書評(洋書)
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James S. Gaynor & Wiliam W. Muir V
『Handbook of Veterinary Pain Management 2nd ed.』2008年・Mosby刊 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京大学教授 西村亮平本書は、ハンドブックと銘打ってあり、確かにその記載はどこからでも気軽に読めるように構成されている。しかし、その内容は相当に詳しく深く、細かいところまで及んでいる。というとかなり読みにくいのかと想像されるかもしれないが、その点はハンドブックの利点を生かしてかゆいところに手が届きつつ、気軽に読めるよう工夫されている。また、関連領域についても少なからぬページが割かれており、読み進むうちに別の専門書をあたりたくなるような事項についても詳しく記載されている。例えば、薬物動態についてなんとなく言葉は知っているが、きちんと理解しているわけではないものも多いのではなかろうか。より深い理解には、正しい知識が必要だがそのような言葉が出てきたとき、実際には面倒なため、よく分からないまま済ませてしまうことも少なくない。ところが本書では、薬物動態の基本的知識がコンパクトにまとめて記載されている。本書の隠れた特徴であろう。
内容的には、まず痛みのメカニズムの始まり、痛みの評価法および鎮痛の基本について解説してある。その記載は前述のように非常に分かりやすく、たとえば痛みが生体におよぼす影響については、自分が持っていた知識が体系的に整理でき、とても役立った。一方痛みの評価法については、残念ながらいまだ決定的なものは作られていない。しかし本書では、この点を十分踏まえたうえで、現状で少しでも痛みを評価・理解できる現実的な方法論が提示されている。次に鎮痛に使われる薬剤について記載されているが、これには最新情報がふんだんに盛り込まれており、たとえばα2アドレナリン受容体に関しては、サブタイプの存在だけでなくその役割についても解説がある。もちろん新しい薬剤や新しいプロトコールにも詳しい。これに引き続いて、急性疼痛、慢性疼痛さらに癌性疼痛の治療の実際について動物種による違いも含めて述べられているが、第2版では初版にはなかった、猫、鳥、馬、牛、ヘビ、フェレット、ウサギにおける鎮痛法も記載されている。
さらに第2版では、最近急速に発展しているリハビリテーションを利用した鎮痛法やQOL、ホスピスの問題も加わり、大変読み応えのある本となっている。動物の痛みに興味のある先生方にとってとても有用な本であることは間違いない。ぜひご一読されることをお勧めする。
「獣医畜産新報」2008年5月号掲載
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M. Grant Maxie
『Jubb, Kennedy, and Palmer's Pathology of Domestic Animals 5th ed.』2007年・Saunders刊 3巻セット 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
動物細胞病理研究会主宰 後藤直彰家畜病理学の百科事典ともいうべき『Jubb, Kennedy and Palmen's Pathology of Domestic Animals』の第5版が1993年以来13年振りに改訂刊行された。筆者も第3版・第4版を駆け出しの動物病理学者の頃から本書で勉強した経験がある。多くの動物病理の専門家、これを専攻する学生諸君も本書を用いたことがあるであろう。
1993年の第4版以来、動物病理学に関する知見・文献は驚異的に進歩、増加しているが、第2版以後も基本的に、JubbとKennedyが第1版で肉眼的にも組織学的にも厳密に記載したものを基礎としている、といわれている(残念ながら筆者は第1版を見たことがない)。それはこの第5版においても例外ではない。
この第5版における主要な改訂部分は、病因論、病理発生を含めて、分子生物学から得られた新しい知識を従来の理解に加えることでなされている。しかし新しいことを追い求めることが主眼ではない。今日、われわれがすでにコントロールされている疾患、例えば結核のような古い時代から続いていたものも、尚われわれと共にあり、重要な問題を投げかけている。順序は前後するが、呼吸器系で結核は大きく取り上げられ、地理病理学的な知識・結核菌の成分・性格・病理性・免疫原生・病理組織学・動物別発生の特異性まで細かく論じられている。このような古くからの疾患とともに、1997年に新しく報告されたウイルス、豚シルコウイルス(Porcine Circovirus)についても記載がなされている。この病気(PMWS)は離乳後5〜12週の子豚に発生する全身消耗性疾患で5〜20%が斃死すること、抗体は養豚場に広く広がっていることが述べられている。
本書の内容は、骨・関節、筋肉・腱、神経・眼・耳、皮膚・附属器、消化器、肝・胆管・膵、泌尿器、呼吸器、循環器、内分泌系、生殖器の全てに亘っている。呼吸器の結核については既に取り上げたが、その他概観して見てみると新しい事柄も多い。消化器系では基本的な事柄に続いて胃腸疾患の考え方・診断についてまとめた記載がある。なかでも注目されるのは反芻獣の新生子、子豚・子馬の下痢症について病原因子等が動物別に記されている。感染病・寄生性疾患については従来の記述に沿っているが、ウイルス病についても詳細な記載がある。造血系は200頁以上に亘り、優に1冊の単行本に匹敵する内容を備えている。なかでも一般的な腫瘍に加えて組織球・樹状細胞・リンパ細網細胞系腫瘍等にも訳述が及んでいる。内分泌系の章では各種ホルモンの概説から化学受容体までわかりやすく解説されている。
写真は全体モノクローナルであるがカラー写真を凌駕するほどの鮮明さを持ち、理解の助けに十分である。この種の書物の生命ともいうべき索引は各巻末に同じものがあり利用者の利便性を高めている。
以上、種々の点からみて本書は家畜病理学の第一等の参考図書の地位はゆるぎなきものであろう。
「獣医畜産新報」2008年4月号掲載
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Larry P. Tilley, Francis W.K. Smith,Jr., Mark A. Oyama, Meg M. Sleeper
『Manual of Canine Feline Cardiology 4th ed.』2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
宮崎大学准教授 中山智宏犬と猫の心臓病学に関する獣医学専門書は多数出版されている。その多くは循環器に強い興味を持つ獣医師あるいは学生に向けた内容であり、日常診療で心疾患に遭遇した際の診断および治療目的で参照するにはやや敷居が高い傾向にある。
本書の特徴は、対象読者を広く設定したことにあり、分量は専門書としてはあまり多くなく、B5判大で索引を入れたページ数は443ページ、21章で構成されている。本文はカラー印刷で、図や写真がふんだんに掲載され、多くの読者にとって親しみがもてることであろう。理論等の専門性が高い領域については詳述を避け、実践的な特徴が前面となるよう編集されている。随所に「KEY POINT」という囲いの小項目が設けられており、それぞれの疾患の診断や治療等に対する重要点や勘所が記載されている。このKEY POINTのみを拾い読みしても循環器に対する理解を深めることに役立つ。また、同様によく尋ねられる質問(FAQ)が各章の最後に設けられており、この類の書籍としては形式にとらわれない解説がなされ、興味深い。
広い読者層を対象にすると内容が基本的事項に留まることが多いが、本書は2001年以来の第4版になり、新たに心臓手術、肺性心および肺動脈血栓塞栓症、ペースメーカー療法の章と付録として犬種別の罹患しやすい心臓病の一覧が加えられ、版を重ねるごとに内容の充実を図っている。さらに、ピモベンダンやカルベジロールなどの新しい治療薬が積極的に取り上げられている。その1例として、肺性心と肺動脈血栓塞栓症の治療にシルデナフィルおよびボセンタンが紹介され、先進的な内容も多くうかがえる。
本書は大きく分けて3つのセクションに分かれている。最初は、循環器疾患の一般的な診断方法についてであり、身体検査、X線検査、心電図検査、心エコー検査、特殊検査というように実際の診察と同じ順序で章が組まれている。2番目は、各疾患別に病態等の解説、診断および治療が記述されている。最後は、循環器疾患の治療法であるため、2番目のセクションと内容が部分的に重複する。しかし、最後のセクションは症状あるいは病態別に章が構成され、それぞれの章は心不全、不整脈、心肺蘇生、救急救命法というように前のセクションとは異なった側面から治療方法を取り上げている。したがって目前の症例の治療を考える際には、これら2つのセクションのうちどちらか適した方を参考にすれば臨床的に非常に有用であろう。なお、文中の薬品名は太字体で印刷されているが、これは疾患の病態生理や診断法を理解していて、治療薬を手早く調べたい際には参照に便利で、体裁上のよい工夫であろう。
「獣医畜産新報」2008年3月号掲載
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Thomas J. Divers, Simon F. Peek
『Rebhun's Diseases of Dairy Cattle 2nd ed.』2008年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
石井動物病院 石井一功乳牛の疾病について完全に網羅した本である。心臓、呼吸器、消化器、乳房、繁殖、泌尿器、神経、眼科の順に器管別に配置され、すばやい参照が可能で、読みやすい。実際的な外科・内科的療法と、現場のハードヘルス的アプローチの双方が重要視された記述となっている。重要な項目には多くのページを割いており、最新の情報が盛り込まれ、臨床現場のニーズに応えている。
例えば、乳房炎の項では、ラクトコーダーによるミルクフローグラフが掲載され、ユニット装着が早すぎる場合のいわゆる「搾乳前過搾乳」や薬物による盲乳の方法に関してまで言及されている。繁殖においては子宮炎に9ページを割き、消化器病においては、HBSも記載され、子牛の大腸菌性下痢は13ページ、サルモネラ症は子牛親牛合わせて11ページ、BVDに至っては16ページに亘り、疫学的背景・診断・治療・予防法について詳述されている。跛行や蹄病に関しても、20数ページに渡り豊富な写真と共に解説がなされており、DIP関節のドリリングや断趾術、蹄尖壊死部の大胆な除去など、かなり積極的な外科療法について述べられている。私にとっての最新情報がこのような成書にすでに掲載されていることに感心しつつ、焦りも感じる。
教科書らしく、稟告の取り方、検査法、採血、経口補液、注射部位、保定法、輸血、腹腔穿刺、除角法などにも触れ、カビを含む中毒情報、参考ウェブリンクまで掲載されていて参考になる。フルカラーで写真も豊富。個別のケーススタディは鑑別診断において大変参考になる。各項目において、推奨薬用量、米国の法定休薬期間、公衆衛生・家畜衛生学的見地からの疫学情報も詳しい。
付録DVDも必見である。エコーや内視鏡の動画に加え、各疾患に特徴的な神経症状や跛行は、言葉で説明するのは難しいので、動画で見ることに大きな価値がある。BVDに胎内感染した子牛の神経症状や、頚静脈へのカルシウム投与を失敗しホルネル症候群を起こした例など、我々の日常診療で出会うような症例も多く収録されており、一度見ておけばひと味違ったアドバイスができるのではと思う。
ある目的地に到達するのに、人に書いてもらった簡単な道順と目印だけを頼りに行くのと、自分で詳しい地図を見て全体像を把握しながら行くのとでは、結果は同じでも意味が全く違う。特に道に迷った時の対処の仕方では大きく差が出るだろう。この本で「乳牛の病気」の全貌を把握しながら、進んでいきたいと思う。
「獣医畜産新報」2008年3月号掲載
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David J. Maggs, Paul E. Miller, Ron Pfri
『Slatter's Fundamentals of Veterinary Ophthalmology 4th ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院 院長 太田充治本書は1981年に初版が出版されてからこれまでに2度の改訂をされ、第2版はわが国においても訳本が出版されており、我々臨床獣医師には長く愛読され続けてきた眼科学の成書である。今回、3度目の改訂によって第4版が出版されたが、今回の改訂による本書はこれまでの版とは全く別の書籍であるかのような全面的なリニューアルがなされた。
まず第一の大きな変更は全ページがカラー化されたことであろう。眼科学の成書にとって挿入された写真が鮮明であるかどうかは非常に重要な要素であるが、これまでの版では巻頭に数十枚のカラー写真がまとめて掲載してあるだけであったのに対し、この第4版では写真はすべて解説箇所に挿入してあり、それらの数もかなり増えている。
全体的なボリューム(ページ数)は前版に比べて4分の3ほどに縮小されているが、これは図表の大きさを縮小し、近年の獣医眼科学の基礎知識レベルの向上を考慮して、解説する必要性の低くなった「眼科手術の原則」と「よくみられる眼科疾患の鑑別診断」の章を削除したためである。これに代わり新しく追加された章として「エキゾチックアニマルの眼科」があるが、これも現在の獣医臨床現場における必要性を考慮しての加筆であろう。
またこれまでの版ではソフトカバーであったために、頻回の使用には耐えられずにページが外れてしまう経験をしているが、今回の第4版ではハードカバー仕上げになっており、日常の臨床現場でのリファレンスとしての頻回使用にも十分耐えられるようになったと感じる。
今回の改訂では3人の著者によって書かれており、各著者の得意分野であるか否かによって各章のボリュームに偏りがあることは否めないが、獣医眼科学のすべてを網羅したコンパクトな成書として非常によくまとまった良書である。
