眼がおかれているか、よく使われる項目に限定して実用的な手技を説明したものがほとんどである。そのため、洗練された手術手法を、大学で受けた外科学実習での知識とその後の大きな努力によって手に入れられた先生も多いかと思う。そのような“遠回り”が必要となるのは、手術学という科目が独立して専門的に教育されていない現状とそれを教えてくれる専門書がなかったためかもしれない。経験を積まれた先生には手術学に関して「今さら聞けない」手術学の基本を、これから手術学を積み上げていこうと考えている若手の先生、そして手術学を独立した科目として学ぶ学生さんたちへの教科書として、本書は理想的な構成で書かれている。
 本書は主に米国ミズーリ大学獣医学部の獣医外科学関連教員が学生用の教科書として作成したもので、手術の基本的な知識や手技に関する原理を学べるよくできた実用書である。また、治療のために動物に対して外科手術を実施する獣医師には、本書の内容をすべて頭に入れておいていただきたいほど、基本手技がわかりやすく網羅されている。手術学の基本手技だけでなく、手術器具の使用法から縫合法の標準的手技まで、写真と写実的なイラストがふんだんに用いられ、わかりやすく解説されている。臨床の先生がたが本書を読破される場合には、仰々しい(?)専門書ではなく、すべて消化できる内容の基本ルールを身に着けるためのガイドブックとして用いていただき、我流から脱して、標準的な技術を身に着ける道標としていただければよいのではないだろうか。基本がしっかりしていてこそ、難易度の高い手術手技を効率的かつ確実に会得できるものである。
 わが国でも獣医学教育のモデルコアカリキュラムが策定された。これは、獣医師として持つべき基本知識と技術の指針が示されたことを意味する。そのなかで、これまでの枠組みではなく、外科手術学の内容が充実されている。獣医師を志す学生さんたちには、これまで体系的に学ぶことができなかった手術学の知識を得ることができるようになった。そのときの、わかりやすいハンドブックとして本書は最適なもののひとつである。
 平易な内容であるが、基本に忠実に、そしてきわめて標準的で確かな手術技術を得るための教科書として本書が活用され、それに育まれた技術が多くの動物たちの健康に寄与することを祈っている。

「獣医畜産新報」2011年7月号掲載


Steven F. Swaim, Walter C. Renberg, Kathy M. Shike
『Small Animal Bandaging, Casting, and Splinting Techniques』

2011年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 武部獣医科病院院長 武部正美

 人間であれば、小さな絆創膏ひとつで済む傷でも、犬や猫では大げさな包帯を必要とする場合が多い。例えば尻尾の先端の小さな傷でも、時には尻尾の付け根まで包帯を巻くことになる。ところが折角厳重に包帯をしても、尻尾の一振りで、あっという間に根こそぎ抜け落ちてしまうことがある。動物の場合、包帯を施すことが如何に難しいかがよく分かる。
 この場合には、ちょっとしたコツがある。適当な幅の粘着テープで尻尾の両側に“あぶみ”なるものを予め張り付ければよい。これは四肢の包帯にも役立つコツでもある。ところが、こうしたコツを文章で説明するのは結構難しい。うまく表現して綴ったつもりでも、読者にはなかなか理解できないこともある。本書では写真を不断に使って、その包帯の仕方を段階的に示しており、極めて理解しやすくなっているのが特徴といえる。
 本書は5章に分けられて構成されている。包帯は基本的には三層からなる。すなわち第一層は直接創傷に当てる部分であり、創傷の性質や状態によってその材質が異なる。第二層は創傷から体液を吸収、排出する層として働き綿パッドや巻いたコットンなどが使われる。第三層は第一、二層を保護する層となり、粘着テープや自己接着テープなどが使われる。第1章はこうした包帯の材質をはじめ、包帯の効能、注意事項など、総論的な内容が記されている。
 第2章から第4章までは体の部位ごとの項目に別けて、包帯法が記されており、いずれの項目も、適応、手技、アフターケア、利点と問題点についてそれぞれ述べられている。第2章は頭部と耳の包帯法、第3章は胸部、腹部、骨盤部の包帯法が記されている。第4章では四肢の包帯、ギプス包帯、副子包帯、吊り包帯などの方法が記されており、この章が全体のかなりの部分を占めている。ちなみに、前述の尻尾の包帯法もこの章で分かりやすく写真を使って事細かに記されている。最後の第5章はエリザベスカラ―など、折角の包帯が外されないように予防する方法が記されており、なかでも胡椒が刷り込まれているテープや軽い電流が流れるテープなど興味をそそられる紹介もある。
 数年前に『Animal Restraint for Veterinary Professionals』(『獣医療における動物の保定』文永堂出版)なる書籍を翻訳させて戴いたことがある。この場合も紐の結び方をはじめ、動物の押さえ方など経時的な写真が極めて効果的であった。文章を読まなくても写真を見ただけで直感できるものがある。こうした技術とコツを必要とする内容の書物では、写真やイラストを不断に使うことが必須であり、そういった意味から本書は親切で効果的な書物といえよう。
 包帯は日常茶飯事の処置であり、動物に不安感や違和感などを抱かせないためにも適切な包帯法が重要となる。学生や研修医は勿論のこと経験ある獣医師にも十分役立つ書物と言えるであろう。

「獣医畜産新報」2011年6月号掲載


Michael D. Lorenz, Joan R. Coates, Marc Kent
『Handbook of Veterinary Neurology 5th ed.』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 山口大学名誉教授 徳力幹彦

 この本は初版から読んでおり、この第5版も以前の図や記事を思い出しながら読むことができた。しかし、著者が、私が顔見知りだったOliverやKornegayから新しい著者に代わっており、以前からの著者はLoenzだけで時代の流れを感じたが、著者が代わったために新しい情報が豊富に取り込まれた内容になっていた。
 この本は、初版から、高度の確定診断機器をもっていないクリニックの臨床獣医師のための本という目的を貫き通している。したがって、神経障害があると思われる動物が来院したとき、最初から障害の原因を調べるのではなく、神経学的検査を基本とした局在診断により病変の存在部位を明らかにすることから神経診断を開始していくべきであるという、一種の哲学に撤している。この本が他の本と異なるこの特徴は、最初の3章に凝縮されている。したがって、この3章は初版からそれほど変わってはいないが、確定診断の章になって初めてMRIやCTのような高度画像診断を用いた説明が出てきて、神経病の各論では新しい知見が豊富に引用されている。
 この本のもうひとつの特徴は、小動物の神経病が中心であるが、馬や家畜の神経病も説明されている点である。また、本に添付されている“Book Pin”を用いてウェブサイトを開き、神経病の小動物・大動物20症例のビデオをパソコンのディスプレイで見ることができる。文字の小さいのが難点ではあるが、文章は500頁未満であるため、獣医神経病の全体像を理解したいという臨床獣医師、あるいはこれから神経病を理解したいと考えている獣医学生には、是非ともお薦めしたい本でもある。
 文章の内容を要領よく表にまとめてあることも特徴のひとつである。読んでいると、いちいち表を参照しなければならないために最初は戸惑いがちになるが、読み慣れてくると違和感がなくなり、特に再度内容を参考にしようとするときには非常な利便性を感じるようになるのであろう。
 この本の最後に付録として、犬や猫の他に、牛、山羊、馬、羊、豚の先天性、遺伝性、品種特異性の神経疾患と筋疾患の表がついており、これらの表の後に、この本の引用文献がアルファベット順に記載されているのも便利である。各章の最後に引用文献の一覧表がついているが、引用順に配列してあるために、特定の著者の文献を探すのは非常に困難なので、1,000を超える文献の一覧表は非常に便利である。同時に、この本の著者達が、これだけの数の研究論文を如何に丁寧に調べて引用しているかが分かり、この本の価値を暗示しているようであった。

「獣医畜産新報」2011年4月号掲載


Keith A. Hnilica
『Small Animal Dermatology A Color Atlas and Therapeutic Guide』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 東京農工大学農学部教授 岩ア利郎

 この皮膚病のカラ―アトラスは数えて第3版になる。初版は2001年、第2版は2006年そしてこの第3版は2011年に出版され、本編とアペンディックスの頁数は初版では350頁で、第2版では500頁に増え、第3版ではそれがさらに600頁に上っている。5年ごとに版を重ね、記載頁数が増えるというのは獣医皮膚科学分野の進歩がこのようなスピードで進んでいるということを示しているのであろう。初版と第2版はジョージア大学獣医皮膚科学教授のLinda Medleau 先生がテネシー大学のKeith Hnilica先生と共に著わしたものであるが、第2版の翻訳監修者まえがきにも書いたようにMedleau 先生は視覚と聴覚を小学生のころから悪くされており、それにもかかわらず獣医皮膚科学分野でこのような立派な教科書を著わされているが、今回名前が外れているのは少し気がかりである(http://www.workersforjesus.com/dfi/951.htm)。
 このカラ―アトラスシリーズの初版からの特徴は、章立てが非常に標準的であり、解剖学や生理学などの皮膚の生物学的な部分を除くと、第一線の臨床獣医師の皮膚科教科書としては非常に優れた1冊であると思う。とくに皮膚科では生命線ともいえる症例のカラー写真は、第3版のHnilica先生が単独の著者となった後も、他の教科書には例をみないほど美しく豊富である。そして第3版では、「犬のその他の皮膚疾患」と「猫のその他の皮膚疾患」の章が消え、この章に記されていた疾患は、必ずしも常に当てはまるわけではないが、原因別に他の章に振り分けられているか、独立した疾患としては扱われなくなり、その病名が消えているものもある。また新版の大きな特徴はエキゾチックペットの皮膚疾患という記載が著しく増えたことである。獣医皮膚科学では小動物のみならずわれわれが扱う動物の皮膚疾患は習得する必要があるが、エキゾチックペットに関してはそう思いつつ、今まではエキゾチックペットの専門家に委ねてきた。これを機会に動物の皮膚疾患を勉強するときにはぜひエキゾチックペットも加える必要があるのではないかと思う。
 初版、第2版では疾患の記述は客観性をもっとも重視しているように見受けられたが、Hnilica先生単著に変わった第3版では、Hnilica先生の考えが前面に現れるようになっていると感じた。疾患の概説や診断方法の記述は旧版をほぼ継承しているが、治療法の記載は章によってはかなり変更を加えている。また、主要な章に著者の考えを強く伝えるために「Author’s Note(著者の考え)」を欄外に載せてあり、これを読むのも著者の本音に触れたようで、この教科書を繙くときの楽しみの1つなのかもしれない。この第3版は第一線の臨床獣医師が皮膚病を勉強する、あるいはベッドサイドで参照するには十分で最適な、かつ時代に即した教科書である。

「獣医畜産新報」2011年4月号掲載


Etienne Cote
『Clinical Veterinary Advisor Dogs and Cats 2nd ed.』

2011年・Mosby発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 東京大学名誉教授 長谷川篤彦

 現在臨床の現場で遭遇する症例の大多数は難治性の慢性疾患で、しかも完治が望めない例も少なくない。治療にあっては、如何に悪化を軽減し、病態を安定させ、進行を緩徐に保持するかが獣医師の腕の見せ所である。一方、素人の飼い主であっても何時でも、何処でも専門的知識が入手可能な情報化社会である。このような日常にあって、獣医師は飼い主に対して、症例の病状、検査、治療に関して理解と了解を得る必要がある。したがって、疾病について十分理解し、平易な言葉で説明できることが診療上極めて重要である。
 このような現状を踏まえて、汗牛充棟にも関わらず企画されたと思われるのが、米国で研鑽し、カナダで活躍中のEtienne Cote先生を編集委員長として編纂されたのが『Clinical Veterinary Advisor』で、2007年に出版された。飼い主に説明し、同意を得るために獣医師が把握しておかなければならない疾病の要点が簡明に記述されていることから、広く江湖に受け入れられた。わが国においても、2010年筆者が監訳者として翻訳書を某出版社から刊行したので、活用されている先生も多いものと思われる。
 このような経緯から、今般改定第2版が上梓された。初版と同様Etienne Cote編集委員長の下、20名の各分野の専門家が編集委員となり、第一線で活躍している400名以上の執筆者が日頃研鑽した成果を纏め結実させている。本書の特徴は初版の精神を引き継ぎ、6章の構成とし、いわゆる事典的要素を兼備した小動物臨床の手引書となっている。項目を設けて飼い主の指導について言及されていること、鑑別診断のための樹状図や薬剤の用量用法が一覧で表示されていることなどが挙げられる。
 本改定版では第1章の疾患に60項目、第2章の手技に十数目が追加されている。第1章の各項目の診断と治療の欄には、それぞれ指針としての特別な概説が加筆されている。また、手技の項目では看護師にも必要な注意点が銘記されている。初版ではwebsiteが挿入され、印刷物とonline系の合体が図られ、利用価値の高い情報源となっていたが、改定版でも読者と直結するサイトが開設されており、本書の活用がさらに効果的かつ至便になっている。特に、治療にあっては飼い主の協力が不可欠であるが、この点を重視しての印刷可能な用紙があり、飼い主への説明の助けとなるように配慮されている。強いて瑕瑾を挙げれば1700頁を越す厚さがあるため持ち運びに難があることおよび印刷されている文字の大きさが小さいことである。
 いずれにしても、小動物の医療に関与している人々に対し座右に常備することをお奨めしたい大著である。

「獣医畜産新報」2011年3月号掲載


Dennis J Chew, Stephen P. DiBartola & Patricia Schenck
『Canine and Feline Nephrology and Urology 2nd ed.』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 岩手大学農学部獣医学課程 教授 佐藤れえ子

 日常の診療の中で、泌尿器疾患の占める割合は極めて大きい。私たちに泌尿器に関する多くの情報を提供してくれる尿検査は、日常のルーチン検査の筆頭にあげられるが、私たちはこの尿検査の中から、本当に重要なことをどれほど汲み取っているのだろう。「おしっこ」の示す情報は、腎臓や尿路からの重要なメッセージである。また、腎機能の評価についても、私たちはBUNや血清クレアチニン濃度がある程度高値を示さない限り、無頓着なことが多くないだろうか。無頓着なあまり、末期腎不全となって劇的な尿毒症の症状を示して死に至るまでに、泌尿器から繰り返し送られる信号を見逃してはいないだろうか。本書は、そのような泌尿器の異常に関する信号を診断する方法と、その臨床的意義、そして各種泌尿器疾患の治療法について解説してくれる実際的なマニュアルである。
 ここでご紹介する『Canine and Feline Nephrology and Urology』は、1986年に発行された『Manual of Small Animal Nephrology and Urology』(Dennis J. Chew & Stephen P. DiBartola著)の第2版にあたる。初版は文永堂出版より『小動物の腎・泌尿器疾患マニュアル』(武藤 眞、渡邊俊文、小村吉幸 訳)として出版され、多くの臨床家に愛読されてきた。第2版である本書では執筆者にミシガン州立大学のPatricia A. Shenckを加え、新しい書式でよりわかりやすく、またDennis J. Chew と Stephen P.DiBartolaの両先生のオハイオ州立大学Veterinary Teaching Hospitalでの30年間にわたる臨床経験に基づく多彩なコメントがちりばめられている。第2版では、特に「What Do We Do ?」「Thoughts for the Future」「Common Misconceptions」「Summary Tips」「Frequently Asked Questions」という新しいコーナーが設けられて、臨床家の日頃感じている疑問に対する答えやヒントが織り込まれている。また、陥りやすい間違いについても、解説されている。
 本書は、犬と猫の泌尿器病疾患の病態生理、診断法とその臨床的意義、そして治療法についてわかりやすく項目立てて解説されているが、それだけでなく泌尿器が尿を産生して排出するまでのしくみと役割についても鮮やかに解説されている。各項目では要点が箇条書きにされていて、大変読みやすい。また要所要所に図表が配置され、これが大変わかりやすく、読者の理解を助けている。写真も、美しい。そして臨床家にとって非常に重要な治療の際の薬物投与の仕方や投与量についても解説されており、日常の診療の際にすぐ役立つように考えられている。したがって、本書は、これから臨床獣医療を目指す学生諸君にとっても、そして若い獣医師や、もうベテランの域に達した臨床家にとっても、すぐに使える1冊である。是非、お手に取って試して貰いたい。私の、お勧めの1冊である。

「獣医畜産新報」2011年3月号掲載


Todd R. Tams, Clarence A. Rawlings
『Small Animal Endoscopy 3rd ed.』

2011年・Mosby発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学農学部 臨床獣医学講座 教授 桃井康行

 伴侶動物の内視鏡分野の草分け的な書籍で、第2版から12年ぶりの改訂となる。650頁を超える意欲的な書籍であり、画像診断系の書籍ではあるが、画像だけでなく説明文章にも多くの労力をさいている(すごいボリュームである)。
 内容としては機器の構成や基本的な操作法にはじまり、最新の手技まで非常に詳細に記載されており、網羅的な内容になっている。消化管内視鏡、腹腔鏡など内視鏡を扱う様々な分野においてビギナーだけでなく熟練者にも読みごたえのある1冊である。
 フレキシブル内視鏡を使用した消化管検査が本書の前半を占めており、残り半分は硬性鏡に充てられていることも本書の特徴である。硬性鏡では、機器の説明や操作方法からはじめ、腹腔鏡、胸腔鏡、膀胱鏡、鼻、耳、関節など内視鏡が用いられているすべての分野について具体的手技が記載されている。硬性鏡を用いた伴侶動物の画像診断分野はまだまだ情報が少ないので、各種内視鏡手技の詳細を記載した本書の価値は高い。
 本書は内視鏡について広い分野をカバーしている。そのため1人の臨床家が本書に記載それているすべての手技を習得することはできないと思われるが、発展の著しい内視鏡分野での先端技術を把握し、自分が実施できない手技については適切に二次診療施設等に紹介するための知識を得るのに適している。また高度獣医療施設や教育動物病院などさまざまな内視鏡獣医療を取り入れている施設では本書の網羅的な内容はスタッフの教育などにも大変有用であろう。

「獣医畜産新報」2011年3月号掲載


Michael W. Ross, Sue J. Dyson
『Diagnosis and Management of Lameness in the Horse, 2』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 馬の跛行のテキストブックといえば何と言ってもアダムスの『LAMENESS IN HORSE』であり、初版は1962年に出版され、現在5版を数える。一方、この書評で取り上げたDiagnosis and Management of Lamenes in the Horseの第1版は2003年に出版されている。アダムス本はどちらかというと馬跛行のエンサイクロペディア(疾病の記述的説明)で、解剖から始まり、跛行疾病の記載も解剖学的部位別に順序立てて整理されている。本書ではDiagnosis and Managementとタイトルにあるとおり、より実際的あるいは臨床指向といってよく、応用編といえるだろう。Managementという言葉もTherapyでないところが意味深長で、臨床というものが必ずしも正確な診断や治癒に導くことができない場合にも、その馬をなんとか有用に用いるようにすることが含意されている。
 第1章は跛行の臨床診断と画像診断である。画像診断にはX線、超音波はもちろんであるが、核医学、CT、MRI、Thermography、内視鏡を含み、ここまでで270頁を割いている。第2章は大幅に増補された蹄病(生体力学と跛行の項が追加され、CT、MRI画像項が充実している)である。第3章:前肢の跛行疾病、第4章:後肢の跛行疾病、第5章:体軸骨格の跛行疾病、第6章:DOD、第7章:関節炎、第8章:軟部組織、第9章:治療学、第10章:運動競技馬の跛行となっており、文献と索引をいれると1400頁に及ぶ大著である。この本もアダムス本と同様に、臨床場面の疑問に該当する部分をめっくっては読むという使い方はもちろんであるが、第1章の跛行診断と第2章の蹄の部分はぜひともその始めの頁から全部を読破したい。臨床家の経験とは何か、新しい画像診断の発展で開けた地平とは何か、そして私の臨床家としての診療行為の基本や考え方をどう向けて行くべきかを考えさせられる。画像診断万能の時代であっても、臨床家の触診や観察をないがしろにしては正しい診断が得られないことにも警鐘を鳴らしている。第1版では跛行の動画(CD-ROM)が添付されていたが、第2版ではウエブサイトにアクセスすることで一般的跛行についてのナレーション入りの47編の動画をみることができる。

「獣医畜産新報」2011年3月号掲載


Brian C. Gilger
『Equine Ophthalmology 2nd ed.』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部 講師 前原誠也

 獣医臨床の場において、眼科疾患の割合は決して多いとは言えないが、無視できないことも事実である。しかし、眼科の診療には特別な機器が必要であり、またそれらが高価であるというイメージを持たれて、積極的な眼科診療を行っていない臨床獣医師は多いと思われる。本書は、まず第1章で眼科検査法が書かれている。その中には基本的な眼科検査法に始まり、細隙灯顕微鏡検査や眼底検査、さらには網膜電図検査、CT検査などについても書かれている。これらの検査は、特殊な機器が必要であったり、熟練した技術が必要であったりと、実際の診療現場では難しいことも多くある。
 しかしこれでは、今までのように眼科診療を諦めてしまう。ここまではほとんどの眼科の成書と同様であるのだが、本書にはその後に特徴がある。確かに非常に高価な診断機器や治療機器、特殊な診断機器が必要である場合もあるが、眼科診療の全てにそれらが必要なわけではない。第2章では「Practical General Field Ophthalmology」と題して、特殊な眼科診断機器がなくても実際の診療現場で実施可能な眼科検査法や管理の仕方などが書かれている。また、巻末には眼科の専門用語の解説が書かれており、眼科用語に馴染みの薄い獣医師にとってはありがたい。さらに各部位の疾患では、眼の症例写真は全てカラー写真でありとても見やすい。このように本書は、これから眼科診療を始めてみようという獣医師にとって、非常に有益な本である。
 しかし、本書はすでに眼科診療を専門的または積極的に行っている獣医師にとっても有用である。第3章以降は、眼の各部位について、それぞれの解剖、生理から始まり、各疾患の病態、治療法、予後、さらに手術手技については模式図もありそれら詳しく解説されている。とくに、回帰性ぶどう膜炎(equine recurrent uveitis:ERU)については、独立した章が設けられており、その病因、病態生理、治療法が最新の情報を基に詳しく書かれている。私自身が動物の視覚について研究させていただいているため、個人的に最も興味深かったのは、馬の視覚についての章、そして盲目となった馬の管理についての章である。馬の視機能については、人や犬・猫と異なることは他の眼科の成書にもある程度書かれていることであるが、本書は非常に詳しく解説してあり、とても勉強になった。
 現在のところ、わが国では馬の眼科診療を行っている獣医師は非常に少ない。本書は、いわゆる眼科初級者にも、上級者にも、さらには研究者にとっても役立つ本であり、本書をご活用いただき、馬の眼科に興味を持つ獣医師が増えることを期待したい。

「獣医畜産新報」2011年2月号掲載


Valarie V. Tynes
『Behavior of Exotic Pets』

2010年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 麻布大学獣医学部教授 菊水健史

 近年のペットブームによって、犬・猫の飼育家庭の数の増加はもちろん、これまで動物園などで見ることが楽しみであった動物が次第に家庭の中で飼育されるケースが増えてきている。エキゾチックアニマルと呼ばれるこれらの動物種は、最も広く飼育されているハムスターやカメなどから、珍しいオウムやトカゲなど、多様化しつつある。これら動物種は家畜化の過程を経ていないことから、野性味にあふれ、観察する者たちを強く惹きつけている。しかし、エキゾチックアニマルに関する生理学的、行動学的知見が少ないこと、またそれに輪をかけて、獣医診療や行動治療、さらには飼養管理法についての知識が非常に乏しいのが現状である。
 そのような時代背景に即して、本書は作成されたと思われる。エキゾチックアニマルの行動学、特にその問題行動や異常行動と生理学的なメカニズム、さらには薬物治療や、適切な飼育、動物倫理的側面に関して網羅的に言及したはじめての書と言えよう。
 本書の扉を開くと、まずその扱っている動物種の多さに圧倒される。鳥類から爬虫類、小型の哺乳類など、近年ペットとして飼育が増加している動物17種が含まれている。特に今回の書が、獣医師あるいは訓練士などの家庭動物を主に診ている人に向けてまとめられていることから、動物園動物などは含まれていない点も特徴的である。各章が、これらの動物種ごとに、その専門獣医が執筆していることからも、行動上の問題の把握からその対象法までが記載された専門性の高い書となっている。
 各動物種について、まずはその動物の示す繁殖、養育、社会コミュニケーションなどの正常な行動が記載されている。これらを踏まえた上で、動物の行動上のニーズに対応するための飼養管理法が紹介されている。さまざまな動物にとって、適切な飼養管理を施すことで生態学的な行動特性が保証され、問題行動の発現率が軽減されることから、非常に重要な点といえる。また、飼育管理上、問題行動として飼い主から相談を受ける事項とそれに対する対処法に関しても取りまとめられており、一般の飼い主はもちろん、臨床現場における有用性も高い。
 著者のValarie V. Tynes博士はテキサス州で獣医診療、特に問題行動の治療に従事してきた。大学卒業後はUC Davisの行動治療科にて専門的な問題行動の治療に携わり、その経験を積み重ねてきたようである。今回の著書の冒頭にUC DavisのJ. Hart先生からの寄せ書きが掲載されているが、これは彼女の恩師にあたることに由来するだろう。また行動治療のみならず、彼女自身が一般診療経験をもっていることから、生理学的な知見が要所に含まれており、これらの点も獣医師としてはありがたい。今後、多様化する臨床獣医場面において、非常に重宝する1冊になること間違いなし、お勧めである。

「獣医畜産新報」2011年2月号掲載


Mark G. Papich
『Saunders Handbook of Veterinary Drugs 3rd ed. Small and Large Animal』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学農学部臨床獣医学講座教授 桃井康行

 実際の診療で速度は大切である。投薬を考える場合にも、使用薬剤の適切な選択、用量と用法、副作用について迅速に情報を得る必要がある。本書は獣医領域で使用されている薬剤情報を臨床現場で調べるために作られている。すでに非常に優れた書籍としてプラムの成書(『Plumb's Veterinary Drug Handbook, Sixth Edition』 Donald C. Plumb )が知られており、多くの薬剤についての情報が文献等から幅広く網羅的に集められている。しかし、時に情報量が多すぎて、迅速さが必要とされる臨床現場での使用には不向きなことがある(例えば1種類の薬剤に複数の異なる使用法が記載されていることがある!)。本書は臨床家ができるだけすばやく有益な情報だけが得られるように工夫されている。情報は著者により有用なものが選択されており臨床現場では便利な1冊である。編集についても臨床家がすばやく情報にたどり着けるようにさまざまな工夫がなされている。残念ながら海外の書籍であるので薬剤の販売等については日本国内の事情が反映されていない。獣医業界で使用される薬剤はどんどん変遷していく。本書はそれらの新しい情報を診療に取り入れるために有用な1冊である。

「獣医畜産新報」2011年2月号掲載


J. Kevin Kealy, Hester McAllisteer, John P. Graham
『Diagnosis Radiology and Ultrasonography of the Dog and Cat 5th ed.』

2011年・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本獣医生命科学大学獣医放射線学教室教授 藤田道郎

 現在、小動物臨床の現場で用いられている画像検査としてX線検査、超音波検査、X線CT検査およびMRI検査があげられる。近年、多くの動物病院がX線CTを導入し、また我が国の獣医大学が次々にMRIを導入し、これらの高度画像検査機器が広く臨床の現場で活用されている。結果、X線検査や超音波検査では判読が困難、あるいは判読ができなかった事柄がX線CTやMRI検査を実施することで、評価が可能となり画像診断の有用性が広く認識され、画像診断に興味を持っている私としても非常に喜ばしいことだと思っている。しかしながら、その一方で危惧していることもある。それはX線検査や超音波検査を行わずに、あるいはきちんと読影せずに直ぐにX線CTやMRI検査を実施するなどX線や超音波などを用いた検査がおざなりになっている傾向があることである。言うまでもなく画像診断の基本はX線そして超音波検査である。先ず、これらの検査を行い、その上でより精査な情報が必要な場合、あるいはこれらの検査が不得手である頭蓋内、鼻腔内や脊髄内などの情報が必要な場合にX線CTやMRIといった断層撮像検査を行うという順序を忘れてはならない。本書を手にとって内容を熟読して欲しい。ごく、日常的に遭遇する多くの疾患が単純X線、造影X線そして超音波検査によって十分に診断が可能であり、そしてどのような疾患であればX線CTあるいはMRI検査が良いのか?さらに放射性物質を用いたシンチグラフィー画像で何を見るのかについてもシンプルにかつ実用的に示している。また各種画像検査の原理や基本的な手技などについても非常にわかりやすく解説している。本著は画像診断学を学ぶ学生にとっては教科書として、そして日々の診療に係わっている小動物臨床医にとってはX線や超音波検査の有用性を再認識することができる1冊である。

「獣医畜産新報」2011年1月号掲載


Thomas, J. A. and Lerche, P.
『Anesthesia and Analgesia for Veterinary Technicians 4th ed.』

2011年・Mosby発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部伴侶動物医療教育群教授 山下和人

 書評を依頼された本書が手元に届き、著者名を確認して驚いた。共著者の1人は、私が10年前にオハイオ州立大学獣医学部で獣医麻酔をともに学んだフィリップであった。彼は、『Handbook of Veterinary Anesthesia』の著者でもあるDr. Muir(現Chief Medical Officer, Animal Medical Center, N.Y.)、Dr. Hubbell、Dr. Bednarski、そしてDr. Skarda(故人)といった著名な米国獣医麻酔専門医の下で麻酔科レジデントとしてトレーニングを受けて米国獣医麻酔専門医の資格を取得するとともに、オハイオ州立大学大学院で博士号を授与され、現在、オハイオ州立大学獣医学部の麻酔科教員として活躍している。少し、個人的な縁を感じながら、この本のページをめくることになった。
 本書は、その題名通り、動物看護師を対象とした動物の麻酔・疼痛管理のテキストである。1994年にMcKelveyとHollingsheadによって出版されて以来、米国の動物看護師教育に活用されてきた『Veterinary Anesthesia and Analgesia』の第4版として発刊された本書であるが、新しい著者を迎えて題名を『Anesthesia and Analgesia for Veterinary Technicians』と改め、旧版の良さを残しながらもその内容はより実用的に大幅に変更されている。本書は、A4判大の414ページのペーパーバックであり、第1章に麻酔の歴史、第2〜7章に獣医麻酔の基礎知識(症例の術前準備、麻酔に用いられる薬物、麻酔機器、麻酔モニタリング、麻酔技術、疼痛管理)、第8〜11章に動物種別の麻酔(犬と猫の麻酔、馬の麻酔、反芻獣と豚の麻酔、げっ歯類とウサギの麻酔)、第12章に麻酔時の問題解決法と救急治療、および第13章に麻酔業務に関連する職場の安全確保について記載されている。本文には、60の表に加え、240のカラー写真と60のカラー図説が用いられ、非常にわかりやすい内容となっている。とくに、麻酔機器や麻酔モニタリング機器の構造と取り扱い、血管確保や気管挿管などの麻酔技術に関する記載は詳細で丁寧であり、難解な文章や単語も少なく、日本の生産動物および伴侶動物医療に従事する臨床獣医師や動物看護師、そして獣医麻酔を学ぶ学生が臨床麻酔に関する知識と技術を得ることができる。また、各章の冒頭の1ページ目には、キーワード、記載内容の概要、得られる情報がシンプルにまとめられ、項目ごとにポイントを押さえた“TECHNICIAN NOTE”が記載されている。これらに目を通すだけでも麻酔診療のエッセンスを身につけることができる。さらに、各章の最後には小問題も掲載され、学んだ知識を確認できる工夫もされている。
 米国の獣医療では専門医制度とともに動物看護師制度が確立しており、動物看護師が麻酔係(anesthetist)として担当獣医師(VIC, veterinarian-in-charge)の処方した麻酔プロトコールで麻酔管理を担当している。本書は、動物看護師を対象とした動物の麻酔・疼痛管理のテキストとして版を重ねた歴史を持ち、動物看護師が麻酔係としてVICと飼い主にどのように関わるべきかについて実用的な記載も多い。わが国でも、近い将来、動物看護師が国家資格として獣医師とともに獣医療を支える時代がやってくる。本書は、動物の麻酔・疼痛管理に関する記載を通して、今後わが国で獣医師と動物看護師がどのような立場で獣医療に携わっていくべきかのヒントを示しているとも感じた。
 個人的な縁を感じながらページをめくった本書は、動物看護師を対象とした動物の麻酔・疼痛管理のテキストとしての旧版の良さを残しながらも、オハイオ州立大学の獣医麻酔専門医たちが重要視する実用性を加えた1冊であった。とくに、麻酔機器や麻酔技術に関する丁寧で詳細な記載と図説は、これまでの獣医麻酔学のテキストを凌駕するかもしれない。動物の麻酔に少しでも不安を感じている読者は、ぜひ、手に入れて日常診療に役立ててほしい。

「獣医畜産新報」2011年1月号掲載


Judith Joyce
『Note on Small Animal Dermatology』

2010年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 ASC動物皮膚科院長 永田雅彦

 本書を手にして、大学を卒業しクリニックに勤務した25年前を思い出した。臨床の現場では覚えておかなければならないことがあまりにも多く、必須事項を書き込んだ手帳をポケットに忍ばせ、ことあるごとに書き込みや書き直しをしていた。この手帳はいつしか1冊のノートになっていたが、持ち歩くにはひどく痛んでいた。この度出版された『Note on Small Animal Dermatology』はまさにこれに相当する一品である。これはWilley-Blackwellによって企画された小動物診療に必要な診断治療知見を概説したノート・シリーズのひとつである。すでに内科、循環器疾患、ウサギ診療、猫診療が上梓されており、これに次いで皮膚病が出版された。
 その内容は臨床家に優しく、基本的な皮膚科診療ツール、主徴からのアプローチ、病態からのアプローチ、発疹分布からのアプローチ、そして皮膚科の治療が色による付箋で整理され、さらに巻末には病歴カルテ、診察カルテ、飼い主様にお渡しする除去食試験のレター、薬物情報に関するアドバイス、グルココルチコイドを安全に使用するガイドまで添付されている。しかも品の良いカラー写真がほどよく配置され、診断アプローチの理解を助けるアルゴリズムまで用意されている。これぞまさにポケットに忍ばせたかったノートである。
 本書のタイトルで使用されているsmall animal dermatologyは、獣医皮膚科聖書(成書ではなく)と呼ばれているかの有名なテキストと同一であり、これを情報源とした臨床家向けの書であることがうかがい知れる。その出来映えには眼を見張るも、恥かしながら著者のお名前を存じていなかった。さっそくウエブで検索した。著者は英国、エディンバラの下に位置するノーサンバーランドにあるCroft Veterinary Hospitalの皮膚科主任であった。この病院は24時間、365日救急診療を行う地域拠点病院であり、ここで28年の皮膚科経験をもって日々の診療に当たる中心的スタッフであった。なるほど、本書が臨床家の、臨床家による、臨床家のため皮膚科ノートであることに納得させられた。忙しい臨床家をサポートするノートとしてはもちろんのこと、新人臨床家や学生の皮膚科研修ガイドとしてもきわめて魅力的な1冊である。

「獣医畜産新報」2011年1月号掲載


Kenneth J. Drobatz, Merilee F. Costello
『Feline Emergency & Critical Care Medicne』

2010年・Wiley-Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 赤坂動物病院医療ディレクター 石田卓夫

 猫に特化した救急医療の本はこれまでなかったが、やはり獣医学の進歩と共に、猫専門の本ができるようになったのだろう。この本を読むと、すべての器官系の疾患における猫の特殊性が各章の最初の囲みに箇条書きで書かれており、救急医療を一通りマスターした獣医師がその部分だけ拾い読みしても十分に学べる本であることがわかった。
 さらに、重症の猫へのアプローチ法、心肺脳蘇生(CPCR)、ショック、創傷、重症患者への麻酔、重症患者の疼痛管理、輸液療法、重症患者の栄養サポート、呼吸器系エマージェンシー、心臓系エマージェンシー、血栓症といった通常の救急医療の教科書に掲載されている記述に加え、消化器系、尿路系、神経系、血液系のエマージェンシー、中毒、さらには内分泌系、電解質異常、眼科、皮膚科疾患にまで、とくに救急ではないものにも記述が及ぶ。
 結局の所この本は、エマージェンシーを切り口にした猫の内科学の総合教科書であり、箇条書きのコンパクトな記述法により、簡単に読めるハンドブック的なものとなっている。様々なテクニックや病気の説明にはカラー図版が豊富に使用されている。また、いくつかの章には、薬用量の表も掲載されている。
 編者のDrobatzはペンシルバニア大学獣医大学の救急医療の教授であり、Costelloはペンシルバニアの救急医療専門動物病院のスペシャリストである。著者は米英の大学の専門家、専門病院のスタッフなど40名を超える。救急医療のためには全部読んで身につけておくべきであろうが、それでも全体を通読して、どこに何が書いてあるかを把握しておけば、急に必要になった時に参照できる貴重な教科書と思われる。

「獣医畜産新報」2011年1月号掲載


Donald Thrall & Ian Robertson
『Atlas of Normal Radiographic Anatomy and Anatomic Variants in the Dog and Cat』

2011年(記載年)・Saunders発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学臨床獣医学講座画像診断学分野教授 桃井康行

 5か月齢の犬が跛行で来院した。四肢端のX線で骨折していそうな部位があるが、骨も成長途上でどうも診断に自信がない。そんな経験をしたことがないだろうか? 本書は世界で最も有名な獣医X線の成書 『Textbook of Veterinary Diagnostic Radiology』の著者であるDr. Thrallが共同著者になっており、骨格、胸腔、腹腔の軟部組織の正常なX線像が豊富に掲載されている。特に骨格については成長に伴うX線での変化が写真やイラストで明解に図解されており非常にわかりやすくなっている。軟部組織についても、誤診しやすい構造物や病的ではない個体差の写真が豊富に紹介されている。
 本書の特筆すべき特長は写真の美しさである。精密にわかりやすく撮影された写真のみが掲載されており、写真の濃淡やコントラストなどにこだわって印刷をしているようで、実際のX線写真ではあるが、まるでイラストのようにわかりやすい。また大判であり、実際のX線写真と較べやすくなっており、診断の時の対照として利用しやすい体裁になっている。写真は非常に明解なのでクライアントのインフォームドコンセントにも利用できるであろう。
 顎関節や前頭洞など普段あまり撮影しない部位のX線も撮影方法と共に紹介されており、実際の撮影や症例の評価に非常に有用である。『Textbook of Veterinary Diagnostic Radiology』がX線を勉強するためのバイブルならば、本書はX線読影の手引き書、アトラスということができるであろう。
 本書の特長をもう一度まとめた。
・正常なX線像が多数掲載されたX線アトラスである。
・誤診しやすい正常像が多数掲載されている。
・写真のクオリティーがとても高い。
・写真の質やレイアウトが見やすく症例との対照にまたクライアントへの説明にも利用できる。
 実際のX線を読影する場所に常備しておきたいもので、自信を持って推奨できる1冊である。

「獣医畜産新報」2010年12月号掲載


Elisa M. Mazzaferro
『Blackwell's Five-Minute Veterinary Consult Clinical Companion Small Animal Emergency and Critical Care』

2010年(記載年)・Blackwell発行 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本獣医生命科学大学獣医学部獣医高度医療学教室教授 竹村直行