最後に、第3版までの監修者であるDr. Slatterがこの第4版の改訂が本格的に始まった時にはすでに亡くなられていたことから、この第4版では監修者に彼の名前は無くなったが、これまでの彼と第3版までの本書の功績を称え、タイトルが“Slatter's 〜”と変わったことも、Dr.Slatterのご冥福をお祈りしつつ付け加えたい。
「獣医畜産新報」2008年2月号掲載
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Rhea V. Morgan
『Handbook of Small Animal Practice 5th ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦小動物臨床、なかんずく内科学に関する多種多様な書籍が陸続として出版されている。
内科診療全般にわたるもの、また各臓器系統別に血液学、循環器学、神経学、内分泌学、消化器学、腎泌尿器学、皮膚科学、眼科学など専門的な著書が刊行され、加えて感染症学、寄生虫病学、アレルギー・免疫学、代謝病学、中毒などについても詳細に解説している良書も多数存在している。
このような状況にあって、今般 Rhea V. Morgan 編纂の『Handbook of Small Animal Practice』の第5版が出版された。本書の初版が上梓されたのが1988年であり、その後改版が重ねられ約5年振りに新版が登場した。本書が江湖に広く受け入れられて来た所以は内容もさることながら、記載方法に負うところが大であると思われる。第5版においても、記述形式に同様の工夫が認められ、統一性のある脈絡で構成されている。各疾病に関して簡潔な記載によって理解を容易にし、臨床の現場で直ちに役立つように配慮されている。第一の特徴はすべて箇条書き方式を採用している。このことは執筆者が要点を整理して記述することになり、読者にとっては把握しやすいことになっている。しかし一方では単純化による問題がないわけではないが、その点は賢明な獣医師にとっては危惧するに当たらないと思われる。
本書は19項に分類される136章からなり、参考値や薬剤などについての付録がある。各疾病については、すべて定義、原因、病態生理、臨床症状、診断、鑑別診断、治療、経過監視の順で記述され、各章の最後に文献が載せられ読者の便に供している。写真は少ないが図表は随所に挿入されており、理解に役立つものと考えられる。執筆者は第一線で活躍中の130人にも及び、各項目に担当責任者がおかれている。
改版が重ねられることは好評を博している証左であり、すなわち佳書である証である。今回出版された第5版もこれまでの版と同様に臨床の現場の獣医師は勿論のこと、獣医療関係者、獣医師を志す学生らにとっても利用価値の高い参考書となるものと推察される。
「獣医畜産新報」2008年1月号掲載
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Peter G.G. Jackson, Peter D. Cockcroft
『Handbook of Pig Medicine』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
有限会社サミットベテリナリーサービス院長 石川弘道今、養豚現場が抱えている一番大きな問題は疾病対策である。その疾病対策を担っているのは獣医師である。PRRSやサーコウイルスの出現以降、豚病は複合感染が主流となり、適切な解決策を提示するためには、高度な技術、知識が要求されるようになってきている。近年専門的な養豚獣医師を望む声が高くなってきた背景には、こうした事情が反映されている。
しかし獣医学を教える教育現場である大学には、豚病学を講座として設置している大学は皆無に等しく、養豚獣医師を目指す獣医師は独学でその道を切り開くか、または海外に勉強の場を求めていくしか手立てがない。独学で勉強する場合にまずぶち当たる壁は、適切な教科書が見あたらないことである。本書は、これから養豚の世界に飛び込もうとしている若き獣医師にとっては、まさに“バイブル”的な教材になるだけの内容を備えているだけでなく、経験者にとっても十分参考になる内容となっている。
本書は著者が英国人ということもあり、第1章では聴診や触診など個々の豚に対する診療指針が細かく記述されている。現在の養豚獣医医療は群管理が主流となっているが、群を構成する個体の観察無くして、群診療は行えないことをこの本は教えてくれている。また病気の各論では、運動器、呼吸器、消化器、皮膚、神経系などの系統別に解説され、さらに本書に掲載されている図、表、写真は全てカラーで構成されており、そのため病気の症状、病理所見などが非常に理解しやすくなっている。
本書は現場で混迷する養豚獣医師に対し、適切なアドバイスを与えてくれるものと確信する。
「獣医畜産新報」2007年12月号掲載
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John H. Lewington
『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery,2nd ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部准教授 深瀬 徹フェレットはイタチ科の動物である。ただし、野生の動物ではなく、ヨーロッパケナガイタチやその近縁種を起源とする家畜である。
フェレットの家畜化が行われたのは、紀元前のことであり、北アフリカにおいてであったらしい。その後、フェレットはヨーロッパ、そしてアメリカ合衆国へと伝えられ、様々な目的で飼育されてきた。家畜化された初期の目的はネズミ駆除やウサギ狩りのためと考えられるが、このほか毛被獣あるいは実験用動物として利用され、さらにペットとしても世界の各国で飼育されている。
フェレットが獣医学の対象として重要視されるようになったのは、ペットとして普及して以降である。それにともなって、フェレットの臨床に関する書物も多数が著されている。そうした書物のなかで、とくに優れているのは『Biology and Disease of the Ferret』と、ここに紹介する『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』であろう。前者はペットとしてだけでなく、実験用動物としてのフェレットにも注目し、そのために誌面が割かれているが、後者は主にペットとしてのフェレットに焦点を合わせているようである。ともに良書であり、『Biology and Disease of the Ferret』は1998年、『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』はこのたび2007年に第2版が発行されている。
ところで、近年は、国内外を問わず、きわめて多くの獣医学書が出版される状況にある。しかし、その一方、1冊の書物の寿命が著しく短くなっていることは否めない。初版の第1刷を発行した後、それ以降は版を重ねるどころか、増刷されることもほとんどないのが現状ではないだろうか。獣医学の発展が日進月歩であるため、といってしまえばそれまでだが、書物の出版に対する意識が変化し、安易に出版が行われていることも事実であろう。できることならば、優れた書物を出版し、学問の進歩に合わせてその内容を改訂していってもらいたいと思う。
今回、『Ferret Husbandry, Medicine and Surgery』の第2版が発行されたことは、非常に喜ばしいことである。フェレットに関する獣医学書として残っていくためにも、今後も改訂を続けていかれることを期待している。
最後に、本書の具体的な内容を紹介しておきたい。本書は4つの部分から構成され、第1編が飼育とそれに関連する生物学的な基礎知識、第2編が内科、第3編が外科に関する記載になっている。最後の第4編はやや特殊で、“Special Anatomy”という項目のもと、フェレットの歯と歯科疾患の病理について詳細な解説が行われている。第4編は趣を異にするが、第1編から第3編までは、日常の診療に大いに役立つものと思う。
「獣医畜産新報」2007年12月号掲載
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Paul R. Greenough
『Bovine Laminitis and Lameness:A hands-on approach』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清Paul R. Greenough氏は国際牛蹄病学会の主要メンバーの1人で、カナダのSaskatchewan大学を1992年にリタイヤした後も、Vet Agro International Consultants Inc. エラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。を主宰し、牛蹄に関する研究・指導活動を続けている。また3版まで版を重ねている著名な牛跛行の教科書であるLameness in Cattleの共著者、共編者でもある。この本は牛蹄研究を長く続けてきたGreenough氏の集大成的なこだわりの本でもある。そしてそのこだわりは蹄葉炎(laminitis)である。果たしてこの蹄葉炎という馬の疾病を指す言葉がどのような牛蹄の状態を指し、あるいはどのように蹄病と関わり、その要因は何なのかということがこの本の中に広がっている。全19章のうち、ダウナー牛、感染性の蹄病、外傷性の蹄病、肢の近位の疾病を扱った4つの章以外は、蹄葉炎と関連する内容である。実は牛の跛行のほとんどはこのように蹄葉炎とかかわっているのである。
近年の獣医学書の写真や図はカラーでとても美しいが、この本もその例外ではない。ほとんど全ページに大きなカラー図譜や写真が掲載されている。以前に出版された第1版と第2版のLameness in Cattleが牛の跛行と蹄病の病名すべてを網羅したエンサイクロペディアなら、この本は蹄病(蹄葉炎)と跛行を物語として結び合わせて書きとめられている。牛蹄に知識の深い人でも、初学者でも、忙しい臨床家でもゆっくりと静かに読むのにふさわしい本である。
「獣医畜産新報」2007年10月号掲載
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Celia Marr
『Cardiology of the Horse』1999年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清本書は1999年に出版された馬の心臓病学の専門書である。他に馬の心臓病学の専門書には1996年に出版されたEquine Cardiology(Blackwel)があるが、これは臨床家と学生向きに出版されたもので臨床マニュアルの性格が強い。一方、本書では臨床家ばかりでなく研究者に向けたものと記されており、心臓機能とその診断に力点が置かれている。
第1章は心臓の生理と病態生理で、心機能の制御、運動による心機能、電気生理と不整脈発生である。第2章では飛躍的な進歩を遂げてきた心臓病学のツールである2-D、M-mode、Doppler、経食道心エコー診断法をカラー図譜とともに記述している。第3章は第1、第2章に基づいて馬の心臓の臨床的問題を不整脈、心雑音、心内膜炎と心膜炎、虚脱、心不全などに分けて記述している。臨床的問題の記述は概念的であるが、臨床治療上のヒントを与えたり、馬の心臓病問題を大きく捉えるには適している。
本書は必ずしも馬の心臓病すべてを網羅した大著ではないが、トピックと概念をうまく取り合わせた小本であり、臨床のバックグラウンドの勉強の第一歩に適している。最新の心臓治療学の文献を当たる前に、馬の心臓機能と診断に関する近代的トピックを俯瞰できる点でこの本には十分な有用性がある。
「獣医畜産新報」2007年10月号掲載
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Andrea E.Floyd, Richard A.Mansmann
『Equine Podiatry』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清Podiatryとは足病学である。この本のタイトルは馬の足病学ということになる。馬の足とは蹄のことであり、人では靴にあたる。したがって馬の靴の学問の本といってよい。
「遠い昔、馬が輸送手段だったころ装蹄師と獣医師は一人が両方を兼ねていた。馬の獣医学が起こり、獣医師は馬の健康管理に、装蹄師は技能者として分離した。しかし、燃焼エンジンが発明され、20世紀中ごろには馬の頭数がピーク時の十分の一となり、馬の獣医学書の出版はおよそ半世紀なくなった。有能な装蹄師もリタイヤした。そして獣医師と装蹄師は離ればなれになった。だがその後、思いもよらぬことに馬はレクレーションアニマルとして、そして大きな産業として復興した。現在では装蹄師は公的な訓練を受けたプロフェッショナルである。しかし獣医師の装蹄に関する知識は乏しいものになった。」長く引用したが、この本が装蹄師、馬のオーナー、獣医師のすべてを対象に書かれた理由である。この本は新しい時代の装蹄師と獣医師の協力・友愛のために書かれている。これがこの本に求められている読み方である。そうすればその気持ちが残るはずである。
内容は5つの章に分かれている。第1章は馬蹄の解剖と生理である。馬蹄の機能解剖や神経支配の項はとくに新鮮である。肉眼的構造のみならず顕微鏡解剖においても美しいカラーの図と写真はすばらしい。第2章は馬蹄の評価と疾病診断で、とくに画像診断に重きが置かれている。第3章は馬蹄疾病とその処置が、多くの連続したカラー写真を用いて実際の馬蹄の問題をどう扱うかを見事に表している。第4章は蹄葉炎。最新の知識を平易に解説し、処置から馬の管理法まで記載されている。第5章は装蹄に冠する議論である。予防的な護蹄プログラムやチームアプローチにも言及されている。
500頁近い大著で、馬の「靴」に関する必要な言葉と図や写真がすべて含まれ、たずねること全部に応えてくれる本である。
「獣医畜産新報」2007年10月号掲載
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Joann L Colville, David L. Berryhill
『Handbook of Zoonoses:Identification and Prevention』2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
国立感染症研究所獣医科学部長 山田章雄本書はノースダコタ州立大学を退官した臨床獣医師J. L. Colvilleと同校の臨床微生物学者D. L. Berryhillによるzoonosisのコンパクトな解説書である。序文で述べられているように本書は健康管理に関わる学生や、医療・獣医療の従事者を主な対象としているが、それ以外の読者にも分かりやすいよう書かれている。2部構成の前半でzoonosisの基礎、後半で42の代表的疾患について、病原体、宿主、伝播様式、動物および人の症状、診断、治療、予防についてまとめている。各疾患の罹患率と致死率を4段階に分けて表示することで、各疾患の公衆衛生上の重要度が一目で分かるような工夫がされている。各疾患はアルファベット順で掲載されているが、第1部に病原体あるいは宿主動物に基づいた分類表を載せることで参照を容易にしている。また疾患によってはhistorical factあるいはhistorical noteとして、名称の由来やちょっとした逸話などが挿入されている。
Zoonosisは疾患数で200を超え、病原体は900種近くに上る。また、人に感染する病原体の約6割はzoonosisの病原体である。したがって、どのような視点でzoonosisを捉えるかによって、扱う対象は大きく異なる。本書はすでに述べたような層を読者として想定していることから日常の獣医療で遭遇する可能性の高いものが主に選ばれているが、一方で、稀な疾患であっても一般の関心の高い疾患についても取り上げている。60の図表が使われているが、視覚的にやや劣るところが惜しまれる。原版がカラーであるにも拘わらず白黒である点も残念である。
記述はできるだけ正確であるように心がけたとしているが、一部疑問の残るところもある。例えばSalmonellaの表記が最近の知見とあっていない点や、Salmonella typhimuriumをパラチフスの病原体のように記述していたり、狂犬病の記載で、人を咬んだ犬の取り扱いに疑問のある部分があったりする。また、インフルエンザに関してもH5N1亜型に偏った扱いになっている点も気に掛かるところである。節足動物媒介性感染症の予防に関する記載が、多くの疾患で重複していることも改善すべき点に思われる。
巻末のAppendixはいずれも理解を助ける上で役に立つと思われる。
類書が多く出版されている中で、本書が特に優れているとも言い難いが、zoonosisの入門書として、あるいは臨床現場における参考図書としてはそれなりに役立つものと思われる。
「獣医畜産新報」2007年10月号掲載
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Donald E. Thrall
『Textbook of Veterinary Diagnostic Radiology 5th ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
麻布大学獣医学部講師 茅沼秀樹画像診断を専門に始めた頃は、異常所見の検出と診断に主眼を置いてきた。したがって、診断名があり、異常所見が羅列されているようなテキストの方が使いやすかったように思う。しかしながら、画像診断の基礎となる解剖学や病理学的背景に関する知識が菲薄な状態では、ある一線を越えられないことが解った。そんな時、非常に参考となったテキストが、Thrall監修の『Veterinary Diagnostic Radiology』である。このテキストは、正常画像と解剖学、異常所見と病理学的変化がバランス良く記述されており、画像診断を理論的に理解することができる。この点が、他の画像診断のテキストにはない心強さであるといえる。
また、コンピューター関連機器はめざましく進歩し続けていることから、これに伴い、画像診断機器もめまぐるしいスピードで新しいものが誕生し、獣医学分野に浸透している現状にある。本テキストにおいてもCR(computed radiography)、DR(digital radiography)、CT(computed tomography)、MRI(magnetic resonance imaging)といった最新の画像診断機器の原理から診断のポイントがX線のみならず、ふんだんに織り込まれており、今回第5版にまで改訂され、他の画像診断学のテキストにはないすばらしいスピードで進歩している。第1版からの流れで、X線診断が本テキストの基本であることには変わりないが、特に、CTやMRIが獣医臨床において身近になっていることから、頭部脊柱の画像診断が相当量加えられ、腹部領域については超音波診断がより詳細に解説されている。したがって、X線診断を中心とした総合画像診断テキストといえる。さらに今回からは、X線正常像、超音波ドプラ音、静止画のみでは伝えるのが困難な事柄を動画やアニメーションにてウェブサイト上で閲覧できるように工夫されている。
様々な画像診断法から次の選択すべき画像検査を考える上で、X線以外の画像診断法についても、獣医師として知識が必要な時代となっていることから、本書は診断において避けて通ることのできない画像診断法のすべての知識を得るために必要な1冊と考えられる。また、画像診断における異常所見と鑑別診断が、随所にボックスで要点のみが記述されていることから、本書は当然英語での記載であるが、日常の診察においてもクイックリファレンスとして活用できるものと思われる。
「獣医畜産新報」2007年10月号掲載
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J.E. van Dijk, E.Gruys, J.M.V.M.Mouwen
『Color Atlas of Veterinary Pathology 2nd ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
動物細胞病理研究会主宰 後藤直彰獣医病理学を学ぶ上での大切なことは何よりもまず目で見ることてある。病気、病変が非常に多くあることは言うまでもないが、それぞれが多くの臓器、器官に発生し、さらにその進行度合の差によって、すなわち初期像、最盛期、終末像とそれぞれ異なり、これらの組合せで膨大な数の肉眼所見になることは明らかである。
それらの全てを実際の経験、自らの知識として貯えることは希むべくもない。これらを補うものとしてのカラーアトラスがある。
この『Color Atlas of Veterinary Pathology』は獣医学を学ぶ学生、研究所で獣医学的な仕事に従事する卒業生、食肉検査に従事する人を対象に作られたもので、初版は1982年に刊行された。
初版にはそれまでの20年間に獣医病理学の知識が急激に増大し、獣医学を学ぶ学生に大きな負担となっていると述べられているが、当時から現在に至るまでも、さらに事実、知識が多く集積されていることから、この第2版には旧版には見られなかった事柄を増補することでより現状に即したものとなっている。
初版では、とくに「病気と病気の進行過程の理解」を目的とし、細胞病理学、炎症、循環障害、腫瘍を各臓器、組織ごとに明確にしているが、この第2版では、その内容をさらに進め「臓器、組織の一般的な形態的反応」というように拡張して、自由度をもって考えられるようにしている。
また、このアトラスでは学生諸君が取り付きやすいように、各臓器、器官ごとに一般的な導入部を設けてあるのも親切な点である。
また先に述べたように、新しい材料が加えられ、多くの写真が拡大されているのも利用者にとって参考にしやすいことであろう。
病変の取り上げられている動物も馬、牛、羊、山羊、犬、猫、ウサギと多種に亘り、このようなアトラスで従来ありがちであった大動物に片寄ることなく、日常多く出会う動物、特に小動物臨床で多く出会う犬、猫の例が多く、鮮明な写真で見られることは学生、研究者ばかりでなく一般の臨床家にとっても役立つところが大きいと考えられる。
獣医師の実際の業務においては死後の検査もしばしば要求されることから、病理学の専門家以外であっても肉眼的病変をその場で見分けるための知識も必要となる。そうした知識を広く養うためにも、本書は有用で、獣医業に従事する者は、是非書架に1冊備えておきたいアトラスである。
「獣医畜産新報」2007年4月号掲載
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Etienne Cote
『Clinical Veterinary Advisor Dogs and Cats』2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦疾病は自然に治癒する病、治療によって回復する病、そして治療しても完治しない病に大別される。獣医師としては治療して治る疾病を知識不足や技量の未熟さのため治せずにむしろ悪化させるようなことは恥辱であり、反省しなければならない。また全治する疾患に徒に手を加え、自然治癒の過程を阻害し、治癒を妨げてしまうなどは論外と言わなければならない。問題は、現在の医療水準では治療しても治らない疾患である。この場合、その疾患の本質を究明して将来の発展の素地としなければならない。自然科学の著しい進歩によって過去には不治の病とされていた疾病の多くは消失し、現在遭遇する症例のほとんどは慢性で難治性の疾患である。したがって、如何に悪化を軽減し、症状を安定させ、進行を緩徐に保持するかが、治療の現場では重要視されている。一方で、情報化社会と称される現状では、素人の飼い主であっても何時でも、何処でも専門的知識を入手することが可能である。このような背景から日常の獣医療にも大きな変化がもたらされている。すなわち、完治しない疾病の症例を処置しながら、飼い主の理解を得る必要がある。このことは、診療上極めて重要であり、また最近の獣医療の特徴でもある。
獣医臨床のこのような現状を踏まえ、企画されたと思われるのが今般上梓された『Clinical Veterinary Advisor』である。飼い主に説明し、納得を得るために獣医師が把握しておかなければならない疾病の要点が簡明に記述されている。編集委員長は米国で研鑽し、現在カナダで活躍中のEtienne Ct先生で、20名の各分野の専門家が編集委員となり、第一線で奮闘している約370名の執筆からなる大著である。本書の構成は6章で、いわゆる事典的要素を兼備した小動物臨床の手引書と言える。第1章は病名や診断名の基本的知識(定義、同義語、疫学、臨床症状、病理発生と病態生理)、診断(鑑別診断、初診時所見、その後の所見)、治療(目的、急性・慢性時の対応、薬剤の相互作用、併発症、監視)、予後・転帰、省察(見解、予防、飼い主指導、参考文献)である。第2章は方法や手技で、基本的知識として、同義語、概略と目的、適・不適、器材と麻酔、作用時間、注意点、失宜点、方法、処置後の問題、その他、必要なことが記載されている。第3章は方法や手技で、病理発生が表示されているものも多いが、websiteを見るようになっている。第4章は臨床検査の基本的知識で、定義、同義語、参考値の範囲、生理などである。第5章では、鑑別診断のための樹状図が示され、理解を容易にしている。第6章では薬剤と用量用法が表を用いてまとめられている。また最後には飼い主の指導についての各項目が記され、websiteを参照するようになっている。このwebsiteについては、パスワードが購入した本ごとに添付されている。本書は最新情報を提供する印刷物とonline系を合体させた情報源で、多忙な臨床獣医師や診療に関心のある人々には是非活用してもらいたいものである。
「獣医畜産新報」2007年4月号掲載
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Jaime H. Samour, Jesus L. Naldo
『Anatomical and Clinical Radiology of Birds of Prey』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
帯広畜産大学助教授 山田一孝われわれ獣医療の特徴は、診療の対象が解剖の異なる数種類の動物にまたがっていることであろう。そのため、いろいろな動物の解剖を把握しておかなければならない。獣医学教育の中で、牛、馬をはじめ、犬、猫、鳥類についても、比較解剖学を学んでいるはずではあるのだが、学んだ知識が卒業後、臨床の現場まで維持されているかといえば、なかなかそうともいえない。比較X線解剖ともなれば、なおさらである。小動物診療を専門にしている獣医師にとって犬種によるX線解剖の差はなんとかなっても、エキゾチックとなると、これは結構手強い。まして、日常診療で滅多に遭遇しない猛禽類が来院すれば、ほとんどお手上げである。そんな時、手元にレファレンスがあると助かるはずである。解剖を知識として記憶していなくても、何を参考にすればよいかを知っていることは、知識以上に必要な問題解決能力であろう。ここで紹介する『Anatomical and Clinical Radiology of Birds of Prey』は文字通り、猛禽類についてのX線解剖の教科書である。本書は、猛禽類の正常X線解剖が、タカ、ワシ、ハゲタカ、トビ、フクロウといった種類別に詳しく紹介されている。そして、猛禽類のX線像のみならず、正しいポジショニングで撮影するための手技、消化管造影、尿路造影、血管造影、脊髄造影の手技と画像までも紹介されているのである。さらに、豊富な症例として、創外固定、異物、感染症、腫瘍の画像が示されており、撮影ポジショニングが悪いために異常と間違えやすい症例、排卵障害と間違えやすい症例といった症例集に加えて、CTやMRIの画像についても紹介されている。また、本書は猛禽類のレファレンスではあるのだが、豊富な臨床例から、鳥類全般の画像診断の教科書としても利用できる。さらに特筆すべき項目として、付録のDVDで、CTやMRIの断層画像や三次元像を動画で見ることができるのである。汎用性の高いX線診断と、最新の画像診断機器を組み合わせた体系的な教科書である。
このような豊富な内容は、米国の研究者の仕事かと思ったが、本書の著者はアラブ首長国連邦の先生である。アラブには鳥を愛する長い歴史があり、鷹狩りが盛んなこの国で、莫大な研究費を投じて猛禽類の臨床研究が行われていることを本書からうかがい知ることができた。おそるべしアラブ首長国連邦。
「獣医畜産新報」2007年4月号掲載
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Theresa Welch Fossum et al.