 Dr. E.M.Mazzaferroの編集による『Clinical Companion Small Animal Emergency and Critical Care』を手にした。これは最近、盛んに出版されている5-Minuete Veterinary Consultシリーズの1つである。
 本書は114章から構成され、1つの章で1つの疾患・病態が解説されている。通常、テキストのタイトルに“Emergency and Critical Care”の文字が並んでいると、我々は無意識のうちに「重症動物の管理法に関する教科書」を連想するのではなかろうか? 確かに緊急処置やICU管理が必要な疾患も扱われているが、これだけでなく実に様々な疾患・病態が扱われている。具体的には、アセトアミノフェン、チョコレート、殺鼠剤などの中毒、代表的な不整脈や酸塩基電解質障害、ショック、各種感染症など我々が日常診療の中でたびたび遭遇または疑診する疾患・病態が内科・外科を問わずびっしりと配列されているのである。
 各章(つまり各疾患・病態)の解説は非常に簡潔で明快である。随所でカラー写真が挿入されており、シンプルな記載を補助している。例えば「ナトリウムの異常(26章)」は、定義、病因・病態生理、シグナルメント・病歴、臨床的特徴、原因鑑別、診断法、治療法、コメントにわけて低ナトリウム血症および高ナトリウム血症が5頁で解説されている。ナトリウムの代謝異常の解説としては、決して充実しているとは言えないが、このことは本書の編集方針が「5分間で相談できる(理解できる)」ことに徹している証拠でもあろう。すなわち、診断や治療方針に迷った時などに、本書は我々の迅速で良き相談相手(まさに5-Minuete Veterinary Consult)になってくれるであろう。同時に、本書の頁を全て括ってみて、「小動物臨床家である以上、どのような場合であっても本書の内容は忘れてはならない」と本書は我々に囁いているようにも思えるのである。換言すると、本書はいわゆるCommon Practiceの内容やレベルを我々に具体的に提案していると思える。実際の症例と対峙していなくても、日頃から本書を身近において通読しながら、必要な箇所はより詳しく解説された専門書を参照することで、様々な分野の知識が整理されるだけでなく、診療の幅やレベルが向上することは間違いないであろう。

「獣医畜産新報」2010年12月号掲載


Jack Easley, Padraic M.Dixon, James Schumacher
『Equine Dentistry 3rd ed.』

2011年(記載発行年)・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部生産動物医療学部門外科ユニット教授 田口 清

 410頁、23章に及ぶ馬の歯科学のテキストブックの第3版である。第1版は10年前に上梓されている。いうまでもなく馬の歯の解剖知識や疾病知識の進歩、無痛法と麻酔の進歩、画像診断の進歩、歯科手術の進歩は著しい。日進月歩の馬歯科学の診断・治療・予防は歯科学研究の発展に証拠づけられ、その最新の情報が記述されている。本書をぱらぱらめくるだけで美しいカラーの図と写真の多さに圧倒されるだけでなく、馬の臨床歯科学の全体(構造)を俯瞰することができる。馬とともに暮らしてきた著者ら(欧米人)ならではの獣医学書といえるだろう。つまり医療が先か、医学が先かという議論では、本書は明らかに臨床医療が先で、それを体系づけた馬歯科学書である。馬とその医療の物量とエネルギーを強く感じるのは私だけではないだろう。そしてシンプルな目標に全身全霊を集中させるとこのような本になるのだろう。ただあまりにもシステマティックな理とツールを見せつけられてしまうと、ありあわせで工夫してきたわれわれはどう振る舞うべきか立ち止まってしまう。巻末の歯科用語小辞典ともいえる用語集はたいへん便利である。馬の診療をわずかでも抱えている臨床獣医師は持っていて損のない教科書であるし、この分野(馬と歯科医療)に興味のある学生には驚きの1冊といえる。

「獣医畜産新報」2010年12月号掲載


Michael E.Peterson,Michelle Anne Kutzler
『Small Animal Pediatrics −The First 12 Months of Life−』

2011年(記載発行年)・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 タカダアニマルホスビタル副院長 小村吉幸

 子犬と子猫に関する小児科学の新刊が出版された。比較的コンパクトなボリュームの中に臨床の現場に携わる獣医師にとって重要な項目のすべてを収めつつ、それらをきわめて把握しやすいように分類していることが本書の特徴である。
 母子の看護や管理、各種の感染症、そして主要な器官系についての新しい知見に基づいた解説だけにとどまらず、エマージェンシー、X線検査および超音波検査、そして麻酔ならびに鎮痛治療などの項目を設けているところがいかにも新しい編集の意図をうかがわせる。
 本書は大きく4つのセクションに分類されており、第1章の一般的考慮事項から始まり、第2章が幼若な子犬および子猫で一般的な感染症、第3章が診断と治療のためのアプローチ、そして第4章の診断と治療のための系統的な臨床アプローチへと続く。
 第3章と第4章は表題が似ているが、前者では、子犬および子猫におけるX線撮影時の考慮事項、超音波検査法、麻酔法、外科的な考慮事項、骨折の治療管理、疼痛の評価と管理、薬理学的考慮事項、中毒、診断検査施設の有効活用法、臨床化学検査、そして剖検法を解説している。後者は心血管系、血液リンパ系、呼吸器系、歯牙および口腔、消化器系、肝胆道および膵外分泌、尿路系、生殖器系、神経系、皮膚および耳、筋骨格系、眼科、栄養学的アプローチ、そして人動物共通感染症を網羅している。
 このように分類された項目が、第1章の第1項の母犬および母猫に対するケアから始まり、全46の項目へと順序良く解説されていく。各項目が具体的に挙げられているので、いま何についての情報を得るためにどこを開けばよいのかが一目瞭然であり、目にとまりやすく色分けされたページや本文中のサブタイトルもうれしい配慮の1つである。
 また、獣医学英語を勉強中の方にとっては、臨床で出会う様々な分野の単語や表現が1冊の本の中に出てくるので、本書の各項目を読破することにより、大変効率よく獣医学用語の勉強を進めることができると思う。
 さて、骨成長板の閉鎖時期を調べるときはどの本だったか? 子犬、子猫のALPは月齢でどのくらい変化するのだったか?etc. さっと本書を開くことができるように、現場の書庫の最前列に置くこととしよう。

「獣医畜産新報」2010年11月号掲載


Fitzmaurice,S. N.
『Saunders Solutions in Veterinary Practice,Small Animal Neurology』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 とがさき動物病院院長 諸角元二

 本書は臨床家向けに神経病学を分かりやすく解説した本である。そのため、神経疾患動物に対する病歴の取り方や神経学的検査の項は基本的なこととなり、目新しいことはほとんどない。しかし、「神経病の診断は、病歴、身体検査や神経学的検査を中心にした臨床診断が大きなウエイトを占めることから、MRIのような高価な画像診断装置を買うかわりにこの本を買ってください」という著者の言葉にあるように、本当に大事なことは基本的なことである。
 さて、各論に入ると大項目で「意識レベルの変化」「行動の変化」「発作」「脳神経機能」「歩様」などなど、これらがさらに小項目に分かれ、それぞれ症例の紹介、臨床検査所見、治療法、予後、疾患の解説となっている。読み進むうちに著者の教育講演を聞いているように感じられる。また時代を反映して、きれいなMRI写真も豊富に使ってあるのでかなり楽しく読むことができる。
 個人的に興味深かったのは、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの頚部の異常感覚(うちの病院では以前から「キャバリアのカイカイ病」と言っていて、おそらく脊髄空洞症に関連した掻痒症と考えている)に痛みを伴う症例が紹介されている。動物の自覚症状は獣医師にとって確認不可能であるものの、異常感覚であれば中には痛みを感じる症例がいてもいいか、と妙に納得してしまった。
 獣医師は神経疾患が疑われる動物に対して「神経系に病変が存在するか?」「病変部位はどこか?」「どのような性質の病変か?」という3点を検討し、暫定的に診断していくものである。本書は、これらのことを丁寧に解説して暫定診断に至る考え方を身に付けるように書かれている。したがって、初心者にも中級者にも役に立つ本である。

「獣医畜産新報」2010年10月号掲載


Ruth Dennis,Robert M. Kirberger,Frances Barr,Robert H. Wrigley
『Handbook of Small Animal Radiology and Ultrasound−Techniques and Differential Diagnoses−2nd ed.』

2010年・Churchill Livingstone 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 麻布大学獣医学部講師 茅沼秀樹

 近年、様々な画像診断法が身近になり、とかくX線CTやMRIといった画像診断法が注目されている現状にある。しかしながら、大雑把ではあるものの全体像を容易に把握できるX線診断法、断層によってより詳細に病変部の構造を把握できる超音波診断法が、画像診断法の基本になっていることは言うまでもない。これら画像検査法によって鑑別診断や治療方針を絞り、そこからさらにその他の画像診断法が必要となるのかを決定する必要がある。また、X線CTやMRIをこれから撮影する動物についても、X線所見や超音波所見を判断し、造影検査を付け加えたり、撮影法を変更したりして、より情報量が多く得られるように撮影を工夫する必要がある。したがって、X線CTやMRIが日頃使用できる獣医師にとってもX線診断や超音波診断は非常に重要である。
 本書は、X線診断法と超音波診断法に限定された画像診断書である。12のチャプター(1.骨一般、2.関節、3.付属骨格、4.頭頚部、5.脊椎、6.下部呼吸器、7.心臓、8.胸部、9.腹部、10.消化器、11.尿路、12.軟部組織)からなり、各チャプターともに始まりには一般事項(撮影法、解剖、X線解剖、超音波での描出法等)が記載されている。これらの内容は、箇条書きで要点に絞られて記載されている他は、従来の画像診断書と何ら替わりが無い。本書が他の画像診断書と異なる特徴を有しているのはこの後で、X線画像や超音波画像の異常所見が大きな項目として挙がり、鑑別診断が列挙されている点である。ただそれだけの非常にシンプルな構成である。
 画像診断書の多くは、疾患名(診断名)の項目があり、それに続いて各種画像診断法における異常所見が述べられている。この形式は、勉強する上で理解しやすいものと思われるが、診療の合間で診断に迷った際、チラッと確認するには非常に不便な作りである。診断名が不明だからこそ検査をしているわけで、異常所見から診断名がみつけられる本書の書式は非常に臨床に即している。また、どの様な検査法でも所見から1つまたは2つの疾患名に絞って診断を進めていくと、外れたときに混乱するといった経験は多いものと思われるが、鑑別診断リストを示してくれる本書のような形式の書籍は非常に心強い。
 これらの記載は、英語であるものの、全て箇条書きであることがら、診療時のクイックリファレンスとして非常に役立つ1冊と思われる。また、これから画像診断を学ぶ学生にとっても、臨床に即した学習が可能な書籍と考えられる。仕事柄、様々な画像診断書に目を通す機会が多いが、「あっ、これいいな」と久しぶりに思えた1冊である。

「獣医畜産新報」2010年10月号掲載


Brinsko,S.P. et al.
『Manual of Equine Reproduction 3rd ed.』

2011年(記載発行年)・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 NOSAI日高 家畜診療センター所長 樋口 徹

 生産地で働いていると馬の臨床繁殖は離れられない課題なのだが、経験が乏しい若い獣医師にとっては難しい分野でもある。なにせ膨大な回数の直腸検査の必要にかられ、診断機器といっても超音波装置が使えるくらいで、それ以上というといきなりホルモン測定のナノグラム・ピコグラムの世界になってしまう。そして、結果は妊娠したか、しなかったかの二つに一つしかない。勉強しようにも、臨床的な観点から馬の繁殖について書かれた本はほとんどなかった。繁殖分野では扱う臓器は限られているが、特有の生理学を基礎とし、用語も独特で門外漢には取り付きにくい。楽しく読めて、必要なときには簡単に調べることができるハンドブックやマニュアルが望まれる理由だろう。
 本書は馬の臨床繁殖学の「マニュアル」の第3版で、ペーパーバックとはいえA4判で325ページもある。特筆すべきは写真の多さで、超音波画像を除けばすべてカラーである。写真には人の姿がずいぶん写っていて診療の実際のようすがわかるし、手元を写した写真も多くて、処置や操作のやり方がよくわかる。図、表、グラフ、本文中の見出しもカラーでたいへん見やすいし、楽しく読める。
 著者はテキサスA&M大学の獣医繁殖の専門医の先生達で、このマニュアルは学術的に正しい最新情報を基礎としながら、豊富な症例、実践経験から書かれている。各章の始めには「目的」と「学ぶ上での課題」が明示されているので、それを念頭において各章を読めばポイントが頭に入る仕組みになっている。
 「雌馬の解剖構造」には直腸検査の方法が解剖体での写真を使って説明されている。「雌馬の繁殖器官の外科」、「雄馬の繁殖器官の外科」では外科の成書にもないカラー写真や図を使って手技が解説されている。「新生子馬の処置と管理」では新生児学的記載もある。サラブレッド以外の馬も対象になっているので、「精液採取と人工授精」「精液保存」「受精卵移殖」の章もある。他には「妊娠していない馬の生理学」、「雌馬の繁殖上の健康検査」、「臨床繁殖の経直腸超音波検査」、「子宮内膜炎」、「妊娠:生理学そして診断」、「妊娠喪失」、「妊娠馬の管理」、「難産と分娩後の疾患」などの全19章からなっている。生産地の獣医師をはじめ、馬の繁殖に関わる人にとって重宝する書だろう。

「獣医畜産新報」2010年9月号掲載


Dubielzig,R.R.,Ketring,K.,Mclellan,G.J.
『Veterinary Ocular Pathology -A Comparative Review-』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本大学生物資源科学部助教 滝山直昭

 獣医眼科病理の本というと、果たして何人の人が購入するだろうか?と思わないでもないが、かく謂う私は出版前に予約をして出版直後に入手した。偶然にも書評の依頼を頂戴したが、書評を依頼されたから良いことを書くのではなく、この本の出版を心待ちにしていた者として本書をお勧めしたい。
 獣医病理学に従事する方はもちろん、専門的・準専門的に獣医眼科臨床に従事する獣医師のみならず、眼科を取り扱う一般臨床獣医師においても、非常に有益な情報が本書には満載されている。本書の取り扱っている眼科病理の症例は犬猫が中心ではあるが、馬や牛の眼科病理についても記載があるので、臨床獣医師といっても小動物獣医師だけでなく大動物獣医師にとっても重宝されることと推察する。
 本書の筆頭著者のDr. Richard R. Dubielzig(私は親しみを込めて「Dr. Dick」と呼んでいる。決してDubielzigが発音しにくいからではない…)はウィスコンシン大学の獣医病理医で、特に眼科病理に特化したComparative Ocular Pathology Laboratory of Wisconsin(COPLOW)のヘッドである。これまでに2万5千を超える獣医眼科の病理組織を診てきており、世界一の獣医眼科病理医といって差し支えないだろう。
 私個人は獣医眼科を専門に診療する立場にあるため、症例の検体を病理検査の外部機関へ委託することがある。しかし獣医眼科病理(獣医病理の眼科)についての情報は少なく、獣医病理医も眼科はちょっと苦手…という方が多いように感じる。実際に、自分自身でDr. Dickらの研究データを探して標本の再評価を行わないといけないことは少なくない。本書を是非活用して頂いて、外部検査機関の病理診断の精度がさらに向上することを期待したい。
 臨床家にとって本書が有益な理由は、臨床的な所見から病理所見、予後などの情報が掲載されていることである。私自身が数例しか経験がない疾患で、かつ獣医眼科の成書にも情報が少ない眼科疾患についても、本書にはその膨大なデータからの記載が多数みられるので非常に重宝する。また病理組織の写真だけでなく、摘出した検体のマクロ写真が多く、臨床的な外観や眼底の写真も非常に豊富である。これは臨床家にとってはありがたい。
 目次はあっさりしているが、各章の冒頭に詳細な目次がついていること、正常な解剖についての記載もあり、各章の最後にある参考文献は疾患ごとにまとめられているなど、Dr. Dickの細やかな配慮が伺い知れる1冊である。
 当然ながら、「これ1冊で全てを満たす」という本は存在しない。利用される各位の状況に合わせて他書も参考にし、なおかつ本書もご活用いただくと非常に有益となるであろう。

「獣医畜産新報」2010年9月号掲載


Rob Foale, Jackie Demetriou
『Saunders Solution in Veterinary Practice Small Animal Oncology』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学農学部臨床獣医学講座講師 瀬戸口明日香

 本書は一言でいうと「症例から学ぶ腫瘍学」についての本である。腫瘍学の教科書の多くが、各臓器に発生する腫瘍ごとに論じられ、これまでのエビデンスを基にまとめられているのとは異なり、本書は鼻汁、流涎、嘔吐、血便、貧血といった症状を呈する患者において、どのような腫瘍性疾患が認められたかというケーススタディになっている。例えば、「第5章:The cancer patient with sneezing and/or nasal discharge(くしゃみや鼻汁を認める症例)」では3つの症例がとりあげられ、それぞれのシグナルメント、主訴、病歴、臨床検査所見、鑑別診断リスト、診断評価、検査所見、治療が順を追って述べられている。この流れは私たちが日常行っている診療手順や思考回路と同じであるために非常に判りやすい。エビデンスを重視して構成されている従来の教科書は、参考書としては非常に有用であり科学的でもあるが、初学者には病気の全体像がとらえにくいという欠点がある。しかし本書では具体的な症例の検査・診断といった一連の流れの中で、「theory refresher」という項では疾患の概要が簡潔にまとめてあり、病気の全体像がつかみやすくなっている。
 また「clinical tip」という項では生検や画像診断などにおけるツボについて注意が喚起され、「nursing tip」の項で診断治療に際して発生しうる問題点やそれに対する対処・看護法などがメモされるなど、非常に臨床的なまとめ方になっている。先に例として挙げた「くしゃみや鼻水を認める症例」の項では鼻腔腫瘍、鼻鏡腫瘍が解説されているが、鼻鏡に発生した腫瘍に対する外科療法の術後経過や、外科以外の治療法、例えば光線力学療法(photo dynamic therapy:PDT)を行った例など豊富な写真とともに記載されている。
 通読してみると、著者の1人が外科専門医であるためか、腫瘍内科専門医による教科書と比較して、外科治療の術式が詳細に述べられている点が印象的である。上顎に発生した口腔内メラノーマの症例についての記載では、術中の経過写真が複数掲載されていることで、「どこからアプローチして、どの程度剥離し、腫瘤の切除後の粘膜フラップはどのようになされているか」が判りやすくなっている。腫瘍外科を行う獣医師にとって非常に役立つのはもちろんのこと、実際にメスをにぎることはない筆者(内科担当医)にとっても「この腫瘍は外科的に切除可能かどうか?!」ということを考慮する上で非常に参考になるであろうと感じた。
 さらに、本書が非常に臨床的であると感じたのは、「How to」について詳細に述べられているという点である。第1章では「How to obtain the perfect biopsy(完璧な生検を行うには)」と題され、生検法について写真で手順を追いながら解説されている。第3章の「Principles of cancer chemotherapy(化学療法の基本原則)」では抗癌剤の投与準備、静脈内留置針を入れる方法(注意点を含む)が8枚も!の写真で解説されている。「どうやって抗癌剤を投与するのか?」「どこに気をつければいいのか?」という化学療法初心者が感じる疑問(実は質問されることが多いのだが…)にも対応できるように構成されている。
 ただし、本書は「あの病気何だっけ?」「この腫瘍について調べてみよう」という参考書としての利用にはあまり適していない。参考書的利用の場合は、臓器別・腫瘍の種類別に記載された従来の教科書が引きやすいであろう。本書は症例に即して記載されたコンパクトな実習書ととらえていただけたら、最も有効に利用できると考えている。その意味では腫瘍学の初学者〜中級者におすすめの1冊であり、是非一読されたい。

「獣医畜産新報」2010年8月号掲載


Raymond R. Ashdown,Stanley H. Done
『Color Atlas of Veterinary Anatomy Vol.1 The Ruminants 2nd ed.』

2010年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 本書はきわめて個性的な牛の解剖書である。第一に局所解剖書であること、第二に解剖体の局所の写真とその解剖図からなっていること、第三に外貌写真と解剖写真が符合するようになっていることである。これらは実際の動物体の体表の手触りや凸凹からその部位が解剖構造のどこに当たるのかを学び、解剖写真とその図によって体表と体内構造の関係を理解することを目的にしている。すなわち実際の動物に向かって行う五感による臨床検査のことを意識的に取り入れた解剖書である。もともとは学ぶべきことが膨大に膨らみ、実習時間もままならない学生側と常に解剖体を準備できない先生側の双方を助けるために考え出された方法でもあるという。
 解剖学を学んだだけでは、多くの学生が牛の膝蓋骨がどこにあるのかを実際の牛で指さしたり、触診したりできないことは皆さんも経験があるでしょう。私自身、この本の第1版を見たときは衝撃的であったことを覚えている。
 現在、第1版が手元にないので、解剖写真や解剖図に新しく付け加えられたところがどこなのか定かではないが、骨のX線解剖の章が終末に追加されている。しかしこの章のX線写真の画質は悪く、あまり役立つものにはなっていない。もうひとつ難をいえば、たとえば肢の腱の走行などに関して二次元の解剖写真では三次元的に連続したり、交差する構造がわかりにくいことである。また局所・局所でわかってもそれが全体的にどう繋がって関連しているのかは他の解剖書をみなければならない(局所解剖書だから当たり前だが)。解剖写真の筋肉や臓器のほとんどが赤茶色なので判別しがたい部分もある。
 とはいっても革命的な牛の解剖書であることはまちいがいなく、装丁もソフトカバーになり使い勝手もよくなっている。BSE問題で牛の解剖をみることができなくなった学生と臨床獣医師、体表と解剖構造の関係を今ひとつイメージできない学生と臨床獣医師、手術や損傷部位をもう一度確認するために、罹患部位を調べ直さなければならない学生と臨床獣医師にはうってつけの本だといえる。なお牛の写真はすべてジャージー種が使用されている。

「獣医畜産新報」2010年6月号掲載


Peter M.Rabinowitz, Lisa A.Conti
『Human-Animal Medicine Clinical Approaches to Zoonoses, Toxicants, and Other Shared Health Risks』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本大学生物資源科学部教授 丸山総一

 私達の周囲には、家畜、ペット、野生動物などさまざまな動物が存在しており、これらの動物と人が密接に関わる現代社会では、それぞれが相互に影響を及ぼしあい、複雑な関係を構築している。また、世界各地では人口増加と温暖化に代表される環境破壊、食料不足、エネルギー不足が急速に進行し、深刻な問題となっている。さらに、ボーダーレスな人々の移動や物流の活発化に伴って、各地で高病原性鳥インフルエンザ、狂犬病、パンデミックインフルエンザなどの感染症が次々に発生し、わが国も対岸の火事とはいえない状態となっている。こういった状況から、「One World、One Health」という概念が近年欧米を中心に広く用いられるようになってきた。これは、「世界は切り離すことのできない緊密さで繋がっており、人、動物、環境を含めた健康の維持には1国だけでなく地球規模で対応する必要がある」という概念で、適正な人と動物の相互関係、適切なリスク管理、人獣共通感染症の統御、感染症以外の疾病制御には、これまでのように個々の専門分野が独自で対応するのではなく、医学と獣医学が連携して問題解決に当たる必要性が提唱されている。
 本書では、動物が人へ及ぼす影響には、少なくとも3つの形態があると考えている。第1は、動物との接触による人獣共通感染症、動物アレルギーと咬傷、刺咬の危険性。第2は、ヒューマン・アニマルボンドといった心理社会学的効果が身体に及ぼす恩恵、第3は、環境中の化学物質や感染症など人への危害となるものに対する「歩哨」としての動物役割である。14章から構成されている本書では、人と動物にとって共通の問題である人獣共通感染症、化学物質による中毒およびその他の健康危害の問題を広い視点から取り上げており、医学・獣医学の両視点に立って記述している。各章では、人や動物の健康危害について、豊富な写真と図表を用い、具体的な事例を挙げて分かりやすく解説している。特に、感染症の写真の中には、海外のみで流行していたりすでに日本では見られなくなったものが多数掲載されていることから、不測の事態に遭遇した際の格好の資料となるであろう。本書は、One Healthの概念に基づいて記述されており、医学・獣医学両分野の臨床家や公衆衛生に携わる専門家が人と動物の健康を理解する上で必携の書といえよう。

「獣医畜産新報」2010年5月号掲載


Stephen M. Reed, Warwick M.Bayly, Debra C. Sellon
『Equine Internal Medicine 3rd ed.』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 NOSAI日高 家畜診療センター所長 樋口 徹

 『Equine Internal Medicine』の第3版が出版された。初版から5年を経て第2版が出され、さらに6年を経て第3版が出たことになる。このような本が5〜6年に1回改訂されることに驚いてしまう。世界にはそれだけ馬の医療の需要があり、最新の情報と教育が求められているのだろう。
 第2版の執筆者76名のうち19名は交替し、さらに1名が加わって77名が執筆している。執筆者が変わっていない章も手が入れられている。1659ページあったページ数は、1466ページになった。巨大な本だった第2版よりはコンパクトにしたいというのがコンセプトにあったのかもしれない。残念ながら紙の質が少し落ち、目次と索引が見にくくなったかもしれない。
 内容は、第2版までのスタイルを踏襲していて、パート1は病気のメカニズムと治療の原則を総括し、パート2で各器官の疾病について詳述している。馬の内科学を網羅しようとしている本で、記載はあくまで学術的であるが、もちろん臨床で疾患に遭遇したときの手引書としても使える。ただし内科診断学的な章はなく、その点では学生や初心者のマニュアルではない。しかし、写真、イラスト、グラフ、表も多いので、硬すぎたり無味乾燥な印象は受けない。残念ながらカラーページはない。心臓病や神経病の症例の動画などが入ったDVDが付属しており日本のパソコンでも問題なく見られる。
 内科学とは言いながら、眼科学、生殖器疾患の章もある。子馬の障害、皮膚の障害、筋骨格の障害などの章もあり、これらは現在では、馬の眼科学、馬の繁殖学、馬の新生子学、馬の皮膚病のアトラス、馬の跛行など、それぞれについての成書があるので、内科学の一部として記述の価値に疑問を感じる人もいるかもしれない。馬の急性腹症、馬の消化器学、馬の呼吸器の内科と外科などの本と比べれば、消化器病や呼吸器病の章ですら物足りなさを感じることもあるだろう。しかし、生理を理解し、病態を把握し、治療を考えていくというアプローチの仕方こそ内科学であり、本書を貫いている原則である。パート1の疫学の章は、エビデンスベースドメディシン(EBM)をキーワードに記載されている。本書のあらゆる記載は引用文献が示されており、EBM時代の学術書として使える。馬臨床の専門書をそろえるのがたいへんなら、これ1冊で代用するのも方法かもしれない。この本があれば馬のあらゆる障害にアプローチする手がかりになる。馬臨床家は手元に置いておきたい本だ。馬臨床医を目指す人の1冊にも適している。

「獣医畜産新報」2010年4月号掲載


Carolyn J.Henry
『Cancer Management in Small Animal Practice』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 鹿児島大学農学部臨床獣医学講座講師 瀬戸口明日香

 本書はタイトルが示す通り、小動物における腫瘍性疾患の診断、治療、管理について、臨床に即し具体的に解説された本である。腫瘍の病態生理や分子生物学的な腫瘍発生機構から始まり、疫学、統計学、臨床研究の進め方といったベーシックな腫瘍学と、腫瘍性疾患の診断、治療といった臨床的な側面とにわたって、幅広くまた詳細に述べられている。それぞれの内容には近年の臨床および基礎研究結果が反映されており、最新の情報を得ることができる。また米国で行われている臨床研究についての情報も記載されており、今どのような治療が検討されているのか?ということまで判る内容となっている。それもそのはずで、著者のCarolyn J.Henryは米国獣医癌学会(Veterinary Cancer Society:VCS)のchairmanをつとめた人物である。各項の著者もVCSで活躍するおなじみのclinicianかつresearcherであり、第一線で働く米国きってのoncologist揃いである。だからこそ、近年の臨床および基礎研究結果が反映された最新の内容となっており、新しい知見が盛り込まれたup to dateな教科書となっている。
 本書の特徴は、何といっても臨床の第一線で働く著者の本らしく、臨床に役立つ工夫が随所にちりばめられているころであろう。例えば表紙の裏には各種抗生剤の抗菌スペクトルや栄養管理のためのカロリー計算表がついており、本文中には各社の療法食のカロリーや成分比が表にまとめられている。化学療法の章では各種薬剤の用量のみならず溶解、保存法や保存期限などについても表に示してあり、臨床家にとって必要な情報がまとめられている。また、副作用の対策法、血管外漏出などのエマージェンンシー時の対応についても表として掲載されており、いざというときに判りやすい。さらには化学療法剤を安全に取り扱うための器具やその入手先のweb siteなどまで記載され、まさに女性のoncologistらしい細やかな心配りがなされている。
 新しい診断方法として、PETや核シンチグラフィーといった技術について記載されているのも小動物の腫瘍に関する書籍としては本書が初めてであろう。また鼻鏡検査や膀胱鏡検査の具体的な実施法など各種検査手技がBoxとして別記されており非常にわかりやすくなっている。実際の検査画像も多く、初心者にも検査のイメージがつかみやすい。
 さらに、特筆すべきは放射線療法についても比較的多くのページが割かれており、これまで日本では馴染みの薄かった放射線療法についても学ぶことができる。
 腫瘍学の各論については、頭部から尾部まで順に臓器ごとに構成されている。各項において、対象臓器で認められる腫瘍の種類と治療成績の比較(外科療法vs放射線療法vs化学療法)やステージと予後などが表により判りやすく掲載され、オーナーに治療法や予後を提示する際に役立つ形になっている。例えば、骨肉腫の治療については様々な報告があり、1つ1つを記憶しておくことは困難である。しかし本書の表を参照するだけで、これまでの主立った治療に関する報告を比較することができる。
 では、本書をどのように活用したら良いであろうか?腫瘍学の初心者はじっくりと少しずつ読み進めることで、腫瘍学の1から10までを知ることができるであろう(まず、腫瘍学の基礎の項をじっくりと読んでいただきたい。腫瘍性疾患に向き合う上で何が必要かという著者の信念が感じられる)。腫瘍学の中級者は最も有効に本書を利用できるであろう。実際の症例の診断および治療を行う際に、常に近くにおいて、必要な情報を本書から取り出せばよいのである。腫瘍学の上級者は、本書にちりばめられた最新のエッセンスを楽しんでもらえばよいであろう。本書は、最新の情報が盛り込まれた、現在の米国での治療のスタンダードを知ることができる新しい腫瘍学の教科書である。
 余談ですが、英語で書かれた本ではあるものの、表やボックスでポイントが明確にしてあり、かつ写真も多いので読み進めるのにそれほど困難はないように思いますよ!

「獣医畜産新報」2010年4月号掲載


Martin Weaver, Safia Barakzai
『Handobook of Equine Radiography』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 馬のX線撮影法のハンドブックである。この種の本は過去にも数冊出ており、本書がとりわけ新しい内容を含んでいるわけではない。しかしこの本はハンドブック仕様でB5判よりひと回り小さく、厚さも15mm(180ページ)ほどで使いやすい。であるなら個人的にはハードカバーであるよりソフトカバーの方がもっと野外での使い勝手がよかったように思う。
 馬においてもX線撮影は体のあらゆる部位でその撮影法(馬のポジショニング、X線の中心線束と視(し)準(じゅん)軸(じく))がほぼ決められている。このハンドブックでは馬の体の各パーツにおける定まっているX線撮影法が図示され、その正常X線像(写真像と図像の両方)が付いている。勝手にポーズを取ってくれない動物のX線撮影では、X線撮影者のみならず動物の保定者とカセッテ保持者が撮影法を事前によく理解していることが必要である。そんな時、この本は大いに役立つであろう。ところどころにはX線撮影の秘訣(Tips)が別色で書かれており、X線撮影法の図とそのX線像とともに読むことできわめてわかりやすい。また巻末には各部位の撮影条件の一覧表があり、これも便利である。ただしこの本には各撮影部位の異常像はいっさい載っていない。しかしX線診断には標準撮影法を知っており、正しく撮影できることおよび正常像を知っていることが不可欠である。この本は携帯型もしくは非固定型(モバイル)X線装置を用いた馬のX線撮影・診断のための基本の本といえる。

「獣医畜産新報」2010年3月号掲載


K.M.Dyce, WO.Sack, C.J.G.Wensing
『Textbook of Veterinary Anatomy 4th ed.』

2010年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本獣医生命科学大学准教授 竹村直行

 本書を手にして約800頁の全てを手繰ってみて、感じたことを書くことで書評とさせて頂きたい。
 本書の内容を一言で書けば、「総論的な解説に引き続いて犬、猫、馬、反芻獣、豚および鳥に分けてそれぞれの解剖学を解説している」ということになる。しかし、これでは本書の魅力は全くお伝えできないであろう。
 本書は解剖学の教科書であり、同時に臨床の入門書としても位置づけられるべきであろう。上述した様々な動物種の肉眼解剖図はカラーで、ほぼ全ての頁にカラー図版が掲載されている。この図が非常に良く工夫されており、臨床家が解剖学を復習するのに非常に役立つことは間違いないと断言できる。加えて、X線(各種造影を含む)、CT、超音波などの各種画像も随所に挿入されており、臨床家が親近感を持つのは勿論、学生諸君は「解剖学の向こう」にある臨床獣医学との接点を随所で感じ取るに違いない。私はいわゆる「積み上げ6年制教育」を受けた世代なのだが、本書に掲載されている非常に美しく理解しやすい発生学に関連するイラストや標本の写真を見ると、当時の発生学や解剖学の教科書を必死に睨み付けるようにして先天性心臓病の発生メカニズムを勉強した当時を懐かしく思い出した次第である。
 いずれにしても、本書が我が国でも教科書または副読本として活用されれば、学生諸君にとって獣医解剖学はより魅力的に感じられるであろうし、単なる講義科目ではなく学問としての素晴らしさを体験するはずである。
 言うまでもなく、解剖学は他の基礎獣医学と並んで非常に重要な分野である。獣医学教育に使用される動物の頭数が制限されていることを背景に、より充実した教科書が今後も求め続けられるであろう。そして、本書は我々のこのようなニーズに十二分に応える恰好の書と思われる。

「獣医畜産新報」2010年3月号掲載


John R. August
『Consultations in Feline Internal Medicine Vol.6』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 赤坂動物病院医療ディレクター 石田卓夫

 このシリーズはほぼ3年毎に改訂版が出版され、Volume 6に達した。猫の内科学に関する最新の話題を、器官、系統別に書いた本である。しかもこのシリーズは、これまで翻訳出版されていない。これまでの猫の内科学に精通しているなら、この本1冊で知識の補充となるだろうが、この分野における新しい知識の集積はめざましく、猫専門の認定医制度もわが国ではないため、そのような人もなかなかいないだろう。
 緒言にも書いてあるとおり、このシリーズは1冊で完結するものではなく、前々からの知識の積み重ねで学ぶようになっているため、この号だけを手にとっても、抜けている記述はたくさんある。これまでの知識で、まだあまり変わっていない内容は、これまでのバックナンバーで参照するように作られている。
 それにしても、これだけ新しい知見が出てきたのかと驚くような内容が本書である。感染症分野では、膿胸のような基本的な病気の記述もあれば、インフルエンザウイルス、アスペルギルス症のような珍しいものも登場し、さらにレトロウイルス、FIPについてはアップデートもある。栄養学では、慢性下痢症や慢性腎臓病の食事療法、プロバイオティックス、救急医療と食事などの記載が新しい。消化器系では、機能試験、超音波診断、高分化型リンパ腫、炎症性肝疾患、新しい制吐剤など、興味をそそる内容にあふれている。内分泌系では、よくある質問への答え、甲状腺機能亢進症と腎臓病の関係、新しい長時間作用型インスリンの使い方、皮膚病ではインターフェロンの皮膚病に対する使い方、メチシリン耐性ブドウ球菌などが新しい。その他、心臓病、呼吸器病、泌尿器系、神経病、血液病、腫瘍学と、広範囲に猫の内科学に限った最新の記載がある。また、ポピュレーションメディスンという新しい分野にもかなりのページ数がさかれている。
 昔から変わっていない項目についてある程度広い理解があり、最近の知見をかなり網羅したものが欲しければ、前号のVolume 5と本号のVolume 6を手元に置くとよい。それにより、最新の猫の内科学の恩恵を受けることができるだろう。

「獣医畜産新報」2010年3月号掲載


Sam Silverman, Lisa A.Tell
『Radiology of Birds An Atlas of Normal Anatomy and Positioning』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 バードクリニック金坂動物病院院長 金坂 裕

 鳥類のX線検査の本が出版された。X線写真に限らず、CTやMRI、超音波画像も収録されているので、画像診断の本といったほうが良かろう。
 総論では撮影時の保定方法、解剖学、X線撮影装置について書かれている。撮影において保定に全身麻酔をかけているのは、日本と異なり大型のインコやオウムが主体なので、止むを得ないであろう。鳥の種類による食性、習性、体型、骨格の差、内臓の発達の差を理解していなければ、種差による消化器画像の違いも判別できない。撮影条件等も記載されているので参考になろう。mA sが多い気もするが、X線のシステムの差もあるのかもしれない。
 各論ではセキセイインコ、コザクラインコ、コガネメキシコインコ、ヨウム、キソデボウシインコ、ルリコンゴウインコ、シロビタイムジオウム、キバタン、タイハクオウム、オオバタン、マガモ、アカオノスリ、アメリカワシミミズクについて記載されている。
 各種の鳥の単純X線像とそのなぞり書きの説明が基本となり、栄養カテーテルを使用した消化管造影像、消化管二重造影像、クロアカ造影像や眼窩洞造影像、静脈性尿路造影像、腹部CT像、腹部造影CT像、頭部MRI像、肝臓超音波像等も記載がある。一部わかりにくい写真も見受けられるが、全般的にはわかりやすい。
難を言えばアメリカで多く飼育されている飼い鳥を基本にしているため、日本では住宅事情で飼育数の少ない、大型のオウム類にページが多く割かれている。セキセイインコやラブバード、オカメインコはともかく、日本で多く飼育されている文鳥やカナリア等のフィンチ類と、ニワトリの記載もあるとなお良かったと思える。
 最近一般の動物病院にも普及し始めたCRは、撮影された画像を適宜拡大でき、画像の調整も自由にできる。そのために今までのフィルムでは診断の難しかった、小鳥をはじめとする極小動物の骨格や内臓の状態がわかるようになったことが最も画期的なことである。
 今回発刊されたこの本の最大の特徴は付属のCDに全ての画像が入っていることであり、CRで撮影した画像との対比が行いやすくなったことであろう。またパソコンのモニターに映し出せばクライアントへの説明も容易になる。
 特にCRを導入された病院にはぜひともこの本を参考にして、鳥の画像診断にも力を入れていただきたいと思う。

「獣医畜産新報」2010年2月号掲載


S.P.Montavon, K.Voss, S.J.Langley-Hobbs
『Feline Orthopedic Surgery and Musculoskeletal Disease』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 北海道大学教授 奥村正裕