『Small Animal Surgery 3rd ed.』2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
相川動物医療センター院長 相川 武本書は1997年の初版以来、多くの獣医師、獣医学生に親しまれてきた。獣医学生や新人獣医師にも理解しやすい基本的な用語説明、解説に加え、充実したカラー写真やイラストを使った手術手技説明は他の教科書には見られない特徴である。
今回新しく加わったリハビリテーションの項ではその基本的理論と手技の解説がされ、いくつかの実例写真が紹介されている。内容的には今後さらに充実する余地を残しているが初心者にとっては読みやすいと感じた。多剤併用による疼痛管理の項では、代表的薬剤の説明、併用の方法、用量の表、代表的な局所浸潤麻酔法手技がイラストとともに紹介されている。解りやすくまとまり臨床現場で疼痛管理を実施する際に参考になる。低侵襲手術(スコープ検査、手術)の項では基本的スコープの分類、用途の説明があり、各種検査の例が紹介されている。より詳細なスコープ手技は後の各論において個々に論じられている。新しく追加された情報や治療法にはAPマークが付けられ読者には見つけやすい。第2版に見られたSelected abstracts of recent manuscriptは削除されている。
軟部外科では、これまでと基本的な構成は変わりないが、眼科に関連する基本的手技(眼球内手術を除く)が単独の項となった。その他、腹腔鏡手術、尿道脱の尿道固定法、膀胱鏡検査による異所性尿管の所見などが紹介されている。心臓外科の項で心房中隔欠損の治療具が紹介され、上部気道の項で鼻腔への側方アプローチ法、口腔内アプローチ法や喉頭、気管の内視鏡検査法などが追加された。
整形外科においてはD.Hulseに代わりK.Schulzが加わり、基本的な項目の大部分を受けついでいる。UC Davisにおいて関節疾患についての様々な研究実績を持ち、関節鏡手技や人工関節の開発研究に携わり、その発展に力を注いできたK.Schulzが加わったことにより、第3版ではそれらの内容がより充実している。関節鏡による検査、治療法や前十字靭帯疾患に対するTPLO、TTA、股異形成に対するJPS、BiomedtrixのセメントレスTHR、その他ロッキングプレート法、ループサクラージワイヤー法、下顎骨折の歯内固定法などが加わっている。
神経外科では環軸亜脱臼の治療項目で新手技が紹介されている。初版以来、全体の内容の多くに変化無いが、現在あまり選択されない方法が依然として紹介されていることがあるという印象を持った。今回は第2版に取り上げられた末梢神経損傷に対する治療法の項が削除されている。
本書はわかりやすい基本的説明を重視する入門書としてのイメージがあったが、獣医学の進歩とともに少しずつ内容の改定が行われ、版を重ねるごとに最新の情報を取り入れている。多くの外科専門医によって評価されているために、一部の外科医の経験論や主観的判断のみに基づいた理論や手術手技の記載が少ないという点ではSlatter編の『Textbook of Small Animal Surgery』と共に獣医外科学のバイブル的書籍であると感じる。
「獣医畜産新報」2007年4月号掲載
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Otto M. Radostits, Cive C. Gay, Kenneth W. Hinchcliff, Peter D. Constable
『Veterinary Medicine A Textbok of the Diseases of Cattle,Horses,Sheep,Pigs, and Goats 10th ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本獣医生命科学大学名誉教授 本好茂一懐かしく有り難いBlodd先生の若返った一書が送られてきた。本書の第5版の訳書が文永堂出版社から出版されたのは1981年5月であった。当時、私が勤めていたのは、私立最古を誇る当時の日本獣医畜産大学であり、新米教授の私にとって正に内科学のバイブルであった。大恩人の東大臼井和哉教授との監訳の栄を受けたが、先生は突如、フィリピン大学へ長期派遣されることとなり、20人の訳者の協力で出版に漕ぎつけた。それから、原著者のBlood教授の来日、覚えたばかりの桝酒の飲み方を手振りを交えて、日本酒をぐいと飲まれたのが印象として今も思い出される。
そして2007年度版が第10版として、Radostits教授を筆頭に2,156頁の大冊となり、新知識を満載して編集発刊された。産業動物内科獣医療の伝統的な個体診療主体で充実した新方式に革められたのである。1980年代を境に米国で急速に大型化された牛や豚の群管理方式には目もくれず、個体獣医療の前に、堂々と診断、治療、予後について記述されている。日本の中に生産獣医療を推進すべく、大学退任後、今も続けている私にとって歴史の重みを深く感じている。
第10版の紹介記事を書く機会を与えて下さった文永堂出版社に感謝を込めて私見を述べさせていただくことにした。Part Tは動物別(牛、馬、羊、豚、山羊)内科学総論である。1. 臨床検査、診断中心に組み立てている。2.全身状態、3. 新生子の病気、4.抗生剤治療の実際、5・6. 消化器病T・U、7.肝臓と膵臓の病気、8. 心臓血管系、以下血液リンパ球と免疫系、呼吸器病…と続いている。
Part Uは専門医療として、細菌感染症、ウイルス、クラミジア、… 不明原因、23章でプリオン関連と広汎に詳述されている。
一方、家畜群への検査法としてはPartTの中で(p31〜37)、Step 1.異常性の定義、2. 群と亜群の中で異常を示すパターンの規準、3. ここで感染症、栄養の過剰や欠乏、遺伝性、管理失宜を、4.実験室レベルの確定診断、治療への対応、抑制への反応する尺度を挙げている。オセアニア地域ではずっと家畜は群飼であり、個々の群での行動観察が徹底しており、大小の群管理方式の中で綿密な獣医療が行われていたのだと判断すべきであろう。
平成19年2月24日 日本獣医師会、学会年次大会(さいたま)に出席して
「獣医畜産新報」2007年4月号掲載
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Jill Maddison, Stephen Page & David Church
『Small Animal Clinical Pharmacology』2002年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
東京農工大学助教授 桃井康行著者らは緒言においてヒポクラテスや錬金術師としても有名なパラケルススを引用しながら臨床薬理学の目的を述べている。その目的とは、“患者のために正しい薬剤を正しい用量で正しい期間与えること、そして薬による副作用を最低限に抑えることである。”しかしこのような目的を達成していくことには困難がともなう。彼ら偉大な先人たちの時代に比べて現在、小動物獣医療の現場では遙かにたくさんの薬剤が用いられている。21世紀になっても賢者の石は見つかっていないようなので我々は毒としての作用もある薬を使いながら副作用に気を配って動物を治療していかなければならない。しかも獣医師たちは血液検査を行いながら、X線を撮影して、診断書を書くと言う多忙の中でヒポクラテスの誓いを守っていくのである。
本書は臨床現場で働く獣医師やこれから臨床獣医学を学ぼうとしている獣医学生の高学年を意識して書かれている。これまでの薬理学の本は、時に臨床の現場で使われていないような薬剤が載っていることや新しく登場した有益な薬のことが載っていないことがあった。さらによく研究されている薬剤については記述が詳細すぎたり、逆にあまり研究されていない薬剤については記載が簡単過ぎたりした。一方、臨床の現場で重宝される処方集や薬用量のマニュアルはこれから臨床の基礎を学んで行こうとする人にとっては情報が少なすぎる。本書のタイトルにある“臨床薬理学(Clinical pharmacology)”は基礎としての薬理学と臨床を結ぶものであるが、本書は読者である臨床家が知りたいであろう薬剤を選択して情報を提供している。臨床家にとって薬剤を使う時に知りたい情報とはおそらく、基本的な薬理作用、投与量を推測するための薬物動態、臨床的な適応症と奏功率、副作用、それに薬物の相互作用についての情報であろう。本書は各薬剤についてこれらを項目毎にまとめており、それぞれ情報が過剰にならないように配慮している。このような読者に提供する情報の取捨選択には、著者の薬理学的な知識と共に臨床家としての経験が要求される。本書は臨床のために必要な情報のエッセンスを抽出することに見事に成功している。
さらに、多忙な現場で利用しやすくするために各薬剤やその見出しが検索しやすい形で記載されており、さらに特定の薬剤については必要な情報(例:治療プロトコールや副作用のまとめ)が加えられている。紹介されている薬剤やその基になる文献情報も新しく、商品名等も記載されているため、臨床家にとっては非常に使いやすいものとなっている。
「獣医畜産新報」2007年3月号掲載
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Stephen J. Withrow & David M. Vail
『Small Animal Clinical Oncology 4th ed.』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本小動物医科学研究所附属日本小動物がんセンター長 小林哲也本書をもって、『Small Animal Clinical Oncology』は第4版を迎えた。1989年の初版から18年間、3度に及ぶ改訂を繰り返し今日に至っており、獣医臨床腫瘍学の成書と呼ぶに相応しい本である。今回の改訂では、新進気鋭の多数の専門家達を新たに執筆者に迎え、彼らの研究分野を中心に多くのチャプターが新しく書き下ろされている。私自身、初版から本書を愛用しているが、版を重ねる毎に内容は充実し、確実に情報は更新されている。特に第4版からは全頁がカラー化され、図表、肉眼写真、顕微鏡写真、X線や超音波などの画像写真が大変見やすくなった。腫瘍学総論では分子標的治療や飼い主の心のケアに関するチャプターなどが新たに追加され、各論では各腫瘍の最新情報がアップデートされているだけでなく、様々な治療法の寛解率や生存期間をまとめた一覧表が多数見られる。また、総論から各論に至るまで、本の構成は初版からの流れを引き継いでいるため、以前の版の構成に慣れている読者でも探したいチャプターの検索は容易である。
本書は読者層を選ばない。腫瘍について学び始めた学生から、新卒獣医師、ベテラン獣医師、各科の専門医達まで幅広い読者層を満足させることであろう。確かに日本語を母国語とする我々にとって、英語で専門書を読むには多少の根気と根性が必要であるが、これだけの情報を論文から集積しようとする際の努力と時間を考えれば、完成度の高い本書を読む方が遙かに効率的であることは明白である。
近年報告された米国の統計では、犬の約1/2、猫の約1/3は悪性腫瘍によって命を落としているという。つまり、専門分野が何であれ、小動物臨床を専攻する限り悪性腫瘍との闘いは避けて通ることはできない。是非とも診察室の書棚に揃えておきたいmust haveの1冊である。
「獣医畜産新報」2007年3月号掲載
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Jacquie Rand
『Problem-based Feline Medicine』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
赤坂動物病院医療ディレクター 石田卓夫現在では欧米の獣医大学における教育の方法が、疾患別、原因別から、問題別、器官系別にシフトしている。学生がいざ臨床現場に出てみ ると、試験の時には良くできていても、臨床例に対してさっぱり診断がつけられないという問題に教員が直面し、それでは教える方法を変えてみようという試みから始まったものである。すなわち、“Problem-based”とは、飼い主が主訴として報告する臨床症状、あるいは問診や身体検査、その他の検査から明らかになった臨床徴候や検査異常、それを患者の“問題点”としてとらえ、そのような問題が明らかにある臓器系の問題を示しているのなら、特定の臓器系に目をつけて診断を進め、漠然とした問題ならば、その問題が起こるメカニズムを考えて行く、こういった診断における思考過程を指す。
本書は、猫における全ての疾患を網羅して、“問題点”から引くことのできる、猫の病気の辞書のようなものである。したがって、目次は問題別に、第1章 上部気道徴候(急性のくしゃみと鼻からの分泌、慢性鼻疾患症状、喘鳴)、第2章 下部呼吸器または心臓の徴候(呼吸困難または呼吸促迫、胸水貯留、咳、チアノーゼ)、第3章 心疾患徴候(異常心音/心肥大、心拍数または調律の異常)、第4章 尿路系徴候(排尿困難、失禁、尿色の異常、不適切な排泄、多尿と多飲)、というように各身体器官系を網羅して、あらゆる問題が目次に立てられている。問題の中には行動学的問題も、臨床検査上の異常所見も、さらには臓器系は特定できない漠然とした問題、子猫特有の問題や、薬物に関する問題点も記載されている。
各章は細かく問題別に分けられ、そこにはその問題が起こるメカニズム、その問題はどこで起こっているか、そしてその問題が起こる病気には何があるかの順で書かれている。病気には何があるかの項では、一般の教科書同様に、その病気の詳しい説明から、最新の治療法までが書かれている。したがって、本書は猫の臨床の教科書であることは間違いなく、これまでの教科書との違いは、病名がひらめいてその項を参照するのではなく、患者の問題からたどって行くと、その病名にたどり着くというものである。
編者のJacquie Rand(女性)はオーストラリア、クイーンズランド大学の教授で、Center for Companion Animal Healthの所長を務める。米国獣医内科専門医の資格を持ち、獣医界で広い交流を持つことから、本書の執筆は、英国、米国、カナダ、オーストラリアなどから専門家を選りすぐって行われている。記述は詳細であり、ほぼすべての病気を網羅してあることから、かなり膨大なボリュームで、しかも図版などは少なく、もっぱら文章で綴ってある。したがって、一気に読むのはかなり大変であるが、いわゆるクイックリファレンス的な本ではないので、ある程度読んでおかないと、患者が来てから読める本でもないと思われる。
「獣医畜産新報」2007年3月号掲載
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Safia Barakzai
『Handbook of Equine Respiratory Endoscopy』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清馬の呼吸器系疾患の内視鏡図譜である。すなわち馬の呼吸器とその疾病の内視鏡像に慣れ親しむための便覧である。また実際の内視鏡検査時に携帯して参照するための本である。そして130頁あまりのA5判の小さな本である。この本が生まれたのも獣医学領域における内視鏡の発達によるばかりでなく、馬の呼吸器病がメジャーな疾病で、なおかつ内視鏡検査が日常診療においてきわめて有用だからである。
第1章と第2章は内視鏡器具と使用法の説明であるが、ハンドブックであり、初学者や学生をも対象にしている本なのでもう少し実際的な記述が欲しい。たとえば検査者や馬、また内視鏡自体に安全な使用法や取り扱い方である。内視鏡の洗浄や消毒法についても具体的かつマニュアル的な記述があったらよかった。しかし、その後に続く第3章から第7章の鼻腔、咽頭、喉嚢、喉頭、気管・気管支の正常内視鏡像と疾病像の写真と簡潔な説明は満足できる。欲をいえばもう少し理解が深まる解剖図が添付されていればなおよかっただろう。
私は今まで馬の呼吸器の内視鏡検査時には『Equine Endoscopy 』(1999, Mosby)という本を携帯して使用していたが、今後はこの本を使うだろう。それはよりたくさんの疾病の内視鏡写真があるからである。ビジュアル(画像診断)の強さを納得させる現代の馬の診療になくてはならない1冊である。
「獣医畜産新報」2007年3月号掲載
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Juan C.Samper, Jonathan F.Pycock & Angus O.McKinnon
『Current Therapy in Equine Reproduction』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
帯広畜産大学教授 三宅陽一この10数年、馬の繁殖管理に関する幾つかの著書が刊行され、様々な新知見を目の当たりにできるようになってきた。それらの中でも、ここで取り上げる『Current Therapy in Equine Reproduction 』(2007, Saunders)は61名の著者によって書かれたもので、馬の繁殖管理に関わる66話題が豊富な新知見をベースに載せられている。
本書の特徴の1つは著者の多くが実際にフィールドで日夜馬の繁殖管理を含む診療に携わっている獣医師であることだ。また、若手の大学教員や学生、大学院生とおぼしきメンバーが執筆しているのには、さらに驚かされるとともに、この分野の研究の拡がりに深い感銘を受ける。
内容は、開業の獣医師や、学生、さらには馬の繁殖管理者をターゲットにして、馬の繁殖に関する管理の全てが実にバランスよく網羅されている。繁殖障害の診断、あるいはその外科的処置も含めた治療法についても言及している。馬の内分泌動態の研究成果が披瀝されていることや、豊富なエコー像はこれから馬の繁殖学を学ぶ学生や、フィールドでの繁殖管理の理解に欠かせないものとなっている。
本書は全部で8章に分かれている。第1章には雌馬の卵巣動態と子宮の変化、発情や排卵の同期化処置、加えて発情の抑制法などについて書かれている。第2章には雌馬の繁殖障害に関わる問題に焦点をあわせて、卵巣、卵管、子宮、外陰部の病的な状態について記述され、内分泌的、細胞遺伝学的、外科的処置が網羅されている。第3章と4章には種雄馬の正常な生殖器の構造と機能、その検査法、障害について書かれているとともに、第5章では受胎率の向上に欠かせない精液の採取、採精液の評価について記述されている。そして、第6章には胚移植を含む最新の生殖補助療法について紹介され、第7章では妊娠に伴う諸問題が、第8章では分娩後の繁殖管理のポイントがよく述べられている。このように本書は高い生産性が求められている馬の繁殖管理に利する優れた指導書となっている。
ただ残念なのは、著者の中に日本人研究者・獣医師の名前を発見できなかったことだ。わが国には西川義正先生を筆頭に、馬の繁殖管理や指導に長けた多くの獣医学関係者による研究成果を基に、今日の日本の馬産が支えられてきた。しかし、西川義正先生は別格として、それらの成果はまだ国際的な評価を得るに至っていないかもしれない。是非とも、大いに海外の研究を凌駕するような独創的で、優れた研究の進展が望まれているところであり、今日その芽は大いにあると思っている。青雲の志をもって、日本発『馬の増産』の発刊に期待するところである。
なお、Wisconsin-Madison大学のGinther,O.J.教授が、『Reproductive Biology of the Mare』の第3版を近々出版の予定と聞く。本書の刊行とあわせて、馬の生殖科学および繁殖管理に関わる新知見が続々と現われることは、馬生産に携わる獣医学関係者にとって真に喜ばしいことだ。
「獣医畜産新報」2007年3月号掲載
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Bruce C. McGorum, Padraic M. Dixon, N. Edward Robinson & Jim Schumacher
『Equine Respiratory Medicine and Surgery』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学教授 田口 清獣医療の大きな流れや方向には専門科と専門家による専門医療がある。馬を馬足らしめるすばらしい運動能力が呼吸器による換気と酸素交換に負っていることを思えば、呼吸器病の専門領域が確立されるのもうなずけるだろう。もちろん馬の呼吸器疾患はメジャーである。そしてこの本は、過去15年のこの領域にもたらされた目覚しい進歩(疾病の理解とその診断と治療)を基礎科学から臨床科学そして内科・外科医療まで網羅した700頁におよぶ専門書である。
内容には、呼吸器の構造と機能および免疫と薬理に100頁、臨床診断・ラボ診断・画像診断・機能検査、胸腔鏡検査と生検、剖検に200頁、ウイルス・細菌感染症に100頁、上部気道疾患と下部呼吸器疾患に250頁、子馬の呼吸器疾患と胸壁・胸膜・縦隔膜・横隔膜疾患に50頁がおよそ割かれており、そうだったのかと目の前が開けるような内容が続く。どの章にも大判の見やすいカラー写真と図が添付されていて大著の取っ付きにくさを感じない。また各ブロックの頁上は色分けされていて使いやすい。
忙しい診療の合間に参照するにもよし、ゆっくり今日の時代の物語りとして熟読するのも楽しい本である。専門知識が1冊の本で得られる不思議と幸せとともに、ほんとうに知の世界秩序は変わったのだというような感覚が深く残った。そしてこの本を実際の馬の診療に役立てよう。他の動物種を扱う獣医師にとっても呼吸器病の理解を深くする必読の書である。
「獣医畜産新報」2007年2月号掲載
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Robert S. Youngquist & Walter R. Threlfall
『Current Therapy in Large Animal Theriogenology 2』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
鹿児島大学名誉教授 浜名克己Youngquistによる同名の初版が1997年に出てから、待望久しく10年ぶりに本書が刊行された。初版と同様に大部であり、A4変形版で1061頁に及ぶ。本書のまず第1の特徴は豊富な執筆陣にあり、全米、全カナダを網羅し、オーストラリアから数名、メキシコ、ペルーからも加わり、総計177名に達している。職域は大学教員が主であるが、臨床獣医師や民間会社員も加わっており、羨ましいほど層が厚い。それぞれが主に1、2項目、多くて6項目を担当している。
対象動物は7種類に分けられ、牛の記述が最も多い(290頁)が、北米ではコンパニオンアニマルとなっている馬も非常に多く(220頁)、山羊、羊、豚、ラマ科(ラマ、アルパカ)、特用家畜(シカ科のアカシカ、ワピチ、ダマシカ、尾白シカ、トナカイ、Axisシカ、トナカイ。バイソン)がいずれも100頁を超えている。またいずれも雌に片寄らず、雄についてもしっかり記載されているのも本書の特徴である。
内容は繁殖生理(解剖を含む)に始まり、妊娠診断など各種検査法、繁殖障害の各項目、外科および産科処置について、図表・写真が多用され(計456枚)、分かりやすく具体的に記述されている。また各家畜について、群としてのReproductive Health Program(繁殖管理)が詳述されている。文献が豊富で、ある項では219もあげられており、近年のものに加えて、1940年代のものも含まれている。いくつかの項では、多すぎるので「新規以外は初版を見よ」とある。その中で、世界的に有名な名著Robertsの『Veterinary Obstetrics and Genital Diseases. 3rd ed』(1986)は、今なお広く引用されている。
バイオテクノロジーを用いた生殖補助医療(ART)の項もあり、一方、乳牛の周産期の代謝性疾患についても24頁にわたって記述されている。最新の知見が多く含まれているのは当然で、例えば、牛の胎盤停滞の治療法として、用手剥離は禁忌であり、代わってコラゲナーゼを胎盤動脈内に注入すると、36時間以内に85%が排出されたとある。帝王切開時に本法を応用すると、その後の胎盤停滞の防止にもなる。
産業動物臨床における繁殖学の地位は、生命に直接かかわることが少ないため、ややもすれば軽視されてきた。しかし、近年は生産性を向上させるため、飼い主は獣医師に繁殖関連の進んだ技術とその適用を強く求めるようになった。それらには、胚移植、体外受精、凍結精液、精液輸送、定時授精、高い繁殖性の維持などがある。
本書は獣医学の学生にとっては教科書として、また教員と臨床獣医師にとってはすぐに役立つ参考書として非常に有用であり、ぜひ手許に備えたい1冊である。自動翻訳機があれば、直ちに日本語として紹介したいほどの価値がある。
「獣医畜産新報」2007年2月号掲載
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Susan G.Wynn & Barbara J. Fougre
『Veterinary Herbal Medicine』2007年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学教授 長谷川篤彦洋の東西を問わず、古くから植物を治療に使用し、その効果についての記載が集積されてきた。中国においては数千年の経験に基づき後漢時代にまとめられた神農本草綱目が古典として有名である。我が国においても、中国からの影響を享受しつつ我が国の医学として発展をとげ、漢方医学として今日に至っている。江戸時代には、我が国独自の本草綱目が出版されている。獣医療においても医療に追従して進歩してきたことは周知の事実である。このような伝統的な医学が、近代科学を基盤とした医学における問題を解決するために最近特に注目されるようになっている。
獣医東洋医学会もこのような時代の趨勢にあって創設され、この分野の発展に努力している。また2005年にアジア伝統獣医学会が設立され、2006年10月北京で第1回大会が開催されている。西洋にあっても薬草の歴史は古く、その研究も盛んであり、獣医領域における関心も年々高まっている。
今般、Wynn, S.G.とFougere, B.J.の両先生が編纂された『Veterinary Herbal Medicine』がMosby 社から出版された。現在、この関連各分野で活躍中の20名に及ぶ執筆者による約700頁の大著である。
本書は5章から構成されており、第1章は緒論で、歴史を踏まえた薬草医学の概説である。第2章は薬草の治療における位置付けを明らかにする必要性やその手続きについて紹介している。第3章では、薬草として使用される植物についての解説で、薬学的背景を主体に論述されている。第4章は臨床における有用性を中心とした項目である。臨床の実際面と馬や牛での治療上の問題が記述されている。また、200頁以上を割いて各薬草それぞれの特性を記載している。最後の第5章は付録で、用語解説など実用上役立つ5項目について示されている。
したがって、本書はこの分野を志す後学にとって必見の書物であり、初心者は勿論のこと経験を積んだ臨床獣医師や研究者にとっても極めて利用価値の高い好著であると思われる。
「獣医畜産新報」2007年2月号掲載
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Teresa Bradley Bays,Teresa Lightfoot, Jerg Mayer
『Exotic Pet Behavior Birds, Reptiles, and Small Mammals』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学助教授 深瀬 徹動物行動学(ethology)という学問領域がある。簡単にいえば、動物の行動を研究する生物学の一分科である。その対象は動物であればとくに問わないはずだが、実際には野生動物を主たる対象としている研究者が大半であろう。
しかし、ペット(あるいはコンパニオンアニマル)として飼育されている動物や産業用に飼育されている動物についても、飼育下における行動を理解することにより、それを獣医臨床に役立てたり、生産性の向上に利用することが可能である。また、“異常”な行動を示す動物は、その行動そのものが治療の対象となることもある。
獣医学においては近年、動物の行動、とくに犬と猫の行動に関する研究が進み、その成果が臨床に応用されつつある。そして、いくつかの書物も出版されている。
前置きが長くなったが、ここに紹介する書籍は、『Exotic Pet Behavior Birds, Reptiles, and Small Mammals』という。書名のとおり、犬、猫ではなく、いわゆるエキゾチックペットの行動を解説したものである。
犬や猫とは異なり、エキゾチックペットには愛玩動物としての歴史が浅いものが多い。そのため、人間との生活に十分に適応していない種が多いことは当然である。これはいたしかたのないことであるが、さらにまた、その動物に関する知見の欠如から、その種に適した飼育が行われていない例が多いことも事実である。エキゾチックペットには、不適切な飼育に起因する疾病が多発する。
その不適切な飼育には、飼育環境がその動物の生態を反映していないことのほか、飼育方法がその動物の行動に適していないことが含まれるのはいうまでもない。エキゾチックペットの飼育に際して、最近は種々の環境に配慮することが多くなってきているが、行動についてはほとんど注意が払われていないのではないだろうか。
本書が扱っている対象は、掲載順に記せば、ウサギ、インコ類、爬虫類、フェレット、モルモット、小型齧歯類(マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター類〔ゴールデンハムスターおよびモンゴルキヌゲネズミ〕)、その他の小型哺乳類(チンチラ、フェネック、ハリネズミ類〔主にヨツユビハリネズミ〕、オグロプレーリードッグ、ハイイロジネズミオッポサム、フクロモモンガ)である。そして、これらの動物の各々について、たとえばグルーミングのときや繁殖のときなど、種々の場面における行動を簡単に解説し、加えて飼育や臨床への行動学的知見の応用についても言及している。エキゾチックペットの飼育と診療に際して、得るところが大きい書物であると思う。
是非、猫の行動学に関する良書である『Feline Behavior: A Guide for Veterinarians』(翻訳書:森 裕司 監訳『臨床獣医師のための猫の行動学』、文永堂出版)と併せて読まれることをお奨めしたい。この書物は猫の行動学に関するものであるが、他種の動物にも参考になることが多く、また、翻訳書については、その訳が秀逸である。
「獣医畜産新報」2007年2月号掲載
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Stanley I. Rubin & Anthony P. Carr
『Canine Internal Medicine Secrets』2007年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
タカダアニマルホスピタル副院長 小村吉幸面白い本が出版された。臨床でよく遭遇する諸問題の重要なポイントについて、神経および神経筋肉、心臓、呼吸器、内分泌、消化器、泌尿器、生殖器、多発性/全身性の問題、血液リンパ系、感染性疾患の10カテゴリーに分け、Q&Aの形式で解説してある。我々が日頃接するセミナーでも、熱心な講師は受講者から質問されることをとても喜ぶ。真剣に耳を傾けてくれている証拠だからである。しっかり理解しようとすれば、誰でも知識の浅い部分がおのずから顔を出して出てくるものである。そこに気づくことができるからこそ、楽しく有意義な勉強なのである。また、“自分がわからないときは人も同じ! あなたの疑問は周囲の10人の疑問でもある!”とよく言われる。コンピュータがいうことを聞かないときに、マニュアル本を読み返すよりも、サポートページの“よくある質問”をチェックすることが役に立った経験があることでしょう? そんなことを考えつつ読み進めると意外に早く読破できる。実力試験のつもりで利用してみると面白い。本書の英文は簡潔明瞭であり、日ごろよく使われる表現満載である。そこで、臨床獣医学英語を勉強中のインターンにはダブルの利益が得られる格好の勉強材料であろう。“IBDとは何でしょう?”、“IBDの臨床徴候とは何ですか?”と後輩に聞かれたとき手短に何と答えるか。それとも本書を手渡すか? Seeing is believing! ぜひ、ご一読いただきたい。
「獣医畜産新報」2007年2月号掲載
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David A. Wilson, Joanne Kramer et al.