 本書は、猫の整形外科と筋骨格系疾患について、動物の管理から使用する器具まで体系的に記された『猫における整形外科のバイブル』となる本である。実際に手術を担当する外科医には、X線像と正確な模式図、場合によって病変部の骨標本を使って“かゆいところに手が届く”解説がなされ、手術を担当しない獣医師にも筋骨格系疾患全般にわたる知識が供給され、鑑別診断および手術適応の判断に役立つものとなっている。
 本書の執筆者の1人であるミュンヘン大学のMatis教授に数年前に伺ったお話では、欧州では若い世代に1人暮らしの独身者が増え、毎日の散歩等が不可欠な大型犬に代わって、室内で飼育される猫の飼育頭数が増える傾向にあり、獣医師が猫の診察をする機会が飛躍的に増えているとのことであった。これは決して欧州に限られる話ではない。
 「猫の骨折は比較的容易に管理され、犬に比較して手術もしやすい」と耳にすることがあるが、猫の骨は小さく、骨折は複雑かつ広範におよぶ場合が多く、決して“容易”ではない。一方、猫の跛行の診断はわかりにくく、その原因となる筋骨格系疾患に関する知識が極めて限られている。実際、猫の整形外科に関連した専門書の数はかなり限られており、情報を求めて文献検索を行っても、何十の数もの症例を集めた報告は少なく、単発症例や数例に関する報告がほとんどである。本書は、スイスの著名な小動物整形外科医であるMontavon先生をはじめ、スイス、英国、ドイツなど欧州各国の著名な整形外科医を中心に、数名の米国整形外科医も参加して作成されたものであり、写真、イラストなども大変わかりやすい。経験深い整形外科医が力をあわせて整形外科に関する技術と最新知識を満載して、可能なかぎり猫における特徴を示し、そして最新の情報を提示した画期的な本である。
 本書の構成も、猫の特徴に合わせてユニークなものになっている。整形外科疾患を負った動物へのアプローチ、筋骨格系疾患に関する情報はもちろんのこと、猫の整形外科で最大の問題である多発外傷だけで1つの章が構成され、総合的に解説されている。また、筋骨格系の損傷の病態生理についても基礎から分かりやすく記されている。さらに、それら各損傷の修復法についてそれぞれ複数の方法がX線像やイラストで示されており、整形外科医として手術前のイメージ・トレーニングには最適である。
 このように、本書は猫の整形外科および筋骨格系疾患を網羅しながら、最新の技術と情報を含んで編集されており、読者を選ばない内容となっている。整形外科を担当する先生方だけでなく、広く小動物臨床獣医師の先生方にお勧めしたい1冊である。

「獣医畜産新報」2010年1月号掲載


Rose E. Raskin
『Canine and Feline Cytology, A Color Atlas and Interpretation Guide 2nd ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本獣医病理学専門家協会会員 石田卓夫

 2004年4月に文永堂出版より刊行された翻訳書『カラーアトラス 犬と猫の細胞診』(石田卓夫監訳)の原書が『Canine and Feline Cytology, A Color Atlas and Interpretation Guide』の第1版(2001年刊行)であり、10年間の学界における様々な進歩を反映して、正常進化版ともいえる第2版がこのたび発行された。
 体裁が大きくかわり、A4に近い大きさで、ハードカバーとなった。これにより、細胞診の写真が大きくなったことがまず読者にとってはうれしい。第1版は臨床医が現場で遭遇しやすい病変に限り、初学者をも対象にした内容を目指し、それはほぼ達成されたとまえがきに書かれているが、専門家からの第1版への意見をまとめ、さらに内容を充実させたのがこの第2版である。章立ては大きな変更はなく、糞便塗抹の章が新たに加えられただけであるが、執筆者も20人に増え、記述や写真は確実に増え、あるいは変更されている。主な変更点は、やや珍しい症例まで取り上げるようになったこと、病理組織学的診断との比較を多くしたこと、特殊染色、免疫染色、遺伝子診断、細胞マーカーなどの新知見で高度診断技術の章をかなり書き換えてあることである。第1版からの写真はほとんど引き継いでいるが、明らかに最近になってデジタルで撮影したと思われる写真も加えられており、執筆者以外からも広く写真を入手したと書かれている。これにより、細胞診所見の解釈も新しい記述が増え、さらに完成度の高い本となった。

「獣医畜産新報」2009年12月号掲載


Lance Jepson
『Exotic Animal Medicine -A Quick Reference Guide-』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 明治薬科大学薬学部准教授(薬学教育研究センター基礎生物学部門) 深瀬 徹

 エキゾチックアニマルといわれる多種多様な動物が獣医臨床の対象として広く認められるようになって久しい。それにともない、エキゾチックアニマルに関する獣医学書も、現在では多数が出版されるようになっている。
 それらの獣医学書には、エキゾチックアニマルの全般を扱ったものがある一方、特定の動物のグループを対象としたもの、たとえば爬虫類とかカメ類のみを扱ったもの、さらには診療機会が多いフェレットやウサギについて動物種ごとに著されたものがある。
 ひとくちにエキゾチックアニマルといっても、その範囲は広く、診療の方法も一様ではない。そのため、その獣医学書は、なるべく動物のグループごとに、可能であれば動物種ごとに1冊にまとめるのがよいと思う。しかし、その反面、入門書としてはエキゾチックアニマル全般に関する書物の需要もあろうし、また、知識の整理として、ある特定の観点から多くの動物種について論じた書物も必要であろう。
 ここに紹介する『Exotic Animal Medicine:A Quick Reference Guide』は、多様なエキゾチックアニマルについて、それらに関してある程度の知識を有する獣医師が臨床の場で参照すべきものとして、症例に遭遇したときにその診療に役立つように著されたものである。記載は主に箇条書きで、書名にあるように、まさに“A Quick Reference Guide”といえる。そして、診療室で仮に水などに濡れることを想定しているのだろうが、表紙と背表紙、裏表紙に撥水性を示す素材が用いられている点は、気配りが行き届いていると思う。こうした書物が出版されることは、エキゾチックアニマルの診療が犬や猫の診療のレベルに近づきつつあることを示しているといえるかもしれない。
 さて、本書の内容であるが、先に多様なエキゾチックアニマルについて書かれた書物と紹介したが、無脊椎動物は含まれていない。具体的には、全体を13の章に分け、@フェレット、Aウサギ、Bチンチラとモルモット、デグー、C小型齧歯類、Dオウムとインコ類、Eカナリアと九官鳥、フィンチ類、オオハシ類など、Fトカゲ類、Gヘビ類、Hカメ類、I両生類、J金魚と鯉、K熱帯性淡水魚(いわゆる熱帯魚)、L熱帯性海水魚について、生物学的な事項から一般的な診療手技、そして、疾病については主に器官系ごとに原因や症状、診断法、治療法を簡単に記載している。
 診療機会の多い動物、多くの知見が集積されている動物については種ごと、あるいは比較的小さな分類グループごとにまとめ、そうでない動物については大きなグループにまとめているのは、エキゾチックアニマル全般について書かれた従来の書物と同様であるが、魚類に多くのページを割き、その内容が充実していることが本書の特徴であろう。魚類の臨床に興味のある先生方にお奨めしたい1冊である。
 最後に難点を1つ。獣医学の洋書にありがちなことだが、本文中の項目の大小が判別しにくいのが欠点である。見出しの文字の大きさのわずかな違いとそこに使用している色の違い、大見出しの下には点線があることで項目の大小を判断できるのだが、慣れないと非常にわかりにくい。“Quick Reference”と謳うのであれば、すぐにわかるような構成を考えてもらいたいと思う。こうした例をみるたびに、日本の多くの書物のデザインの優秀さを感じる。

「獣医畜産新報」2009年10月号掲載


David E.Noakes, Timothy J. Parkinson, Gary C.W. England
『Veterinary Reproduction and Obstetrics 9th ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 山口大学農学部教授 中尾敏彦

 獣医繁殖学の世界的名著として知られ、多くの国で教科書として用いられている『Veterinary Reproduction and Obstetrics(獣医繁殖・産科学)』の第9版が最近刊行された。本書は、初版が、1938年にドイツ語の『牛と馬の産科学』の英訳版として発刊され、その後、おおよそ10数年ごとに改訂が重ねられ、2001年には、第8版が刊行されていた。この間、1982年に刊行された第5版は、河田、浜名両先生の監訳による日本語版として、1988年に発刊され、獣医繁殖学の参考書として、愛用されてきた。
 最新版となる第9版は、執筆陣に英国以外の国の気鋭の研究者を多く加え、全ての章において、最近の繁殖学の進歩に基づいた大幅な追加・修正が行われており、章によってはほとんど書き換えられている。創刊以来の長い歴史によって培われてきた貴重な伝統を守りながら、なおかつ、新しい知見を積極的に取り入れて、獣医繁殖学教育の国際標準を示すかのような本書を完成させた監修者の情熱と努力に敬意を表したい。
 本書は35の章からなり、これらの章は、さらに、@卵巣の周期活動とそのコントロール、A妊娠と分娩、B難産とその他の分娩関連疾患、C産科・繁殖関連の手術、D不受胎と低受胎、E雄の繁殖、Fエキゾチック動物の繁殖、G生殖補助療法の8つのパートに分かれている。また、付録として、繁殖領域で用いられるホルモン剤、関連薬剤およびワクチンの一覧があり、それぞれの薬剤の由来や生理作用、商品名、製造元、薬理作用が解説され、動物種別に適応と用量が記載されている。
 本書の最大の特徴は、全ての動物種の繁殖生理と繁殖障害を網羅しているところにあり、牛、馬、豚、綿羊、山羊、犬、猫の他、ラクダ科の動物、水牛および愛玩用の小型哺乳類(ウサギ、モルモット、チンチラ、ラット、マウスほか)などの繁殖の基礎と応用が丁寧に記述されている。各章とも、カラーとモノクロの鮮明な写真がふんだんに使用され、明瞭な図表とともに、内容の理解を助けている。
 もともと、本書は、獣医学を学ぶ学生を主な対象として編集されたものであるが、獣医繁殖に関する教育、研究、診療等に従事する獣医師にとっても十分に参考になる内容を多く含んでいる。牛と馬の臨床的な手技についても、多くの症例の写真や図に基づいて詳細に記載されているので、産業動物臨床に携わる獣医師にとっても貴重な専門書になるであろう。また、犬や猫の繁殖と繁殖障害についても、臨床的事項も含めて丁寧に記載されているので、小動物臨床に携わる獣医師にとっても、有益な書籍となろう。

「獣医畜産新報」2009年9月号掲載


Patric R. Gavin, Podney S. Bagley
『Practical Small Animal MRI』

2009年・Wiley-Blackwell 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 麻布大学獣医学部講師 茅沼秀樹

 1978年、MRによる人体撮像が初めて成功し、1983年、日本で初めてMRI薬事が認可された。この様に医学領域におけるMRI検査の臨床応用は1980年代前半であり、およそ30年である。しかしながら、その間におけるMRI機器の性能向上はめざましく、様々な撮像法が開発され、形態診断ばかりではなく生理、機能診断にも臨床応用されている。
 一方、獣医学において、MRIが臨床応用されるようになってからは、十数年が経過している。初期は獣医大学を中心に導入され、臨床例に用いられてきた。その頃、MRI診断に関する論文は、散見される程度であり、書籍の形態で出版されていたものはMRI断層像と解剖学的名称が記載されているMRI断層解剖アトラスのみであった。しかしながら、現在では、伴侶動物に対するMRI検査の有用性が認知されるとともに、社会的ニーズがあいまって、様々な民間病院にも導入される様になった。若干地域差はあるものの、近隣の検査センターを利用すれば、一般開業医においても容易に検査が行える現状にある。また、MRI診断に関する論文数も豊富となり、診断にともなって治療に関するものもかなり充実してきている。そのような中、MRI診断について初めてまとめられ、書籍の形態で出版されたものが本書である。
 本書は、MRIの原理やアーティファクト、脳脊髄、骨関節、腹部、胸部、神経疾患以外の頭部といった内容で構成されている。退屈な原理やアーティファクトについての記載は必要最低限であり、ページの多くは他の画像診断に関する書籍と同様、MRIに即した解剖学や各種疾患のMRI診断に割かれている。従来は診療の合間、MR画像を前に解剖や各種疾患のMRI所見についてその場で知りたいと思っても、文献の検索や収集が必要であるため、容易に調べることができなかったが、本書があれば容易にその場で検索することが可能であると思われる。また、一般開業獣医師が多くの文献を入手することは、我々のような大学勤務の獣医師よりもさらに手間と時間を要する。以上から、本書は洋書であるものの、MRI診断に関わる獣医師のみではなく、一般開業獣医師にとってもクイックリファレンスの書として有用であると考えられる。

「獣医畜産新報」2009年9月号掲載


Thomas N. Tully, Jr., Gerry M. Dorrestein, Alan K.Jones
『Handbook of Avian Medicine 2nd ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 飼鳥野鳥病院院長 長堀正行

 ルリコンゴウの表紙でお馴染みの『Avian Medicine』(2000年初版)の第2版が、表紙の鳥種をスミレコンゴウに、書名を『Handbook of Avian Medicine 2nd ed.』と替えて刊行された。この書は、各章をその分野の専門家が分担執筆する共著書であるが、新版では新たに6名が編著者に加わった。
 旧版は、順に解剖生理・栄養学的特徴、身体検査、臨床検査、画像診断、病鳥看護、インコ・オウム類、フィンチ・カナリア・マイナー類、タカ類、ツル類、ダチョウ類、水禽類、家禽類、オオハシ類、ハト類、海鳥類、動物園飼育鳥類、薬用量に関する17章の構成であったが、この度の改訂では最終章が削除、第1章として鳥類の発生進化に関する章が、さらに付録(主要鳥種の体重・血液学的・血清生化学的データ、オウム類の英名学名対照表)が追加された。今回の追加章の如き内容は、とりわけ即戦力を求めがちな開業医にとっては、臨床に直結しない興味に欠ける情報かもしれない。しかし、実際には、こうした知識こそが、鳥類の解剖生理学的特性、臨床手技の原理原則、病態などを理解、説明するために役立つのである。本書では、臨床に絡めた解説を所々にとり入れ、臨床家にも苦痛なく読めるよう配慮されている。各章には、2008年までの文献に基づいた新知見が補足され、重要な箇所には目印を付して、文字も太字になっている。図は150点から356点に増え、飼い主に対する説明や指導を行ううえで有用な図が多数追加されている。さらに、写真はすべてカラーを採用、これにより術式や病状は格段に理解しやすくなったと考える。なお、著者が替わった第3章(身体検査)と第17章(動物園飼育鳥類)は、内容が一新した。こうした改訂により、本書の総頁数は初版の411から478になったが、紙質を替え、図と文字を小さくすることで本の厚みは初版とほぼ変わらない仕上がりである。しかしながら、縮小による不便さはまったくなく、見出し、写真、表、囲み記事がすべてカラー化されたことで全体的にめりはりがつき、むしろ見読しやすくなったと感じる。鳥類医学は、1980年代後半にAAV(Association of Avian Veterinarians)が発足して以降、急速な進歩を遂げている。とくに外科学、栄養学、感染症(微生物学)、臨床検査の分野においてもたらされた成果は大きく、1990年代に入ると多数の成書が出版されるようになった。よく「どれが良いか」と訊かれるが、どれも一長一短、「これ1冊あれば」というものはない。本書にも海外との飼育事情や診療環境から生じる難点はあるが、今日の鳥類診療に必要な情報は概ね網羅されており、幅広い飼育種に対応できる参考書として備えておきたい1冊といえる。

「獣医畜産新報」2009年8月号掲載


Stanley H.Done, Peter C.Goody, Susan A.Evans, Neil C.Stickland
『Color Atlas of Veterinary Anatomy, Vol.3 , The Dog and Cat, 2nd ed』

2009年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 麻布大学獣医学部教授 浅利昌男

 評者は以前、この初版本の訳出を手がけたことがあった。訳出後、評者はこの本が、「実際に、時間をかけた緻密な犬の解剖を通して、今までにあまり例のない、わかりやすくて詳細なアトラスを完成させたもので、あたかも犬体の解剖室が本棚に収まり、読者は必要に応じて見たい部分をいつでも取り出して見ることができるたいへん有用な本だ」との感想を述べたことを昨日のことのように覚えている。今回、この初版本にひきつづき第2版(2nd ed.)を読む機会があったのでここにあらためて紹介する。この第2版もその基本的な構成は初版本とほぼ同じであるが、いくつかの点について変更が加えられている。例えばこの第2版の第1章は犬の体表および外貌について解説しているが、初版でこの章にあった体の各部位のX線画像や表層解剖図をここでは略してあり、それらは第2章以降、いわば各論である頭部、頸部、胸部、腹部、前肢、後肢、骨盤部そして猫と、体の各部位に振り分けて載せて、画像診断のための一助となるようその有用性をより高めているようである。また、その第2章以降各章のはじまりには、その部位の一般的な特徴あるいは特有な構造について概略的ならびに網羅的な解説をつけ、有益な情報がまとめられている。また初版本にはなかったが、第2章以降、必要に応じてCT断層画像が各部位の最後に挿入されており、断層画像診断の手助けとなるように工夫されている。このようにいくつかの点についてその体裁に変更が加えられているが、基本に流れるこの本のコンセプトは以前と同じ、犬の体の表層から深層にかけて連続的で緻密な解剖であり、これらの写真を目で追うことにより、まるで自分が実際に解剖をしているような経験が得られる、『本棚の中の解剖室である』ことには変わりないように思え、安心した。したがって、この本は単に犬と猫の体に興味を持つ人のためばかりではなく、小動物臨床の現場で日々犬や猫に向き合う臨床獣医師にとって是非1冊は手元に置いておきたい本であると思う。

「獣医畜産新報」2009年8月号掲載


Juan C. Samper
『Equine Breeding Management and Artificial Insemination 2nd ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 岩手大学准教授 大澤健司

 「いい、これはいい。」最初に手に取った時の素直な感想である。本書は2000年に出版された書籍の第2版であり、編者は現在馬の臨床繁殖の世界で最も精力的に活動している獣医師の1人、Samper博士である。第2版で変更が加えられた点としては、本のサイズが洋形B5判から洋形A4判へと一回り大きくなり、ページ数(336ページ)が初版よりも30ページほど増えた上に、文字サイズが一回りだけ小さくなったこと、すなわち大幅に情報量が増えたことである。それでいて格段に読みやすくなっている理由は、初版の写真や図表が全てモノクロであったのに対して本書では全編を通してフルカラーの図表や写真がふんだんに使用されているからである。特に、イラストの多くがカラー化に伴って新たに描き直されていて、非常に見やすい。また、近年繁殖学領域においても知見が増えてきたカラードップラーによる卵胞や黄体、胎子の画像や、蛍光色素で染色された精子の鏡検像なども今回追加されていて、カラー写真ならではの特徴が活かされている。
 馬の繁殖や臨床繁殖に関する書籍はいくつかあるものの、なかでも本書は繁殖管理の現場において実用的な情報が満載されていて、繁殖成績を向上させるために必要な事項を網羅している。合計で27章から構成されていて(初版は全18章)、種雄馬の管理、交配前後における繁殖雌馬の管理、分娩管理、分娩後の雌馬の管理、新生子ケアのみならず、馬の獣医療において応用されつつある新しい補助生殖工学技術についても1章が割かれている。初版の最後の章「馬の生殖工学の将来」において、『10年以内にクローン馬誕生の可能性もある。』との記載があるが、実際、それからほどなくしてクローン馬が誕生し、以来現在まで欧米における馬の体外受精や補助生殖獣医療の発展は目ざましいものがある。今版においても体細胞クローン馬作成技術について詳細な解説がなされている。
 Samper博士とは2年前の学会で同じテーブルでランチを取ったことがある。その際、私がかかえていた患者(牝馬)の繁殖障害の症例について質問をしたのだが、真剣に耳を傾けて状況を聞いてくれたことが今でも思い出され、博士のプロフェッショナルとしての意識の高さが強く印象に残っている。そんな著者のプロ意識を本書からも感じ取ることができる。
 本書は臨床獣医師や馬の繁殖に携わっている関係者のみならず、馬の臨床繁殖学を学ぼうとする獣医学徒にとっても有用な参考書として推薦したい1冊である。

「獣医畜産新報」2009年4月号掲載


William W. Muir, John A.E. Hubbell
『Equine Anesthesia Mnitoring and Emergency Therapy 2nd ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学教授 田口 清

 本書は馬の麻酔学全般を体系的に記したテキストブックの第2版である。初版は1991年に発行されており、17年ぶりの改定である。新しい内容には疼痛管理、麻酔補助薬による麻酔導入・維持・覚醒の改善、ロバとラバの麻酔などが追加されている。
 疼痛管理に関する章は、薬物の説明を中心とした章と周術期の疼痛評価と治療を中心とした章の2つに分けられている。また巻末には疼痛管理計画シートが付いており、疼痛評価と治療の実際的使用の参考になるだろう。
 完全静脈麻酔(TIVA)および吸入麻酔時の麻酔補助薬の章では、TIVAのための薬物コンビネーションが麻酔時間別に記され、propofolを用いたTIVAについても記載されている。また吸入麻酔薬量を減らすための静脈内投与薬とその方法と効果についてもよく説明されている。個人的に驚いたのは局所麻酔の章で、硬膜外麻酔のための薬物(とコンビネーションおよび容量)が20種類以上示され、効果発現、無痛時間、副作用がみごとな表で示されていることである。吸入麻酔薬の章では旧版に載っていなかったsevofluraneやdesfluraneについても記載されているのはもちろんである。
 このような17年間の進歩の記述は麻酔リスクの最も高い動物種である馬の麻酔ストレスを実際的に軽減することになるだろう。また馬の麻酔は馬医療を概括する物語ともなっている。つまり痛みの克服、すなわち麻酔法の進歩が医学の歴史のうえで最も劇的な発見であったことが、馬においてもそうなのである。
 本全体も少し大判となり、図表と文章の配置は旧版より見やすくすっきりしている。馬の麻酔学の専門書というだけでなく、生理学(とくに循環器と呼吸器)、薬理学・薬物学、臨床外科学の理解を深めるテキストとしても十分に堪能できる。

「獣医畜産新報」2009年4月号掲載


Bonnie V. Beaver
『Canine Behavior: Insights and Answers 2nd ed.』

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評者 麻布大学准教授 菊水健史

 本書はテキサスA&M大学のBonnie V. Beaver博士による犬の行動学に関する書『Canine Behavior: A Guide for Veterinarians』(1999)の第2版にあたる。第2版を出版するに当たり副題を変更しているが、この点はおそらく彼女の本書に対する意識が表れており、第1版にくらべて科学的見地に立ち、より深く犬の行動と問題行動の背景について考察しているためだと思われた。著者のBonnie V. Beaver博士は1863年に設立されたThe American Veterinary Medical Association(AVMA)の前会長であり、動物福祉や行動治療の分野に多大なる貢献をした先生である。今回の書物は、犬の行動の背景にある神経科学的、行動遺伝学的知見に関する非常に有益な情報が満載であり、問題行動のカウンセリングを行う獣医のみならず、犬のトレーナー、保護団体、さらには一般の飼い主にもよい書となっている。犬の本来の行動パターン、犬の正常な行動パターンから、犬が犬とどのようにコミュニケーションをとっているのか、犬の感覚器の発達やその未知なる能力、さらには薬物の作用機序など、科学的データを基に淡々と、そして不足のない内容が満載である。本書には大きく4つのポイントが存在する。まず1つは、非常に幅広い見地から犬の行動を説明しており、基本的な犬の行動の理解は、犬が進化の過程で手に入れてきた自然条件化での行動レパートリーを通して見つめなおすことから始まり、その観点から現代社会、特に都市部に住む犬の行動、問題行動を呈する犬を考察する点である。2つ目として、問題行動の各行動別にまとめられた章構成になっていることである。特に、攻撃性、分離不安、恐怖症とストレス症候群、マーキングなどの排泄に関する問題、過剰な吠え、落ち着きのない行動などについて、一目でその背景となる犬本来の行動から、学習過程でどのように行動が強化され、そしてその治療に関するアドバイスがまとまっており、臨床医にとってとてもありがたい構成をしている。3つ目に、近年の向中枢薬の作用機序、効果、副作用に関する最新情報が記載されている点である。特に人の臨床結果や副作用に関する知見は、獣医診療においても役立つものが非常に多い。最後に、行動カウンセリングの手ほどきが非常によくまとまっており、やるべきこと、その順番、飼い主への伝え方など、臨床の場面に役立つ情報が記載されていることがうれしい。
 本書を読むことで、“最良の友”と呼ばれる犬についての理解がさらに深まることだろう。このような科学的な理解が進むことは、犬の不適切な行動を減少させ、予防することが可能となり、その"最良の友"との何事にも代えがたい、共に過ごす価値ある生活を手にすることにつながるはずである。“Veterinarians work to make the lives of animals and people better- it is our passion”彼女の冒頭の言葉であるが、獣医師は動物の健康だけでなく、動物と共に過ごす人へ幸せをもたらす仕事である、というのが本書の最もよい説明なのかもしれない。

「獣医畜産新報」2009年4月号掲載


Richrad W. Nelson, C. Guillermo Couto
『Small Animal Internal Medicine 4th ed.』

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評者 東京大学名誉教授 長谷川篤彦

 カルフォルニア大学の獣医内科学教授のNelson,R.W.とオハイオ大学の獣医内科学教授のCouto,C.G.の両先生が監修された獣医内科学(小動物編)の第4版が今般上梓された。初版は1992年に『Essentials of Small Animal Internal Medicine』として発刊されたもので、教科書などとして江湖に受け入れられ、版を重ねて今日に至っている。1998年出版の第2版と2003年に刊行された第3版はそれぞれ1999年と2005年に縮刷版が刊行されるほど世界的に流布している。本邦でも筆者らが監訳し第2版と第3版の訳本を2001年と2005年にそれぞれ出版し、多くの学生および臨床獣医師に利用されてきた。
 今回の改訂第4版は、これまでの編集方針を継投し、各章の編集者11人に3人の著者を加えて内容をさらに充実したものである。彼らは何れもアメリカの獣医内科学の専門医で、英米の大学で教鞭をとり第一線で活躍している臨床獣医師である。したがって、彼らの臨床経験を加味した最新情報が診療の現場に直ちに応用可能なように配慮され、全面的に再考された記述となっている。今回の第4版では、肝胆道系と膵外分泌系の疾患、代謝と電解質の異常、免疫介在性疾患が新たに章とされ、特に血液学や免疫学の分野の充実が図られている。各章には臨床症状、鑑別診断、検査(選択、手法、解釈)、治療方針、特異的疾患、さらに推奨薬剤の表が示されている。多数の臨床写真が随所に挿入され、樹状図がそれぞれの章にみられる。また前版同様、各章の関連性にも配慮され、要約の表や鑑別診断とか治療などの項目を示す目印が工夫されている。参考図書や文献も付加されており、末尾の索引とともに利用者の便が考慮されている。
 本第4版を概観しての印象は、学生の教科書として、また多忙な臨床獣医師にとって必須の座右の参考書として貴重な存在となるものと思われる。1人でも多くの同学の志に活用して頂きたい佳書である。

「獣医畜産新報」2009年3月号掲載


N. Edward Robinsin, Kim A. Sprayberry
『Current Therapy in Equine Medicine 6』

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評者 酪農学園大学教授 田口 清

 このお馴染みの本も第6版となると分厚くなったなあと感じないわけにはいかない(1104ページ)。とはいっても第5版でもすでに960ページあった。何といってもこの本の特徴は、@最新の疾病診断・治療情報が満載されていること、A簡明な記述と短い章立てであること、B診療をしながら常に参照し、使い込むようになっていること、C前版および前々版までは新版とともに使用するように編集されていること(とくにこの第6版では第5版と併用することが前提となっており、第5版の索引も巻末に付いている)である。Cはこの本を購入するに当たり特に注意を要する点で、5版を持っていなければ同時に購入して欲しい。つまり960ペ−ジの第5版と1104ページの第6版の合計2000ページ以上の大著なのである。これは5版から6版への書き換えや追加がこの間の馬医療の進歩や考えの変化を示すことがよく理解でき、便利である。一方、この重い両書を行ったり来たりしながらページを探すのには骨が折れる(が、しかたない)。この第5版と第6版をぼろぼろになるまで使い込みながら馬の診療ができたらどんなにすばらしいことだろうかと思ってしまう。
 さて第6版の新しい情報は何と言っても画像診断、非侵襲手術(内視鏡手術など)、クリティカルケアメディスンである。これらは臓器別疾病のほとんどの項目に散りばめられている。たとえば画像診断の章立てのところだけをみても、副鼻腔と関連する歯科X線像、上部気道の超音波検査、急性腹症の内視鏡像、膝関節外科疾患の画像診断、肩関節の超音波、肢末端の超音波、神経疾患の画像診断など … がある。
 その他に短い章立てながら興味をそそる記述も多い。たとえば、「第120章:蹄葉炎の病因」では、急性蹄葉炎が人のSIRS(全身性炎症反応症候群)に当たり、馬の標的臓器が人の肺・肝と異なり蹄葉であること、急性期のない慢性蹄葉炎が人のメタボリック症候群の臓器障害と似て、脂肪細胞やマクロファージ由来の血中TNF-α濃度が高く、インスリン耐性による糖の調節異常と関連することが記載されている。もっと詳しく調べたくなるような気分にさせる。
 この本の情報はすべて実際指向であり、馬の臨床家が一般診療でよく遭遇する疾病や状況に関する情報を容易に入手できることは前版と変わりなく、さらにパワーアップしたものである。

「獣医畜産新報」2009年3月号掲載


Bradoford P. Smith
『Large Animal Internal Medicine, 4th ed.』

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評者 帯広畜産大学教授 猪熊 壽

 1,800ページを超える大動物内科学の本格的な教科書である。
 編者はカリフォルニア大学デービス校名誉教授Dr. Bradford P. Smithであるが、著者は編者も含め大動物臨床獣医学の教育と研究に携わる全米の大学関係者を中心に207名となっている。著者数と内容の充実度から、米国の大動物臨床獣医学の層の厚さを思い知らされる。国内にもいくつか大動物内科学の教科書はあるが、満足いくものは少なく、また内容的にも各論の記述に終わってしまうものが多い。本書の特徴のひとつは、総論の内容と記述が充実していることであり、本書を教科書として参考にすれば、「内科学」の基本を押さえることが可能な構成となっている。
 充実した総論の記述は本書の前半部分にある。病歴聴取と身体検査の方法および結果の解釈から始まり、症状ならびに症状別に考えるべき疾病の説明が12見出しで計74項目(たとえば発熱、発咳、不整脈、体重減少など)記載されている。またここには実際の診療時に鑑別診断リストとして参考にすべき表が、反芻動物と馬についてそれぞれ記載されている。さらに、新生子の取り扱いと疾病に関する章に続き、臨床病理学的事項の説明の章があり、血液・血液生化学的検査の方法と結果の解釈、凝固系検査、骨髄穿刺の方法と分子生物学的診断法に至るまで詳細に紹介されている。つまり本書と大動物を教材として「獣医内科学」の真髄を学ぶことができるのである。
 後半の各論には当然ながら多くのページが割り当てられているが、ここでも疾病の臓器別説明、つまり病態生理と症状、鑑別診断、診断と治療法の単純な記述にとどまらず、X線や超音波検査などの画像検査所見、あるいは病理解剖検査所見が、豊富な写真と共に紹介されている。皮膚病変などは写真がカラーであるともっとよかったかも知れないが、本書のボリュームと価格から考えると我慢したい。米国では大動物でも、とくに馬では皮膚科専門書もあるので、そちらで対応するということだろう。
 さらに本書の最後には産業動物の特徴である群管理に対応して、感染症予防の方法、寄生虫防除法、栄養学的管理法、遺伝的疾患と遺伝学検査、免疫および中毒に関しても記述されており、日々の診療に参考となる。

「獣医畜産新報」2009年3月号掲載


A.Rijnberk, F.J. van Sluijs
『Medical History and Physical Examination in Companion Animals』

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評者 岩手大学農学部教授 安田 準

 『Medical History and Physical Examination in Companion Animals』の2版がこのほどSaundersから出版された。おおもとの原書は1990年にオランダのユトレヒト大学で編集された獣医内科学総論の教科書である。日本には獣医内科学総論の適当な教科書がなかったため、評者は1995年発行の英語翻訳の初版本を参考にして講義資料を作成して使ってきた。初版はKluwer Academic Publishersから出版され、モノクロ印刷で判型もひと回り小さく地味な体裁だった。2版は出版社が替わり体裁が一新して、たくさんのカラー写真と挿画が掲載された教科書にふさわしい作りになった。獣医内科学の講義範囲は膨大で、総論に使える講義時間数はわずかしかない。学生全員が臨床に進む訳ではないので、講義ではカルテの記載法や問診の具体的ノウハウなどは端折らざるを得ない。本書は臨床研修獣医師や臨床現場での経験が浅い獣医師が、カルテの書き方や診断の進め方の知識を整理する上で有用な1冊になるであろう。臨床入門書としての性格上、1日も早い日本語の翻訳出版が望まれる。
 さて、内容を紹介しよう。大学の総論講義ではなかなか詳細を伝え切れないカルテの書き方、稟告の取り方、診断の進め方などを理論整然と解説している。犬や猫の脈や体温の取り方、触診の仕方などの動物の全身状態の把握に関する詳細な記述がある。呼吸器、循環器、消化器、腎泌尿器、生殖器、体表組織、目や耳などの臓器別の身体検査の進め方では、カラー写真と挿画が豊富で理解しやすい。さらに付録のDVDでは検査法や保定・採材法などを動画で見ることができる。動物の動きや反応を観察して診断する運動器や神経系の検査法は、文字で読むと分かりづらいが動画で見ると一目瞭然である。尿や血液、分泌液など生体試料を採取する際の、動物の保定法や採取方法についても挿画と写真、動画を使って視覚的に理解できる。DVDにはPDFファイルもインストールされており、ユトレヒト大学で使われている各種検査用紙が取り出せる。日本語版ではないので、日常このまま使うことはないが、自分の行っている検査手順の再確認には有用であろう。
 本書はCompanion Animalを対象にしているので、犬・猫だけでなく、鳥類、ウサギや齧歯類、さらには両生類、は虫類などについても、保定法や身体検査法が記述されている。挿画と写真、動画を使った視覚的な解説は、臨床獣医師だけでなく、実験動物や野生動物を取り扱う初心者にも参考になる。

「獣医畜産新報」2009年3月号掲載


Dawn E. Christenson
『Veterinary Medical Terminology 2nd ed.』

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評者 東京大学名誉教授 長谷川篤彦

 獣医学科に入学するとまず解剖学を勉強することになる。そして学生は動物の生体の各部位にそれぞれ名称があり、それを理解し記憶しなくてはならない。それには何の理由もなく説明もない。多くの人にはただの強制であり、拷問と感じる者もいると思われる。外国のある大学で経験したことであるが、その獣医科では入学試験はなく、希望者は誰でも(高卒などの条件はあると思うが)入れるが、まず関門となるのが解剖学である。新学期には骨標本を手に持った学生が校庭に溢れかえっている。しかし暫くするとその数は激減し、2〜3か月もすると教育するのに丁度良い人数になると言う。善し悪しは別にして、解剖学と言うか集中的な記憶力で選抜しているのではないかと思われた。一方では専門分野を問わず、専門領域に習熟するには先ず専門用語の習得が必須である。獣医学も例外ではなく、日本語であっても最初は異文化の見知らぬ国の全く異なった言語に遭遇するようなものである。まさに言葉上での挑戦である。そして最近の社会の変貌が急激であることと相俟って、従来の言語との距離が拡大している。われわれは最早明治時代の文献も、昭和初期の論文すら読めない状況である。いわんや漢文などは専門家の領域である。このことは欧米においても同様であると思われる。ギリシャ語やラテン語は等閑視され、特にアメリカの現状は英語のみで外国語の読み書きの修得は重視されない傾向にあるように思われる。恐らくこのような背景を踏まえてのことと推察されるが、近年獣医専門用語に関する解説書が何種類か上梓されている。
 ここに紹介するDawn E. Christensonによる『Veterinary Medical Terminology』もその1冊である。本書は1997年に出版されたものの改訂第2版である。一瞥して、獣医学用語、特に解剖学に関連する用語の習得のための佳書であり、専門用語を分解説明している。そして用語は文章の中にあって初めて理解されるとする観点から解剖学的記載が展開されている。各臓器系統別の章において使用される用語を成立にそって分割し、語の核となる語根、接頭辞、接尾辞、つなぎの辞なる母音を示し語源の観点から説明が加えられている。このことから言語の理解が深まると同時に語彙が広げられることになる。したがって、本書を通覧すれば用語の本質が理解され、また解剖学的知識の確認となることから、獣医学を学ぶ初心者はもとより、指導的立場にある先輩獣医師にも参考になるものと思われる。

「獣医畜産新報」2009年2月号掲載


Gregg A.DuPont, Linda J.DeBowes
『Atlas of Dental Radiography in Dogs and Cats』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 フジタ動物病院院長 藤田桂一

 口腔疾患を診断、治療、予後判定および経過観察する際に口腔内検査は重要である。その中で口腔内X線検査は避けて通れない最も重要な検査といっても過言ではない。歯の萌出障害、交換異常、発育障害の評価、歯の損傷における評価、歯周病における歯周組織の評価、歯内疾患における歯髄腔や根管および根尖周囲の評価、抜歯する際の歯根形態、骨性癒着(アンキローシス)、嚢胞、吸収病巣などの有無やその程度、矯正前後の歯根や歯槽骨の状態の評価、ならびに口腔内腫瘍の浸潤の評価など、ほとんどの口腔疾患において必要不可欠な検査である。実際、口腔内X線写真では、歯槽骨の吸収の状態を確認することが多いが、得られたX線写真では、通常生じている骨破壊の30〜40%はX線写真には表れないといわれているので、その点を踏まえてX線写真を読影することが重要と思われる。
 口腔内という非常に狭い部位を撮影するために、口腔内X線撮影は、経験を積まないと撮影することが困難であることは経験するところである。しかし、撮影法には一定の法則があり、下顎臼歯部以外は、2等分面法という特殊な撮影法を習得することにより誰でも撮影できる。撮影できてもX線写真を読影できなければ診断や治療に結びつかないことは当然であるが、その点、本書ではこれから口腔疾患を勉強し始めようとする方でも理解しやすいように構成されている。すなわち、本書は4つの章から構成され、1章は序章、第2章はX線解剖(犬の口腔X線解剖、猫の口腔X線解剖、顎関節)、第3章はX線検査における各疾患のエビデンス(歯周疾患、歯内疾患、吸収病巣、腫脹と腫瘍、歯の発育障害、外傷、その他の疾患)、第4章は歯科X線検査法と歯科用X線撮影装置について解説されている。
 本書は、すべての画像が鮮明で、挿入写真が大きく、美しい。また画像の解説に留まらず、その疾患の診断、治療法、さらには予後判定や術後の管理法、注意事項まで述べられている。口腔内X線写真の読影に慣れていない方では、とくに第2章のX線解剖から読み始めると理解しやすいと思われる。頭蓋、歯、歯周組織のどの部位が、どこにどのようにX線写真で写って見えるかを豊富な写真を用いて丁寧に解説されている。第3章では、各疾患ごとに豊富に症例が提示されているので、ほとんど重要な口腔内疾患は網羅されていると思われる。第4章では、犬・猫別々に各歯の撮影法が詳細に図説されている。すなわち、各々の頭蓋骨を用いた口外法による撮影法、ならびに口内法による上顎切歯、上顎犬歯、上顎前臼歯、上顎後臼歯、下顎切歯、下顎犬歯、下顎前臼歯、下顎前臼歯および下顎後臼歯に対する撮影法について分かりやすく解説されている。また撮影に失敗した場合、失敗した画像を分析して、その失敗の原因と解決法まで述べられている。
 近年、徐々にではあるが、このような獣医歯科関係の専門的良書が我が国にも紹介されてきているので喜ばしい限りである。

「獣医畜産新報」2009年2月号掲載


Charles S. Farrow
『Veterinary Diagnostic Imaging Birds, Exotic Pets and Wildlife』

2009年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 帯広畜産大学臨床獣医学研究部門教授 山田一孝

 私が勤務している帯広畜産大学附属病院での臨床実習で、学生にX線像を説明する際、学生がよく口にする言葉が「正常がわからないから、どこが異常なのかわからない」である。学生は、獣医解剖学で詳細な解剖を学んできているハズなのであるが、勉強が足りなかったのか、忘れてしまったのか、二次元の透過像と知識が連動していないのか、いずれの理由にしても「臨床解剖」が身に付いていないことが現実である。画像診断の役割が大きくなるにつれて、実際の臨床に対応した「臨床解剖」学の教育が必要である。
 小動物を診療対象としている臨床獣医師にとって、犬、猫の正常な臨床解剖が頭に入っているわけで、X線写真であれば品種の違いを越えて読影が可能である。しかし、もしもハリネズミやアルマジロが来てしまったら…。トゲはいかに画像化されて正常なのか、ウロコはどのように写るのか、 あまり考えたくない状況である。そんなとき、希少動物の正常X線像とよくある疾患のX線像が載った参考書があれば、どんなに助かることだろうか。ここで紹介する『Veterinary Diagnostic Imaging Birds, Exotic Pets and Wildlife』は文字通り、エキゾチック、野生動物のX線解剖の教科書である。本書は、鳥類をはじめ、モルモット、ハムスター、ラット、チンチラ、ハリネズミ、ウサギ、フェレット、スカンク、リス、アルマジロ、サル、アルパカ、ラマ、ミニチュアホース、ミニチュアヤギ、クマ、バイソン、ヘビ、トカゲ、カメ、ワニのX線像が紹介されている。また、保定の写真や正しいポジショニングで撮影するための手技も示されている。ワニのオープン・マウス撮影の様子は知識以上に、好奇心を刺激する。さらに、豊富な動物の外貌写真やWingの説明として飛行機の写真も掲載されており、野生動物に関連する周辺知識の補強にも役立ちそうな1冊である。

「獣医畜産新報」2009年2月号掲載


Dwight D. Bowman
『Georgis' Parasitology for Veterinarians 9th ed.』

2009年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 宮崎大学農学部獣医寄生虫病学教授 堀井洋一郎

 『Georgis' Parasitology for Veterinarians』の名前で永く親しまれている本書は、アメリカの獣医系大学はもとより、世界的にも英語版の寄生虫学教科書のスタンダードとして広く使われており、今回の改訂で第9版となった。北アメリカで流行する寄生虫種を中心に書かれているものの、獣医臨床の主要な対象動物である、犬、猫、馬、豚、反芻動物の他に鶏、実験動物、さらにはエキゾチックアニマルの寄生虫も網羅的にカバーしている。第8版以前でも、白黒の質の高い寄生虫写真や図、組織切片像、あるいは生活環のイラストなどを多数使用し、わかりやすい教科書として定評があった。
 今回の改訂で最初に目に付くのは、ふんだんにカラー写真が用いられていることである。改訂にあたり新たに写真を集めたと思われ、写真の質が高く、寄生虫アトラスとしての役割も十分に果たしている。さらに、生活環のイラストがオリジナルの挿絵を使ったカラーバージョンとなっている。これに加え、見出し、小見出しなどが色分けされて整理されており、第8版よりもさらに使いやすく、わかりやすいものとなっている。全体で548もの図版が挿入されている。
 第9版は、序説、節足動物、原虫、蠕虫、ベクター媒介性疾病、駆虫薬(抗寄生虫薬)、寄生虫学的診断、組織病理学的診断の8章全451ページから構成され、第6章の駆虫薬(抗寄生虫薬)には、41ページが割かれている。理解しやすいように汎用される駆虫薬の特徴、機序、使用法が動物別に既述されている。第7、8章の寄生虫学的診断、組織病理学的診断は、虫卵や組織像の写真・図を中心に診断の参考となる情報が多く盛り込まれている。これまでの定評通り、教育面のみならず臨床家にとっても実用価値の高いものとなっている。
 今回の改訂で新たに序説が創設され、寄生虫学総論が加わっている。さらに15ページと短い章ではあるが、ベクター媒介性疾病で1章が設けられ、蠕虫、原虫のみならずウイルス、細菌、リケッチアのベクター媒介性疾病が紹介されている。
 寄生虫学を体系的に理解する上でも、寄生虫疾患に対峙した際の参考書としても有用な1冊となっている。

「獣医畜産新報」2009年2月号掲載


Siobhan B. McAuliffe & Nathan M. Slovis
『Color Atlas of Diseases and Disorders of the Foal』

2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 酪農学園大学教授 田口 清

 ページをぱらぱらめくるとすべての子馬の病気の写真が次々に現れるのに圧倒される。一言で言えば、馬の小児科学の写真版百科全書である。落ち着いて最初から眺めると周産期の母馬の疾病、そして分娩・新生子の検査とケアから始まる(ここまで80ページで、全体の5分の1)。ほとんどの臨床症状、診断、治療の項が箇条書きになっている。次からは子馬の臓器系疾病(消化器、呼吸器、泌尿器、循環器、筋系、骨格系、肝臓・腹膜・脾臓、免疫系…)の章となる。各臓器系では、診断法と正常所見の写真・図から始まり、先天性疾患、そして後天性疾患の順に各病名の説明と写真が続く。ここでも臨床症状、診断、治療はきわめて簡略に書かれていて、写真と図による説明の方が多い。したがって、病気のエコロジーや病因・病態生理をじっくり学ぶためのものではない。臨床家や学生がとりあえず何病で、診断法は何か、画像ではどう見えるか、治療法は何かを手っ取り早く知るための本であることに徹している。臨床家や学生の馬医療に関する知識の始まりがまず病気を知ることであるとすれば、これほど簡略であればあるほど、疾病というものの理解を深くしていくアイロニーのようにも思われる。馬の小児科学など日本の獣医科大学で本格的に教授することも、習うこともほとんどないことを思えば、この本で学ぶしかないし、この本で学ぶことができるという意味に満ちた本である。子馬の医療学の進歩を指し示すばかりでなく、もっともっと深く勉強するための入り口になることを著者らも願っている。

「獣医畜産新報」2008年11月号掲載


Anita Patel, Peter Forsythe
『Saunders Solutions in Veterinary Practice: Small Animal Dermatology 』

2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 日本大学 前教授 長谷川篤彦

 Saunders(Elsevierグループ)の新企画である獣医臨床に関するシリーズ本が刊行される運びとなり、Fred Nind先生が編集主幹を担当されている。その1冊として最初に上梓されたのが、小動物獣医皮膚科の本書である。執筆者は獣医皮膚科専門医であるAnita Patel先生と同じくPeter Forsythe先生である。
 本書の構成を俯瞰すると、最初に皮膚科診療での問診や身体検査の基礎と臨床検査の概説と以下の7項目を取り上げている。すなわち、痒を中心とする問題、落屑・痂皮、脱毛、潰瘍・糜爛、色素異常、結節・腫脹および各部位に関する問題である。それぞれの項目には、緒論の章があり、その後に症例に即して数章が記載され、本書の中心をなしている。これらの章では、主に病歴、臨床所見、鑑別診断、診断、予後、病理発生、疫学、治療、監視について統一されて記述されている。
 本書は全体で57章から構成されており、末尾に付録として自己研修に役立つように5択の試験問題とその解答が掲載されている。そして、皮膚科で汎用される抗生物質の一覧、使用器具、皮疹別の疾患一覧、シャンプー療法および人獣共通感染症について纏められている。さらに理解を深められるように参考図書や文献が各章ごとに記載されている。また書物の活用に欠かせない索引も要領よく配置されている。
 全体を通して要領よく記述されており、写真も多く適宜挿入されており理解に役立っている。そしてエキゾチック動物の例もあるが、主に犬と猫の頻度の高い、最近注目されている疾患、症例が取り上げられている。1例を挙げると、脱毛については病変が対称性のもの、病変が多発しているもの、全身症状を伴うもの(腫瘍随伴症候群)に分けて取り上げている。また、融解棘細胞の認められた皮膚糸状菌症の犬の症例、代謝性表皮壊死症の犬の症例、多発性紅斑の犬の症例など、最近日本でも報告の見られる問題に関しての解説も多い。
 したがって、皮膚科臨床に興味を持つ人のみならず、小動物臨床に携わる多忙な先生方には是非手元に置いて参考にして頂きたい1冊である。

「獣医畜産新報」2008年11月号掲載


Mark A. Mitchell, Thomas N. Tully, Jr.
『Manual of Exotic Pet Practice』

2009年・Saunders刊(発行年は原書記載の通り) 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 明治薬科大学准教授 深瀬 徹

 エキゾチックペットあるいはエキゾチックアニマルと称される動物の臨床について、幅広い動物種を対象としてまとめた書物である。
 本書は全体を19の章に分け、初めの2つの章を総論とし、第1章はエキゾチックペットの歴史、第2章はエキゾチックペットの診療を始めるための準備について記載している。それ以降は、無脊椎動物と観賞魚、両生類にそれぞれ1つの章(第3章−第5章)を割りあて、爬虫類はワニ類、ヘビ類、トカゲ類、カメ類に分けて4章(第6章−第9章)とし、また、鳥類は1つの章(第10章)にまとめているが、哺乳類は有袋類、マウスとラット、フェレット、ウサギ、ハムスターとスナネズミ、ハリネズミ、モルモット、チンチラに各1章の計8章(第11章−第18章)を割いている。そして、最後の第19章は、エキゾチックペットというわけではないが、野生動物を扱っている。鳥類は1つの章であるのに対して、爬虫類は4つの章になっているなど、動物のグループによって割りあてている章の数に粗密があるが、飼育されている個体数や診療機会の多寡を考えれば、妥当な構成であると思う。
 評者は、エキゾチックペットに関する獣医学書は、少なくとも哺乳類に関しては、将来的にはできる限り動物種ごとに、それが難しければ科(family)または目(order)程度の分類のレベルで1冊にまとめるべきであると考えている。しかし、その一方、入門書としては、ここに紹介する書物のようにエキゾチックペットの全領域を俯瞰した書物も必要であろう。本書は、そのようなエキゾチックペットの全般を扱っている書物のなかで、ほぼ最高位に位置するものと思う。ただ、難をいえば、章によっては、昨今の書物としては写真の掲載数が少なく、そのため、動物そのもののイメージがつかみにくかったり、あるいは外科的処置の手技がわかりにくいかもしれない。
 ところで、これは評者の個人的な好みであるのだが、本書は無脊椎動物にも比較的多くのページを割いているところが嬉しい。エキゾチックペットの診療がふつうに行われるようになったとはいえ、それでも無脊椎動物は、養蚕あるいは養蜂という産業のために飼育されているカイコやミツバチを除けば、獣医臨床の対象とはなりにくい ( 「なりえない」というべきか) のが現状である。しかし、ヨーロッパやアメリカ合衆国では近年、無脊椎動物が獣医学の対象になりつつあるらしい。無脊椎動物の診療は、意外とおもしろいように思う。近い将来、日本においても無脊椎動物の診療を得意とされる臨床家が現れることを期待している。

「獣医畜産新報」2008年10月号掲載


John D. Bonagura, David C.Twedt
『Kirk's Current Veterinary Therapy XIV』

2009年・Saunders刊(発行年は原書記載の通り) 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
評者 コロラド州立獣医科大学客員教授,ダクタリ動物病院広尾セントラル病院院長,ダクタリ動物病院グループ代表 加藤 元

 “カレント第14集がやっと出ました”
 『Current Veterinary Therapy T(第1集)』が、はじめて世に出てから半世紀にになる。本書は、世界中の小動物臨床家のニーズに強くアピールし、小動物臨床に携わるすべての獣医師のバイブルとして親しまれ、ベストセラーを続けている。また、本書の全集は(第1集より第14集まで)、世界の小動物臨床獣医学と獣医療の進歩の歴史、そのものとなっている。
 原書は、われわれ世界の小動物臨床獣医師が求めている小動物、すなわち犬、猫、小鳥、爬虫類、その他のエキゾチックペットまでを対象に、第一線の適任者が、その時代にふさわしいトピックスについて、分担執筆したものである。臨床上の重要な諸問題について、各専門医分野を包括・総合的に、病態生理、診断、この時点で最善で最新、かつ具体的な治療法をより平易に、実用を旨として記述したものであり、このような本は本書以外にはないといえる。
 本書の内容は、小動物臨床の各専門分野で、もっとも新しく、エビデンス・ベースド・メディシン(evidence based medicine)で確認されている知見に基づくものである。世界中の小動物臨床獣医師にとっても、わが国の小動物臨床の継続教育獣医療の現場においても、もっとも大切な実用書となっていることが、よくご理解いただけるものと思う。
 本書の重要性は、従来の参考書と異なり、診断が正しく下されさえすれば本書に述べられているとおりの治療を、各臨床家が実行することで、現時点で最良の結果が得られることにこそ、小動物臨床獣医師のバイブルとして、本書が世界的に真に役立っている理由がある。
 わが国では、『Current Veterinary Therapy W(第4集)』が1971年に『小動物の臨床の実際(第4集)』として出版されて以来、第5集、第6集、第7集、第8集、第9集、第10集、第12集と継続して翻訳出版され、わが国の小動物臨床家の一人一人に“カークのカレント”として親しまれ、世界中の小動物臨床と診療(大学病院をはじめ各獣医診療施設)の現場で必携の書となっている。
 “カレント”は、選ばれた第一線のカレントな適任者によって各集発行の間の2、3年間に進歩を遂げた小動物臨床獣医学の成果をそのつど完全に取り込み、それぞれのトピックス毎に稿を新たにしてまとめ直すという、第T集以来のユニークな編集執筆の伝統に基づいている。したがって、内容は小動物臨床の各分野にわたって、すべてを一新するかたちをとっているが、第13集(2000年刊、和訳版は出版されていない)でまとめられていて、現在もその知見がカレントである部分は、第13集を参照するようになっている。第14集の編集を参照してみれば、各所に第13集の現在もカレントなトピックスが索引として紹介されている。
 この第14集では、全米、EUの獣医学専門医制度(ほとんどすべての世界の専門医は、米国の専門医の資格取得者である)の充実と、各専門分野における大きな進歩を反映し、獣医学、医学を統合してとらえる“one medicine”として認識する新たな執筆者のもとでの新しいアプローチが目立つものとなっている。
 本集では、今日の医学・獣医学の進歩と発展の最もめざましい分野である病態生理学における遺伝学、免疫学、腫瘍学に関する新知見が簡潔に盛り込まれ、各分野における宿題の研究、追試、実践結果の膨大な集積と成果が、ふんだんに取り込まれている。各疾患の治療法の詳細、さらに集載各疾患について、犬と猫の専門分野別に記述され、要領よくまとめられている。
 この半世紀、世界の獣医療では、犬、猫以外の鳥類や爬虫類、その他の小動物の診療の機会はめざましく増加し、専門家による専門的なクリニックも増えている。このような小動物臨床の需要の変化もわが国においても例外ではなく、新しい分野として進歩し拡大の一途を示している。しかし、本集のこの分野はエキゾチック・アニマル・メディスンの進歩としっかりと取り組んでいる専門医の専門書にゆだね、本集では割愛されている。
 Dr. Kirk(コーネル大学)からバトンタッチを受けたDr. Bonagura(オハイオ州立大学)は、Dr. Twedt(コロラド州立大学)を共同総合編集者(3人ともに私の友人でもあるが)に迎え、ここにようやく第14集が誕生したわけである。
 本集はいささか難産で、出産予定が大幅に遅れてようやく出版の運びとなったが、ここで特筆しておきたいことは、Chapter 285のFeline Infections Peritonitis, Therapy and Preventionの項で、初めて日本の石田卓夫先生がDr. Diane D Addie(フランス)と共同執筆されていることを日本の小動物臨床の現場に在る者として、誇らしく記念すべきことと喜んでいる。
 本集の構成の概要を知っていただくために、第14集の項目を添付させていただく。
 Section1 Critical Care/2 Toxicologic Diseases/3 Endocrine and Metabolic Diseases/4 Oncology and Hematology/5 Dermatologic Diseases/6 Gastrointestinal Diseases/7 Respiratory Diseases/8 Cardiovascular Diseases/9 Urinary Diseases/10 Reproductive Diseases/11 Neurologic and Musculoskeletal Diseases/12 Ophthalmic Diseases/13 Infectious Diseases Appendix 1 Table of Common Drugs:Approximate Dosages/2 Treatment of Parasites/3 AAFCO Dog and Cat Food Nutrient Profiles/(以下website版のappendix)4 Canine and Feline Reference Values/5 Hematology -Coulter S Plus W With Manual Differential Counts/6 Hematology -Technicon H-1 Hematology Analyzer/7 System International(SI)Units in Hematology/8 Hematology -Manual of Semiautomated Methods/9 Canine Hematology(Means)at Different Ages -Manual or Semiautomated Methods/10 Canine Hematology(Means and Ranges)With Different Ages and Genders -Manual of Semiautomated Methods/11 Canine Hematology at Different Ages/12 Effects of Pregnancy and Lactation on Canine Hematology(Means)/13 Relative Distribution of Cell Types in Canine Bone Marrow/14 Feline Hematology(Means and Ranges)with Different Ages and Genders-Manual or Semiautomated Methods/15 Feline Hematology(means)at Different Ages/16 Effects of Pregnancy and Lactation on Feline Hematology(means)/17 Relative Distribution of Cell Types in Feline Bone Marrow/18 Clinical Chemistry -Hitachi 911/19 Clinical Chemistry -Selected Manual Procedures/20 System International(SI)Units in Clinical Chemistry/21 Clinical Chemistry -Test Characteristics for Analytes Determined on the Hitachi 911/22 Interferences Caused by Lipid,Bilirubin, and Hemoglobin for Analytes Determined on the Hitachi 911/23 Serum Protein Fractinos/24 Serum Iron and Iron-Binding Capacities in Iron-Deficient and Normal Dogs/25 Serum Immunoglobulin Concentrations of Normal Beagle Dogs at Various Ages/26 Acid-Base and Blood Cases/27 Coagulation Screening Tests/28 Specific Coagulation Tests/29 Quantitative Tests of Gastrointestinal Function/30 Tests of the Endocrine Systems/31 System International(SI)Units for Hormone Assays/32 Urinary and Renal Function Tests/33 Bronchoalveolar Lavage Fluid Cell Populations/34 Cerebrospinal Fluid(CSF)/35 Cerebrospinal Fluid Biochemical Analytes in Histologically Normal Cats/36 Characteristics of Body Cavity Fluids in Healthy Dogs and Cats/37 Cytologic Findings in Normal and Abnormal Canine Synovial Fluids/38 Canine Semen/39 Canine Prostatic Fluid(Third Fraction)/40 Electrocardiography

「獣医畜産新報」2008年10月号掲載


Arlene Coulson
『An Atlas of Interpretative Radiographic Anatomy of the Dog and Cat 2nd ed.』

2008年・Blackwell刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
岩手大学農学部教授 安田 準

 『An Atlas of Interpretative Radiographic Anatomy of the Dog and Cat』は2002年に初版が出版され、2003年にはインターズー社から神谷新司先生監訳による『犬と猫のX線解剖アトラス』として翻訳出版された。このたび原書の2版が出版されたので、評者の手元にある旧版翻訳書と見比べて本書の書評としたい。
 本書は臨床家が日常のX線画像診断を進める際に手元に置き、症例のX線画像と本書の正常像とを対比させて、読影力を高めるのに最適な成書である。本書は基本的には旧版と同じX線画像および等倍でトレースした線画による模式図を対にレイアウトして、読影のポイントを解説している。X線画像をトレースした線は当該部の特徴をよく捉え、頭部などの陰影が複雑な箇所では複数枚の線画を使い分けて解説しているので理解しやすい。また臨床家が異常所見と見誤りやすいピットホール(落とし穴)の画像についての解説も実践的である。さらに撮影時の動物の体位と照射中心が附図として掲載されているので、臨床家がX線撮影する際に参考となる。本書で用いているX線画像は1975年から1995年の間に撮影されたフィルム・スクリーン系のアナログ写真である。最近のX線撮影ではデジタル化が進み、Computed Radiography(CR)やフラットパネルディテクター(FPD)による画像を見る機会が多くなった。本書のような精密なアナログ写真を見ると、デジタル写真より遙かに大きな画像情報量を持つことが改めて実感できる。
 単純X線写真では、犬と猫の骨格系と軟部組織が系統立てて掲載されている。犬では犬種により体型が大きく異なることから特徴的な犬種の画像を紹介し、犬と猫の月齢別骨成長のX線画像を並べているのも興味深い。本書では、旧版で記述の少なかったX線画像を評価する場合の正常臓器の大きさや位置関係の計測法を事細かに線画を使って解説しており、異常所見を診断するに役立つ。旧版との大きな違いは造影X線写真が充実したことである。胆嚢造影、経静脈性尿路造影や逆行性膀胱二重造影、脊髄造影などでX線写真と模式図が大幅に増えた。一方心血管系の造影X線写真が掲載されていないのは片手落ちである。本書は651ページのアトラスでかなり重たい。これ以上の紙面増は実用性に問題があるのかもしれない。
 超音波画像、X線CT画像、MR画像など、獣医画像診断は近年大きく飛躍した。これら画像診断に進む際の基本情報はX線診断から得る。X線診断のスキルアップに本書は最適な参考書となるだろう。

「獣医畜産新報」2008年9月号掲載


Sally M.Turner
『Saunders Solutions in Veterinary Practice - Small Animal Ophthalmology』

2008年・Saunders刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
安部動物病院 副院長 安部勝裕

 この本は小動物眼科、犬、猫およびウサギの眼科学が非常にわかりやすくまとめられている。
 本全体の構成は眼瞼、角膜など解剖学的部位別に記述されているが、病気の臨床症状、ヒストリー、検査とその進め方のポイント、鑑別診断のポイント、治療および動物看護士へのアドバイスなどが詳しく述べられており理解しやすい。加えて鮮明な画像や手術手技のイラストなどが多数用いられており眼科初心者にも理解しやすいように工夫されている。各セクションの文頭には、飼い主様からの主訴となる「眼が赤い」、「痛い」、「眼が見えない」などのキーワードが載っており、眼科診療を行う上で非常に役立つと思う。またケーススタディも多数掲載されており、診療の合間や通勤時や就寝前などにこれだけを読んでいても凄く勉強になると考える。
 この本は、一般臨床医にとっても、これから眼科の勉強を始めようと思っている獣医師にとっても、また眼科専門医にとってもお奨めできる1冊である。

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


Rick L. Cowell.,Ronald D.Tyler.,James H. Meinkoth.,Dennis B. DeNicola
『Diagnostic Cytology and Hematology of the Dog and Cat 3rd ed.』

2008年・Mosby刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
動物細胞病理研究会主宰 後藤直彰

 細胞診は血液形態学と共に出現している細胞を自分の目で見て臨床症状と対比し、その意義を考え、合理的に理解して確定診断に到達する技術である。
 この細胞診を自分のものとして獲得するには個人の能力・努力が問題になるが、それを培うためのよい指導書・参考書を欠かすことができないのは言うまでもない。
 その参考書として既に評価を得ている『Diagnostic Cytology and Hematology of the Dog and Cat』の第3版が1999年の第2版以来10年振りに刊行された。
 内容は基本的に第2版を踏襲しているが、この第3版では読者の理解しやすさと利便性を高めるために大幅な内容の改訂・増補が行われている。
 細胞診はその技術の大部分が健常組織との対比・経験・類似症例からの類推によって構成されるが、当然ながら誰でもあらゆる症例を経験することはできない。その際、頼りになるのが写真・図版である。
 この第3版では1032葉の解像力のよい写真が用いられ(第2版では572葉であった)、正常細胞と異常細胞の識別を助けている。
 次に特徴的なことは、4つの新しい章を加えて読者のよりよい理解をはかっていることである。以下にその各章を列挙する。
@細胞型と悪性の基準。上皮性であるか間葉性であるかなどの鑑別点と悪性所見の基準について示されている。(第2章)
A病原微生物についての章で、原因菌と常在菌、混入微生物の区別を明らかにしている。(第3章)
B円形細胞、細胞診に頻出する円形〜楕円形の独立、分離性細胞について一括して説明が加えられている。「円形細胞」については種々の考え方があるが、ここでは細胞形態・分布・挙動等から、肥満細胞種・組織球性腫瘍・リンパ増殖性疾患・可移植性性器肉腫・メラノーマを取り上げている。(第4章)
C膵臓。第19章で他の章と離れているが、膵臓の細胞診についての解説は珍しいものである。種々の参考書にもほとんど記載が見られない。膵臓の疾患は血液生化学検査も有効性は低く、超音波を用いての検査材料採取による細胞診が威力を発揮することになるであろう。
 この第3版に携わっている多くの著者、検査機関からの最新の知識が加えられているのは当然ながら、各章の内容についても十分に深められている。1例を挙げれば肺、気管内の構造、胸水、腹水等滲出液についても多くの情報が加えられている。
 参考書はページ数が多ければ良いというものではないが、前の版に比べて約50%の増ページもその充実性を示すものである。
 細胞診はまだ比較的新しい診断技術である。その習得は容易ではないが、これを身につければ臨床家にとって強力な味方となることは疑いがない。
 その技術を習得するための指導書・参考書として躊躇なく推薦できる本書が出現したと言うことができる。

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


Jill E. Maddison,Stephen W. Page,David B. Church
『Small Animal Clinical Phamacology 2nd ed.』

Saunders・2008年刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学教授 尾ア 博

 本書は、Jill E Maddison、Stephen W Page、David B Churchの3名を編者とし、総勢34名の執筆者による小動物臨床薬理学書である。2002年に第一版が出版され、今回は改訂第2版であるが、小生第1版の存在を不覚にも知らなかった。
 編者の2名は英国人で1名はオーストラリア人であり、筆者の大方もこれら2国の人達で占められている。2段組で600ページに及ぶ大著である。2色刷で見やすいレイアウトになっている。処方例もボックス表示で示され、そこだけを確認したい臨床家にも親切な気がする。ただし、図版が少ないのが少し残念といったところか。
 2008年の改訂版だけあって、新しい薬も網羅され、新規治療法を開拓したいと考えている臨床家にとっては好都合かと思う。
 他書にはない記載ということで、動物薬の併用禁忌がリストで表示されていること、動物行動の治療薬、眼科や皮膚科治療薬といった章立てがあること、抗炎症薬や心不全治療薬の記載が非常に詳しいことなどが挙げられる。
 今、人の高血圧や心不全の治療では、これ以上もう新しい薬は必要ないとも言われるほどに多くの種類の薬が出回り、臨床家はどの薬を選択して良いのか迷うほどの状況である。本書の循環系の記載は詳しく、カルシウムチャネルブロッカー、ACEI、ARB、アルファーブロッカー、ベータブロッカー、ニトロ剤、ジギタリス、利尿剤など、まるで人における循環器系薬の解説を見ているのではと勘違いさせられるほどである。「獣医学もここまで進歩したのか、獣医学でもやろうと思えばここまでできるのか」ということを実感させられる章である。
 今後、臨床薬理学のスタンダードとなる本であることは間違いなく、余裕のある獣医師は是非とも購入して日頃の診療に生かしてもらいたいものである。

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


Cecilia Gorrel
『Saunders Solutions in Veterinary Practice - Small Animal Dentistry』

Saunders・2008年刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
フジタ動物病院 院長 藤田桂一

 通常の専門書では、「この疾患は、このような症状で、この検査や治療を行う」といった画一された内容で構成されていることが多いように思われる。しかし、口腔疾患においては、1つの疾患に罹患しているとは限らず、他の口腔疾患も併発することも少なくなく、咬合や咀嚼といった機能についても考慮しなければならない。したがって、臨床現場では、教科書通りに事が運ばず、口腔疾患の症例に諸検査や治療を行う際に混乱を招くことも少なくない。すなわち、現在診ている症例において何をどのように検査して、どのような結果であれば何を疑い、どのような診断をして、何を優先して、どのように治療していくか、予後はどうかなど分かりにくく複雑なものとなる場合がある。口腔疾患の中で、同じ疾患に罹患した場合においても、個体により歯周組織の状態、あるいは歯や口腔粘膜の損傷の程度などが異なり、他の口腔疾患も併発していることもあるため症例ごとに治療法が異なる場合があるからである。
 その点、本書は臨床における実践書といえる。最初の章は、歯と歯周組織、ならびに咬合に関する解剖と生理が学べ、次の章では、口腔検査とそのデンタルレコードの書き方、ならびに口腔X線検査の方法が簡潔に解説されており、口腔疾患を最初に学ぶ獣医師にも大変理解しやすく構成されている。次いで、第3章からは応用編となり、主に歯周病、慢性歯肉口内炎、歯根吸収、不正咬合、根管および根尖病巣における項目で、それぞれ5〜9症例紹介され、合計で35症例ほども症例紹介されている。その内容は、症例の紹介から始まり、その症例の既往症、無麻酔下での口腔検査、麻酔下での口腔検査、さらなる諸検査、口腔X線検査所見、プロブレムリスト、疾患の解説、治療法のオプション、本症例における治療法、術後のチェック、予後、ならびに考察の順に詳細に解説されており、臨床獣医師にとって同じ疾患でも症状が異なる実例や反対に異なる疾患であっても共通した症状を示す実例が豊富に掲載されている。そのため、この症例の場合であれば、このような検査を行ってこのように治療すればよいということが分かる構成になっている。いわば、本書は1例1例チェックすべき点が詳細に解説されているので適切に治療するための指南役を果たしているといえる。
 また、付録としてホームケア(口腔衛生管理)、歯科器具・機材の解説、抗生物質と消炎剤、ならびに歯内治療についての情報を得ることもできる。さらに、著者が薦める専門書や文献も掲載されているためにさらに調べたい場合、非常に参考になる。ぜひ、臨床獣医師に推薦したい1冊である。

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


Deborah C. Silverstein,Kate Hopper
『Small Animal Critical Care Medicine』

2009年(記載のまま表記)・Saunders刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
タカダアニマルホスピタル副院長 小村吉幸

 クリティカル ケアの書籍というとハンドブックを想像しがちであり、診療の現場でもマニュアル本を活用することが多い。本書を手にしたとき、そのボリュームに“おやっ”と思った。机の上で開いてみると、見出しにある正常値の一覧とそれに続く“アセスメントとトリアージ”から始まり、“ICUで頻発する問題、呼吸器系、心血管系、電解質と酸塩基バランス、輸液、内分泌系、中毒、神経系、感染症、血液疾患、腹腔内疾患、泌尿生殖器系、周術期の問題、外傷、麻酔と疼痛管理、薬物、モニタリング、ベンチレーション”とすべてのカテゴリーを網羅していることはもちろんであるが、本書では、それぞれのカテゴリーに含まれる細目について、図解を交えて詳細に解説している点がきわめて有用であると感じた。徴候と治療に終始するのではなく、それぞれの項の始まりでは生理学的背景ならびに病態生理にきちんと言及している。また、最初にキーポイントがあげられており、鑑別診断の際の端的な検索にも対応している。
 臨床の現場では、当面の治療を施しながら鑑別診断を進める必要に迫られることがしばしばである。その過程では、検査値から可能性を絞り込むことだけではなく、病態生理を理解しつつ、実施した、あるいは実施している治療について考えることが大切である。本書の特徴とも言える個々の問題点についての明快かつ十分な解説は、クライアントに対するインフォームドコンセントに役立つであろうことはもちろん、学生ならびに研修医を指導する立場の獣医師にとっては、教育目的の利用にも大いに役立つことは間違いない。
 また、英語教育が国民的レベルで重視される昨今、臨床の現場で研修に励んでおられる方々には、日々遭遇する症例について、さらには新たに認識された病態について“どうして ?”、 “THYROID STORMって何?”という向学の思い、そして語学の習得という思いを一石二鳥で満たすに打って付けの良書であると考える。
 Welcome "HOW COME?" boys & girls !
 そして、先輩は備えあれ!!

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


Sue Paterson
『Manual of Skin Diseases of the Dog and Cat 2nd ed.』

2008年・Blackwell刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
前・日本大学教授 長谷川篤彦

 今般、新たに犬と猫の皮膚疾患に関する臨床的な専門書『Manual of Skin Diseases of Dogs and Cats』が上梓された。著者はヨーロッパの獣医皮膚科専門医であるSue Paterson先生で、英国のMerseysideのSt HelensにあるRutland House Referral Hospital活躍されている。これは以前、同著者が犬の皮膚病と猫の皮膚病についてそれぞれ別々に出版したものを合わせて、第2版としてまとめて改版し、最新情報を加筆して刊行したものである。小動物の皮膚疾患に関する書物は数多く出版されているが、そのほとんどが共同執筆によるものである。確かに、各自がそれぞれの専門分野を分担執筆することには大きな意義があるが、多くの著者の共同執筆では編集者が統一を図っても一貫性が欠如していることもある。その点、著者が1人の場合、著者自身の考えを通して全体を記述することが可能である。しかし、現在のように専門領域そのものが細分化されている状況では、皮膚科に限っても極めて困難である。本書の著者はこれを見事に克服し完成させたことは敬意に値するものである。
 内容構成は、構造と機能、身体検査、臨床検査、細菌性疾患、真菌性疾患、ウイルス・リケッチア・原虫性疾患、寄生虫性疾患、内分泌・代謝性疾患、外耳炎、アレルギー性疾患、免疫介在性疾患、脱毛症、栄養性疾患、先天的・遺伝性疾患、色素異常症、精神的疾患、ケラチン化異常症、犬の原因不明の疾患、猫の原因不明の疾患、環境要因による疾患、腫瘍の21章である。第4章から第21章までは、それぞれの病名ごとに一般的説明、原因と病理発生、臨床症状、鑑別診断、診断、治療を項目として順に簡潔に記述されている。また、写真や図表が適宜挿入されており、特に写真は理解を容易にしている。なお、各章の末尾にはさらに詳しく知りたい読者のために参考文献や参考図書が掲載されており、便宜を供している。いずれにしてもまとまりがあり、記述は簡明で、事典的要素が感じられるものであり、小動物臨床に携わる獣医師にとって極めて有益な参考書であることは間違いないものと思われる。

「獣医畜産新報」2008年8月号掲載


James S. Gaynor & Wiliam W. Muir V
『Handbook of Veterinary Pain Management 2nd ed.』

2008年・Mosby刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学教授 西村亮平

 本書は、ハンドブックと銘打ってあり、確かにその記載はどこからでも気軽に読めるように構成されている。しかし、その内容は相当に詳しく深く、細かいところまで及んでいる。というとかなり読みにくいのかと想像されるかもしれないが、その点はハンドブックの利点を生かしてかゆいところに手が届きつつ、気軽に読めるよう工夫されている。また、関連領域についても少なからぬページが割かれており、読み進むうちに別の専門書をあたりたくなるような事項についても詳しく記載されている。例えば、薬物動態についてなんとなく言葉は知っているが、きちんと理解しているわけではないものも多いのではなかろうか。より深い理解には、正しい知識が必要だがそのような言葉が出てきたとき、実際には面倒なため、よく分からないまま済ませてしまうことも少なくない。ところが本書では、薬物動態の基本的知識がコンパクトにまとめて記載されている。本書の隠れた特徴であろう。
 内容的には、まず痛みのメカニズムの始まり、痛みの評価法および鎮痛の基本について解説してある。その記載は前述のように非常に分かりやすく、たとえば痛みが生体におよぼす影響については、自分が持っていた知識が体系的に整理でき、とても役立った。一方痛みの評価法については、残念ながらいまだ決定的なものは作られていない。しかし本書では、この点を十分踏まえたうえで、現状で少しでも痛みを評価・理解できる現実的な方法論が提示されている。次に鎮痛に使われる薬剤について記載されているが、これには最新情報がふんだんに盛り込まれており、たとえばα2アドレナリン受容体に関しては、サブタイプの存在だけでなくその役割についても解説がある。もちろん新しい薬剤や新しいプロトコールにも詳しい。これに引き続いて、急性疼痛、慢性疼痛さらに癌性疼痛の治療の実際について動物種による違いも含めて述べられているが、第2版では初版にはなかった、猫、鳥、馬、牛、ヘビ、フェレット、ウサギにおける鎮痛法も記載されている。
 さらに第2版では、最近急速に発展しているリハビリテーションを利用した鎮痛法やQOL、ホスピスの問題も加わり、大変読み応えのある本となっている。動物の痛みに興味のある先生方にとってとても有用な本であることは間違いない。ぜひご一読されることをお勧めする。


「獣医畜産新報」2008年5月号掲載


M. Grant Maxie
『Jubb, Kennedy and Palmer's Pathology of Domestic Animals 5th ed.』

2007年・Saunders刊 3巻セット 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
動物細胞病理研究会主宰 後藤直彰

 家畜病理学の百科事典ともいうべき『Jubb, Kennedy and Palmen's Pathology of Domestic Animals』の第5版が1993年以来13年振りに改訂刊行された。筆者も第3版・第4版を駆け出しの動物病理学者の頃から本書で勉強した経験がある。多くの動物病理の専門家、これを専攻する学生諸君も本書を用いたことがあるであろう。
 1993年の第4版以来、動物病理学に関する知見・文献は驚異的に進歩、増加しているが、第2版以後も基本的に、JubbとKennedyが第1版で肉眼的にも組織学的にも厳密に記載したものを基礎としている、といわれている(残念ながら筆者は第1版を見たことがない)。それはこの第5版においても例外ではない。
 この第5版における主要な改訂部分は、病因論、病理発生を含めて、分子生物学から得られた新しい知識を従来の理解に加えることでなされている。しかし新しいことを追い求めることが主眼ではない。今日、われわれがすでにコントロールされている疾患、例えば結核のような古い時代から続いていたものも、尚われわれと共にあり、重要な問題を投げかけている。順序は前後するが、呼吸器系で結核は大きく取り上げられ、地理病理学的な知識・結核菌の成分・性格・病理性・免疫原生・病理組織学・動物別発生の特異性まで細かく論じられている。このような古くからの疾患とともに、1997年に新しく報告されたウイルス、豚シルコウイルス(Porcine Circovirus)についても記載がなされている。この病気(PMWS)は離乳後5〜12週の子豚に発生する全身消耗性疾患で5〜20%が斃死すること、抗体は養豚場に広く広がっていることが述べられている。
 本書の内容は、骨・関節、筋肉・腱、神経・眼・耳、皮膚・附属器、消化器、肝・胆管・膵、泌尿器、呼吸器、循環器、内分泌系、生殖器の全てに亘っている。呼吸器の結核については既に取り上げたが、その他概観して見てみると新しい事柄も多い。消化器系では基本的な事柄に続いて胃腸疾患の考え方・診断についてまとめた記載がある。なかでも注目されるのは反芻獣の新生子、子豚・子馬の下痢症について病原因子等が動物別に記されている。感染病・寄生性疾患については従来の記述に沿っているが、ウイルス病についても詳細な記載がある。造血系は200頁以上に亘り、優に1冊の単行本に匹敵する内容を備えている。なかでも一般的な腫瘍に加えて組織球・樹状細胞・リンパ細網細胞系腫瘍等にも訳述が及んでいる。内分泌系の章では各種ホルモンの概説から化学受容体までわかりやすく解説されている。
 写真は全体モノクローナルであるがカラー写真を凌駕するほどの鮮明さを持ち、理解の助けに十分である。この種の書物の生命ともいうべき索引は各巻末に同じものがあり利用者の利便性を高めている。
 以上、種々の点からみて本書は家畜病理学の第一等の参考図書の地位はゆるぎなきものであろう。

「獣医畜産新報」2008年4月号掲載


Larry P. Tilley, Francis W.K. Smith,Jr., Mark A. Oyama, Meg M. Sleeper
『Manual of Canine Feline Cardiology 4th ed.』