『Manual of Equine Field Surgery』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清この本は表題のとおり馬の野外手術のマニュアルである。この本が扱っている野外手術とは1時間以内で実施できる手術、起立位鎮静下で行える手術、腹腔や関節を開けない手術、および特別な器材を必要としない手術である。それも頭部の手術から泌尿生殖器の手術まで34種類の手術法(馬だから当然のことながら肢の手術が4割だが、すべての野外手術が網羅されているといってよい)について、適応症、保定法、必要な手術器具、解剖、手術手順、術後療法、予後、合併症、他の選択肢が明快な図と写真とともに記載されている。そして症例の選択なり手術に関する注意事項が各手術法説明の最後にコメントとして付け加えられている。各種手術項の記載に先立つ第1章では、手術前の患者と手術器具の準備、創の取り扱いと縫合法、骨折の緊急処置法、野外手術の麻酔法が記載されている。また付属のDVDは手術のイメージを明確にする大いなる助けになることも本書の特徴である。
マニュアルは余分な記載(たとえばそんなものがあればだが、手術の不可視的真実や可視的秘密)を取り除き、実際的かつ単調に書かれているからこそマニュアルである。ここに取り上げられたマイナーサージェリーの確立された手順と技術はマニュアル化にうってつけなのかも知れないが、それにも益してどの手術の項の記載と図説も的確である。臨床の初心者あるいはそれぞれの手術における初心者はこの本を携えて経験者の手術に付き合い・思いをこらすことで、自らの手術者としての自己形成や自己完成ばかりでなく、手術のもつ重要で基本的な性質をあるがままに見ることができる、そんなマニュアルである。
「獣医畜産新報」2006年11月号掲載
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Mary RoseParadis
『Equine Neonatal Medicine A Case-Based Approach』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清馬の新生子学は1980年代初頭から認知されるようになった。この本の目的には、馬の新生子学の25年間の発展を記載すること、そしてそれらの情報を馬の新生子学の全体像として読者が実際的かつ能動的に読み取れるように記述することにあると序文で宣言されている。後者は本書の野心的な試みであり、タイトル内にある“A Case-Based Approach”を示す。すなわち従来の獣医学教科書のありように対するチャレンジである。各章に区分された新生子馬に関する臨床的問題や疾病群の診断・治療・予防の説明は、1症例の提示から始められ、知識がストーリーとして展開される。読者は他人事としてではなく、症例を取り扱う参加者となって読み進むことができるようになっている。各章で扱われている臨床問題と疾病群には、新生子馬の評価、ハイリスク妊娠馬、新生子馬の免疫、栄養、敗血症、蘇生法、非感染性呼吸器問題、非感染性の筋骨系問題、神経機能不全、消化器問題、臍帯と非尿器疾患、心疾患、眼科疾患が含まれ、1症例の記述を基に最も多く遭遇する状況と疾病の最新の理解と対処法が得られる。なぜこのようなすばらしい本が海外でできて、日本でできないのだろうか。それは馬の新生子学の発展とその情報を社会と共有しようという高い志をもって新生子馬の臨床医療に真摯に取り組む専門家と誇りが存在するからであろう。症例の臨床症状、処置法、検査に関する写真は数も多く、カラーで美しい。本を読むということは個人的行為のようでも、本質的には他者の世界にかかわることであることが再認識され、本書の目的は十分に達成されている。
「獣医畜産新報」2006年11月号掲載
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Francis Smith,Bruce Keene, Larry Tilley
『Rapid Interpretation of Heart and Lung Sounds A Guide to Cardiac andRespiratory Auscultation in Dogs and Cats 2nd ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
茶屋ヶ坂動物病院院長 金本 勇ベテランの臨床家にとって心音と肺音を聴診することは、それだけでも心血管系を評価できる情報量の多い検査手段である。それらの聴診所見に詳細な病歴と身体検査を加えて評価すれば、確定診断に結びつくことが多い。聴診器は保管も簡単で、持ち運びも便利な診断器具であり、聴診は患者にとって侵襲性がなく、安価で、場所を選ばない検査法の1つである。正確な診断所見を得るためには十分な聴診テクニックのトレーニングが必要とされるが、残念なことに臨床家が十分な聴診テクニックを得るための熱心かつ継続的な教育プログラムが行われていない。この本はテキストとCDで構成されており、聴診テクニックを習得する方法を手助けしてくれるように企画されている。
このテキストとCDは、人の内科医のために高く評価されたプログラムを著者らが獣医師のために改作したものである。このプログラムでの心音の大半は心音シュミレイター(擬似音作成器)で作成されているが、それは、聴診者が肺音や聴診器と体毛との摩擦音によるアーチファクトに気を散らすことのないように教えるためである。また実際症例の経験も価値があるため、臨床例からの録音サンプルも補足されている。
ただ惜しいことは、CDが英語で説明されていることである。英会話の勉強を兼ねて聴診をトレーニングするには最適であるが、一般開業医には少し難しいかもしれない。しかし、それを補うのに十分な内容の多い教科書であり、推薦したい本である。
「獣医畜産新報」2006年10月号掲載
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C.Wayne McIlwraith, Alan J.Nixon Ian M.Wright & Dr.K.Josef Boening
『Diagnostic and Surgical Arthroscopy in the Horse 3rd ed.』2005年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清臨床テクニックとして馬の関節鏡は20年前に本著者のMcIlwraithによってはじめて用いられた。この本は馬の関節鏡による診断と手術アトラスの最新版(第3版)で、第2版が1990年に発行されているので、本書はこの領域の過去15年間の進歩を網羅している。
ページをめくると惜しみなくカラー写真と図が配置されているのに驚く。それは内視鏡というとてもビジュアルな世界を説明するということから考えれば当然ではあるが、何をどこからどのように見(診)、そしてその当該構造と病的変化を即座に理解できるようになっていることにまた驚く。図や写真は直感的理解を可能にする共通語であるが、さらに著者は図や写真に依拠したテクニックだけではなく手術結果についても多くを記述している。これは病状や手術に関する畜主との話し合いに大いに役立つことは容易に想像できる。そういえば馬の獣医さんほど、畜主によく説明し、よく話すものはいないなあ、と米国で馬の診療風景を眺めながら考えたことを思い出した。
新しく加わった章には、肘、股、趾節間、顎の各関節の関節鏡診断と手術、腱や滑液嚢の関節鏡、関節・腱・滑液嚢の感染時の関節鏡治療などがあり、その発展・技術的進歩には目を見張る。本書は馬の外科医やレジデントにはこころをかたむけて読むことができる絵本といってよいかもしれない。そして宝物であるし、座右の書である。
「獣医畜産新報」2006年9月号掲載
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Joseph Bertone
『Equine Geriatric Medicine and Surgery』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清Geriatricsとは老人病学のことである。20歳代になった馬でも活動的で、乗馬できる状態でいられることに馬のGeriatricsの興味は向いている。馬も人と同様に「ヨルトシナミ」の体と心になるのである。しかし老齢馬の定義からして難しい。それは馬の使用目的によって異なるからである。繁殖馬では16歳は明らかに老齢であるが、ポロ競技に使うのなら最盛期であるし、競走馬をリタイヤした馬は狩猟のための馬としては若い馬だからである。これを機能的年齢というそうであるが、そのほかにも人口統計上の年齢や生理学的年齢というのが実年齢とともに考慮されねばならないということである。
馬の老齢と関連して、跛行、体重減少などが一般的な問題としてあるが、これらは治療できるし、予防もできる対象である。この本では老齢馬の健康を獣医学的にマネジメントする医療が、心臓病学、内分泌学、歯学、消化器病学、栄養学、泌尿器病学、腫瘍学、眼科学、呼吸器病学、神経病学など多くの観点(章)から記述されている。
かつて司馬遼太郎は「馬をおもうとき、かなしみを感じないひとがいるだろうか。」と書いた。老齢馬に関するヒューマンアニマルボンドやそのケアにおける感情的課題についても獣医療の記述とともに各章に散りばめられている。馬というのは人にとって本当に特別な動物のようである。老齢馬のケアについて獣医師や畜主の関心が高まっていることも事実だそうである(だからこのような本が出版されるのだが)。この本が馬を思う静かな時間、きれいな時間をくれることも真実である。
「獣医畜産新報」2006年8月号掲載
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Andrew J.Higgins & Jack R.Snyder
『The Equine Manual 2nd ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本獣医生命科学大学名誉教授 本好茂一馬の獣医療の最近の知識は、内外を含め専門学会なり専門誌・専門書に頼ることになる。馬医療の進歩している情報は、小動物医療とは較差が広がっている。本来獣医療の発足の歴史は、馬中心で始められたにもかかわらず、馬産の生産低下に伴い、むしろ高度医療の必要性は高いが、それに報いることのできないもどかしさを痛感している。
ここで紹介する一書“馬のマニュアル”はこの狭間を埋めるものである。優れた英、米その他の執筆陣により簡潔にまとめられている。内容は新鮮で充実感があり、しかも圧巻である。
まず感染症から始まり、馬ヘルペス、次いで馬インフルエンザと続き、締めくくりは血液原虫、組織原虫病となっている。米国で猖獗を極めているウエストナイル感染症は、神経系の17章に容れられている。
馬の獣医療は、生産、育成、その上で主として競走場裏での活躍であり、単に走るだけではなく、能力を超えた大観衆の熱烈な期待がわが身の化身となり、心身ともに人馬の調和が生まれるために、馬医療の限界をはるかに超えた要求がある。有名馬の引退が、プロスポーツ界にも及ぶくらいの批判の対象となる。その1つの屈腱炎などは遺伝資源として能力が残されるだけでなく、再び現役で活躍して欲しいものである。15章では診断、治療について述べられている。
馬は草原のランナーとして、肉食動物から逃れるための抜群の視力と脚力を備え、草食の雄として家畜化され、能力の向上を重ねてきたが、消化器より心肺機能に重点が移り、消化器に負担の少ない穀物重視となり、食道、胃腸疾患も複雑化してきた。例えば、食道狭窄の原因として、食道を形成する外膜と筋層とを含めた食道壁の病変、粘膜を含む食道輪または食道ウエブ(不規則な萎縮、水かき様形成物)、輪状食道壁の管状の狭窄、環状損傷の線維化の結果としている。
また、競走馬で好発する胃潰瘍の項では、欧米諸国で汎用されているプロトンポンプまたはH2受容体アンタゴニストとしてのオメプラゾール、シメチジン、ラニチジンなども日本でもようやく基礎試験、臨床試験も終わり、目下申請中のようであり、競馬関係者の待望久しい薬剤の詳細が述べられている。
研究者、教育者、臨床家、実務家、そして学生、院生にとって、総合的な最新の知識や技術の取得の上でも待望の書である。訳書への期待は現状では望むべきもない。原著を楽しみながら幅広い読者への期待、そしてその影響力は少なくないと信じている。
「獣医畜産新報」2006年7月号掲載
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Margaret V. Root Kustritz
『The Dog Breeder's Guide to Successful Breeding and Health Management』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 津曲茂久本書はアメリカの犬のブリーダーを対象として書かれたものである。著者のRoot Kustritz女史は犬の繁殖学の著名な学者であり、2001年に獣医師向けに出版された、現在この分野で最も定評を得ている“犬猫の獣医繁殖学”の著者の1人でもある。従来の犬のブリーダー向けの本はややもすると一部の分野に偏っていたり、素人向けの平易過ぎる内容であったりと1冊の内容としては不十分な本が多かった。その点本書は犬のブリーダーは勿論のこと、毎日の診療で犬の繁殖に従事することの少ない獣医師にも大変参考になる実践的かつ有益な情報が網羅されている。これらの内容の多くは“犬猫の獣医繁殖学”を簡略に書き直した観があるが、前著書と異なり全編に亘りカラー写真が豊富に使われており、読み飽かせないよう工夫されている。さらに、内容の理解度を確認するために小項目ごとに、ブリーダーから良く受ける質問コーナーや理解度診断コーナーが設けてある。
内容は大きく分けて4章から構成されている。すなわち、1章:栄養と基礎科学、2章:雌犬の臨床管理、3章:雄犬の臨床管理、4章:犬の繁殖に関する一般的管理である。1章と4章は犬のブリーダーを特に意識した内容であり、本の本来の趣旨に最も合致した部分である。2章と3章は雌雄犬の臨床管理とあるように、犬のブリーダーが実際に行う内容というよりは、臨床獣医師の診療内容を理解させ、獣医師に診療を依頼する時に必要な犬の徴候変化などを教示した内容になっている。したがって、これらの部分は臨床獣医師に大変参考になる内容であることは疑いない。若い獣医師からは、大学卒業以来犬の交配や分娩立ち会いの経験がほとんどないために、飼い主にどのような徴候が現れたら来院指示すればよいのか、確信が持てないとの意見を聞くことがある。この本はそのような獣医師に是非読んでもらいたい書である。
最近、我が国においても、犬の凍結精液人工授精で生まれた子犬を登録認定しようとする機運が高まりつつある。しかしながら、新しい理論に裏打ちされたホルモン測定による交配適期診断や子宮内に精液を送り込む人工授精技術の両方が伴わないと、犬の凍結精液による受胎はほとんど期待できない。そのような意味で犬の繁殖に長年携わってこられた獣医師にも推薦したい本である。