2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
宮崎大学准教授 中山智宏

 犬と猫の心臓病学に関する獣医学専門書は多数出版されている。その多くは循環器に強い興味を持つ獣医師あるいは学生に向けた内容であり、日常診療で心疾患に遭遇した際の診断および治療目的で参照するにはやや敷居が高い傾向にある。
 本書の特徴は、対象読者を広く設定したことにあり、分量は専門書としてはあまり多くなく、B5判大で索引を入れたページ数は443ページ、21章で構成されている。本文はカラー印刷で、図や写真がふんだんに掲載され、多くの読者にとって親しみがもてることであろう。理論等の専門性が高い領域については詳述を避け、実践的な特徴が前面となるよう編集されている。随所に「KEY POINT」という囲いの小項目が設けられており、それぞれの疾患の診断や治療等に対する重要点や勘所が記載されている。このKEY POINTのみを拾い読みしても循環器に対する理解を深めることに役立つ。また、同様によく尋ねられる質問(FAQ)が各章の最後に設けられており、この類の書籍としては形式にとらわれない解説がなされ、興味深い。
 広い読者層を対象にすると内容が基本的事項に留まることが多いが、本書は2001年以来の第4版になり、新たに心臓手術、肺性心および肺動脈血栓塞栓症、ペースメーカー療法の章と付録として犬種別の罹患しやすい心臓病の一覧が加えられ、版を重ねるごとに内容の充実を図っている。さらに、ピモベンダンやカルベジロールなどの新しい治療薬が積極的に取り上げられている。その1例として、肺性心と肺動脈血栓塞栓症の治療にシルデナフィルおよびボセンタンが紹介され、先進的な内容も多くうかがえる。
 本書は大きく分けて3つのセクションに分かれている。最初は、循環器疾患の一般的な診断方法についてであり、身体検査、X線検査、心電図検査、心エコー検査、特殊検査というように実際の診察と同じ順序で章が組まれている。2番目は、各疾患別に病態等の解説、診断および治療が記述されている。最後は、循環器疾患の治療法であるため、2番目のセクションと内容が部分的に重複する。しかし、最後のセクションは症状あるいは病態別に章が構成され、それぞれの章は心不全、不整脈、心肺蘇生、救急救命法というように前のセクションとは異なった側面から治療方法を取り上げている。したがって目前の症例の治療を考える際には、これら2つのセクションのうちどちらか適した方を参考にすれば臨床的に非常に有用であろう。なお、文中の薬品名は太字体で印刷されているが、これは疾患の病態生理や診断法を理解していて、治療薬を手早く調べたい際には参照に便利で、体裁上のよい工夫であろう。

「獣医畜産新報」2008年3月号掲載


Thomas J. Divers, Simon F. Peek
『Rebhun's Diseases of Dairy Cattle 2nd ed.』

2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
石井動物病院 石井一功

 乳牛の疾病について完全に網羅した本である。心臓、呼吸器、消化器、乳房、繁殖、泌尿器、神経、眼科の順に器管別に配置され、すばやい参照が可能で、読みやすい。実際的な外科・内科的療法と、現場のハードヘルス的アプローチの双方が重要視された記述となっている。重要な項目には多くのページを割いており、最新の情報が盛り込まれ、臨床現場のニーズに応えている。
 例えば、乳房炎の項では、ラクトコーダーによるミルクフローグラフが掲載され、ユニット装着が早すぎる場合のいわゆる「搾乳前過搾乳」や薬物による盲乳の方法に関してまで言及されている。繁殖においては子宮炎に9ページを割き、消化器病においては、HBSも記載され、子牛の大腸菌性下痢は13ページ、サルモネラ症は子牛親牛合わせて11ページ、BVDに至っては16ページに亘り、疫学的背景・診断・治療・予防法について詳述されている。跛行や蹄病に関しても、20数ページに渡り豊富な写真と共に解説がなされており、DIP関節のドリリングや断趾術、蹄尖壊死部の大胆な除去など、かなり積極的な外科療法について述べられている。私にとっての最新情報がこのような成書にすでに掲載されていることに感心しつつ、焦りも感じる。
 教科書らしく、稟告の取り方、検査法、採血、経口補液、注射部位、保定法、輸血、腹腔穿刺、除角法などにも触れ、カビを含む中毒情報、参考ウェブリンクまで掲載されていて参考になる。フルカラーで写真も豊富。個別のケーススタディは鑑別診断において大変参考になる。各項目において、推奨薬用量、米国の法定休薬期間、公衆衛生・家畜衛生学的見地からの疫学情報も詳しい。
 付録DVDも必見である。エコーや内視鏡の動画に加え、各疾患に特徴的な神経症状や跛行は、言葉で説明するのは難しいので、動画で見ることに大きな価値がある。BVDに胎内感染した子牛の神経症状や、頚静脈へのカルシウム投与を失敗しホルネル症候群を起こした例など、我々の日常診療で出会うような症例も多く収録されており、一度見ておけばひと味違ったアドバイスができるのではと思う。
 ある目的地に到達するのに、人に書いてもらった簡単な道順と目印だけを頼りに行くのと、自分で詳しい地図を見て全体像を把握しながら行くのとでは、結果は同じでも意味が全く違う。特に道に迷った時の対処の仕方では大きく差が出るだろう。この本で「乳牛の病気」の全貌を把握しながら、進んでいきたいと思う。

「獣医畜産新報」2008年3月号掲載


David J. Maggs, Paul E. Miller, Ron Pfri
『Slatter's Fundamentals of Veterinary Ophthalmology 4th ed.』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院 院長 太田充治

 本書は1981年に初版が出版されてからこれまでに2度の改訂をされ、第2版はわが国においても訳本が出版されており、我々臨床獣医師には長く愛読され続けてきた眼科学の成書である。今回、3度目の改訂によって第4版が出版されたが、今回の改訂による本書はこれまでの版とは全く別の書籍であるかのような全面的なリニューアルがなされた。
 まず第一の大きな変更は全ページがカラー化されたことであろう。眼科学の成書にとって挿入された写真が鮮明であるかどうかは非常に重要な要素であるが、これまでの版では巻頭に数十枚のカラー写真がまとめて掲載してあるだけであったのに対し、この第4版では写真はすべて解説箇所に挿入してあり、それらの数もかなり増えている。
 全体的なボリューム(ページ数)は前版に比べて4分の3ほどに縮小されているが、これは図表の大きさを縮小し、近年の獣医眼科学の基礎知識レベルの向上を考慮して、解説する必要性の低くなった「眼科手術の原則」と「よくみられる眼科疾患の鑑別診断」の章を削除したためである。これに代わり新しく追加された章として「エキゾチックアニマルの眼科」があるが、これも現在の獣医臨床現場における必要性を考慮しての加筆であろう。
 またこれまでの版ではソフトカバーであったために、頻回の使用には耐えられずにページが外れてしまう経験をしているが、今回の第4版ではハードカバー仕上げになっており、日常の臨床現場でのリファレンスとしての頻回使用にも十分耐えられるようになったと感じる。
 今回の改訂では3人の著者によって書かれており、各著者の得意分野であるか否かによって各章のボリュームに偏りがあることは否めないが、獣医眼科学のすべてを網羅したコンパクトな成書として非常によくまとまった良書である。
 最後に、第3版までの監修者であるDr. Slatterがこの第4版の改訂が本格的に始まった時にはすでに亡くなられていたことから、この第4版では監修者に彼の名前は無くなったが、これまでの彼と第3版までの本書の功績を称え、タイトルが“Slatter's 〜”と変わったことも、Dr.Slatterのご冥福をお祈りしつつ付け加えたい。

「獣医畜産新報」2008年2月号掲載


Rhea V. Morgan
『Handbook of Small Animal Practice 5th ed.』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 小動物臨床、なかんずく内科学に関する多種多様な書籍が陸続として出版されている。
 内科診療全般にわたるもの、また各臓器系統別に血液学、循環器学、神経学、内分泌学、消化器学、腎泌尿器学、皮膚科学、眼科学など専門的な著書が刊行され、加えて感染症学、寄生虫病学、アレルギー・免疫学、代謝病学、中毒などについても詳細に解説している良書も多数存在している。
 このような状況にあって、今般 Rhea V. Morgan 編纂の『Handbook of Small Animal Practice』の第5版が出版された。本書の初版が上梓されたのが1988年であり、その後改版が重ねられ約5年振りに新版が登場した。本書が江湖に広く受け入れられて来た所以は内容もさることながら、記載方法に負うところが大であると思われる。第5版においても、記述形式に同様の工夫が認められ、統一性のある脈絡で構成されている。各疾病に関して簡潔な記載によって理解を容易にし、臨床の現場で直ちに役立つように配慮されている。第一の特徴はすべて箇条書き方式を採用している。このことは執筆者が要点を整理して記述することになり、読者にとっては把握しやすいことになっている。しかし一方では単純化による問題がないわけではないが、その点は賢明な獣医師にとっては危惧するに当たらないと思われる。
 本書は19項に分類される136章からなり、参考値や薬剤などについての付録がある。各疾病については、すべて定義、原因、病態生理、臨床症状、診断、鑑別診断、治療、経過監視の順で記述され、各章の最後に文献が載せられ読者の便に供している。写真は少ないが図表は随所に挿入されており、理解に役立つものと考えられる。執筆者は第一線で活躍中の130人にも及び、各項目に担当責任者がおかれている。
 改版が重ねられることは好評を博している証左であり、すなわち佳書である証である。今回出版された第5版もこれまでの版と同様に臨床の現場の獣医師は勿論のこと、獣医療関係者、獣医師を志す学生らにとっても利用価値の高い参考書となるものと推察される。

「獣医畜産新報」2008年1月号掲載


Peter G.G. Jackson, Peter D. Cockcroft
『Handbook of Pig Medicine』

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有限会社サミットベテリナリーサービス院長 石川弘道

 今、養豚現場が抱えている一番大きな問題は疾病対策である。その疾病対策を担っているのは獣医師である。PRRSやサーコウイルスの出現以降、豚病は複合感染が主流となり、適切な解決策を提示するためには、高度な技術、知識が要求されるようになってきている。近年専門的な養豚獣医師を望む声が高くなってきた背景には、こうした事情が反映されている。
 しかし獣医学を教える教育現場である大学には、豚病学を講座として設置している大学は皆無に等しく、養豚獣医師を目指す獣医師は独学でその道を切り開くか、または海外に勉強の場を求めていくしか手立てがない。独学で勉強する場合にまずぶち当たる壁は、適切な教科書が見あたらないことである。本書は、これから養豚の世界に飛び込もうとしている若き獣医師にとっては、まさに“バイブル”的な教材になるだけの内容を備えているだけでなく、経験者にとっても十分参考になる内容となっている。
 本書は著者が英国人ということもあり、第1章では聴診や触診など個々の豚に対する診療指針が細かく記述されている。現在の養豚獣医医療は群管理が主流となっているが、群を構成する個体の観察無くして、群診療は行えないことをこの本は教えてくれている。また病気の各論では、運動器、呼吸器、消化器、皮膚、神経系などの系統別に解説され、さらに本書に掲載されている図、表、写真は全てカラーで構成されており、そのため病気の症状、病理所見などが非常に理解しやすくなっている。
 本書は現場で混迷する養豚獣医師に対し、適切なアドバイスを与えてくれるものと確信する。

「獣医畜産新報」2007年12月号掲載


John H. Lewington
『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery,2nd ed.』

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明治薬科大学薬学部准教授  深瀬 徹

 フェレットはイタチ科の動物である。ただし、野生の動物ではなく、ヨーロッパケナガイタチやその近縁種を起源とする家畜である。
 フェレットの家畜化が行われたのは、紀元前のことであり、北アフリカにおいてであったらしい。その後、フェレットはヨーロッパ、そしてアメリカ合衆国へと伝えられ、様々な目的で飼育されてきた。家畜化された初期の目的はネズミ駆除やウサギ狩りのためと考えられるが、このほか毛被獣あるいは実験用動物として利用され、さらにペットとしても世界の各国で飼育されている。
 フェレットが獣医学の対象として重要視されるようになったのは、ペットとして普及して以降である。それにともなって、フェレットの臨床に関する書物も多数が著されている。そうした書物のなかで、とくに優れているのは『Biology and Disease of the Ferret』と、ここに紹介する『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』であろう。前者はペットとしてだけでなく、実験用動物としてのフェレットにも注目し、そのために誌面が割かれているが、後者は主にペットとしてのフェレットに焦点を合わせているようである。ともに良書であり、『Biology and Disease of the Ferret』は1998年、『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』はこのたび2007年に第2版が発行されている。
 ところで、近年は、国内外を問わず、きわめて多くの獣医学書が出版される状況にある。しかし、その一方、1冊の書物の寿命が著しく短くなっていることは否めない。初版の第1刷を発行した後、それ以降は版を重ねるどころか、増刷されることもほとんどないのが現状ではないだろうか。獣医学の発展が日進月歩であるため、といってしまえばそれまでだが、書物の出版に対する意識が変化し、安易に出版が行われていることも事実であろう。できることならば、優れた書物を出版し、学問の進歩に合わせてその内容を改訂していってもらいたいと思う。
 今回、『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』の第2版が発行されたことは、非常に喜ばしいことである。フェレットに関する獣医学書として残っていくためにも、今後も改訂を続けていかれることを期待している。
 最後に、本書の具体的な内容を紹介しておきたい。本書は4つの部分から構成され、第1編が飼育とそれに関連する生物学的な基礎知識、第2編が内科、第3編が外科に関する記載になっている。最後の第4編はやや特殊で、“Special Anatomy”という項目のもと、フェレットの歯と歯科疾患の病理について詳細な解説が行われている。第4編は趣を異にするが、第1編から第3編までは、日常の診療に大いに役立つものと思う。

「獣医畜産新報」2007年12月号掲載


Paul R. Greenough
『Bovine Laminitis and Lameness:A hands-on approach』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清

 Paul R. Greenough氏は国際牛蹄病学会の主要メンバーの1人で、カナダのSaskatchewan大学を1992年にリタイヤした後も、Vet Agro International Consultants Inc. エラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。を主宰し、牛蹄に関する研究・指導活動を続けている。また3版まで版を重ねている著名な牛跛行の教科書であるLameness in Cattleの共著者、共編者でもある。この本は牛蹄研究を長く続けてきたGreenough氏の集大成的なこだわりの本でもある。そしてそのこだわりは蹄葉炎(laminitis)である。果たしてこの蹄葉炎という馬の疾病を指す言葉がどのような牛蹄の状態を指し、あるいはどのように蹄病と関わり、その要因は何なのかということがこの本の中に広がっている。全19章のうち、ダウナー牛、感染性の蹄病、外傷性の蹄病、肢の近位の疾病を扱った4つの章以外は、蹄葉炎と関連する内容である。実は牛の跛行のほとんどはこのように蹄葉炎とかかわっているのである。
 近年の獣医学書の写真や図はカラーでとても美しいが、この本もその例外ではない。ほとんど全ページに大きなカラー図譜や写真が掲載されている。以前に出版された第1版と第2版のLameness in Cattleが牛の跛行と蹄病の病名すべてを網羅したエンサイクロペディアなら、この本は蹄病(蹄葉炎)と跛行を物語として結び合わせて書きとめられている。牛蹄に知識の深い人でも、初学者でも、忙しい臨床家でもゆっくりと静かに読むのにふさわしい本である。

「獣医畜産新報」2007年10月号掲載


Andrea E.Floyd, Richard A.Mansmann
『Equine Podiatry』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清

 Podiatryとは足病学である。この本のタイトルは馬の足病学ということになる。馬の足とは蹄のことであり、人では靴にあたる。したがって馬の靴の学問の本といってよい。
 「遠い昔、馬が輸送手段だったころ装蹄師と獣医師は一人が両方を兼ねていた。馬の獣医学が起こり、獣医師は馬の健康管理に、装蹄師は技能者として分離した。しかし、燃焼エンジンが発明され、20世紀中ごろには馬の頭数がピーク時の十分の一となり、馬の獣医学書の出版はおよそ半世紀なくなった。有能な装蹄師もリタイヤした。そして獣医師と装蹄師は離ればなれになった。だがその後、思いもよらぬことに馬はレクレーションアニマルとして、そして大きな産業として復興した。現在では装蹄師は公的な訓練を受けたプロフェッショナルである。しかし獣医師の装蹄に関する知識は乏しいものになった。」長く引用したが、この本が装蹄師、馬のオーナー、獣医師のすべてを対象に書かれた理由である。この本は新しい時代の装蹄師と獣医師の協力・友愛のために書かれている。これがこの本に求められている読み方である。そうすればその気持ちが残るはずである。
 内容は5つの章に分かれている。第1章は馬蹄の解剖と生理である。馬蹄の機能解剖や神経支配の項はとくに新鮮である。肉眼的構造のみならず顕微鏡解剖においても美しいカラーの図と写真はすばらしい。第2章は馬蹄の評価と疾病診断で、とくに画像診断に重きが置かれている。第3章は馬蹄疾病とその処置が、多くの連続したカラー写真を用いて実際の馬蹄の問題をどう扱うかを見事に表している。第4章は蹄葉炎。最新の知識を平易に解説し、処置から馬の管理法まで記載されている。第5章は装蹄に冠する議論である。予防的な護蹄プログラムやチームアプローチにも言及されている。
 500頁近い大著で、馬の「靴」に関する必要な言葉と図や写真がすべて含まれ、たずねること全部に応えてくれる本である。

「獣医畜産新報」2007年10月号掲載


Joann L Colville, David L. Berryhill
『Handbook of Zoonoses:Identification and Prevention』

2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
国立感染症研究所獣医科学部長 山田章雄

 本書はノースダコタ州立大学を退官した臨床獣医師J. L. Colvilleと同校の臨床微生物学者D. L. Berryhillによるzoonosisのコンパクトな解説書である。序文で述べられているように本書は健康管理に関わる学生や、医療・獣医療の従事者を主な対象としているが、それ以外の読者にも分かりやすいよう書かれている。2部構成の前半でzoonosisの基礎、後半で42の代表的疾患について、病原体、宿主、伝播様式、動物および人の症状、診断、治療、予防についてまとめている。各疾患の罹患率と致死率を4段階に分けて表示することで、各疾患の公衆衛生上の重要度が一目で分かるような工夫がされている。各疾患はアルファベット順で掲載されているが、第1部に病原体あるいは宿主動物に基づいた分類表を載せることで参照を容易にしている。また疾患によってはhistorical factあるいはhistorical noteとして、名称の由来やちょっとした逸話などが挿入されている。
 Zoonosisは疾患数で200を超え、病原体は900種近くに上る。また、人に感染する病原体の約6割はzoonosisの病原体である。したがって、どのような視点でzoonosisを捉えるかによって、扱う対象は大きく異なる。本書はすでに述べたような層を読者として想定していることから日常の獣医療で遭遇する可能性の高いものが主に選ばれているが、一方で、稀な疾患であっても一般の関心の高い疾患についても取り上げている。60の図表が使われているが、視覚的にやや劣るところが惜しまれる。原版がカラーであるにも拘わらず白黒である点も残念である。
 記述はできるだけ正確であるように心がけたとしているが、一部疑問の残るところもある。例えばSalmonellaの表記が最近の知見とあっていない点や、Salmonella typhimuriumをパラチフスの病原体のように記述していたり、狂犬病の記載で、人を咬んだ犬の取り扱いに疑問のある部分があったりする。また、インフルエンザに関してもH5N1亜型に偏った扱いになっている点も気に掛かるところである。節足動物媒介性感染症の予防に関する記載が、多くの疾患で重複していることも改善すべき点に思われる。
 巻末のAppendixはいずれも理解を助ける上で役に立つと思われる。
 類書が多く出版されている中で、本書が特に優れているとも言い難いが、zoonosisの入門書として、あるいは臨床現場における参考図書としてはそれなりに役立つものと思われる。

「獣医畜産新報」2007年10月号掲載


Donald E. Thrall
『Textbook of Veterinary Diagnostic Radiology 5th ed.』

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麻布大学獣医学部講師 茅沼秀樹

 画像診断を専門に始めた頃は、異常所見の検出と診断に主眼を置いてきた。したがって、診断名があり、異常所見が羅列されているようなテキストの方が使いやすかったように思う。しかしながら、画像診断の基礎となる解剖学や病理学的背景に関する知識が菲薄な状態では、ある一線を越えられないことが解った。そんな時、非常に参考となったテキストが、Thrall監修の『Veterinary Diagnostic Radiology』である。このテキストは、正常画像と解剖学、異常所見と病理学的変化がバランス良く記述されており、画像診断を理論的に理解することができる。この点が、他の画像診断のテキストにはない心強さであるといえる。
 また、コンピューター関連機器はめざましく進歩し続けていることから、これに伴い、画像診断機器もめまぐるしいスピードで新しいものが誕生し、獣医学分野に浸透している現状にある。本テキストにおいてもCR(computed radiography)、DR(digital radiography)、CT(computed tomography)、MRI(magnetic resonance imaging)といった最新の画像診断機器の原理から診断のポイントがX線のみならず、ふんだんに織り込まれており、今回第5版にまで改訂され、他の画像診断学のテキストにはないすばらしいスピードで進歩している。第1版からの流れで、X線診断が本テキストの基本であることには変わりないが、特に、CTやMRIが獣医臨床において身近になっていることから、頭部脊柱の画像診断が相当量加えられ、腹部領域については超音波診断がより詳細に解説されている。したがって、X線診断を中心とした総合画像診断テキストといえる。さらに今回からは、X線正常像、超音波ドプラ音、静止画のみでは伝えるのが困難な事柄を動画やアニメーションにてウェブサイト上で閲覧できるように工夫されている。
 様々な画像診断法から次の選択すべき画像検査を考える上で、X線以外の画像診断法についても、獣医師として知識が必要な時代となっていることから、本書は診断において避けて通ることのできない画像診断法のすべての知識を得るために必要な1冊と考えられる。また、画像診断における異常所見と鑑別診断が、随所にボックスで要点のみが記述されていることから、本書は当然英語での記載であるが、日常の診察においてもクイックリファレンスとして活用できるものと思われる。

「獣医畜産新報」2007年10月号掲載


J.E. van Dijk, E.Gruys, J.M.V.M.Mouwen
『Color Atlas of Veterinary Pathology 2nd ed.』

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動物細胞病理研究会主宰 後藤直彰

 獣医病理学を学ぶ上での大切なことは何よりもまず目で見ることてある。病気、病変が非常に多くあることは言うまでもないが、それぞれが多くの臓器、器官に発生し、さらにその進行度合の差によって、すなわち初期像、最盛期、終末像とそれぞれ異なり、これらの組合せで膨大な数の肉眼所見になることは明らかである。
 それらの全てを実際の経験、自らの知識として貯えることは希むべくもない。これらを補うものとしてのカラーアトラスがある。
 この『Color Atlas of Veterinary Pathology』は獣医学を学ぶ学生、研究所で獣医学的な仕事に従事する卒業生、食肉検査に従事する人を対象に作られたもので、初版は1982年に刊行された。
 初版にはそれまでの20年間に獣医病理学の知識が急激に増大し、獣医学を学ぶ学生に大きな負担となっていると述べられているが、当時から現在に至るまでも、さらに事実、知識が多く集積されていることから、この第2版には旧版には見られなかった事柄を増補することでより現状に即したものとなっている。
 初版では、とくに「病気と病気の進行過程の理解」を目的とし、細胞病理学、炎症、循環障害、腫瘍を各臓器、組織ごとに明確にしているが、この第2版では、その内容をさらに進め「臓器、組織の一般的な形態的反応」というように拡張して、自由度をもって考えられるようにしている。
 また、このアトラスでは学生諸君が取り付きやすいように、各臓器、器官ごとに一般的な導入部を設けてあるのも親切な点である。
 また先に述べたように、新しい材料が加えられ、多くの写真が拡大されているのも利用者にとって参考にしやすいことであろう。
 病変の取り上げられている動物も馬、牛、羊、山羊、犬、猫、ウサギと多種に亘り、このようなアトラスで従来ありがちであった大動物に片寄ることなく、日常多く出会う動物、特に小動物臨床で多く出会う犬、猫の例が多く、鮮明な写真で見られることは学生、研究者ばかりでなく一般の臨床家にとっても役立つところが大きいと考えられる。
 獣医師の実際の業務においては死後の検査もしばしば要求されることから、病理学の専門家以外であっても肉眼的病変をその場で見分けるための知識も必要となる。そうした知識を広く養うためにも、本書は有用で、獣医業に従事する者は、是非書架に1冊備えておきたいアトラスである。

「獣医畜産新報」2007年4月号掲載


Etienne Cote
『Clinical Veterinary Advisor Dogs and Cats』

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日本大学教授 長谷川篤彦

 疾病は自然に治癒する病、治療によって回復する病、そして治療しても完治しない病に大別される。獣医師としては治療して治る疾病を知識不足や技量の未熟さのため治せずにむしろ悪化させるようなことは恥辱であり、反省しなければならない。また全治する疾患に徒に手を加え、自然治癒の過程を阻害し、治癒を妨げてしまうなどは論外と言わなければならない。問題は、現在の医療水準では治療しても治らない疾患である。この場合、その疾患の本質を究明して将来の発展の素地としなければならない。自然科学の著しい進歩によって過去には不治の病とされていた疾病の多くは消失し、現在遭遇する症例のほとんどは慢性で難治性の疾患である。したがって、如何に悪化を軽減し、症状を安定させ、進行を緩徐に保持するかが、治療の現場では重要視されている。一方で、情報化社会と称される現状では、素人の飼い主であっても何時でも、何処でも専門的知識を入手することが可能である。このような背景から日常の獣医療にも大きな変化がもたらされている。すなわち、完治しない疾病の症例を処置しながら、飼い主の理解を得る必要がある。このことは、診療上極めて重要であり、また最近の獣医療の特徴でもある。
 獣医臨床のこのような現状を踏まえ、企画されたと思われるのが今般上梓された『Clinical Veterinary Advisor』である。飼い主に説明し、納得を得るために獣医師が把握しておかなければならない疾病の要点が簡明に記述されている。編集委員長は米国で研鑽し、現在カナダで活躍中のEtienne Ct先生で、20名の各分野の専門家が編集委員となり、第一線で奮闘している約370名の執筆からなる大著である。本書の構成は6章で、いわゆる事典的要素を兼備した小動物臨床の手引書と言える。第1章は病名や診断名の基本的知識(定義、同義語、疫学、臨床症状、病理発生と病態生理)、診断(鑑別診断、初診時所見、その後の所見)、治療(目的、急性・慢性時の対応、薬剤の相互作用、併発症、監視)、予後・転帰、省察(見解、予防、飼い主指導、参考文献)である。第2章は方法や手技で、基本的知識として、同義語、概略と目的、適・不適、器材と麻酔、作用時間、注意点、失宜点、方法、処置後の問題、その他、必要なことが記載されている。第3章は方法や手技で、病理発生が表示されているものも多いが、websiteを見るようになっている。第4章は臨床検査の基本的知識で、定義、同義語、参考値の範囲、生理などである。第5章では、鑑別診断のための樹状図が示され、理解を容易にしている。第6章では薬剤と用量用法が表を用いてまとめられている。また最後には飼い主の指導についての各項目が記され、websiteを参照するようになっている。このwebsiteについては、パスワードが購入した本ごとに添付されている。本書は最新情報を提供する印刷物とonline系を合体させた情報源で、多忙な臨床獣医師や診療に関心のある人々には是非活用してもらいたいものである。

「獣医畜産新報」2007年4月号掲載


Jaime H. Samour, Jesus L. Naldo
『Anatomical and Clinical Radiology of Birds of Prey』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
帯広畜産大学助教授 山田一孝

 われわれ獣医療の特徴は、診療の対象が解剖の異なる数種類の動物にまたがっていることであろう。そのため、いろいろな動物の解剖を把握しておかなければならない。獣医学教育の中で、牛、馬をはじめ、犬、猫、鳥類についても、比較解剖学を学んでいるはずではあるのだが、学んだ知識が卒業後、臨床の現場まで維持されているかといえば、なかなかそうともいえない。比較X線解剖ともなれば、なおさらである。小動物診療を専門にしている獣医師にとって犬種によるX線解剖の差はなんとかなっても、エキゾチックとなると、これは結構手強い。まして、日常診療で滅多に遭遇しない猛禽類が来院すれば、ほとんどお手上げである。そんな時、手元にレファレンスがあると助かるはずである。解剖を知識として記憶していなくても、何を参考にすればよいかを知っていることは、知識以上に必要な問題解決能力であろう。ここで紹介する『Anatomical and Clinical Radiology of Birds of Prey』は文字通り、猛禽類についてのX線解剖の教科書である。本書は、猛禽類の正常X線解剖が、タカ、ワシ、ハゲタカ、トビ、フクロウといった種類別に詳しく紹介されている。そして、猛禽類のX線像のみならず、正しいポジショニングで撮影するための手技、消化管造影、尿路造影、血管造影、脊髄造影の手技と画像までも紹介されているのである。さらに、豊富な症例として、創外固定、異物、感染症、腫瘍の画像が示されており、撮影ポジショニングが悪いために異常と間違えやすい症例、排卵障害と間違えやすい症例といった症例集に加えて、CTやMRIの画像についても紹介されている。また、本書は猛禽類のレファレンスではあるのだが、豊富な臨床例から、鳥類全般の画像診断の教科書としても利用できる。さらに特筆すべき項目として、付録のDVDで、CTやMRIの断層画像や三次元像を動画で見ることができるのである。汎用性の高いX線診断と、最新の画像診断機器を組み合わせた体系的な教科書である。
 このような豊富な内容は、米国の研究者の仕事かと思ったが、本書の著者はアラブ首長国連邦の先生である。アラブには鳥を愛する長い歴史があり、鷹狩りが盛んなこの国で、莫大な研究費を投じて猛禽類の臨床研究が行われていることを本書からうかがい知ることができた。おそるべしアラブ首長国連邦。

「獣医畜産新報」2007年4月号掲載


Theresa Welch Fossum et al.
『Small Animal Surgery 3rd ed.』

2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
相川動物医療センター院長 相川 武

 本書は1997年の初版以来、多くの獣医師、獣医学生に親しまれてきた。獣医学生や新人獣医師にも理解しやすい基本的な用語説明、解説に加え、充実したカラー写真やイラストを使った手術手技説明は他の教科書には見られない特徴である。
 今回新しく加わったリハビリテーションの項ではその基本的理論と手技の解説がされ、いくつかの実例写真が紹介されている。内容的には今後さらに充実する余地を残しているが初心者にとっては読みやすいと感じた。多剤併用による疼痛管理の項では、代表的薬剤の説明、併用の方法、用量の表、代表的な局所浸潤麻酔法手技がイラストとともに紹介されている。解りやすくまとまり臨床現場で疼痛管理を実施する際に参考になる。低侵襲手術(スコープ検査、手術)の項では基本的スコープの分類、用途の説明があり、各種検査の例が紹介されている。より詳細なスコープ手技は後の各論において個々に論じられている。新しく追加された情報や治療法にはAPマークが付けられ読者には見つけやすい。第2版に見られたSelected abstracts of recent manuscriptは削除されている。
 軟部外科では、これまでと基本的な構成は変わりないが、眼科に関連する基本的手技(眼球内手術を除く)が単独の項となった。その他、腹腔鏡手術、尿道脱の尿道固定法、膀胱鏡検査による異所性尿管の所見などが紹介されている。心臓外科の項で心房中隔欠損の治療具が紹介され、上部気道の項で鼻腔への側方アプローチ法、口腔内アプローチ法や喉頭、気管の内視鏡検査法などが追加された。
 整形外科においてはD.Hulseに代わりK.Schulzが加わり、基本的な項目の大部分を受けついでいる。UC Davisにおいて関節疾患についての様々な研究実績を持ち、関節鏡手技や人工関節の開発研究に携わり、その発展に力を注いできたK.Schulzが加わったことにより、第3版ではそれらの内容がより充実している。関節鏡による検査、治療法や前十字靭帯疾患に対するTPLO、TTA、股異形成に対するJPS、BiomedtrixのセメントレスTHR、その他ロッキングプレート法、ループサクラージワイヤー法、下顎骨折の歯内固定法などが加わっている。
 神経外科では環軸亜脱臼の治療項目で新手技が紹介されている。初版以来、全体の内容の多くに変化無いが、現在あまり選択されない方法が依然として紹介されていることがあるという印象を持った。今回は第2版に取り上げられた末梢神経損傷に対する治療法の項が削除されている。
 本書はわかりやすい基本的説明を重視する入門書としてのイメージがあったが、獣医学の進歩とともに少しずつ内容の改定が行われ、版を重ねるごとに最新の情報を取り入れている。多くの外科専門医によって評価されているために、一部の外科医の経験論や主観的判断のみに基づいた理論や手術手技の記載が少ないという点ではSlatter編の『Textbook of Small Animal Surgery』と共に獣医外科学のバイブル的書籍であると感じる。

「獣医畜産新報」2007年4月号掲載


Otto M. Radostits, Cive C. Gay, Kenneth W. Hinchcliff, Peter D. Constable
『Veterinary Medicine A Textbok of the Diseases of Cattle,Horses,Sheep,Pigs, and Goats 10th ed.』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本獣医生命科学大学名誉教授 本好茂一

 懐かしく有り難いBlodd先生の若返った一書が送られてきた。本書の第5版の訳書が文永堂出版社から出版されたのは1981年5月であった。当時、私が勤めていたのは、私立最古を誇る当時の日本獣医畜産大学であり、新米教授の私にとって正に内科学のバイブルであった。大恩人の東大臼井和哉教授との監訳の栄を受けたが、先生は突如、フィリピン大学へ長期派遣されることとなり、20人の訳者の協力で出版に漕ぎつけた。それから、原著者のBlood教授の来日、覚えたばかりの桝酒の飲み方を手振りを交えて、日本酒をぐいと飲まれたのが印象として今も思い出される。
 そして2007年度版が第10版として、Radostits教授を筆頭に2,156頁の大冊となり、新知識を満載して編集発刊された。産業動物内科獣医療の伝統的な個体診療主体で充実した新方式に革められたのである。1980年代を境に米国で急速に大型化された牛や豚の群管理方式には目もくれず、個体獣医療の前に、堂々と診断、治療、予後について記述されている。日本の中に生産獣医療を推進すべく、大学退任後、今も続けている私にとって歴史の重みを深く感じている。
 第10版の紹介記事を書く機会を与えて下さった文永堂出版社に感謝を込めて私見を述べさせていただくことにした。Part Tは動物別(牛、馬、羊、豚、山羊)内科学総論である。1. 臨床検査、診断中心に組み立てている。2.全身状態、3. 新生子の病気、4.抗生剤治療の実際、5・6. 消化器病T・U、7.肝臓と膵臓の病気、8. 心臓血管系、以下血液リンパ球と免疫系、呼吸器病…と続いている。
 Part Uは専門医療として、細菌感染症、ウイルス、クラミジア、… 不明原因、23章でプリオン関連と広汎に詳述されている。
 一方、家畜群への検査法としてはPartTの中で(p31〜37)、Step 1.異常性の定義、2. 群と亜群の中で異常を示すパターンの規準、3. ここで感染症、栄養の過剰や欠乏、遺伝性、管理失宜を、4.実験室レベルの確定診断、治療への対応、抑制への反応する尺度を挙げている。オセアニア地域ではずっと家畜は群飼であり、個々の群での行動観察が徹底しており、大小の群管理方式の中で綿密な獣医療が行われていたのだと判断すべきであろう。
 平成19年2月24日 日本獣医師会、学会年次大会(さいたま)に出席して

「獣医畜産新報」2007年4月号掲載


Jacquie Rand
『Problem-based Feline Medicine』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
赤坂動物病院医療ディレクター 石田卓夫

 現在では欧米の獣医大学における教育の方法が、疾患別、原因別から、問題別、器官系別にシフトしている。学生がいざ臨床現場に出てみ ると、試験の時には良くできていても、臨床例に対してさっぱり診断がつけられないという問題に教員が直面し、それでは教える方法を変えてみようという試みから始まったものである。すなわち、“Problem-based”とは、飼い主が主訴として報告する臨床症状、あるいは問診や身体検査、その他の検査から明らかになった臨床徴候や検査異常、それを患者の“問題点”としてとらえ、そのような問題が明らかにある臓器系の問題を示しているのなら、特定の臓器系に目をつけて診断を進め、漠然とした問題ならば、その問題が起こるメカニズムを考えて行く、こういった診断における思考過程を指す。
 本書は、猫における全ての疾患を網羅して、“問題点”から引くことのできる、猫の病気の辞書のようなものである。したがって、目次は問題別に、第1章 上部気道徴候(急性のくしゃみと鼻からの分泌、慢性鼻疾患症状、喘鳴)、第2章 下部呼吸器または心臓の徴候(呼吸困難または呼吸促迫、胸水貯留、咳、チアノーゼ)、第3章 心疾患徴候(異常心音/心肥大、心拍数または調律の異常)、第4章 尿路系徴候(排尿困難、失禁、尿色の異常、不適切な排泄、多尿と多飲)、というように各身体器官系を網羅して、あらゆる問題が目次に立てられている。問題の中には行動学的問題も、臨床検査上の異常所見も、さらには臓器系は特定できない漠然とした問題、子猫特有の問題や、薬物に関する問題点も記載されている。
 各章は細かく問題別に分けられ、そこにはその問題が起こるメカニズム、その問題はどこで起こっているか、そしてその問題が起こる病気には何があるかの順で書かれている。病気には何があるかの項では、一般の教科書同様に、その病気の詳しい説明から、最新の治療法までが書かれている。したがって、本書は猫の臨床の教科書であることは間違いなく、これまでの教科書との違いは、病名がひらめいてその項を参照するのではなく、患者の問題からたどって行くと、その病名にたどり着くというものである。
 編者のJacquie Rand(女性)はオーストラリア、クイーンズランド大学の教授で、Center for Companion Animal Healthの所長を務める。米国獣医内科専門医の資格を持ち、獣医界で広い交流を持つことから、本書の執筆は、英国、米国、カナダ、オーストラリアなどから専門家を選りすぐって行われている。記述は詳細であり、ほぼすべての病気を網羅してあることから、かなり膨大なボリュームで、しかも図版などは少なく、もっぱら文章で綴ってある。したがって、一気に読むのはかなり大変であるが、いわゆるクイックリファレンス的な本ではないので、ある程度読んでおかないと、患者が来てから読める本でもないと思われる。

「獣医畜産新報」2007年3月号掲載


Safia Barakzai
『Handbook of Equine Respiratory Endoscopy』

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酪農学園大学教授 田口 清

 馬の呼吸器系疾患の内視鏡図譜である。すなわち馬の呼吸器とその疾病の内視鏡像に慣れ親しむための便覧である。また実際の内視鏡検査時に携帯して参照するための本である。そして130頁あまりのA5判の小さな本である。この本が生まれたのも獣医学領域における内視鏡の発達によるばかりでなく、馬の呼吸器病がメジャーな疾病で、なおかつ内視鏡検査が日常診療においてきわめて有用だからである。
 第1章と第2章は内視鏡器具と使用法の説明であるが、ハンドブックであり、初学者や学生をも対象にしている本なのでもう少し実際的な記述が欲しい。たとえば検査者や馬、また内視鏡自体に安全な使用法や取り扱い方である。内視鏡の洗浄や消毒法についても具体的かつマニュアル的な記述があったらよかった。しかし、その後に続く第3章から第7章の鼻腔、咽頭、喉嚢、喉頭、気管・気管支の正常内視鏡像と疾病像の写真と簡潔な説明は満足できる。欲をいえばもう少し理解が深まる解剖図が添付されていればなおよかっただろう。
 私は今まで馬の呼吸器の内視鏡検査時には『Equine Endoscopy 』(1999, Mosby)という本を携帯して使用していたが、今後はこの本を使うだろう。それはよりたくさんの疾病の内視鏡写真があるからである。ビジュアル(画像診断)の強さを納得させる現代の馬の診療になくてはならない1冊である。