「獣医畜産新報」2006年7月号掲載
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Jrg A.Auer & John A. Stick
『Equine Surgery 3rd ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清本書は馬の外科と手術に関してすべてを網羅した最新の第3版で、65名以上のエキスパートによって執筆されている。最初の3章はいわゆる外科学総論ともいえる内容で、手術生物学、手術法、麻酔に関する最新の進歩(ショック治療、敗血症、創傷療法、外科患者の代謝と栄養管理、手術感染、抗菌療法、滅菌消毒、疼痛管理法など)が記載されており、そのページ数も110ページと第2版の倍以上になっている。これらは第4章以降の各外科的疾病の記述にも増して、手術全体に関する取り組みやその考え方を読み取ることができ、外科療法や手術について深く考えさせる章となっている。退屈な総論ではなく、エキサイティングな最新情報であり、外科に関する新しい心構えやアプローチが得られる。
第4章からは馬の各外科疾病の成り立ち、病態、症状、診断、治療、予後などが臓器系別の章立てで詳細に記述されている。疾病の理論的理解にきわめて有用であり、その記述は手術適応やその方法について明快である。またこれらの記述は畜主に当該馬の罹患疾病や手術について説明するためにもわかりやすく整理されているといえる。本書は手術アトラスではないので詳細な手術手順の図示はないが、要領よく図と写真が数多く配置されており、経験のある獣医外科医にとって手術法の理解に困難なことはない。しかし、初心者や学生は手術アトラス書や解剖図譜などの他書と併用する必要があるかもしれない。
手術というものが成書の図や写真のとおりできるようになるイメージがいかに重要であるかを示し、外科医として自分を確かなものにしていく力、自分に書き込む行為が備わった書である。本書によってエキスパートと同じ知識レベルが得られるはずである。
「獣医畜産新報」2006年7月号掲載
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Richard B.Ford & Elisa M.Mazzaferro
『Kirk and Bistner's Handbook of Veterinary Procedures and Emergency Treatment 8th ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦1969年にKirk先生とBistner先生が当時の急速に発展する小動物診療の状況を踏まえて、臨床獣医師が要求される諸問題に対処しなくてはならないことを念頭におき、その指針として“診療技法と救急対処法”を刊行した。以来、多くの臨床獣医師に活用され、また改版を重ね、初版から37年目の今年、第8版がR.B. FordとE.M. Mazzaferronoの両先生によって上梓されたのが本書である。診療の鉄則であある迅速な対応を主眼とする構成は初版以来貫かれているが、そこには小動物臨床の最新知識と最高水準の技法が包含されている。
本書の構成は6章であるが、表紙を開くと先ず緊急時における主な治療対象がアルファベット順に記載され参照する頁が示されている。また裏表紙には臨床検査の参考値が表示されている。第1章は救急対応の基本的事項が述べられており、本書の約40%の300頁を占めている。第2章は問診、一般検査、カルテの記載、各器官の精査についての記述である。第3章は主要な臨床徴候の解説で、定義、関連徴候、鑑別診断(主に箇条書きで表示ないし流れ図)および診断計画である。第4章は診断治療の手法についての説明である。日常臨床の現場で必須の手技の解説で習熟の助けになるものと思われる。第5章は所謂臨床病理学の範疇のもので、臨床検査の進め方、検査の手法などが詳述されている。第6章は各種動物(犬、猫、齧歯類、ウサギ)に関する基礎的情報や臨床検査値が表示されており、100頁にも及んでいる。勿論常用薬剤の適応や用量の表(約60頁)も含まれている。
以上のような内容の本書であることから、臨床獣医師は勿論のこと、獣医学関係者をはじめ獣医師を志す学生にもお薦めしたい一書である。
「獣医畜産新報」2006年6月号掲載
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P.M.Taylor & K.W.Clarke
『Handbook of Equine Anaesthesia』1999年・Saunders発行、2005年リプリント 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清臨床現場(病院とフィールド)での馬の鎮静法と麻酔法のガイドラインを記したコンパクトな最新のハンドブック(190ページ)である。最新であることの意味は、麻酔薬や麻酔薬に対する馬の反応に関する理解の著しい進歩、新しい麻酔薬、新しい技術、古い薬の新しい使用法などによってより安全でコントローラブルな馬の麻酔が可能になったことに起因する。しかし、この小さな本は最新であるばかりでなく、基本的な馬の麻酔手技を網羅した臨床マニュアルであり、「元来、安全な麻酔薬などはなく、安全な麻酔者だけがいる」ことを前提に、麻酔を安全に実行することをコンセプトとしている。したがって、鎮静法・無痛法・麻酔前処置法、静脈内麻酔法、吸入麻酔法とその薬物使用といった教科書型知識の羅列ではなく、麻酔モニター法と麻酔に付随して起こる問題についてもそれぞれ章を設けて写真と図とともに要領よく説明されている。さらに子馬、妊娠馬、帝王切開、整形外科、急性損傷、疝痛、眼科手術などの特別の場合の麻酔法についてその病態生理から麻酔覚醒までの麻酔手順がまとめられている。臨床現場のハンドブックとしての使用はもとより馬の鎮静・麻酔法全般を理解するためにも一読の価値がある。索引の項目は非常に使いやすく適切で、また本に付いている赤と白の2本の紐状のシオリはかわいらしく、便利である。馬の麻酔に関わる臨床家あるいは学生にとってポケットや卓上に常にあるべき本の1冊である。
「獣医畜産新報」2006年6月号掲載
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Keith Barnett
『Diagnostic Atlas of Veterinary Ophthalmology 2nd ed.』2006年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
おおた動物病院 院長 太田充治感覚器の診療において、診断に必要な検査結果が客観的に評価できるような数値や画像として表されることは少ない。特に眼科診療においてはその傾向が強く、検査すべき項目が非常に多いにもかかわらず、それらの結果を数値や画像で表すことができなかったり、数値化や画像化するためには非常に高額な機器が必要になることが多い。また診断の決め手となるものが「その特徴的な外観」とされることも少なくない。
そういった状況を踏まえると、動物の眼科診療においてアトラス本というものは、診断の手助けとなる検査機器のひとつと言ってしまっても過言ではないかもしれない。
本書は多くの獣医眼科学成書と同様に各章が眼球の部位ごとに構成され、それぞれの章ではその眼球の部位において日常遭遇しやすい疾患あるいは症候について、診断のポイントとなるような臨床症状や外観的特徴がきわめて簡潔な文章で説明してある。発生率の少ない疾患についてはあえて割愛されているが、そのことがさらに一般臨床家には受け入れやすい体裁になっていると感じる。また各章の冒頭には鑑別疾患リストや章によっては鑑別診断に必要な臨床的特長が表になって掲載されているのもありがたい。
もちろんアトラス本であるので、それぞれの疾患にはその簡潔な説明文と共に鮮明な症例の写真が沢山掲載されており、特に一般臨床家が苦手とする眼底の写真が豊富であることが特長と言えよう。写真が豊富で見やすい大きさであるにもかかわらず、本自体のサイズはB5版程度の大きさとコンパクトになっており、持ち運びに便利であることも非常にありがたいことである。
本書は上記のように必要最低限の説明文と多くの鮮明な症例写真という真に臨床獣医師にはありがたい構成となっており、眼科学に興味のある臨床獣医師のみならず、これから本格的に眼科学を学ぼうとお考えの若い臨床獣医師あるいは獣医学科の学生諸兄にもお薦めできる、まさしく読者を選ばない1冊であると考える。
「獣医畜産新報」2006年6月号掲載
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Douglas R. Mader
『Reptile Medicine and Surgery 2nd ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門助教授 深瀬 徹ここ数年、爬虫類の獣医学に関する大部の書あるいは良書の出版が続いている。エキゾチックアニマル全般を扱っているものを含めれば、たとえば私の手元にあるだけでも以下の書籍がある。
・BSAVA Manual of Exotic Pets,4th ed,edited by Meredith A and Redrobe S,British Small Animal Veterinary Association,2002
・BSAVA Manual of Reptiles,2nd ed,edited by Girling S J and Raiti P,British Small Animal Veterinary Association,2004
・Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles,edited by McArthur S,Wilkinson R and Meyer J,Blackwell Publishing,2004(獣医畜産新報、58、344(2005年4月号)に書評掲載)
・Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species:Structure and function of mammals,birds,reptiles and amphibians,edited by O'Malley B,Elsevier Saunders,2005(獣医畜産新報、58、961(2005年11月号)に書評掲載)
そして、ここにご紹介する『Reptile Medicine and Surgery』の第2版である。
* 『Reptile Medicine and Surgery』の初版は1996年の発行である。初版でも500ページを超える大きな書物であったが、今回の第2版はこれをはるかに超え、1242ページに及んでいる。これはもちろん、単にページ数が増えたのではなく、内容も大きく改訂され、初版以降の10年間に得られた知見が盛り込まれた結果である。爬虫類の生物学や飼育法、解剖学、生理学、行動学から臨床検査、各種疾病への対応まで、臨床家にとって必要な事項が網羅されており、爬虫類の臨床に関する書物として世界でもっとも詳しいものになっている。
* ところで、本書の特徴は、詳細な記載に加えて、爬虫類について総括的な記述が行われていることにあると私は思う。
爬虫類は脊椎動物を構成する1つの綱(class)であり、現生の爬虫綱はカメ目と有鱗目(トカゲ亜目およびヘビ亜目)、ワニ目、ムカシトカゲ目の4つの目(order)に大別される。このうち、ペットとして飼育されているのは、カメ目と有鱗目である。そのため、爬虫類の獣医学書では、カメ類、トカゲ類、ヘビ類と分けて記載していることがある。これは当然といえば当然で、目が異なれば、哺乳類でいえば犬と牛ほども違うからである。
しかし、この書物では、カメの疾病、トカゲの疾病、ヘビの疾病というような目または亜目ごとの記載を避け、たとえば循環器疾患、皮膚疾患、感染症など、疾病ごとの記載が中心になっている。このことは、本書は大部の書であるとはいえ、あくまでも爬虫類を1つのグループとしてとらえ、その臨床に関する入門書的な位置づけにあることを示しているのではないだろうか。
私は、理想的には、獣医学書は動物種ごとに成立すべきであると考えるが、しかし実際には、爬虫類について種ごとの書物を著すほどの知見はいまだ得られていない。こうした状況において、爬虫類とはどういう生物か、その臨床はどのように行われるべきかについて総括的に示した書物の集大成としての本書の意義はきわめて大きい。
* これだけの書物の邦訳を出版することは、おそらく不可能であろう。訳書がそれほど多く売れるとも思えないし、また、邦訳すれば原書よりもページ数が増えるのが常であり、その価格は著しく高くなることは間違いない。英国やアメリカ合衆国で爬虫類に関する多くの書物が比較的安価で発行されるのは、世界的な販売が見込めるからである。
本書は、英文で書かれたものであり、読むには確かに苦労する。しかし、爬虫類の診療に興味をお持ちの先生には、是非とも書棚に備えていただきたいと思う。
「獣医畜産新報」2006年6月号掲載
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Derek C. Knottenbelt
『Saunders Equine Formulaly』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
酪農学園大学獣医学部教授 田口 清この本は馬医療のあらゆる場面で参照できるハンドブックである。本の大きさは19 cm×13 cm、厚さ2.5 cm、約500ページで携帯用かつビニール背表紙で耐久性がある。学生、臨床獣医師、馬に関わる技術者や飼養者がその現場で、その仕事の中で刻々に過ぎさる時間を切断するように使える本といったらよいだろうか。第1章には臨床症状および血液、尿、脳脊髄液、腹水、糞便、精液などに関する細胞、電解質、酵素、ホルモン、ビタミンなどの基準値と採取法が別々の表に整理され、第2章では20数種に及ぶ臨床機能検査法と基準値や解釈が要領よく記述されている。第3章では馬医療に用いられる薬物がその作用臓器別に適用法と投与量が短い注釈とともに配置されている。第4章は臨床で使用されるテクニック(体重推定法、保定法、歯による年齢推定法、安楽殺法、包帯法、心電図検査法、気管支―肺胞洗浄法、経鼻投薬法、腹腔穿刺法、各種生検法、神経ブロック、関節穿刺法、子馬の評価法、跛行や疝痛の観察・評価プロトコール、馬の医療用具、フィールドでの麻酔法など)が多くの図表とともに記載されている。大それた医学書ではなく、日常の臨床医療の小さい知識を自分で更新するこんな便利な本があったらと思わせる本であるのも、不幸な乗馬事故で亡くなったリバプール大学4年生の獣医女学生Clare Harrisonに捧げられた本だからであろう。
「獣医畜産新報」2006年5月号掲載
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Stephen J.Bichard & Robert G.Sherding eds.