「獣医畜産新報」2007年3月号掲載


Juan C.Samper, Jonathan F.Pycock & Angus O.McKinnon
『Current Therapy in Equine Reproduction』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
帯広畜産大学教授 三宅陽一

 この10数年、馬の繁殖管理に関する幾つかの著書が刊行され、様々な新知見を目の当たりにできるようになってきた。それらの中でも、ここで取り上げる『Current Therapy in Equine Reproduction 』(2007, Saunders)は61名の著者によって書かれたもので、馬の繁殖管理に関わる66話題が豊富な新知見をベースに載せられている。
 本書の特徴の1つは著者の多くが実際にフィールドで日夜馬の繁殖管理を含む診療に携わっている獣医師であることだ。また、若手の大学教員や学生、大学院生とおぼしきメンバーが執筆しているのには、さらに驚かされるとともに、この分野の研究の拡がりに深い感銘を受ける。
 内容は、開業の獣医師や、学生、さらには馬の繁殖管理者をターゲットにして、馬の繁殖に関する管理の全てが実にバランスよく網羅されている。繁殖障害の診断、あるいはその外科的処置も含めた治療法についても言及している。馬の内分泌動態の研究成果が披瀝されていることや、豊富なエコー像はこれから馬の繁殖学を学ぶ学生や、フィールドでの繁殖管理の理解に欠かせないものとなっている。
 本書は全部で8章に分かれている。第1章には雌馬の卵巣動態と子宮の変化、発情や排卵の同期化処置、加えて発情の抑制法などについて書かれている。第2章には雌馬の繁殖障害に関わる問題に焦点をあわせて、卵巣、卵管、子宮、外陰部の病的な状態について記述され、内分泌的、細胞遺伝学的、外科的処置が網羅されている。第3章と4章には種雄馬の正常な生殖器の構造と機能、その検査法、障害について書かれているとともに、第5章では受胎率の向上に欠かせない精液の採取、採精液の評価について記述されている。そして、第6章には胚移植を含む最新の生殖補助療法について紹介され、第7章では妊娠に伴う諸問題が、第8章では分娩後の繁殖管理のポイントがよく述べられている。このように本書は高い生産性が求められている馬の繁殖管理に利する優れた指導書となっている。
 ただ残念なのは、著者の中に日本人研究者・獣医師の名前を発見できなかったことだ。わが国には西川義正先生を筆頭に、馬の繁殖管理や指導に長けた多くの獣医学関係者による研究成果を基に、今日の日本の馬産が支えられてきた。しかし、西川義正先生は別格として、それらの成果はまだ国際的な評価を得るに至っていないかもしれない。是非とも、大いに海外の研究を凌駕するような独創的で、優れた研究の進展が望まれているところであり、今日その芽は大いにあると思っている。青雲の志をもって、日本発『馬の増産』の発刊に期待するところである。
 なお、Wisconsin-Madison大学のGinther,O.J.教授が、『Reproductive Biology of the Mare』の第3版を近々出版の予定と聞く。本書の刊行とあわせて、馬の生殖科学および繁殖管理に関わる新知見が続々と現われることは、馬生産に携わる獣医学関係者にとって真に喜ばしいことだ。

「獣医畜産新報」2007年3月号掲載


Bruce C. McGorum, Padraic M. Dixon, N. Edward Robinson & Jim Schumacher
『Equine Respiratory Medicine and Surgery』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清

 獣医療の大きな流れや方向には専門科と専門家による専門医療がある。馬を馬足らしめるすばらしい運動能力が呼吸器による換気と酸素交換に負っていることを思えば、呼吸器病の専門領域が確立されるのもうなずけるだろう。もちろん馬の呼吸器疾患はメジャーである。そしてこの本は、過去15年のこの領域にもたらされた目覚しい進歩(疾病の理解とその診断と治療)を基礎科学から臨床科学そして内科・外科医療まで網羅した700頁におよぶ専門書である。
 内容には、呼吸器の構造と機能および免疫と薬理に100頁、臨床診断・ラボ診断・画像診断・機能検査、胸腔鏡検査と生検、剖検に200頁、ウイルス・細菌感染症に100頁、上部気道疾患と下部呼吸器疾患に250頁、子馬の呼吸器疾患と胸壁・胸膜・縦隔膜・横隔膜疾患に50頁がおよそ割かれており、そうだったのかと目の前が開けるような内容が続く。どの章にも大判の見やすいカラー写真と図が添付されていて大著の取っ付きにくさを感じない。また各ブロックの頁上は色分けされていて使いやすい。
 忙しい診療の合間に参照するにもよし、ゆっくり今日の時代の物語りとして熟読するのも楽しい本である。専門知識が1冊の本で得られる不思議と幸せとともに、ほんとうに知の世界秩序は変わったのだというような感覚が深く残った。そしてこの本を実際の馬の診療に役立てよう。他の動物種を扱う獣医師にとっても呼吸器病の理解を深くする必読の書である。

「獣医畜産新報」2007年2月号掲載


Robert S. Youngquist & Walter R. Threlfall
『Current Therapy in Large Animal Theriogenology 2』

2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
鹿児島大学名誉教授 浜名克己

 Youngquistによる同名の初版が1997年に出てから、待望久しく10年ぶりに本書が刊行された。初版と同様に大部であり、A4変形版で1061頁に及ぶ。本書のまず第1の特徴は豊富な執筆陣にあり、全米、全カナダを網羅し、オーストラリアから数名、メキシコ、ペルーからも加わり、総計177名に達している。職域は大学教員が主であるが、臨床獣医師や民間会社員も加わっており、羨ましいほど層が厚い。それぞれが主に1、2項目、多くて6項目を担当している。
 対象動物は7種類に分けられ、牛の記述が最も多い(290頁)が、北米ではコンパニオンアニマルとなっている馬も非常に多く(220頁)、山羊、羊、豚、ラマ科(ラマ、アルパカ)、特用家畜(シカ科のアカシカ、ワピチ、ダマシカ、尾白シカ、トナカイ、Axisシカ、トナカイ。バイソン)がいずれも100頁を超えている。またいずれも雌に片寄らず、雄についてもしっかり記載されているのも本書の特徴である。
 内容は繁殖生理(解剖を含む)に始まり、妊娠診断など各種検査法、繁殖障害の各項目、外科および産科処置について、図表・写真が多用され(計456枚)、分かりやすく具体的に記述されている。また各家畜について、群としてのReproductive Health Program(繁殖管理)が詳述されている。文献が豊富で、ある項では219もあげられており、近年のものに加えて、1940年代のものも含まれている。いくつかの項では、多すぎるので「新規以外は初版を見よ」とある。その中で、世界的に有名な名著Robertsの『Veterinary Obstetrics and Genital Diseases. 3rd ed』(1986)は、今なお広く引用されている。
 バイオテクノロジーを用いた生殖補助医療(ART)の項もあり、一方、乳牛の周産期の代謝性疾患についても24頁にわたって記述されている。最新の知見が多く含まれているのは当然で、例えば、牛の胎盤停滞の治療法として、用手剥離は禁忌であり、代わってコラゲナーゼを胎盤動脈内に注入すると、36時間以内に85%が排出されたとある。帝王切開時に本法を応用すると、その後の胎盤停滞の防止にもなる。
 産業動物臨床における繁殖学の地位は、生命に直接かかわることが少ないため、ややもすれば軽視されてきた。しかし、近年は生産性を向上させるため、飼い主は獣医師に繁殖関連の進んだ技術とその適用を強く求めるようになった。それらには、胚移植、体外受精、凍結精液、精液輸送、定時授精、高い繁殖性の維持などがある。
 本書は獣医学の学生にとっては教科書として、また教員と臨床獣医師にとってはすぐに役立つ参考書として非常に有用であり、ぜひ手許に備えたい1冊である。自動翻訳機があれば、直ちに日本語として紹介したいほどの価値がある。

「獣医畜産新報」2007年2月号掲載


Susan G.Wynn & Barbara J. Fougre
『Veterinary Herbal Medicine』

2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦

 洋の東西を問わず、古くから植物を治療に使用し、その効果についての記載が集積されてきた。中国においては数千年の経験に基づき後漢時代にまとめられた神農本草綱目が古典として有名である。我が国においても、中国からの影響を享受しつつ我が国の医学として発展をとげ、漢方医学として今日に至っている。江戸時代には、我が国独自の本草綱目が出版されている。獣医療においても医療に追従して進歩してきたことは周知の事実である。このような伝統的な医学が、近代科学を基盤とした医学における問題を解決するために最近特に注目されるようになっている。
 獣医東洋医学会もこのような時代の趨勢にあって創設され、この分野の発展に努力している。また2005年にアジア伝統獣医学会が設立され、2006年10月北京で第1回大会が開催されている。西洋にあっても薬草の歴史は古く、その研究も盛んであり、獣医領域における関心も年々高まっている。
 今般、Wynn, S.G.とFougere, B.J.の両先生が編纂された『Veterinary Herbal Medicine』がMosby 社から出版された。現在、この関連各分野で活躍中の20名に及ぶ執筆者による約700頁の大著である。
 本書は5章から構成されており、第1章は緒論で、歴史を踏まえた薬草医学の概説である。第2章は薬草の治療における位置付けを明らかにする必要性やその手続きについて紹介している。第3章では、薬草として使用される植物についての解説で、薬学的背景を主体に論述されている。第4章は臨床における有用性を中心とした項目である。臨床の実際面と馬や牛での治療上の問題が記述されている。また、200頁以上を割いて各薬草それぞれの特性を記載している。最後の第5章は付録で、用語解説など実用上役立つ5項目について示されている。
 したがって、本書はこの分野を志す後学にとって必見の書物であり、初心者は勿論のこと経験を積んだ臨床獣医師や研究者にとっても極めて利用価値の高い好著であると思われる。

「獣医畜産新報」2007年2月号掲載


Teresa Bradley Bays,Teresa Lightfoot, Jerg Mayer
『Exotic Pet Behavior Birds, Reptiles, and Small Mammals』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学助教授 深瀬 徹

 動物行動学(ethology)という学問領域がある。簡単にいえば、動物の行動を研究する生物学の一分科である。その対象は動物であればとくに問わないはずだが、実際には野生動物を主たる対象としている研究者が大半であろう。
 しかし、ペット(あるいはコンパニオンアニマル)として飼育されている動物や産業用に飼育されている動物についても、飼育下における行動を理解することにより、それを獣医臨床に役立てたり、生産性の向上に利用することが可能である。また、“異常”な行動を示す動物は、その行動そのものが治療の対象となることもある。
 獣医学においては近年、動物の行動、とくに犬と猫の行動に関する研究が進み、その成果が臨床に応用されつつある。そして、いくつかの書物も出版されている。
 前置きが長くなったが、ここに紹介する書籍は、『Exotic Pet Behavior Birds, Reptiles, and Small Mammals』という。書名のとおり、犬、猫ではなく、いわゆるエキゾチックペットの行動を解説したものである。
 犬や猫とは異なり、エキゾチックペットには愛玩動物としての歴史が浅いものが多い。そのため、人間との生活に十分に適応していない種が多いことは当然である。これはいたしかたのないことであるが、さらにまた、その動物に関する知見の欠如から、その種に適した飼育が行われていない例が多いことも事実である。エキゾチックペットには、不適切な飼育に起因する疾病が多発する。
 その不適切な飼育には、飼育環境がその動物の生態を反映していないことのほか、飼育方法がその動物の行動に適していないことが含まれるのはいうまでもない。エキゾチックペットの飼育に際して、最近は種々の環境に配慮することが多くなってきているが、行動についてはほとんど注意が払われていないのではないだろうか。
 本書が扱っている対象は、掲載順に記せば、ウサギ、インコ類、爬虫類、フェレット、モルモット、小型齧歯類(マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター類〔ゴールデンハムスターおよびモンゴルキヌゲネズミ〕)、その他の小型哺乳類(チンチラ、フェネック、ハリネズミ類〔主にヨツユビハリネズミ〕、オグロプレーリードッグ、ハイイロジネズミオッポサム、フクロモモンガ)である。そして、これらの動物の各々について、たとえばグルーミングのときや繁殖のときなど、種々の場面における行動を簡単に解説し、加えて飼育や臨床への行動学的知見の応用についても言及している。エキゾチックペットの飼育と診療に際して、得るところが大きい書物であると思う。
 是非、猫の行動学に関する良書である『Feline Behavior: A Guide for Veterinarians』(翻訳書:森 裕司 監訳『臨床獣医師のための猫の行動学』、文永堂出版)と併せて読まれることをお奨めしたい。この書物は猫の行動学に関するものであるが、他種の動物にも参考になることが多く、また、翻訳書については、その訳が秀逸である。

「獣医畜産新報」2007年2月号掲載


Stanley I. Rubin & Anthony P. Carr
『Canine Internal Medicine Secrets』

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タカダアニマルホスピタル副院長 小村吉幸

 面白い本が出版された。臨床でよく遭遇する諸問題の重要なポイントについて、神経および神経筋肉、心臓、呼吸器、内分泌、消化器、泌尿器、生殖器、多発性/全身性の問題、血液リンパ系、感染性疾患の10カテゴリーに分け、Q&Aの形式で解説してある。我々が日頃接するセミナーでも、熱心な講師は受講者から質問されることをとても喜ぶ。真剣に耳を傾けてくれている証拠だからである。しっかり理解しようとすれば、誰でも知識の浅い部分がおのずから顔を出して出てくるものである。そこに気づくことができるからこそ、楽しく有意義な勉強なのである。また、“自分がわからないときは人も同じ! あなたの疑問は周囲の10人の疑問でもある!”とよく言われる。コンピュータがいうことを聞かないときに、マニュアル本を読み返すよりも、サポートページの“よくある質問”をチェックすることが役に立った経験があることでしょう? そんなことを考えつつ読み進めると意外に早く読破できる。実力試験のつもりで利用してみると面白い。本書の英文は簡潔明瞭であり、日ごろよく使われる表現満載である。そこで、臨床獣医学英語を勉強中のインターンにはダブルの利益が得られる格好の勉強材料であろう。“IBDとは何でしょう?”、“IBDの臨床徴候とは何ですか?”と後輩に聞かれたとき手短に何と答えるか。それとも本書を手渡すか? Seeing is believing! ぜひ、ご一読いただきたい。

「獣医畜産新報」2007年2月号掲載


David A. Wilson, Joanne Kramer et al.
『Manual of Equine Field Surgery』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 この本は表題のとおり馬の野外手術のマニュアルである。この本が扱っている野外手術とは1時間以内で実施できる手術、起立位鎮静下で行える手術、腹腔や関節を開けない手術、および特別な器材を必要としない手術である。それも頭部の手術から泌尿生殖器の手術まで34種類の手術法(馬だから当然のことながら肢の手術が4割だが、すべての野外手術が網羅されているといってよい)について、適応症、保定法、必要な手術器具、解剖、手術手順、術後療法、予後、合併症、他の選択肢が明快な図と写真とともに記載されている。そして症例の選択なり手術に関する注意事項が各手術法説明の最後にコメントとして付け加えられている。各種手術項の記載に先立つ第1章では、手術前の患者と手術器具の準備、創の取り扱いと縫合法、骨折の緊急処置法、野外手術の麻酔法が記載されている。また付属のDVDは手術のイメージを明確にする大いなる助けになることも本書の特徴である。
 マニュアルは余分な記載(たとえばそんなものがあればだが、手術の不可視的真実や可視的秘密)を取り除き、実際的かつ単調に書かれているからこそマニュアルである。ここに取り上げられたマイナーサージェリーの確立された手順と技術はマニュアル化にうってつけなのかも知れないが、それにも益してどの手術の項の記載と図説も的確である。臨床の初心者あるいはそれぞれの手術における初心者はこの本を携えて経験者の手術に付き合い・思いをこらすことで、自らの手術者としての自己形成や自己完成ばかりでなく、手術のもつ重要で基本的な性質をあるがままに見ることができる、そんなマニュアルである。

「獣医畜産新報」2006年11月号掲載


Mary RoseParadis
『Equine Neonatal Medicine A Case-Based Approach』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 馬の新生子学は1980年代初頭から認知されるようになった。この本の目的には、馬の新生子学の25年間の発展を記載すること、そしてそれらの情報を馬の新生子学の全体像として読者が実際的かつ能動的に読み取れるように記述することにあると序文で宣言されている。後者は本書の野心的な試みであり、タイトル内にある“A Case-Based Approach”を示す。すなわち従来の獣医学教科書のありように対するチャレンジである。各章に区分された新生子馬に関する臨床的問題や疾病群の診断・治療・予防の説明は、1症例の提示から始められ、知識がストーリーとして展開される。読者は他人事としてではなく、症例を取り扱う参加者となって読み進むことができるようになっている。各章で扱われている臨床問題と疾病群には、新生子馬の評価、ハイリスク妊娠馬、新生子馬の免疫、栄養、敗血症、蘇生法、非感染性呼吸器問題、非感染性の筋骨系問題、神経機能不全、消化器問題、臍帯と非尿器疾患、心疾患、眼科疾患が含まれ、1症例の記述を基に最も多く遭遇する状況と疾病の最新の理解と対処法が得られる。なぜこのようなすばらしい本が海外でできて、日本でできないのだろうか。それは馬の新生子学の発展とその情報を社会と共有しようという高い志をもって新生子馬の臨床医療に真摯に取り組む専門家と誇りが存在するからであろう。症例の臨床症状、処置法、検査に関する写真は数も多く、カラーで美しい。本を読むということは個人的行為のようでも、本質的には他者の世界にかかわることであることが再認識され、本書の目的は十分に達成されている。

「獣医畜産新報」2006年11月号掲載


Francis Smith,Bruce Keene, Larry Tilley
『Rapid Interpretation of Heart and Lung Sounds A Guide to Cardiac andRespiratory Auscultation in Dogs and Cats 2nd ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
茶屋ヶ坂動物病院院長 金本 勇

 ベテランの臨床家にとって心音と肺音を聴診することは、それだけでも心血管系を評価できる情報量の多い検査手段である。それらの聴診所見に詳細な病歴と身体検査を加えて評価すれば、確定診断に結びつくことが多い。聴診器は保管も簡単で、持ち運びも便利な診断器具であり、聴診は患者にとって侵襲性がなく、安価で、場所を選ばない検査法の1つである。正確な診断所見を得るためには十分な聴診テクニックのトレーニングが必要とされるが、残念なことに臨床家が十分な聴診テクニックを得るための熱心かつ継続的な教育プログラムが行われていない。この本はテキストとCDで構成されており、聴診テクニックを習得する方法を手助けしてくれるように企画されている。
 このテキストとCDは、人の内科医のために高く評価されたプログラムを著者らが獣医師のために改作したものである。このプログラムでの心音の大半は心音シュミレイター(擬似音作成器)で作成されているが、それは、聴診者が肺音や聴診器と体毛との摩擦音によるアーチファクトに気を散らすことのないように教えるためである。また実際症例の経験も価値があるため、臨床例からの録音サンプルも補足されている。
 ただ惜しいことは、CDが英語で説明されていることである。英会話の勉強を兼ねて聴診をトレーニングするには最適であるが、一般開業医には少し難しいかもしれない。しかし、それを補うのに十分な内容の多い教科書であり、推薦したい本である。

「獣医畜産新報」2006年10月号掲載


C.Wayne McIlwraith, Alan J.Nixon Ian M.Wright & Dr.K.Josef Boening
『Diagnostic and Surgical Arthroscopy in the Horse 3rd ed.』

2005年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 臨床テクニックとして馬の関節鏡は20年前に本著者のMcIlwraithによってはじめて用いられた。この本は馬の関節鏡による診断と手術アトラスの最新版(第3版)で、第2版が1990年に発行されているので、本書はこの領域の過去15年間の進歩を網羅している。
 ページをめくると惜しみなくカラー写真と図が配置されているのに驚く。それは内視鏡というとてもビジュアルな世界を説明するということから考えれば当然ではあるが、何をどこからどのように見(診)、そしてその当該構造と病的変化を即座に理解できるようになっていることにまた驚く。図や写真は直感的理解を可能にする共通語であるが、さらに著者は図や写真に依拠したテクニックだけではなく手術結果についても多くを記述している。これは病状や手術に関する畜主との話し合いに大いに役立つことは容易に想像できる。そういえば馬の獣医さんほど、畜主によく説明し、よく話すものはいないなあ、と米国で馬の診療風景を眺めながら考えたことを思い出した。
 新しく加わった章には、肘、股、趾節間、顎の各関節の関節鏡診断と手術、腱や滑液嚢の関節鏡、関節・腱・滑液嚢の感染時の関節鏡治療などがあり、その発展・技術的進歩には目を見張る。本書は馬の外科医やレジデントにはこころをかたむけて読むことができる絵本といってよいかもしれない。そして宝物であるし、座右の書である。

「獣医畜産新報」2006年9月号掲載


Joseph Bertone
『Equine Geriatric Medicine and Surgery』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 Geriatricsとは老人病学のことである。20歳代になった馬でも活動的で、乗馬できる状態でいられることに馬のGeriatricsの興味は向いている。馬も人と同様に「ヨルトシナミ」の体と心になるのである。しかし老齢馬の定義からして難しい。それは馬の使用目的によって異なるからである。繁殖馬では16歳は明らかに老齢であるが、ポロ競技に使うのなら最盛期であるし、競走馬をリタイヤした馬は狩猟のための馬としては若い馬だからである。これを機能的年齢というそうであるが、そのほかにも人口統計上の年齢や生理学的年齢というのが実年齢とともに考慮されねばならないということである。
 馬の老齢と関連して、跛行、体重減少などが一般的な問題としてあるが、これらは治療できるし、予防もできる対象である。この本では老齢馬の健康を獣医学的にマネジメントする医療が、心臓病学、内分泌学、歯学、消化器病学、栄養学、泌尿器病学、腫瘍学、眼科学、呼吸器病学、神経病学など多くの観点(章)から記述されている。
 かつて司馬遼太郎は「馬をおもうとき、かなしみを感じないひとがいるだろうか。」と書いた。老齢馬に関するヒューマンアニマルボンドやそのケアにおける感情的課題についても獣医療の記述とともに各章に散りばめられている。馬というのは人にとって本当に特別な動物のようである。老齢馬のケアについて獣医師や畜主の関心が高まっていることも事実だそうである(だからこのような本が出版されるのだが)。この本が馬を思う静かな時間、きれいな時間をくれることも真実である。

「獣医畜産新報」2006年8月号掲載


Andrew J.Higgins & Jack R.Snyder
『The Equine Manual 2nd ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本獣医生命科学大学名誉教授 本好茂一

 馬の獣医療の最近の知識は、内外を含め専門学会なり専門誌・専門書に頼ることになる。馬医療の進歩している情報は、小動物医療とは較差が広がっている。本来獣医療の発足の歴史は、馬中心で始められたにもかかわらず、馬産の生産低下に伴い、むしろ高度医療の必要性は高いが、それに報いることのできないもどかしさを痛感している。
 ここで紹介する一書“馬のマニュアル”はこの狭間を埋めるものである。優れた英、米その他の執筆陣により簡潔にまとめられている。内容は新鮮で充実感があり、しかも圧巻である。
 まず感染症から始まり、馬ヘルペス、次いで馬インフルエンザと続き、締めくくりは血液原虫、組織原虫病となっている。米国で猖獗を極めているウエストナイル感染症は、神経系の17章に容れられている。
 馬の獣医療は、生産、育成、その上で主として競走場裏での活躍であり、単に走るだけではなく、能力を超えた大観衆の熱烈な期待がわが身の化身となり、心身ともに人馬の調和が生まれるために、馬医療の限界をはるかに超えた要求がある。有名馬の引退が、プロスポーツ界にも及ぶくらいの批判の対象となる。その1つの屈腱炎などは遺伝資源として能力が残されるだけでなく、再び現役で活躍して欲しいものである。15章では診断、治療について述べられている。
 馬は草原のランナーとして、肉食動物から逃れるための抜群の視力と脚力を備え、草食の雄として家畜化され、能力の向上を重ねてきたが、消化器より心肺機能に重点が移り、消化器に負担の少ない穀物重視となり、食道、胃腸疾患も複雑化してきた。例えば、食道狭窄の原因として、食道を形成する外膜と筋層とを含めた食道壁の病変、粘膜を含む食道輪または食道ウエブ(不規則な萎縮、水かき様形成物)、輪状食道壁の管状の狭窄、環状損傷の線維化の結果としている。
 また、競走馬で好発する胃潰瘍の項では、欧米諸国で汎用されているプロトンポンプまたはH2受容体アンタゴニストとしてのオメプラゾール、シメチジン、ラニチジンなども日本でもようやく基礎試験、臨床試験も終わり、目下申請中のようであり、競馬関係者の待望久しい薬剤の詳細が述べられている。
 研究者、教育者、臨床家、実務家、そして学生、院生にとって、総合的な最新の知識や技術の取得の上でも待望の書である。訳書への期待は現状では望むべきもない。原著を楽しみながら幅広い読者への期待、そしてその影響力は少なくないと信じている。

「獣医畜産新報」2006年7月号掲載


Margaret V. Root Kustritz
『The Dog Breeder's Guide to Successful Breeding and Health Management』

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日本大学生物資源科学部教授 津曲茂久

 本書はアメリカの犬のブリーダーを対象として書かれたものである。著者のRoot Kustritz女史は犬の繁殖学の著名な学者であり、2001年に獣医師向けに出版された、現在この分野で最も定評を得ている“犬猫の獣医繁殖学”の著者の1人でもある。従来の犬のブリーダー向けの本はややもすると一部の分野に偏っていたり、素人向けの平易過ぎる内容であったりと1冊の内容としては不十分な本が多かった。その点本書は犬のブリーダーは勿論のこと、毎日の診療で犬の繁殖に従事することの少ない獣医師にも大変参考になる実践的かつ有益な情報が網羅されている。これらの内容の多くは“犬猫の獣医繁殖学”を簡略に書き直した観があるが、前著書と異なり全編に亘りカラー写真が豊富に使われており、読み飽かせないよう工夫されている。さらに、内容の理解度を確認するために小項目ごとに、ブリーダーから良く受ける質問コーナーや理解度診断コーナーが設けてある。
 内容は大きく分けて4章から構成されている。すなわち、1章:栄養と基礎科学、2章:雌犬の臨床管理、3章:雄犬の臨床管理、4章:犬の繁殖に関する一般的管理である。1章と4章は犬のブリーダーを特に意識した内容であり、本の本来の趣旨に最も合致した部分である。2章と3章は雌雄犬の臨床管理とあるように、犬のブリーダーが実際に行う内容というよりは、臨床獣医師の診療内容を理解させ、獣医師に診療を依頼する時に必要な犬の徴候変化などを教示した内容になっている。したがって、これらの部分は臨床獣医師に大変参考になる内容であることは疑いない。若い獣医師からは、大学卒業以来犬の交配や分娩立ち会いの経験がほとんどないために、飼い主にどのような徴候が現れたら来院指示すればよいのか、確信が持てないとの意見を聞くことがある。この本はそのような獣医師に是非読んでもらいたい書である。
 最近、我が国においても、犬の凍結精液人工授精で生まれた子犬を登録認定しようとする機運が高まりつつある。しかしながら、新しい理論に裏打ちされたホルモン測定による交配適期診断や子宮内に精液を送り込む人工授精技術の両方が伴わないと、犬の凍結精液による受胎はほとんど期待できない。そのような意味で犬の繁殖に長年携わってこられた獣医師にも推薦したい本である。

「獣医畜産新報」2006年7月号掲載


Jrg A.Auer & John A. Stick
『Equine Surgery 3rd ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 本書は馬の外科と手術に関してすべてを網羅した最新の第3版で、65名以上のエキスパートによって執筆されている。最初の3章はいわゆる外科学総論ともいえる内容で、手術生物学、手術法、麻酔に関する最新の進歩(ショック治療、敗血症、創傷療法、外科患者の代謝と栄養管理、手術感染、抗菌療法、滅菌消毒、疼痛管理法など)が記載されており、そのページ数も110ページと第2版の倍以上になっている。これらは第4章以降の各外科的疾病の記述にも増して、手術全体に関する取り組みやその考え方を読み取ることができ、外科療法や手術について深く考えさせる章となっている。退屈な総論ではなく、エキサイティングな最新情報であり、外科に関する新しい心構えやアプローチが得られる。
 第4章からは馬の各外科疾病の成り立ち、病態、症状、診断、治療、予後などが臓器系別の章立てで詳細に記述されている。疾病の理論的理解にきわめて有用であり、その記述は手術適応やその方法について明快である。またこれらの記述は畜主に当該馬の罹患疾病や手術について説明するためにもわかりやすく整理されているといえる。本書は手術アトラスではないので詳細な手術手順の図示はないが、要領よく図と写真が数多く配置されており、経験のある獣医外科医にとって手術法の理解に困難なことはない。しかし、初心者や学生は手術アトラス書や解剖図譜などの他書と併用する必要があるかもしれない。
 手術というものが成書の図や写真のとおりできるようになるイメージがいかに重要であるかを示し、外科医として自分を確かなものにしていく力、自分に書き込む行為が備わった書である。本書によってエキスパートと同じ知識レベルが得られるはずである。

「獣医畜産新報」2006年7月号掲載


Richard B.Ford & Elisa M.Mazzaferro
『Kirk and Bistner's Handbook of Veterinary Procedures and Emergency Treatment 8th ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 1969年にKirk先生とBistner先生が当時の急速に発展する小動物診療の状況を踏まえて、臨床獣医師が要求される諸問題に対処しなくてはならないことを念頭におき、その指針として“診療技法と救急対処法”を刊行した。以来、多くの臨床獣医師に活用され、また改版を重ね、初版から37年目の今年、第8版がR.B. FordとE.M. Mazzaferronoの両先生によって上梓されたのが本書である。診療の鉄則であある迅速な対応を主眼とする構成は初版以来貫かれているが、そこには小動物臨床の最新知識と最高水準の技法が包含されている。
 本書の構成は6章であるが、表紙を開くと先ず緊急時における主な治療対象がアルファベット順に記載され参照する頁が示されている。また裏表紙には臨床検査の参考値が表示されている。第1章は救急対応の基本的事項が述べられており、本書の約40%の300頁を占めている。第2章は問診、一般検査、カルテの記載、各器官の精査についての記述である。第3章は主要な臨床徴候の解説で、定義、関連徴候、鑑別診断(主に箇条書きで表示ないし流れ図)および診断計画である。第4章は診断治療の手法についての説明である。日常臨床の現場で必須の手技の解説で習熟の助けになるものと思われる。第5章は所謂臨床病理学の範疇のもので、臨床検査の進め方、検査の手法などが詳述されている。第6章は各種動物(犬、猫、齧歯類、ウサギ)に関する基礎的情報や臨床検査値が表示されており、100頁にも及んでいる。勿論常用薬剤の適応や用量の表(約60頁)も含まれている。
 以上のような内容の本書であることから、臨床獣医師は勿論のこと、獣医学関係者をはじめ獣医師を志す学生にもお薦めしたい一書である。

「獣医畜産新報」2006年6月号掲載


P.M.Taylor & K.W.Clarke
『Handbook of Equine Anaesthesia』

1999年・Saunders発行、2005年リプリント 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 臨床現場(病院とフィールド)での馬の鎮静法と麻酔法のガイドラインを記したコンパクトな最新のハンドブック(190ページ)である。最新であることの意味は、麻酔薬や麻酔薬に対する馬の反応に関する理解の著しい進歩、新しい麻酔薬、新しい技術、古い薬の新しい使用法などによってより安全でコントローラブルな馬の麻酔が可能になったことに起因する。しかし、この小さな本は最新であるばかりでなく、基本的な馬の麻酔手技を網羅した臨床マニュアルであり、「元来、安全な麻酔薬などはなく、安全な麻酔者だけがいる」ことを前提に、麻酔を安全に実行することをコンセプトとしている。したがって、鎮静法・無痛法・麻酔前処置法、静脈内麻酔法、吸入麻酔法とその薬物使用といった教科書型知識の羅列ではなく、麻酔モニター法と麻酔に付随して起こる問題についてもそれぞれ章を設けて写真と図とともに要領よく説明されている。さらに子馬、妊娠馬、帝王切開、整形外科、急性損傷、疝痛、眼科手術などの特別の場合の麻酔法についてその病態生理から麻酔覚醒までの麻酔手順がまとめられている。臨床現場のハンドブックとしての使用はもとより馬の鎮静・麻酔法全般を理解するためにも一読の価値がある。索引の項目は非常に使いやすく適切で、また本に付いている赤と白の2本の紐状のシオリはかわいらしく、便利である。馬の麻酔に関わる臨床家あるいは学生にとってポケットや卓上に常にあるべき本の1冊である。

「獣医畜産新報」2006年6月号掲載


Keith Barnett
『Diagnostic Atlas of Veterinary Ophthalmology 2nd ed.』

2006年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院 院長 太田充治

 感覚器の診療において、診断に必要な検査結果が客観的に評価できるような数値や画像として表されることは少ない。特に眼科診療においてはその傾向が強く、検査すべき項目が非常に多いにもかかわらず、それらの結果を数値や画像で表すことができなかったり、数値化や画像化するためには非常に高額な機器が必要になることが多い。また診断の決め手となるものが「その特徴的な外観」とされることも少なくない。
 そういった状況を踏まえると、動物の眼科診療においてアトラス本というものは、診断の手助けとなる検査機器のひとつと言ってしまっても過言ではないかもしれない。
 本書は多くの獣医眼科学成書と同様に各章が眼球の部位ごとに構成され、それぞれの章ではその眼球の部位において日常遭遇しやすい疾患あるいは症候について、診断のポイントとなるような臨床症状や外観的特徴がきわめて簡潔な文章で説明してある。発生率の少ない疾患についてはあえて割愛されているが、そのことがさらに一般臨床家には受け入れやすい体裁になっていると感じる。また各章の冒頭には鑑別疾患リストや章によっては鑑別診断に必要な臨床的特長が表になって掲載されているのもありがたい。
 もちろんアトラス本であるので、それぞれの疾患にはその簡潔な説明文と共に鮮明な症例の写真が沢山掲載されており、特に一般臨床家が苦手とする眼底の写真が豊富であることが特長と言えよう。写真が豊富で見やすい大きさであるにもかかわらず、本自体のサイズはB5版程度の大きさとコンパクトになっており、持ち運びに便利であることも非常にありがたいことである。
 本書は上記のように必要最低限の説明文と多くの鮮明な症例写真という真に臨床獣医師にはありがたい構成となっており、眼科学に興味のある臨床獣医師のみならず、これから本格的に眼科学を学ぼうとお考えの若い臨床獣医師あるいは獣医学科の学生諸兄にもお薦めできる、まさしく読者を選ばない1冊であると考える。

「獣医畜産新報」2006年6月号掲載


Douglas R. Mader
『Reptile Medicine and Surgery 2nd ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門助教授 深瀬 徹

 ここ数年、爬虫類の獣医学に関する大部の書あるいは良書の出版が続いている。エキゾチックアニマル全般を扱っているものを含めれば、たとえば私の手元にあるだけでも以下の書籍がある。
・BSAVA Manual of Exotic Pets,4th ed,edited by Meredith A and Redrobe S,British Small Animal Veterinary Association,2002
・BSAVA Manual of Reptiles,2nd ed,edited by Girling S J and Raiti P,British Small Animal Veterinary Association,2004
・Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles,edited by McArthur S,Wilkinson R and Meyer J,Blackwell Publishing,2004(獣医畜産新報、58、344(2005年4月号)に書評掲載)
・Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species:Structure and function of mammals,birds,reptiles and amphibians,edited by O'Malley B,Elsevier Saunders,2005(獣医畜産新報、58、961(2005年11月号)に書評掲載)
 そして、ここにご紹介する『Reptile Medicine and Surgery』の第2版である。
*  『Reptile Medicine and Surgery』の初版は1996年の発行である。初版でも500ページを超える大きな書物であったが、今回の第2版はこれをはるかに超え、1242ページに及んでいる。これはもちろん、単にページ数が増えたのではなく、内容も大きく改訂され、初版以降の10年間に得られた知見が盛り込まれた結果である。爬虫類の生物学や飼育法、解剖学、生理学、行動学から臨床検査、各種疾病への対応まで、臨床家にとって必要な事項が網羅されており、爬虫類の臨床に関する書物として世界でもっとも詳しいものになっている。
*  ところで、本書の特徴は、詳細な記載に加えて、爬虫類について総括的な記述が行われていることにあると私は思う。
 爬虫類は脊椎動物を構成する1つの綱(class)であり、現生の爬虫綱はカメ目と有鱗目(トカゲ亜目およびヘビ亜目)、ワニ目、ムカシトカゲ目の4つの目(order)に大別される。このうち、ペットとして飼育されているのは、カメ目と有鱗目である。そのため、爬虫類の獣医学書では、カメ類、トカゲ類、ヘビ類と分けて記載していることがある。これは当然といえば当然で、目が異なれば、哺乳類でいえば犬と牛ほども違うからである。
 しかし、この書物では、カメの疾病、トカゲの疾病、ヘビの疾病というような目または亜目ごとの記載を避け、たとえば循環器疾患、皮膚疾患、感染症など、疾病ごとの記載が中心になっている。このことは、本書は大部の書であるとはいえ、あくまでも爬虫類を1つのグループとしてとらえ、その臨床に関する入門書的な位置づけにあることを示しているのではないだろうか。
 私は、理想的には、獣医学書は動物種ごとに成立すべきであると考えるが、しかし実際には、爬虫類について種ごとの書物を著すほどの知見はいまだ得られていない。こうした状況において、爬虫類とはどういう生物か、その臨床はどのように行われるべきかについて総括的に示した書物の集大成としての本書の意義はきわめて大きい。
*  これだけの書物の邦訳を出版することは、おそらく不可能であろう。訳書がそれほど多く売れるとも思えないし、また、邦訳すれば原書よりもページ数が増えるのが常であり、その価格は著しく高くなることは間違いない。英国やアメリカ合衆国で爬虫類に関する多くの書物が比較的安価で発行されるのは、世界的な販売が見込めるからである。
 本書は、英文で書かれたものであり、読むには確かに苦労する。しかし、爬虫類の診療に興味をお持ちの先生には、是非とも書棚に備えていただきたいと思う。

「獣医畜産新報」2006年6月号掲載


Derek C. Knottenbelt
『Saunders Equine Formulaly』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清

 この本は馬医療のあらゆる場面で参照できるハンドブックである。本の大きさは19 cm×13 cm、厚さ2.5 cm、約500ページで携帯用かつビニール背表紙で耐久性がある。学生、臨床獣医師、馬に関わる技術者や飼養者がその現場で、その仕事の中で刻々に過ぎさる時間を切断するように使える本といったらよいだろうか。第1章には臨床症状および血液、尿、脳脊髄液、腹水、糞便、精液などに関する細胞、電解質、酵素、ホルモン、ビタミンなどの基準値と採取法が別々の表に整理され、第2章では20数種に及ぶ臨床機能検査法と基準値や解釈が要領よく記述されている。第3章では馬医療に用いられる薬物がその作用臓器別に適用法と投与量が短い注釈とともに配置されている。第4章は臨床で使用されるテクニック(体重推定法、保定法、歯による年齢推定法、安楽殺法、包帯法、心電図検査法、気管支―肺胞洗浄法、経鼻投薬法、腹腔穿刺法、各種生検法、神経ブロック、関節穿刺法、子馬の評価法、跛行や疝痛の観察・評価プロトコール、馬の医療用具、フィールドでの麻酔法など)が多くの図表とともに記載されている。大それた医学書ではなく、日常の臨床医療の小さい知識を自分で更新するこんな便利な本があったらと思わせる本であるのも、不幸な乗馬事故で亡くなったリバプール大学4年生の獣医女学生Clare Harrisonに捧げられた本だからであろう。

「獣医畜産新報」2006年5月号掲載


Stephen J.Bichard & Robert G.Sherding eds.
『Saunders Manual of Small Animal Practice 3rd ed.』

2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 古来よく言われるように、書は読むべきものであって読まれないように注意しなくてはならない。同様に、手引書や指針の類についても当てはまるものと思われる。マニュアル通りなら間違いないとか、マニュアルの習得のみに終始することは論外である。マニュアルを忠実に実行することは、それなりに利点の多いことも事実である。すなわち、活用の仕方によるし、利用者の態度に左右される。強く打てば大きく響き、弱く叩けば小さく鳴るのは常識である。
 本書の初版は1994年に上梓され、6年後に第2版、そしてさらに6年を経て、改訂第3版として発刊されたものである。米国オハイオ大学獣医教育病院の臨床を支えるStephen J. Birchard とRobert G. Sherdingの両先生による初版以来の編纂で、一貫した考えのもとに纏められており、獣医臨床の最前線で活躍中の約150名の執筆者による力作である。最近の獣医臨床の進歩を包摂して、現場の診療に適合した内容へと充実を図った佳書と言えよう。疼痛管理やワクチン接種指針の項目なども追加され、また挿入された多数の図表が理解の助けとなっている。
 いずれにしても、多忙な臨床獣医師をはじめ、獣医師を志す学生にとっては、座右において知識の確認や習得に役立つ1冊であることはこれまでの経緯からしても窺い知られるところである。

「獣医畜産新報」2006年5月号掲載


John R. August
『Consultations in Feline Internal Medicine Vol.5』

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赤坂動物病院医療部長 石田卓夫

 この本は、猫の内科学の様々なトピックスについて多数の専門家が集まって執筆したシリーズで、最近は出版のサイクルも非常に早くなっており、Volume 4を読み終わる間もなく、もうVolume 5が刊行された。
 これまでは、Volume 1から4の共通の目次が作られており、この項目についてはどのVolumeを参照、あるいはこの項目については最新のこの号を参照、というような構成であったが、今回は、すべて新しく書き下ろして、猫の内科学全般を網羅しているところがこれまでと異なるところである。したがって、Volume 4までを持っていなくても、新しい猫の内科書を読むつもりで、本書から勉強を始めることも容易である。編集に当たっては、米国、英国、オーストラリアから10人の有名な猫の専門家が選ばれ、各章を担当している。著者としては102人の各臓器系の専門家が執筆を担当しているが、大学助教授クラスの若い人が増えているのも、最近の傾向である。
 さらにこれまで以上に図版が豊富になり、とくにカラー図版が多用されるようになったことは喜ばしい。図表もさらに読みやすくなり、図表だけ追って内容を把握することも容易になった。構成は臓器別で、この本1冊で猫の内科疾患すべてに対する参考書となる。
 内容的に新しいこととしては、クオリティーオブライフに関する記述、すなわち痛み、術後管理、リハビリテーションなどが書かれている。また、シェルターメディシン(感染症が多発する多頭飼育環境における群管理の獣医学)という、米国で始まったばかりの専門領域に関する記述もみられる。
 その他興味をそそられるトピックスが豊富で、すぐにも読んでみたいものが満載である。例をあげると、カリシウイルスによる多様な疾患、ウイルスによる皮膚病、バルトネラ症(猫ひっかき病)の最新知見、破歯細胞性吸収病巣、慢性消化器病とコバラミン、食欲不振または重度の疾患を持つ猫への栄養供給、糖尿病モニターの様々な方法、猫のIgEとアトピーに関する最新情報、猫の薬物療法における注意、不整脈惹起性右室心筋症、慢性上部気道疾患の診断と治療、慢性腎不全の進行に対する治療、特発性膀胱炎の病理発生、神経学的排尿障害、輸血の安全性確保、腫瘍学的エマージェンシー、家猫におけるストレス管理、などがある。
 このように、本書は猫の内科的疾患をすべて網羅しながら、最新の内容を加えて編集された教科書で、初心者から経験者まで広く満足できる内容となっている。翻訳本が刊行されるまでには、おそらく次のVolumeが出版されて内容も書き改められるであろう。すぐに原書で読んでしまった方がよい。

「獣医畜産新報」2006年5月号掲載


Victoria Aspinall
『Essentials of Veterinary Anatomy and Physiology』

2005年・Butterworth Heinemann 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
麻布大学獣医学部獣医解剖学第一研究室教授 浅利昌男

 ・犬と猫に関するコンパクトなポケット版の解剖生理学書
 ・構成は解剖学・生理学の大きな本と同様で、簡潔にまとめられており、読みやすさ、整理のしやすさにコンセプトがおかれている
 ・比較解剖学として魚類・爬虫類・鳥類・小型哺乳類までもが含まれることで、多様な動物についても配慮がなされている
 ・章末に多肢選択問題があり、その章で学んだことについての理解度をチェックできる
 ・獣医師の卵たち、獣医看護師の卵たち、動物学を学ぶ学生たちにとくに有用な本となる
 本書は犬と猫の解剖生理学の入門本としてまとめられた良書で、手軽にパラパラとページをめくり読むことができる使い勝手が良い本である。ずいぶん小さな本の割には大きな成書と同じスタイルで、しかしもっと簡潔に、はじめに動物の分類、解剖学用語、体をつくる細胞・組織のこと、また体を構成する基本的な四組織についてその要点(ポイント)に触れており、それに続いて系統解剖学的に体のつくり、筋骨格系、神経系、内分泌系、循環器系と体のすべてを各々の章でしっかりとそのポイントについて記載をしている。またこの本の大部分を構成する犬と猫の章に続いて、終章では鳥類、爬虫類、魚類のほかに、ウサギ、ネズミ、フェレットなどの小型哺乳動物の比較解剖学的な要点の解説もあり、最近の獣医療の現場に持ち込まれる犬・猫以外の多くの動物について基本的な情報を得るのに都合がよくできている。
 さて、内容はどうか。例えば神経系の章を読んでみると、神経系は多くの読者が複雑でわかりにくい器官であると思っていることを著者はあらかじめ理解しているかの如くに、神経系を家の冷暖房システムに例えての解説がまず始まる。読者はそこでおおまかな体の中の神経系の姿を自分の家の仕組みとして理解したあと、実際の内容に入ることとなり、気がつけば中枢神経系と末梢神経系の仕組みと働きを混乱なく理解することになる。また解説といっても、本の全体を通して、長い説明の文章はなく、頭の中の整理も容易である。また、この本のもう1つの工夫は各章の中にMemory Joggerという小欄があり、各器官の解説の中で、とくに覚えておいたほうが良い事項について、この欄を使って少し印象的に、そして詳しく解説している点が挙げられる。通読して図が少くないとの印象は残るが、それをカバーするわかりやすいまとめ方の工夫が本書にある。

「獣医畜産新報」2005年10月号掲載


Craig E. Greene
『Infectious Diseases of the Dog and Cat, 3rd ed.』

2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
共立製薬株式会社臨床微生物研究所 執行役員所長 望月雅美

 職場の中でかねがね感心していた物に、事務用品や研究試薬のカタログがある。何万から何十万あるいはそれ以上の物品の情報を微細に、まさしく利用者の利便性を最優先に作られている。最近ではインターネットの楽天市場には1200万種の商品があるという。実は我々の関連する書籍も同様で、何か知りたいことができて、これといった書籍がもし座右にあればこんなに助かることはない。本書は犬と猫の感染症に関する、20年来の小生の知恵袋であった。
 本書は第3版であるが、しかしこのGreeneさん編集の本書を最初から知っている読者にとっては実は第4版に該当する。初版は『Clinical Microbiology and Infectious Diseases of the Dog and Cat』で、1984年に刊行された。当時、Greeneさんはジョージア大学獣医学校小動物医学教室のAssociate Professorであった。その後、1990年になると本のタイトルが現行の『Infectious Diseases of the Dog and Cat』になり、彼もProfessorとなっている。そしてこれがどうやら初版ということらしく、1998年に第2版が刊行され、そして2005年7月なって第3版が出てきた。当初から967頁、971頁、934頁と「分厚い」書籍であったが、第3版はカラー図版1397頁+CD-ROM(引用文献集とそのサーチ機能)となって片手に持って扱うことはできない。そして使い勝手を高めるためにウイルス・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマ病、細菌病、真菌病、原虫病、症状別解説、生物製剤の解説等々、色別にしてあり、まさしく遠目には研究室常備の試薬品カタログと見間違える。
 とかくこの類の書籍は「微生物屋」の病原体中心の解説が多いが、そのような本は概して臨床現場の先生には知りたいことが少なく評判がよくない。本書はその点を著者の選定からうまくカバーしており、総合的な感染症の書籍として他に類書を見ない。書内における掲載の順番は版ごとに少しずつ異なってきたが、大筋は同じで、病原体ごとの感染症の最初の数章は診断と治療法が解説されている。次いで症候別・器官別の感染症(Clinical Problems)の解説が続く。そして予防と治療のための生物製剤や薬剤の実際的な使い方が付録として付いている。
 本書に限らず、最近は新刊をデジタルデータで、あるいは旧来のように印刷した書籍として流通させるか、出版形態の過渡期にあると言える。本書もその一部、引用文献をCD-ROMに入れてしまった。特に情報量の多い厚い書籍はこのような「ハイブリッド」タイプが増えている。かつて本書の翻訳の機運が高まったことがあるが、価格の面で頓挫したと記憶している。第3版はボリュームの面でもとても翻訳できそうもなく、原書で利用するしかない。

「獣医畜産新報」2005年11月号掲載


Bairbre O'Malley
『Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species Structure and function of mammals, birds, reptiles and amphibians』

2005年・Elsevier Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門助教授 深瀬 徹

 獣医師法(昭和24年法律第186号、最終改正:平成16年法律第150号)によれば、獣医師になるには、“獣医師国家試験に合格し、(中略)農林水産大臣の免許を受けなければならない”(同法第3条)。そして、獣医師国家試験を受けるには、外国の獣医学校を卒業したような例外的な場合を除き、“学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学(短期大学を除く。)において獣医学の正規の課程を修めて卒業”(同法第12条)する必要がある。
 すなわち、獣医師はすべて、大学において獣医学の教育を受けているわけである。その教育の詳細は大学によって多少の相違はあろうが、まず解剖学や生理学のような基礎的学問に始まり、次いで薬理学や病理学、そしてさらに内科学や外科学というような臨床系の学問に進んでいくのが常である。
 つまり、獣医学の対象となるような各種の動物について、まずは体の構造と機能を理解し、その後にそれらに発生する疾患を知り、そうしたことをすべて理解したうえで治療法を学ぶというのがいわばセオリーではないだろうか。
 ところが、大学教育の対象となっているのは、主に馬や牛、豚、そして犬と猫である。エキゾチックアニマルといわれる動物については、実際の獣医臨床の場においては大きな比重を占めつつあるにもかかわらず、大学で十分な教育が行われているとはいいがたい。
 それでは、臨床に従事する獣医師の先生方は、どのようにしてエキゾチックアニマルに関する知識を得ているかというと、様々な方法での独学が中心になっているのだろうと思う。近年は、エキゾチックアニマルに関する多くの成書が出版され、臨床については比較的容易に概要を知ることができるようになっている。
 しかし、こうした成書のほとんどは、臨床家向けである。そのため、毎日の診療にすぐに役立つということを目指しているのであろう。各種の疾病について、その診断法や治療法が記載の大半を占めており、それぞれの種の生物学的特徴や解剖学、生理学に関する記載は、多少は述べられているにしても、ほんの申し訳程度であることが多い。臨床に関係する事項を厳選して記載したといえば、そのとおりであるかもしれないが、これではやはり基礎を欠いた臨床であり、砂上の楼閣になってしまわないだろうか。
 ここに紹介する『Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species』は、“Clinical”とタイトルにあるように、完全な基礎としての解剖学と生理学の書物ではないけれども、各種のエキゾチックアニマルの形態と生理機能を詳細に記載したものである。従来の書物に比べれば、解剖学と生理学に関してはきわめて充実した内容になっている。日常的な臨床検査や手術に際しては、本書の内容で十分に対応できると思う。また、“CLINICAL NOTE”というコラムを随所に設けたりして、読者としての臨床家に対するサービスも忘れてはいない。
 本書が取り上げた動物は、両生類と爬虫類、鳥類、哺乳類である。とくに爬虫類については、カメ類とトカゲ類、ヘビ類に分けて記載されている。また、哺乳類では、ウサギとモルモット、ラット、ハムスター類、フェレットについて解説されている。哺乳類に関しては、エキゾチックアニマルの全般にわたって動物種が選択されているわけではなく、ダマヤブワラビーなどの有袋目やハリネズミ類などの食虫目の動物についての記載も欲しいところではあるが、診療の機会が多いものはおおよそ網羅しているといえるだろう。
 エキゾチックアニマルの臨床について基礎からしっかりと考えたいという獣医師の先生には是非お奨めしたい1冊である。

「獣医畜産新報」2005年11月号掲載


Richard W. Nelson & C.Guillermo Couto
『Manual of Small Animal Internal Medicine 2nd ed.』

2005年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 今般『Manual of Small Animal Internal Medicine』 の第2版が梓上された。本書は先に出版された『Small Animal Internal Medicine』 の第3版を親本とした縮小版と言うべきものである。いわゆる要約したポケット版である。われわれ日本人とっては、診療衣のポケットには収まりきれないが、米国の獣医師は診療衣のポケットに携帯して常時参照できる大きさに作成されている。コンピュータやインターネットの時代であるが、やはり、時に応じて一寸知識を確認したりするには活字書が必要にされるのである。
 内容的には、親本に沿ってそれぞれの項目と頁をあげて要点を抜粋して纏めたものである。したがって、詳細については親本を読めば良いことになる。獣医内科学が質量ともに拡大し増大したために、このような要約縮小版が前版に引き続いて発刊されたものと思われる。一方では、このような重要なところのみを抜粋した本があれば十分のようであるが、知識にはやはりその背景や広がりが必要なのである。編者も出版社も親本と縮小本の両方を利用されることを期待していると思われる。
 われわれは、日常本を読んだりして情報を受け入れると、それを消化吸収して理解し、さらに要点を記述しておく。この過程を考えれば、本書はその一部をすでに代行してしまったようなものである。いずれにしても、このような方式が定着しつつあるが、問題は利用者で、それぞれが活用法を工夫して臨床にいかに役立てるかである。本書には要約本としての価値が十分備わっていると思われる。

「獣医畜産新報」2005年6月号掲載


Ann L. Johnson & Dianne Dunning
『Atlas of Orthopedic Surgical Procedures of the Dog and Cat』

2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
ダクタリ動物病院広尾セントラル病院 Angell Memorial International JAHA認定獣医外科専門医 院長 加藤 元
ダクタリ動物病院広尾セントラル病院 Angell Memorial International JAHA認定獣医外科専門医 外科部長 池田人司

 1967年に設立された、米国獣医外科専門医制度のもとに、合格・認定されてきた外科専門医の数は、2004年には、1024名に達している。その中で小動物整形外科は、外科の明確な一分野として素晴らしい発達を遂げてきた。そこに本書のような素晴らしいテキストが生まれるのである。
 本書は、米国獣医外科専門医でイリノイ州立獣医科大学の整形外科の教授であるAnn. L Johnson先生と同じく米国獣医外科専門医で準教授であるDianne Dunning先生との共著である。
 本書の特徴は実際に日常的に遭遇しやすい整形外科疾患・神経外科疾患(椎間板ヘルニアおよび馬尾症候群)の手術法が87疾患にわたりきわめて具体的かつ実用的に記載されており、そのいずれもが実際にイリノイ州立獣医科大学でルーチンに行われているアプローチ方法として簡明に述べられている。
見開きの左頁には適応症、客観的視点、解剖上の注意点、必要な外科器具機材、準備とポジショニング、実際の手技、手術後の注意点、術後の評価、術後管理、予後などについて実に簡潔に記載されている。
 また、右頁には実際の臨床局所外科解剖のイラストがわかりやすく記載されている。そのため、本書をそのまま手術室に持ち込み活用することができる。このことは実際に整形外科で必要な“やるべきことをやり、やってはいけないことをしない”という鉄則を守りながら各疾患ごとに正しいアプローチと正しい手技を実践することができる。
 われわれの実際の整形外科臨床の現場においてもただ単に整形外科的治療を行うだけではなく、近年、ヒューマン・アニマル・ボンドの大切さが認識されるようになるにしたがって、若い動物に行われる整形外科疾患の予防的矯正骨切術や、担癌動物に適応される形成外科的骨切除術など、クライアント社会側からの高度獣医療の要求と期待がますます強くなってきている。
 本書には、今まさにクライアントからの要望と信頼に応えるべき現代獣医学における整形外科的疾患が網羅されており、すべての大学で、研修医、学生の指導トレーニングにあたる先生方、さらに後進の指導にあたる各病院の院長、専門医、第一線の整形外科に対応すべき獣医師、また整形外科専門医を志す若きレジデント、すべてのジェネラリストとして開業している獣医師にとって必携の書であるといえる。

「獣医畜産新報」2005年6月号掲載


James W.Carpenter
『Exiotic Animal Formulary 3rd ed.』

2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
エキゾチック ペット クリニック、日本獣医畜産大学 霍野晋吉

 本書はエキゾチックアニマルの獣医臨床学的な薬用量、および必要とされる情報を集めた処方集である。従来、これらの動物の薬用量や情報は一部の文献に記載され、必要に迫られた時には、多大な時間と労力を使って調べたものである。今や、エキゾチックアニマルの診察も本邦でも常識になりつつあり、犬や猫と同様の知識も必要に迫られてきている。
 構成も魚類、両生類、爬虫類、鳥類、フクロモモンガ、ハリネズミ、げっ歯類、ウサギ、フェレット、ミニブタ、霊長類と多彩な動物種毎に分類されている。薬剤も抗菌剤、抗真菌剤、駆虫薬、麻酔剤、ホルモン剤、栄養剤などに細分され、信頼性が高い文献で報告されている各薬用量が列記されている。さらに、臨床獣医師にとって、切実なる緊急薬、代表的な疾病における投薬処方、獣医学的予防のプログラム、そして、動物の生理学的値や血液正常値までもが、明確にまとめてある。まさに、エキゾチックアニマルを診察する臨床獣医師にとってのバイブルと言える1冊であろう。本書は獣医系学生、検査技師あるいは動物園関係者などにとっても、参考になることは間違いない。
 近年のエキゾチックアニマルの獣医学は発展が早く、数年前の情報が過去の遺産となりつつある。このような状況のなかで、最新の情報を増補改定し、第3版を出版したことは、一臨床家としても感謝している。明日からの診察で、ぜひ傍らに置いておきたい。

「獣医畜産新報」2005年5月号掲載


Stuart McArthur, Roger Wilkinson & Jean Meyer
『Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles』

2004年・Blackwell Publ. 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門 助教授 深瀬 徹

 カメ類は、爬虫類のなかでも、とくにペットとしての人気が高く、多くの種が飼育されている動物である。カメ類にはおよそ250種が知られているが、CITES*1などによって保護されている種を除き、ほとんどすべてがペットとして流通しているといっても過言ではない。
 しかし、カメ類の多くは、飼育が非常に難しい。コンラート・ローレンツ*2は、その著書『Er redete mit dem Vieh, den Vgeln und den Fischen』(彼、けものと鳥ども、魚どもと語りき)のなかで、“「飼いやすい」という性質は、「飼える」とか、「抵抗力がある」とかいう概念とはまったくきりはなして考えるべきものである”といい、“たんに抵抗力が強くて死ににくい動物、もっとはっきりいうならば、死ぬまでに長い時間かかるにすぎない動物を「飼える」というのがふつうである”と述べている。そして、この“典型的な例は、ギリシャリクガメである”とし、このカメは“「飼われだした」その日から死にはじめるのである”とさえいっている*3
 現在では、ローレンツがこの本を著した当時とは多少は事情が異なり、飼育下におけるリクガメ類の繁殖例もみられるようになっているが、しかし、一般的にいえば、カメ類、とくにリクガメ類の飼育がきわめて難しく、ほとんどの個体は捕獲された時点から強制的にゆっくりとした死に向かわせられていることにかわりはないように思われる。
 カメに対する獣医学的な対応は、困難をきわめる。各々の種に関する解剖学的、生理学的な基礎知見に乏しく、疾病についても不明な点が多いのに加え、飼育されているカメは必ずしも(というより、ほとんどが、というべきか)良好な管理状態にないからである。極言すれば、たいていの場合、死に向かうカメをいかに延命するかがカメ類に対する獣医臨床であるともいえるのではないだろうか。
 『Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles』は、こうした現状においてもカメの診療に全力を尽くし、カメの飼育を成功させたいと願うすべての獣医師にとって必読の書である。本書は、カメ類の解剖と生理から飼育法、そして各種疾病の診および治療、その他、現時点におけるカメに関する獣医学ならびに周辺領域の知見を網羅した内容となっている。記載内容の充実は語り尽くせず、写真が多用されていて、英語を母国語としないわれわれにとっても理解しやすい。
 書評というと、なんとなくお世辞を書いてしまいがちだが、本書に限っては、目次がわかりにくいという難を除き、本当によくぞここまでまとめたという大書である。
 カメを真の意味で「飼いやすい」動物とするために、是非、本書を一読していただきたい。

*1 Convention of International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)。ワシントン条約ともいわれる。
*2 Lorenz, Konrad Zacharias (1903-1989)。オーストリアの動物学者。動物行動学を確立し、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞。
*3 引用は日本語訳『ソロモンの指輪 −動物行動学入門−』(改訂版、日高敏隆 訳、早川書房、1987)による。

「獣医畜産新報」2005年4月号掲載


Stephen J.Ettinger & Edward C.Feldman
『Textbook of Veterinary Internal Medicine, 6th ed.』

2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部 教授 長谷川篤彦

 2005年の年頭、5年振りの改訂となった第6版が発刊された。この5年間における獣医学および獣医療の進歩は過去のそれと比べても著しいことから、新版の上梓が待望されていた。現在その分野の第一線で活躍している約300名の執筆者が各自の経験を通して得た成果を編者であるStephen J.Ettinger と Edward C.Feldmanの両先生が現時点における獣医内科学の金字塔を目標として集大成した大著である。編集方針はこれまでの版と大差はないようで、2巻から構成されている。
 内容は、第1章が臨床徴候の解説で、第2章が中毒、第3章が診療手技、第4章が救急処置、第5章が血圧、第6章が治療法、第7章が栄養管理、第8章が感染症、第9章が腫瘍、第10章が神経疾患で、以上が第1巻に収載されている。第2巻は第11章から第19章で、循環器、耳鼻咽喉、呼吸器、消化器、肝膵、内分泌器、生殖器、泌尿器、血液免疫の各疾患である。写真はそれほど多くはないが、図表は豊富で理解を容易にしている。特に鑑別用の流れ図は実際的で参考になるものと思われる。索引は両巻にあって便利であり、前後の表紙扉には異常検査所見のみられる疾患ないし病態が列挙されているので役立つものと考えられる。
 参考文献は割愛されているが、付録のCD-ROMに収められている。このCD-ROMには飼い主への説明ないし指導に際して有益な情報も別途収められている。
 これまでの獣医内科学関係の著書として、循環器、泌尿器、血液、腫瘍、感染症、神経、免疫など、各種専門分野別にそれぞれ細部にわたり網羅した優れたものが出版されている。これらを参照するといささか不満足に感じる点もあるが、紙面の関係など本書の目的からして納得しなければならない。
 いずれにしても、獣医内科学を俯瞰するのに好適な実用的な佳著である。これまでの版同様に、獣医師を志す学生は勿論のこと、臨床に関与するしないにかかわらず多くの人々に活用していただきたい成書である。

「獣医畜産新報」2005年3月号掲載


Alex Gough & Alison Thomas
『Breed Predispositions to Disease in Dogs & Cats』

2004年・Blackwell Publ. 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹

 生物には種(species)が存在する。  そして、近縁の種をまとめて属(genus)というグループを作り、さらに属をまとめて科(family)を作り、科をまとめて目(order)、目をまとめて綱(class)、綱をまとめて門(phylum)というように、生物は何層ものグループに分けられ、階層的な分類体系が構築されている。
 このとき、種は現実に存在するものであるが、属や科はそれをまとめたグループの名称であり、概念上の存在である。と、一般に考えられている。  だが、実際に種というものが“実在”するかというと、様々な考えがある。この点については、かなり難解でもあるし、ここでの主題でもないので、また別の機会に述べることにしたい。ここでは、獣医学上の一般的な理解にしたがって、生物には種があるとしておこう。
 さて、では種とは何かというと、これもまた難しい問題だが、一般的にいえば、相互に交配し、なおかつ、そのほかのそうした集団とは生殖的に隔離されている自然の集団ということができる。つまり、犬は犬という種、猫は猫という種である。
 ところが、種をこのように定義しても、種によっては、さらに分けるべきとされる場合がある。こうしたとき、分類学者によってはそれを亜種(subspecies)とする。亜種の指定の基準はきわめて不明瞭だが、一応は、固有の特徴を共有し、特定の地域に分布する集団のことを亜種という。亜種間においては潜在的に交配が可能である。
 また、家畜や栽培植物では、種のなかに品種(breed variety)が設けられている。品種とは、実用的な形質に関して他の集団と区別できる遺伝的特性を有する集団のことをいう。
 犬や猫にも多くの品種が存在する。とくに犬の場合は、その起源であるオオカミが遺伝的に変異しやすい性質を有していたためと思われるが、実に様々な形質を示す品種が作り出されている。
 こうした品種は、犬という種、あるいは猫という種のなかの小さなグループであり、品種間の交配が可能である。もっとも、極端な大型犬と極端な小型犬では、体格のうえから交配が難しいこともあろうが、基本的には繁殖が可能といえる。
 とはいえ、同一の種であっても、品種が異なると、外貌に限らず、様々な形質が大きく異なっている。また、品種によっては、ある特定の疾病に罹患しやすいことがあったり、また、ある種の薬物にとくに高い感受性を示すことがある。
 本書は、犬と猫の様々な品種について、好発する疾病を列挙し、さらに必要に応じて、薬物に対する感受性に関する記載を行ったものである。第1章が犬、第2章が猫で、各々の内容は箇条書きであるが、それゆえに非常に読みやすくなっている。また、第3章に種々の疾病に関する簡単な説明があり、第1章と第2章を補足している。
 本書の記載は、第1章と第2章の犬、猫の品種別の記載、そして第3章の疾病の解説ともに、アルファベット順である。この点からも本書は「事典」として使用されることを意図していると思われる。診療に際して、常に参照したい書籍の1冊として、是非、多くの先生方にお奨めしたい。
 なお、本書は、品種ごとに好発疾病などを列挙しているが、品種そのものに関する説明を欠いている。これはとくに臨床に特化したということであろうけれども、これを補うために、やや古い本であるが、『犬種と疾病』(文永堂出版、1989)を併読されるのもよいだろう。
 以前は、犬も猫も、同じ食肉目の動物ということで、同様の対応によって診療が行われていた。しかし、いまは違う。犬と猫はまったく異なる別種の動物として扱われている。そしてさらに、犬と猫の品種ごとに臨床上の対応が行われる時代がすぐそこまで来ているのではないだろうか。

「獣医畜産新報」2005年2月号掲載


Katherine E. Quesenberry,James W. Carpenter
『Ferrets, Rabbits, and Rodents Clinical Medicine and Surgery, 2nd ed.』

2004年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹

 エキゾチックアニマルといわれる種々の動物がペットしてふつうに飼育されるようになって久しい。この間、様々な問題が発生し、たとえばヒトと動物の共通感染症の予防という観点から、コウモリ類やプレーリードッグ類などの輸入が禁止されたりもしている。こうした変遷を経て、最近では、非常に変わった種類の動物が飼育されることは比較的少なくなり、哺乳類でいえばフェレットやウサギ、ハムスター類など、ある程度限られた種が飼育の対象となってきたように思われる。
 さて、本書は、エキゾチックアニマルの診療に関する成書としてよく知られた『Ferrets, Rabbits, and Rodents Clinical Medicine and Surgery』の第2版である。初版は1997年の発行で、多くの獣医師に利用され、日本でも翻訳書が出版されている。
 第2版は、基本的には初版の構成を踏襲しつつ、新たにプレーリードッグやフクロモモンガ、ヨツユビハリネズミに関する記載を加えている。また、編者の1名が入れ替わり、多くの新しい著者が迎えられている。著者が変更した部分の記述が変わったのはもちろんのこと、同一著者が執筆した項目であっても、第2版では内容がさらに充実し、多くの図版が加えられた点は特筆すべきである。
 内容は、第1編 フェレット、第2編 ウサギ、第3編 モルモットとチンチラ、プレーリードッグ類(とくにオグロプレーリードッグ)、第4編 小型齧歯類(スナネズミ、ハムスター類、マウス、ラット)、第5編 その他の小型哺乳類(フクロモモンガ、ヨツユビハリネズミ)となっている。なお、プレーリードッグ類は現在は日本への輸入が禁止されているが、以前から飼育されている個体を診療する機会も多く、本書の記載は有用である。加えて、第6編には、麻酔法などの診療手技や歯科などの診療科別の記載があり、さらにヒトと動物の共通感染症について述べられている。そして、最後の第7編は、各種の動物に対する種々の薬物の投与量の一覧である。取り上げられている動物の種類はそれほど多くはないが、代表的な哺乳類のエキゾチックアニマルについては、ほぼ網羅されたものになっているといえるだろう。  ところで、国内の学会あるいは研究会の抄録やプロシーディングをみると、本書の初版が引用されていることが多い。ただし、その引用はほとんどが翻訳書である。翻訳書には翻訳書の良さがあり、これを否定する気はない。私も日常的に多くの翻訳書を利用している。だが、翻訳書というものは、意図したものではないにしても、多かれ少なかれ、翻訳者の意思を含んでいることは否めない。学術書の場合、翻訳書を読んでも、必要に応じて原書も併読すべきである。とくに文献として引用するのであれば、可能な限り原書を用いるべきであろう。
 近年は、洋書といえども、簡単に入手できるものが多い。本書も入手が容易である。是非とも、この第2版をエキゾチックアニマルの臨床を行う多くの先生方の書棚に備えていただきたい。

「獣医畜産新報」2004年8月号掲載


Donald L. Piermattei,Kenneth A. Johnson
『An Atlas of Surgical Approaches to the Bones and Joints of the Dog and Cat 4th ed.』

2004年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
北川動物病院院長 山村穂積

 本書は、犬・猫の骨手術のアプローチのバイエルとして、1996年の初版以来同じスタイルを保ちながらの第4版である。一見して各版とも同じように見られるが、図は以前より大きくなったぶん、見やすくなり、また多用され、実写に近い点など今まで以上に丁寧に説明されていることからさらに理解しやすくなった。
 骨や関節への観血的手術のアプローチに必要な事柄から始まり、無菌手術法、そしてメッツェンバウム剪刀を使う皮下や筋肉の鈍性分離、関節包、筋肉や腱の縫合、テンションバンドによる固定などの基本操作が説明されている。そしてこれらの技術を実践するには、筋肉や骨だけではなく関節など幅広い臨床解剖学が必須になる。その解剖学では、前肢、後肢の筋肉と血管や神経走行の位置が局所的に理解出来る。実際の骨手術における頭部、脊柱、肩甲骨と肩関節、前肢、骨盤と股関節、後肢とそれらの部位のアプローチは分かりやすく手ほどきしてある。近年整形外科での技術的な変化があるが、頸部、腰椎など、また指節など随所に新しい方法としての新技術が増え、また多少切開アプローチが変わったところが記されている。犬、猫の外科学のなかで、骨や関節の手術方法は図で示されることにより判りやすい。本書は内固定を行うにあたり、実写に近い形で骨の露出法のアプローチを図示している。これは目的とする手術の対象や部位への手術操作アプローチで実用性がある。したがって学生や経験の少ない臨床獣医師において有益なものになるとともに、経験を積んだ臨床獣医師でも自分に好ましい方法を模索することができる。

「獣医畜産新報」2004年7月号掲載


Caroline Gosden
『The Really Useful Handbook of Reptile Husbandry』

2004年・Butterworth Heinemann 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹

 10年ほど前からだろうか、多種多様な爬虫類、両生類がペットとしてふつうに飼育されるようになっている。その最大の理由は、飼育設備を整えるのが容易になったことと、様々な種類の餌を簡単に入手できるようになったことだと思う。
 しかし、そうはいっても、爬虫類、両生類の飼育は概して困難である。これらの動物は変温動物であり、外界の温度変化の影響を受けやすい。また、野生の生活環境を飼育下で再現するのは現実には不可能に近い。不適切な飼育に起因する疾病が爬虫類や両生類に多いのも当然である。
 このためかどうかはわからないが、爬虫類、両生類の飼育に関する様々な書物が出版され、ときに異なる種々の見解が述べられている。本書も、そのタイトルを見たとき、こうした飼育書の1つかと思ったのだが、実際に読んでみると、従来のものとはかなり趣を異にしたものであった。
 本書は4つの章から構成される。第1は、爬虫類の診療に際しての問診票のフォーマットで、ヘビ・トカゲ類、陸棲カメ類、水棲カメ類、両生類の別に4種類が用意されている。さらに、このフォーマットの各項目についての解説が付されており、これは診療を行う獣医師の立場でみれば、問診の際の説明事項となる。一方、飼い主の立場でこれをみれば、飼育条件の点検項目ととらえることができるだろう。
 第2の章は、前掲の問診票フォーマットへの模範的と思われる飼育方法の記入例であり、代表的な爬虫類、両生類の種類ごとに作成されている。これにより、簡単ではあるが、おおよその飼育方法を理解することが可能である。
 続いて第3の章は、症例の検討に相当するもので、数種の動物について同じく問診票に記入された事例が提示されている。読者は、まず問診票の記入例を検討し、どこに問題があるかを考え、そのうえで著者の見解を読むことになる。
 そして、第4の章は、飼育の失誤によって異常を発した症例を写真で紹介している。
 以上のように本書は、爬虫類、両生類の症例に接するとき、その飼育上の問題点を見出すための方法として問診票の利用を提案したものである。獣医師の側からは稟告聴取の方法論として、また、飼育者の側からは飼育法の再検討の一方法として、それぞれ有効に活用できると思う。
 ただ、難をいえば、取り上げている動物の種類が少ないのが欠点である。しかし、ここに示された方法にもとづき、それぞれの病院において、様々な種類の動物用に独自の問診票を作成してみるのもおもしろいのではないだろうか。このとき、爬虫類と両生類に限らず、各種の動物への応用が可能であろう。
 問診票フォーマット等の入ったCD-ROM付きで(英語なのでそのままは使えないが・・・)、価格もそれほど高くはない。また、表が中心であるため、洋書とはいえ、読むのにそれほど苦労もしない。爬虫類や両生類に興味のある先生方、さらに、エキゾチックアニマルの診療を行われる先生方に広くお奨めしたい。

「獣医畜産新報」2004年6月号掲載


Willard M.D. and Tvedten H,Eds.
『Small Animal Clinical Diagnosis by Laboratory Methods,4th ed.』

2004年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
赤坂動物病院医療ディレクター、日本獣医病理学専門家協会会員 石田卓夫

 本書は獣医臨床検査に関するハンドブック的なソフトカバーの教科書である。1989年に第1版が出版され、その後1994年、1999年と版を重ね、今回で第4版となる。同様の体裁で、臨床検査を扱った教科書にMeyer & Harvey編の『Veterinary Laboratory Medicine』があり、それについては文永堂出版より日本語訳が『獣医臨床検査』として第2版まで出版されているが、本書は臓器系別の疾病のメカニズムの説明より、各検査項目についての説明に重点が置かれているところが大きな違いである。
 全体で18章からなり、検査概論から始まり、CBCの手技、赤血球系、白血球系、血液凝固系、電解質/血液ガス、泌尿器系、内分泌系、消化器・膵・肝、貯留液、呼吸器系、免疫疾患・血漿蛋白、生殖器系、神経系、感染症、細胞診、中毒、薬物モニターという構成になっている。前版からの変更はそれほど大きなものではなく、章分けも同様であるが、その間の新知見に応じて細かい記述が改訂されている。
 私自身、第1版よりこの教科書は愛用しており、本書の内容は大学での授業およびJBVP(日本臨床獣医学フォーラム)レクチャーシリーズにも常に反映させて来たので、わが国の獣医師の大半にはその内容が伝わっていると思われる。したがって、臨床家が本書を読んでも、特に驚くべき内容が書かれているわけではないことに気づかれるであろう。わが国の伴侶動物分野における検査機器の普及、病院内検査の普及には、実に目を見はるものがあり、世界のトップクラスに追従しようとしている。しかしながら、本書の巻末に資料として載せられている、臨床検査センターのリスト、検査可能な血清学的診断項目、薬物濃度モニターの項目などを見ると、われわれはもっと追いつかねばならないと痛感させられる。そういった意味で、伴侶動物医療でトップを走る国では、ここまで検査が行われているといったベンチマークとして、数年毎に改訂される本書の内容は誠に興味深いものである。

「獣医畜産新報」2004年6月号掲載


Richard W. Nelson & C.Guillermo Couto
『Small Animal Internal Medicine 3rd ed.』

2003年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医内科学教室教授 辻本 元

 本書は、カリフォルニア大学のRichard W. Nelsonとオハイオ州立大学のC. Guillermo Coutoが編集した小動物内科学全体を網羅する教科書であり、実際の臨床に即した内容が体系的に執筆されている点、および豊富なカラー写真・図(約900点)、表(約500点)を掲載している点に大きな特徴がある。
 本書は基本的に臓器別構成となっており、心血管系、呼吸器系、消化器系、肝胆道・膵外分泌、尿路系、内分泌系、生殖器系、神経・筋、関節、血液・免疫系、感染症の順で小動物の内科疾患を体系的に網羅している。それぞれのパートにおいて、臨床徴候、診断のための検査、一般的治療法、個々の疾患、治療に用いられる薬剤と用量、の順に整理してわかりやすく解説されている。
 本書は、第1版(1992年)、第2版(1998年)の後、2003年に発刊された第3版である。この第3版は、レイアウトが効率的になっているため、第2版よりもページ数が約60ページ少なくなっている。本文の記載がパートによって大幅に書き直されている他、図、写真、表の修正が随所にみられ、第2版よりもさらに新しい知見を入れた最新の内容となっている。
 小動物内科学分野について執筆された教科書は多いが、本書はその中でも最も臨床に役立つ書の1つであり、私達は第1版、第2版の後、今回の第3版についても信頼できる国際的標準を示す教科書として大学内で最も頻繁に利用している。本書は、大学における学部教育のための優れた教科書であるばかりではなく、実際の臨床にあたっている獣医師にとって毎日の診療にきわめて有用な信頼性の高い参考書であり、デスクの上ではなく、診察室のすぐそばにおいていただきたいものである。最近では、小動物内科臨床に関するセミナーが数多く開催されているが、それらセミナーを聴講するばかりではなく、このような優れた教科書を日常の勉強に利用することが診療の向上にとって最も重要であるものと考えられる。
 本書の編集にあたった獣医師はすべてAmerican College of Veterinary Internal Medicine (ACVIM) の獣医師専門医(diplomate)である。ACVIMの専門医制度が設立されて約30年が経過し、米国において多くの専門医を輩出した結果、このような素晴らしい臨床獣医学の教科書が出版されるようになったことは明らかである。日本においても、獣医系大学の再編整備とともに獣医師専門医制度の確立を早期に実現することが強く望まれる。

「獣医畜産新報」2004年4月号掲載


Danny W. Scott & William H. Miller,Jr.
『Equine Dermatology』

2003年・W.B.Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 馬の臨床においては、なにも皮膚病に限ったことではないが、まず人と馬との関わり合いについて考えなければならない。
 我が国では古くから農耕馬などの使役用の馬と戦闘用の馬が飼育されていたが明治以降は富国強兵を主眼に馬の繁殖育成が行われた。戦後は社会状況の変化に伴ない現在では競走馬が主で、その他乗馬用などの馬が比較的少数飼育されているにすぎない。このような背景にあって皮膚病に関する問題として第一に仮性皮疽が挙げられている。現在家畜の届出伝染病に指定されているが、これについては時重初熊博士の業績が思い出される(Zbl.Bakt.T. XlX、 Nr、4/5、105-113、1896)。また古くから"かさ"などの呼称で知られていた皮膚病については顆粒性皮膚炎としてハブロネマが原因され、さらにピシウムに起因している例も明らかにされている。皮膚糸状菌症につても軍馬での流行が記載されており近年にも競走馬での発生が確認されている。夏癬については古くから研究され、昆虫アレルギーなどとされてきたが最近でも免疫学的追究が行われている。
 欧米諸国では馬は伴侶動物としての存在が大きく、臨床的にも馬への関心は高く獣医学の教育研究の両面において重視されている。
 米国臨床馬学会の調査(1989年)では皮膚病の症例数は疝痛、ウイルス性気道炎、子宮内膜炎に次いで4番目に位置している。またコーネル大学(米国、ニューヨーク州)における1979年から2000年までの21年間の馬の症例では皮膚病例は4.1%であるが、一方1978年から1994年の16年間での生検材料の依頼検査においては23.4%に及んでいる。このように馬の診療においては犬や猫と同様皮膚病は大きな問題である。特に症例数の多いのは細菌性毛包炎、皮膚糸状菌症、昆虫アレルギー、デルマトフィス症、薬疹、好酸球性肉芽腫、アトピー、血管炎、疥癬、馬サルコイド、蕁麻疹、特発性痒症などである。これら症例の経験を踏えて、まとめたのがここに紹介する『Equine Dermatology』である。著者である。Danny W. ScottとWilliam H. Miller,Jr.は獣医皮膚科学を牽引して活躍中の米国獣医皮膚科専門医で、小動物(犬、猫)の皮膚科においてすでに高名を馳せており、大動物に関してもScott,D.W.は1988年にLarge Animal Dermatologyを著述し発刊している。
 本書の構成は16章で小動物皮膚科学の成書同様に、皮膚の構造と機能、診断法、治療法、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、ウイルスおよび原虫感染、皮膚の免疫系とアレルギー性皮膚炎、免疫介在性皮膚病、内分泌、栄養、その他の被毛疾患、角化異常、色素異常、環境性皮膚病、先天性および遺伝性皮膚病、その他の皮膚病、新生および非新生の腫瘍である。理解しやすい文章とともに適切な図表が多数挿入されており、また豊富な写真が馬の皮膚病を身近な問題に感じさせ効果的である。さらに各章ごとに重要な文献が上記わが国の研究者の業績も含め引用記載されており、それだけでも利用価値のある労作である。
したがって、獣医学的ないし比較皮膚科学的観点からも極めて重要な問題を包含している佳書であり、馬の臨床に携わる獣医師はもとより1人でも多くの方々に活用していただきたいと思う。

「獣医畜産新報」2004年2月号掲載


Murray E.Fowler & R.Eric Miller eds.
『Zoo and Wild Animal Medicine 5th ed.』

2003年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹

 獣医学が対象とする動物の種はきわめて広範にわたり、ヒトを除くすべての動物、とくに脊椎動物がその対象になっている。診療の分野においても、近年は、野生動物や動物園における飼育動物、また、エキゾチックアニマルと称してペットとして飼育されている多種の動物に対する高度な獣医療が社会的にも要求されている感がある。
 ところが、古くから広く一般に飼育され、飼育個体数が多く、社会的な重要性が高い動物、たとえば馬や牛、豚、犬、猫などでは、各々の種について疾病が詳細に研究され、また、投与する薬物の用法および用量についても多くの知見が得られているのに対し、それ以外の動物では、フェレットなどのごく一部の種を除き、臨床に関する知見が著しく少ないのが通例である。飼育個体数が少なく、症例数が少ないため、やむをえないといってしまえばそれまでだが、こうした点において獣医学は社会的要求に十分に応えていないといわざるをえない。
 もちろん、一般的な家畜やペット以外の動物についても、従来から多くの研究が行われ、多数の書物が著されている。しかし、こうした書物では、たとえば「鳥類の診療」あるいは「鳥類に投与する薬物の用法・用量」というようにまとめて記載していることがしばしばある。これは、あえていえば、哺乳類を一括し、馬も牛、豚も、犬や猫もすべて同様に扱い、それらの疾病や投与する薬物の用法・用量をまとめて記述しているのと同様である。
 本来、発生する疾病は、動物種ごとに異なっているのはいうまでもない。また、薬物については、同一種であっても、性別や年齢等によってそれに対する反応が異なるほどであり、少なくとも種レベルで用法および用量を検討すべきであろう。したがって、種々の動物の臨床に関する書物は、理想的には種のレベルで記載すべきであるが、それが非常に困難な現状では、知見の集積に応じて、できる限り下位のタクソン(分類学上の生物群)ごとに記載を行うことが望まれる。
 前置きが長くなったが、本書は『 Zoo and Wild Animal Medicine 』のシリーズの第5巻にあたる。このシリーズは、これまでの4巻も優れた内容であり、野生動物ならびに動物園飼育動物の診療にあたって座右の書とすべきものと思われるが、とくに本巻は、魚類から哺乳類にいたる様々な脊椎動物について、他の書物に比べて下位のタクソンごとに臨床に関する多くの知見が記述されているのが大きな特徴であると思う。
 具体的には、魚類は一括してまとめて記載されているが、両生類は目(order)ごと、爬虫類は目あるいは亜目(suborder)ごとの記載が行われている。また、鳥類には多くの目が設けられているが、これもそれぞれの目について詳述されている。そして、哺乳類は、多くは目ごとの記載となっているが、霊長目では亜目や一部にはさらに細分化した記述があり、食肉目と奇蹄目、偶蹄目では科(family)ごとの記載が行われている。とくに偶蹄目のウシ科では、羊と山羊のグループが独立した項となっている。加えて、最後に、広範な動物種にわたって発生する疾病に関して感染症を中心にした記述があり、多種の動物間に蔓延する感染症について理解しやすいよう配慮がなされている。
 今後の研究の進展にもとづき、将来的にはさらに分類群を細分化して記載が行われることを期待するが、現状において、本書は、野生動物や動物園飼育動物の診療に従事する獣医師、また、それを参考にしていわゆるエキゾチックアニマルの診療を行う獣医師、さらにこれらに興味をもつ研究者にとってきわめて有用な書物であるにちがいない。是非、一度、手にとってみられることをお奨めしたい。

「獣医畜産新報」2003年12号掲載


T. Douglas Slatter ed.
『Textbook of Small Animal Surgery,3rd ed.』

2003年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学大学院農学生命科学研究科教授 佐々木伸雄

 本書はすでに世界的な評価が確立している小動物外科書の第3版である。構成は第2版(1993年)とほぼ同様であるが、各セクションは多少変更されている。また、著者も約6割が新規の著者で占められており、その意味ではかなり大幅な変更と言ってよいであろう。
 Section 1 では、手術に関係する生物学的事項がのべられている。すなわち、ショック、輸液、止血、栄養、創傷治癒、術創感染と抗生物質、臓器移植、生体材料、等である。Section 2 では様々な外科的手技が述べられており、これらいわゆる総論にあたる部分は必ずしも多くない。Section 3 以降は各臓器系毎にまとめられている。
 本書の特徴は従来と同様、各疾患を理解するための解剖、生理、病態等をかなり詳細に記述してある点である。外科学はしばしば手術に目が向けられがちであるが、病態生理を理解し、周術期の管理を的確に行うことが最も重要である。本書はこの部分をしっかりと踏まえて構成されており、それが世界中の学生、教官から信頼される要因であろう。
 各論には最新の情報が加えられている。例えば、心臓血管系ではカテーテルテクニック、ペースメーカー等、神経系では、神経系腫瘍に対する手術の項目等が増えている。また、整形外科では、この分野の発展にあわせ、様々な新しい手術法も紹介され、股関節形成異常(不全)もまとめて取り上げられており、第2版より読みやすい。また最近広まりつつある関節鏡手術も1つの項目として加えられている。臓器別疾患の後のセクションでは腫瘍学、麻酔、歯科が取り上げられているが、麻酔学では最初に手術症例に対する鎮痛療法について詳しく述べられている点も新しい取り組みである。
 本書を読んだ最初の印象は、これだけの改訂を、しかも著者を大幅に変えて行うだけの人材の豊富さである。日本では人数からも各先生の忙しさからも全臓器系をこれだけ詳しく書くことはほとんど不可能と思われる。1つうれしかったことは、共著者ではあるが、かつて我々の研究室で博士を修了し、現在韓国の忠南大学に在籍するHong、H-S君が含まれていることであった。
 一方、第2版を監訳した身としては忸怩たる思いもないではない。監訳に手間取り、それからあまり時を経ない時点でこの第3版が出版された。しかし、その内容を見ると、もちろん前述したように最新の情報は多く含まれてはいるものの、基本的な内容や構成は変わっていない。依然として、第2版も十分に価値あるものと考えている。
 本書はきわめて多くの内容を含んだ総合的な成書であり、また通常臨床で見る疾患はほとんど網羅されている。コーネル大学では、この本は図書館に5、6冊おかれていた。それだけ多くの人が同時に見たい本であることを示している。是非1冊病院におき、時々に読んで知識を深めることをおすすめしたい。さらに、第2版を監訳した私の勝手な考えでは、まず第2版の訳本を読み、その部分の新しい考えはこの第3版から学ぶ、というのも悪くないように思う。

「獣医畜産新報」2003年10号掲載


Keith.C.Barnett、Christine Heinrich、Jane Sansom
『Canine Ophthalmology An Atlas and Text』

2002年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院院長 太田充治

 本書は1998年に出版され、わが国においてもすでに翻訳本(『最新 ネコの臨床眼科学』文永堂出版)が出ている『Feline Ophthalmology An Atlas and Text』の犬版であり、Dr.Barnettはその双方の著者である。
 ほとんどの診療施設において最も多い来院患者である犬についての眼科学書である本書は『Feline Ophthalmology』が発刊された当時より、国内の多くの臨床家からその発刊の有無についての問い合わせがあり、待望の書籍と言えるであろう。
 本書の特徴は『Feline Ophthalmology』と同様に、その鮮明な写真の豊富さと最新の知見である。特に多種にわたる疾患の写真の多さは本書が犬の眼科学教科書としてのみでなく、カラーアトラスとして飼い主へのインフォームドコンセントにも使用できると考える。
 内容の構成については『Feline Ophthalmology』と同様に、犬の眼科診療における検査法から眼球の各部位における疾患、さらには神経眼科学に至るまで約200頁にわたり詳細に解説されている。
 本書と姉妹書である『Feline Ophthalmology』の2冊を比較することによって犬と猫における眼疾患の動物種差もわかりやすくなり、我々の日々の診療で遭遇するほとんどの眼科疾患を網羅できるといっても過言ではないであろう。

「獣医畜産新報」2002年7号掲載


Kirk N.Gelatt
『Essentials of Veterinary Ophthalmology』

2000年・Lippincott W & W、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院院長 太田充治

 本書はその約50%を占める頁を犬の眼疾患について解説されており、眼球の各部位における「Diseases and Surgery」のタイトルで統一された構成となっている。内容は多種にわたる眼疾患の病態について詳細に解説されており、その中でもポイントなる重要な文は太字で強調されて、クイックリファレンスとしての検索も容易になっている。治療については、現在その主流となっている方法に的を絞り込んで解説されている。
 その他の章については、猫、馬の眼科学、そして食用動物やエキゾチックアニマルの眼科学に至るまで、あるいは全身性疾患における眼症状などにおいても一章を費やして解説されており、我々獣医臨床家が日常的には遭遇する機会の少ない疾患や、眼疾患から推察される特に感染性疾患へのアプローチの手助けになってくれる。
 著者Dr.Gelattが本書の冒頭に「To those who teach and those who learn Veterinary Ophthalmology」と記しているように、まさに現時点での獣医眼科学の教科書として取り扱われるべき書籍であり、獣医眼科をこれから学ぼうとする学生諸兄から、すでに専門的に獣医眼科診療を行われている先生方にとってもその利用価値は高く、ぜひ机上に並べていただきたい1冊である。

「獣医畜産新報」2002年6号掲載


Karen Helton Rhodes
『The 5-Minute Veterinary Consult Clinical Companion Small Animal Dermatology』

2002年・Lippincott W & W、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦

 小動物診療に対する社会的要求が高度化し、またそのことに伴って獣医学が進歩、向上していることから臨床の現場は日々変革を余儀なくされている。したがって臨床獣医師にとっては最新情報をいかに摂取し活用していくかが大問題となっている。
 多忙な日常にあって知識を整理し、また確認することは学生時代の試験直前の状態に比せられると思われるが、このような現状を踏まえて簡明を主眼とした「診療5分前」を表題にした書物が上梓されている。それが好評を得て、改版が直ちに出版される運びになったことから、今度は小動物の皮膚病を対象に5分間学習を推奨して本書が発刊された。編者はDr.Karen Helton Rhodesで、講演のため来日した経歴のある獣医皮膚科専門医で、長らくニューヨークのAnimal Medical Centerで活躍しており、豊富な知識と貴重な経験の持ち主である。約60名に及ぶ執筆も多くが皮膚科を専門とする人々で第一線で仕事をしている現在の小動物臨床の牽引者である。
 本書の構成は12section、113chapter、5appendixである。Sectionとしては診断、臨床像による鑑別診断、病変部位による鑑別診断、寄生虫病、アレルギー疾患、感染症、内分泌疾患、免疫疾患、腫瘍、エキゾチック動物の皮膚病、話題の疾患および臨床検査が取り上げられている。それぞれに鮮明な写真が多数あり、また各項には参考文献も記載されている。付録としては飼い主指導、皮膚科常用薬物、内分泌検査、内分泌系の検査およびホルモン検査単位の換算表である。
 本書を座右に置けば、日常の鑑別診断や治療方針の決定に有用であるばかりでなく、飼い主への説明などにおいて参考になるものと思われる。皮膚病に関心のある人のみならず少なくとも小動物臨床獣医師には、本書の価値を自ら検討していただきたいものである。

「獣医畜産新報」2002年5号掲載


Christopher M.Brown & Joseph J.Bertone
『The 5-Minute Veterinary Consult Equine』

2002年・Lippincott Williams & Wilkins、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本獣医畜産大学名誉教授 本好茂一

 今風の馬の獣医療の本が出版された。正に表題の「5分間コンサルタント」の通りに疾患ごとに箇条書きで簡明にまとめられた、実に魅力的な本である。この「5分間コンサルタント」方式は、まず人の医学書として纏められ、次いで犬・猫で刊行され、そして今度はこの馬での刊行となった。この「5分間コンサルタント」方式は、病気の馬に接した時、慎重に深く推敲することが求められた従来型の獣医療ではなく、獣医療のマニュアル化を思わせるもので、それ故に、容易に疾病を理解させ、新鮮さを感じる。
 2名の監修者のもと、16名の編集者と167名の執筆陣で、557疾病が盛り込まれている。1999年にアウトブレイクしたWest Nile Virusも、記載されている。記載はアルファベット順で、「Abdominal Distention in the Adult」に始まり、「White Muscle Disease」で締めくくられている。頁順の目次に加えて、「Behavior」「Cardiac」「Dermatology」…「Urinary」と疾患のカテゴリーごとに分類された目次が付されている。さらに索引は詳細で充実しており、検索はとても容易である。
 多少の違いはあるが、それぞれの疾患は、「Basics」「Diagnosis」「Treatment」「Medication」「Follow up」「Miscellaneous」で構成されている。簡明とはいえ、薬用量まで記載されており、実用書としてとても使いやすい。ただし外科疾患と運動器疾患には触れられていない。
 簡潔な記載とはいえ、もちろん熟練の獣医師にとっても有用な書であり、馬については不足がちな大学の講義を補ってくれるよき指導書でもある。
 惜しむらくは図や写真が全くないことで、それについては他の書を参考にせざるを得ない。
 それでは例として「代謝性アシドーシス」の内容の一部を紹介する。
□基 本:
定 義
・酸−塩基平衡の破壊。H+濃度の増大すなわち酸血症で、pHの低下と血漿HCO3-の低下
・正常馬の動脈血漿pHは7.35〜7.45の幅
・過換気でCO2が低下し、pHは上昇するが、呼吸によって代償すると呼吸不全を招く病態生理
・正常な代謝過程で毎日大量の酸が生成されている
・H+濃度は細胞内と細胞外とで緩衝されているが、呼吸性の緩衝作用(例:換気の変化で血中レベルの調節)と腎臓を介してH+を排泄することでHCO3-が調節されている(略)
各器官への影響
呼吸系
・末梢と中枢性の化学的リセプターは血中またはCSF(脳脊髄液)のpHの低下とによって感知する。過換気を刺激してCO2の除去を増進、pHの上昇を導く
・呼吸筋力の衰えは筋肉の疲労と代謝状態の悪化を招き、特に新生子では著明である
心血管系
・心収縮力の低下
・不整脈の素因となる
・動脈性の血管拡張、静脈の狭窄
・カテコールアミン効果によって血管から枝化する
神経性内泌
・カテコールアミンの放出
・CNS(中枢神経系)の抑制
・脳血管の血管拡張、結果として脳血流とCSF圧の増大
腎 臓
・腎臓は血中H+の上昇で動脈血pHは下降、そして全身性のpHの上昇が起こり、重炭酸レベルの上昇をはかる(略)
代 謝
・嫌気的糖の分解を抑える
・インスリン抵抗性
・酸素−ヘモグロビン結合の親和性の減少
・蛋白質の異化の増加(略)
症 状
・病歴と身体検査所見は第一義的な原因によって差がある
・脱力、抑欝、頻呼吸などが臨床的なアシドーシスの特徴(略)
□治 療
・第一の原因を指示
・軽度の症例では酸と塩基の状態に戻すためにすべての例でバランスのよい等張液で失ったものを置き換える
・出血によって起こった循環血液減少は高張食塩、コロイドまたは輸血が循環血液量を効果的に戻すには必要
・特別な電解質の損失への対応:大腸炎を伴う症例では大量が必要(以下略)

「獣医畜産新報」2002年3号掲載


Bradford P.Smith
『Large Animal Internal Medicine 3rd ed.』

2001年・Mosby、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦

 本書は馬、牛、羊、山羊の診療に従事する獣医師にとって百科事典であり聖書であると言われているが、その良書である証として版が重ねられ、ここに第3版が刊行された。第2版の出版が1996年であるから5年振りの改訂である。確かにこの5年間に獣医学も進歩し、獣医療の現場にも変革が起こっている。一方、書籍の作成となると、このような大著は対象範囲も広くまた執筆者も182名と多いため大変な労苦を伴うものであると推察される。
 本書の構成としては章組みや項目は前版と同様であるが、内容的は刷新されているところが随所にみられる。例えばへンドラウイルスやウエストナイルウイルスなどの感染症をはじめ遺伝的疾患や新しい検査法なども記述されている。また消化器疾患では内視鏡検査の普及に伴いカラー写真入りでの解説がみられる。特に編者も述べているように、神経疾患、消化器疾患、ワクチン問題などの項目が一変し、また新生子の問題についても多くが追加されている。
 改訂にもかかわらず頁数が約300頁少なくなって扱いやすくなった反面、縮小された文字が1頁に圧縮されて見にくくなったのは難点である。しかし、その内容は高く評価されるものであって、産業動物の臨床に従事する獣医師のみならず、獣医学・畜産学に関与する多くの人々に参考になる好著であり、広く一般に活用されることが期待される。

「獣医畜産新報」2001年10月号掲載


R.G.Harvey, J.Harari, A.J.Delauche
『Ear Diseases of the Dog and Cat』

2001年・Manson、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦

 聴覚を司る器官を疾病の座とする病態は複雑多彩なものであり、症例数も多いにもかかわらず比較的安易に考えられてきたように思われる。耳と言うとまず耳翼の皮膚病や外耳炎が挙げられるが、これは一般には皮膚科専門医が担当しており、セミナーなどでも度々話題にされている。また中耳や内耳の問題こついては神経科専門医の領域とされることが多い。専門医制度のないわが国では、獣医大学においては内科と外科の分野でそれぞれ分担して教育しているのが実状である。このように臨床獣医師はこれまで国の内外を問わず耳を中心として体系的に勉強する機会が乏しかったと思われる。医学領域では耳鼻咽喉科が独立しており、耳を専門とする医療班が存在する。しかし獣医学では小動物臨床においてもそこまで分科が進んでいない。そのため臨床獣医師は独自に対応せざるを得ない状況にある。
 今般、英米の3名の先生が多年の経験に立脚して執筆された『Ear Diseases of the Dog and Cat』が上梓されたが、一見して臨床獣医師が座右において参考にするに価するものと思われる。その内容は12章から構成されている。すなわち、正常な耳、診断法、外耳炎の病理発生と分類、耳翼の疾病、中耳炎と内耳炎、耳介領域の膿瘍、耳疾患の治療、耳毒性と耳治療薬の副作用、外耳道の清浄、耳血腫と耳翼外科、外科切除術・耳介切除・鼓室胞の骨切り術および周術期の無痛法と処置である。各章ごとに文献の記載もあり、写真も豊富に掲載されており理解に便である。


「獣医畜産新報」2001年7月号掲載


S.B.Adams & J.F.Fessler
『Atlas of Equine Surgery』

2000年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本ウマ科学会会長 本好茂一

 馬が獣医学の主流として隆盛を極めていたのは約半世紀前までのことになる。大学教育もそのほとんどが馬で埋めつくされていた。この誇るべき文化も、飼育頭数の減少から衰退を続けている。ここでは馬の外科学の一書を紹介したい。それには、どんな世の中で馬学が忘れ去られようとも、現然と必要不可欠の手技は伝えなくてはならない。残念ではあるが紹介できるのは、600万頭の馬を有する米国の本である。
 本書はインディアナ州立パーデュー大学の大動物外科学のAdams教授とFessler教授の共著である。パーデュー大学を訪れたことがあるが、決して広大ではないが、きちんと整頓された、落ち着いた環境であり、研究なり教育の場にふさわしい印象であった。本書はA4判、428頁のハードカバーで、赤い表紙のコンパクトな本である。
 全84章からなり、第1部は緒論(1〜6章)、第2部が部位別各論(第7章〜84章)である。近年競走馬に多発する剥離骨折は省かれている。第1部は手術の準備、麻酔、ドレーピング、駆血法、縫合材料の特性、感染予防の抗生物質について説明されている。第2部は外科的手技として、頭骨、頭部、頚部、胃腸科、呼吸器科、眼科、繁殖科、泌尿器科、骨折の修復、筋骨格系、腹壁および外皮の外科となっている。各章とも白黒ながら写真や図解が工夫されて付けられ、わかりやすい。また器具の使用説明も図示されている。一般外科から整形外科、皮膚のピンチグラフトまで幅広く記述されている。
 直腸裂は直検や灌腸、難産、鉗子による胎便抽出や種付け時の雄のペニスによる誘導ミスなどもその原因となることがある。放置はできないし、早急の処置がなされないと致命傷になる。第1度から4度までの重症度にかけての処置について、こともなげに記載されている。
 一時期、日本でも時折り見受けられた、外陰部縫合術もきれいに図示されている。この手術に成功し、受胎し、その子を帝王切開で娩出した記憶が甦った。しかしその子馬は羊水の誤嚥で蘇ることはなかった。
 再び、わが国で活気ある馬の需要が広がるかどうかは予測できないが、高額のサラブレットの生産や獣医療に従事する獣医師にとっては、実際的に対応できる技術を解説した書が必要である。本書は特に、迅速に対応が求められる救急の馬の施術法が、きちんと解説してある貴重なテキストである。
 教育の現場、生産、飼育などに携わる人にとっては、常備されることを切望する。

「獣医畜産新報」2001年5月号掲載


D.W.Scott,W.H.Miller Jr. & C.E.Griffin
『Small Animal Dermatology 6/E』

2001年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京農工大学農学部教授 岩ア利郎

 私の本棚には5冊の『Small Animal Dermatology 』が並んでいる。一番古い1冊は初版の幡谷正明・臼井和哉両先生監修の翻訳本であり、その他は英文の原本で第2版から第5版である。初版の原本は1969年に出版され翻訳本は1972年に出版されている。昨年の10月にこの横に第6版の『Small Animal Dermatology』が並ぶことになった。ご承知の向きも多数あろうかと思うが、本書は小動物皮膚科学を勉強しようとする獣医師は必ず精読しなければならないといわれるほどの立派な教科書である。
 このシリーズを見ていると獣医皮膚科学がこの30年でいかに進歩したかが一目瞭然である。初版は赤い装丁の翻訳本で443頁、病名にしておよそ48種類を掲載している。第3版はブルーの装丁本で、1983年に出版され原著でおよそ840頁、その病名は100を超え、14年間で各々倍増している。さらに第5版はブラックでその12年後の1995年の出版であり、そのページ数は1,180頁ほどに膨れ上がり病名数は300を数えたところであまりにも多いので数えるのを中止した。これらの版に続いてグリーンの第6版は2000年10月に発行され、総ページ数は約1,500頁に増えている。こうしてみると、われわれが勉強しなければならない疾患の数は加速度的に増えつづけ、このままでは100年後には何冊の教科書になるのか、想像すると生きているはずもないのに恐ろしくなる。
 本書の編者は、最初はMuller、Kirk両先生であったが、第3版からはCornell大学のDanny Scott先生が加わり、第5版からはScott、Miller、Griffinの3先生の編集となり若返っている。
 第6版の特徴としては、今までは「免疫介在性疾患」の章の中に「アレルギー性皮膚疾患」と「自己免疫性疾患」の両方が含まれていたが、この版からは自己免疫性疾患が独立した「章」として扱われている。これは免疫学の発達に伴い、動物のアレルギー性皮膚疾患あるいは自己免疫性皮膚疾患などの病態、治療がこの数年間で飛躍的な進歩を遂げたことを表している。その他に頁数が「かなり」増えた「章」は「皮膚の構造と機能」である。その他の章にはあまり変化がない。また、参考文献には日本人の名前もしばしばみられるようになり、日本の獣医学のこの分野に対する貢献が眼にみえる形で顕われてきたような気がするのは欲目であろうか。

「獣医畜産新報」2001年3月号掲載


Rebecca Baker & John H.Lumsden
『Color Atlas of Cytology of the Dog and Cat』

2000年・Mosby、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学大学院農学生命科学研究科教授 辻本 元

 本書は犬と猫の細胞診のカラーアトラスとして2000年にカナダのDr.BakerとDr.Lumsdenがまとめたものである。小動物臨床においては、画像診断や内視鏡検査において急速な進歩がみられるが、それらと組み合わせて細胞診や病理組織学的検査を行うことによって診断技術が格段に進歩しつつある。また、犬や猫の高齢化に伴って腫瘍性疾患が増加し、また原因不明とされていた各種疾患が自己免疫による機序であることが明らかにされ、これら疾患の臨床的重要性が増加している。こういった時代背景から、各種疾患の診断において細胞診が多用されるようになってきている。
 本書の特徴は、第一に、クオリティが高く、わかりやすいカラー写真を多数掲載している点であり(全体で723点)、第二に、獣医師が臨床上問題としている疾患が網羅されている点である。また、細胞診の方法に関する解説とともに、それぞれの部位の細胞診における正常像が示されている点においても臨床的に有用性が高い。
 本書では、臨床的に細胞診の重要性の高い各分野にわたって美しい写真が提示されており、感染症、皮膚、リンパ系組織、脳脊髄液、頭頚部、呼吸器、胸水・腹水、消化器、筋骨格系、滑液、腎泌尿器、雄と雌の生殖器、乳腺、耳と眼、のそれぞれの細胞診に関する簡潔でわかりやすい説明が加えられている。このようなカラーアトラスを病院の検査室に置いて日常の診断に役立てたい。

「獣医畜産新報」2001年2月号掲載


Stephen J.Ettinger
『Pocket Companion to Textbook of Veterinary Internal Medicine for 5/E』

2001年・W.B.Saunders、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦

 好評を博した書では姉妹編が出版されることはよくあるが、親子編という例はきわめて稀であると思われる。もっとも縮刷版は利便性や代価の関係で発売されている。親子編が稀な理由は多々考えられるが、親本を所有していれば、大抵はそれで用が足りるので、その部分本の子供編は不要であり、もし必要なら自分で作成すればよい。したがって、出版されてもわざわざに購入しないことになる。また出版社としては子供編で満足が得られるなら、廉価な方を選択し、親編の方を敬遠してしまう心配がある。このような事情を十分理解し、考えた上で敢えて上梓されたのが本シリーズである。この企画が前々版と前版において予想以上に成功したことから、今回の版でも同様に3度目の子供版が刊行された。
 このような現象が一般に受け入れられているのには、恐らく利用者の学習態度、勉学環境に変化があるものと思われる。あるいは逆にこのような書籍の出現が好むと好まざるとにかかわらず、獣医師の生活に変革を誘発しているとも考えられる。このような書は、わが国でどのように受け入れられているかは別にしても、彼の国の獣医師が積極的に自己実現を目標に努力していることを象徴している証拠の品と感じられる。
 本書の内容は親本からの抜粋で、目次項目は全く同じである。SectionTは臨床徴候の解説を主体とした一般的事項、SectionUは食物や栄養の問題、SectionVは治療法、SectionWは感染症、SectionXは腫瘍、SectionY〜]Yは各臓器系統別の解説である。その他付録には薬剤の一覧表が示されている。編者や出版者の意図とは異なるかもしれないが、臨床獣医師にとっては、この1冊は単独でも利用価値の高いものと思われる。

「獣医畜産新報」2001年2月号掲載


Charles H.Sodikoff
『Laboratory Profiles of Small Animal Disease 3/E』

2001年・Mosby、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
赤坂動物病院 医療ディレクター 石田卓夫

 本書は1982年に第1版が刊行され、一般の動物病院では多項目の血液化学検査など一般的ではなかった時代に、次世代の臨床検査システムを予測させる内容をわが国の獣医師にも紹介した。1995年には第2版が出版され、今回はさらに充実した内容の第3版となった。
 今回の改訂では、非常に多くの新しい検査項目の説明が追加されており、またこの数年で更新されてきた新しい診断の基準や手順も盛り込まれている。たとえば「古い甲状腺機能検査」と「新しい甲状腺機能検査」などという項目もあり、後者ではもちろん最新の遊離T4(fT4)の説明などが書かれている。さらに、腫瘍壊死因子(TNF)など、今後利用されるであろうサイトカインの検査にまで言及されている。
 本書は大きく分けて3部から構成されている。第1部は各検査項目に関する簡潔な説明である。ここでは血液化学検査、糞便検査、尿検査、CBC、骨髄、凝固系、血清学などあらゆる検査項目につき検査の意義や正常値などが示されている。
 第2部は本書の中核をなす部分で、血液化学検査の異常、あるいは臨床徴候からの診断アルゴリズムがグラフィックに描かれている。この表により次に進む検査、そしてその検査結果によりどのように診断を進めて行けばよいかが指示される。また、第3版からの新しい概念として、検査数値の時間的変動からの診断−ダイナミックテスティングという概念が導入され、これまで正常値との比較でしか異常というものを捉えていなかった姿勢を改め、その個体の検査値の変動を追跡することにより、診断に到達するためのアルゴリズムが紹介されている。
 そして第3部は、第1版からの本書の特徴ともいうべき、各疾患別の異常値のグラフィックな表示である。これは診断がついてから、あるいは診断が濃厚になってから、その病名を見て、この病気ならここに異常が出る、ということを確認するためのものである。POMRアプローチでは第2部の診断をつけるまでの作業が重要視されることもあり、現在では影が薄いが、各疾患の検査異常につき文章ではなく視覚的に勉強できるところが優れている。
 本書は前回の改訂より日も浅いが、このように多くの内容につき書き改められている。記述はコンパクトであるため、最新の英語版を手元に置くのもよいだろう。

「獣医畜産新報」2001年2月号掲載


Bernard F.Feldman,Joseph G.Zinkl,Nemi C.Jain eds.
『Schalm's Veterinary Hematology 5th ed.』

2000年・Lippincott Williams & Wilkins、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学 前教授 後藤直彰

 獣医血液学の百科辞典ともいうべき『Schalm's Veterinary Hematology』の第5版が刊行された。第4版から15年の年月が経過している、ということである。この間には多くの概念や解釈の変更がなされ、また新しい知見も得られているのは当然のことで、これらが包括的に記載され、獣医血液学に関心の深い読者にとってまとまった知識を得ることができる最大の情報源となるであろう。
 内容は、第1節 血液学の基本概念、第2〜5節 造血機構、第6〜8節 止血・凝固、第9〜10節 造血系腫瘍、第11節 免疫血液学、第12節 血清蛋白、第13節 遺伝的血液疾患、第14節 動物種別の血液学、第15 臨床例からなっている。
 これらの中で、特に興味をひかれるのは本書の特色ともなっている第11節の免疫血液学で、多くの読者が漠然と理解していると思われる赤血球抗原、血液型群、顆粒球および血小板抗原、主要組織適合抗原、免疫介在性溶血性貧血、輸血などの諸問題について詳しく取り扱われている。
 同時に新しく加えられた遺伝的血液疾患に関する知見も、臨床例の動的な変化の理解を助けることになる。
 この第5版は獣医血液学の基本的事項を網羅した15節190章からなる膨大な内容で、著者は全世界からの225名に及んでいる。カラー版約300を含めた500の図版を用い、同時に40例以上の臨床例を取り上げ、血液学の原理を理解しやすいように配慮されている。
 また家畜、小動物以外の30種以上の海産動物、爬虫類、鳥類等の血液学も加えられ、近年増加している飼育動物、野生動物への対応にも欠かせない知識を提供している。
 これらの内容については、全く新しい概念をもって平易な解説的記述を用い、かつ各著者の裁量を優先して読みやすいように考えられているのも特徴の一つであることが序文の中で強調されている。
 本書を隅から隅まで熟読することは困難であるが、獣医血液学で知りたい事項については必ずよい指標を与えてくれる参考書としてお勧めする。

「獣医畜産新報」2001年1月号掲載


Hafez,E.S.E.,Hafez,B. eds
『Reproduction in Farm Animals 7th ed.』

2000年・Lippincott Williams & Wilkins、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
大阪府立大学名誉教授、北里大学客員教授 森 純一

 この度、上記の書籍が上梓された。本書は初版が1962年に出版されたが、その後6〜7年目毎に改版されて、今回7版目を迎えた。初版以来、繁殖生物学、畜産学、獣医学を専攻する学部学生を対象に、家畜繁殖学領域の、主として生理学と生化学分野について、基礎と動物種属間の比較という観点から簡潔にまとめられている。これまでの本書が定評ある教科書であったことは、日本語を始め、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語にも翻訳されて、世界各国で、広く、多くの学生や卒後教育に愛用されてきたことからもうかがわれる。
 これまで版を重ねる度毎に、その間の学問の進歩を反映して内容の大幅な改定が行われてきたが、この7版においても近年の著しい学問の進歩を反映して、次の5章が追加された。すなわち、1)ラマおよびアルパカの繁殖、2)遺伝子工学、3)薬理毒性物資と繁殖、4)繁殖免疫学、5)繁殖分野の分子生物学である。
 新版はこれらを含めて6部31章から構成されており、第1部 繁殖の機能解剖学、第2部 繁殖の生理学、第3部 繁殖周期、第4部 繁殖の失宜、第5部 病態生理機構、第6部 繁殖補助医療技術(ARTA)となっており、執筆者は広く繁殖生物学、畜産学、獣医学、医学、産業界の専門家から適任者が選ばれている。
 このように、本書は繁殖学領域で起こっている学問上の進歩を、平易で簡潔な記述で余すところなく伝えてくれる教科書であり、全体が程良いバランスで体系的にまとめられている。さらに、巻末には家畜の種属の染色体数、家畜種属間交雑種の染色体数と繁殖能力、繁殖実験で用いられる生理溶液の調整法、精子濃度の濃縮法、精子染色法、ハムスター透明帯除去卵の調整法、卵子染色体の評価法、体外受精(IVF)関連企業のテキストの抜粋、顕微注入による体外授精法など、実用上大変役に立つ即戦的な情報が記述されている。これらは実習や実務に携わる人にとって有益である。
 これまでの本書はずっとHafez、E.S.E.博士の編であったが、この版からHafez、E.S.E.博士とHafez、B.博士の共編になっている。内容的に新しい項目が大幅に追加され、しかもこれまでとほぼ同じか、むしろ少ないページ数内に収められていることから、これまでの内容で不要不急のものは大幅に削除され、さらに記述は簡潔になった。しかし、7版上梓の基本理念は初版の時と変わっていないので、内容的に新しくなっても、全体の印象はこれまでと同様に大変親しみ易く、分かり易い。各章の末尾には参考文献も記載されており、学部学生にとっても、卒業後実務についておられる方々にとっても、日常座右に置いて活用するのに相応しい内容になっている。

「獣医畜産新報」2000年6月号掲載


Nelson,R.W. & Couto,C.G..
『Small Animal Internal Medicine 2/E』

1998年・Mosby発行、定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学名誉教授、日本大学教授 長谷川篤彦


 獣医臨床に関する成書や参考書は多種多様で、しかも年々絶えることなく出版されている。犬と猫に限定しても汗牛充棟の感がある。最近上梓された犬や猫の内科学書で、手もとにあるのは、Ettinger,S.J. & Feldman,E.C.編の『Textbook of Veterinary Internal Medicine Diseases of the Dog and Cat 4th ed.』(1992)、Nelson,R.W. & Couto,C.G.編の『Essentials of Small Animal Internal Medicine』(1992)、Leib,M.S. & Monroe,W.E.編の『Practical Small AnimalInternal Medicine』(1997)などである。これらはいずれも米国で刊行されたものであるが、世界各国で広く利用されており、本邦においてはEttingerらの著書は翻訳もされ活用されている。各書籍の執筆者はそのほとんどが米国の獣医学系大学の教官であり、第一線で活躍している獣医師である。したがって獣医臨床の現場にあって参考になるのは極めて当然のことと思われる。
 今回紹介するのは、NelsonおよびCouto両先生が編集した内科学書で、その第2版である(初版は前述の『Essentials of Small Animal Internal Medicine』で書名が変更されている)。色彩を豊かにし読みやすさを配慮し、また内容的にも新たな執筆者を加えて、より診療に直結する内容へと工夫されている。
 しかし、いずれにしても著書はあくまでも先人が観察した結果であり、解釈である。すなわち、過去に集積されたものの要約であり、説明とか、解説である。したがって、このことを念頭において、病める動物を把握するのに最良の成書である本書をその一助として活用したいものである。

「獣医畜産新報」1998年9月号掲載



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