『Saunders Manual of Small Animal Practice 3rd ed.』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦古来よく言われるように、書は読むべきものであって読まれないように注意しなくてはならない。同様に、手引書や指針の類についても当てはまるものと思われる。マニュアル通りなら間違いないとか、マニュアルの習得のみに終始することは論外である。マニュアルを忠実に実行することは、それなりに利点の多いことも事実である。すなわち、活用の仕方によるし、利用者の態度に左右される。強く打てば大きく響き、弱く叩けば小さく鳴るのは常識である。
本書の初版は1994年に上梓され、6年後に第2版、そしてさらに6年を経て、改訂第3版として発刊されたものである。米国オハイオ大学獣医教育病院の臨床を支えるStephen J. Birchard とRobert G. Sherdingの両先生による初版以来の編纂で、一貫した考えのもとに纏められており、獣医臨床の最前線で活躍中の約150名の執筆者による力作である。最近の獣医臨床の進歩を包摂して、現場の診療に適合した内容へと充実を図った佳書と言えよう。疼痛管理やワクチン接種指針の項目なども追加され、また挿入された多数の図表が理解の助けとなっている。
いずれにしても、多忙な臨床獣医師をはじめ、獣医師を志す学生にとっては、座右において知識の確認や習得に役立つ1冊であることはこれまでの経緯からしても窺い知られるところである。
「獣医畜産新報」2006年5月号掲載
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John R. August
『Consultations in Feline Internal Medicine Vol.5』2006年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
赤坂動物病院医療部長 石田卓夫この本は、猫の内科学の様々なトピックスについて多数の専門家が集まって執筆したシリーズで、最近は出版のサイクルも非常に早くなっており、Volume 4を読み終わる間もなく、もうVolume 5が刊行された。
これまでは、Volume 1から4の共通の目次が作られており、この項目についてはどのVolumeを参照、あるいはこの項目については最新のこの号を参照、というような構成であったが、今回は、すべて新しく書き下ろして、猫の内科学全般を網羅しているところがこれまでと異なるところである。したがって、Volume 4までを持っていなくても、新しい猫の内科書を読むつもりで、本書から勉強を始めることも容易である。編集に当たっては、米国、英国、オーストラリアから10人の有名な猫の専門家が選ばれ、各章を担当している。著者としては102人の各臓器系の専門家が執筆を担当しているが、大学助教授クラスの若い人が増えているのも、最近の傾向である。
さらにこれまで以上に図版が豊富になり、とくにカラー図版が多用されるようになったことは喜ばしい。図表もさらに読みやすくなり、図表だけ追って内容を把握することも容易になった。構成は臓器別で、この本1冊で猫の内科疾患すべてに対する参考書となる。
内容的に新しいこととしては、クオリティーオブライフに関する記述、すなわち痛み、術後管理、リハビリテーションなどが書かれている。また、シェルターメディシン(感染症が多発する多頭飼育環境における群管理の獣医学)という、米国で始まったばかりの専門領域に関する記述もみられる。
その他興味をそそられるトピックスが豊富で、すぐにも読んでみたいものが満載である。例をあげると、カリシウイルスによる多様な疾患、ウイルスによる皮膚病、バルトネラ症(猫ひっかき病)の最新知見、破歯細胞性吸収病巣、慢性消化器病とコバラミン、食欲不振または重度の疾患を持つ猫への栄養供給、糖尿病モニターの様々な方法、猫のIgEとアトピーに関する最新情報、猫の薬物療法における注意、不整脈惹起性右室心筋症、慢性上部気道疾患の診断と治療、慢性腎不全の進行に対する治療、特発性膀胱炎の病理発生、神経学的排尿障害、輸血の安全性確保、腫瘍学的エマージェンシー、家猫におけるストレス管理、などがある。
このように、本書は猫の内科的疾患をすべて網羅しながら、最新の内容を加えて編集された教科書で、初心者から経験者まで広く満足できる内容となっている。翻訳本が刊行されるまでには、おそらく次のVolumeが出版されて内容も書き改められるであろう。すぐに原書で読んでしまった方がよい。
「獣医畜産新報」2006年5月号掲載
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Victoria Aspinall
『Essentials of Veterinary Anatomy and Physiology』2005年・Butterworth Heinemann 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
麻布大学獣医学部獣医解剖学第一研究室教授 浅利昌男・犬と猫に関するコンパクトなポケット版の解剖生理学書
・構成は解剖学・生理学の大きな本と同様で、簡潔にまとめられており、読みやすさ、整理のしやすさにコンセプトがおかれている
・比較解剖学として魚類・爬虫類・鳥類・小型哺乳類までもが含まれることで、多様な動物についても配慮がなされている
・章末に多肢選択問題があり、その章で学んだことについての理解度をチェックできる
・獣医師の卵たち、獣医看護師の卵たち、動物学を学ぶ学生たちにとくに有用な本となる
本書は犬と猫の解剖生理学の入門本としてまとめられた良書で、手軽にパラパラとページをめくり読むことができる使い勝手が良い本である。ずいぶん小さな本の割には大きな成書と同じスタイルで、しかしもっと簡潔に、はじめに動物の分類、解剖学用語、体をつくる細胞・組織のこと、また体を構成する基本的な四組織についてその要点(ポイント)に触れており、それに続いて系統解剖学的に体のつくり、筋骨格系、神経系、内分泌系、循環器系と体のすべてを各々の章でしっかりとそのポイントについて記載をしている。またこの本の大部分を構成する犬と猫の章に続いて、終章では鳥類、爬虫類、魚類のほかに、ウサギ、ネズミ、フェレットなどの小型哺乳動物の比較解剖学的な要点の解説もあり、最近の獣医療の現場に持ち込まれる犬・猫以外の多くの動物について基本的な情報を得るのに都合がよくできている。
さて、内容はどうか。例えば神経系の章を読んでみると、神経系は多くの読者が複雑でわかりにくい器官であると思っていることを著者はあらかじめ理解しているかの如くに、神経系を家の冷暖房システムに例えての解説がまず始まる。読者はそこでおおまかな体の中の神経系の姿を自分の家の仕組みとして理解したあと、実際の内容に入ることとなり、気がつけば中枢神経系と末梢神経系の仕組みと働きを混乱なく理解することになる。また解説といっても、本の全体を通して、長い説明の文章はなく、頭の中の整理も容易である。また、この本のもう1つの工夫は各章の中にMemory Joggerという小欄があり、各器官の解説の中で、とくに覚えておいたほうが良い事項について、この欄を使って少し印象的に、そして詳しく解説している点が挙げられる。通読して図が少くないとの印象は残るが、それをカバーするわかりやすいまとめ方の工夫が本書にある。「獣医畜産新報」2005年10月号掲載
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Craig E. Greene
『Infectious Diseases of the Dog and Cat, 3rd ed.』2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
共立製薬株式会社臨床微生物研究所 執行役員所長 望月雅美職場の中でかねがね感心していた物に、事務用品や研究試薬のカタログがある。何万から何十万あるいはそれ以上の物品の情報を微細に、まさしく利用者の利便性を最優先に作られている。最近ではインターネットの楽天市場には1200万種の商品があるという。実は我々の関連する書籍も同様で、何か知りたいことができて、これといった書籍がもし座右にあればこんなに助かることはない。本書は犬と猫の感染症に関する、20年来の小生の知恵袋であった。
本書は第3版であるが、しかしこのGreeneさん編集の本書を最初から知っている読者にとっては実は第4版に該当する。初版は『Clinical Microbiology and Infectious Diseases of the Dog and Cat』で、1984年に刊行された。当時、Greeneさんはジョージア大学獣医学校小動物医学教室のAssociate Professorであった。その後、1990年になると本のタイトルが現行の『Infectious Diseases of the Dog and Cat』になり、彼もProfessorとなっている。そしてこれがどうやら初版ということらしく、1998年に第2版が刊行され、そして2005年7月なって第3版が出てきた。当初から967頁、971頁、934頁と「分厚い」書籍であったが、第3版はカラー図版1397頁+CD-ROM(引用文献集とそのサーチ機能)となって片手に持って扱うことはできない。そして使い勝手を高めるためにウイルス・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマ病、細菌病、真菌病、原虫病、症状別解説、生物製剤の解説等々、色別にしてあり、まさしく遠目には研究室常備の試薬品カタログと見間違える。
とかくこの類の書籍は「微生物屋」の病原体中心の解説が多いが、そのような本は概して臨床現場の先生には知りたいことが少なく評判がよくない。本書はその点を著者の選定からうまくカバーしており、総合的な感染症の書籍として他に類書を見ない。書内における掲載の順番は版ごとに少しずつ異なってきたが、大筋は同じで、病原体ごとの感染症の最初の数章は診断と治療法が解説されている。次いで症候別・器官別の感染症(Clinical Problems)の解説が続く。そして予防と治療のための生物製剤や薬剤の実際的な使い方が付録として付いている。
本書に限らず、最近は新刊をデジタルデータで、あるいは旧来のように印刷した書籍として流通させるか、出版形態の過渡期にあると言える。本書もその一部、引用文献をCD-ROMに入れてしまった。特に情報量の多い厚い書籍はこのような「ハイブリッド」タイプが増えている。かつて本書の翻訳の機運が高まったことがあるが、価格の面で頓挫したと記憶している。第3版はボリュームの面でもとても翻訳できそうもなく、原書で利用するしかない。「獣医畜産新報」2005年11月号掲載
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Bairbre O'Malley
『Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species Structure and function of mammals, birds, reptiles and amphibians』2005年・Elsevier Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門助教授 深瀬 徹獣医師法(昭和24年法律第186号、最終改正:平成16年法律第150号)によれば、獣医師になるには、“獣医師国家試験に合格し、(中略)農林水産大臣の免許を受けなければならない”(同法第3条)。そして、獣医師国家試験を受けるには、外国の獣医学校を卒業したような例外的な場合を除き、“学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学(短期大学を除く。)において獣医学の正規の課程を修めて卒業”(同法第12条)する必要がある。
すなわち、獣医師はすべて、大学において獣医学の教育を受けているわけである。その教育の詳細は大学によって多少の相違はあろうが、まず解剖学や生理学のような基礎的学問に始まり、次いで薬理学や病理学、そしてさらに内科学や外科学というような臨床系の学問に進んでいくのが常である。
つまり、獣医学の対象となるような各種の動物について、まずは体の構造と機能を理解し、その後にそれらに発生する疾患を知り、そうしたことをすべて理解したうえで治療法を学ぶというのがいわばセオリーではないだろうか。
ところが、大学教育の対象となっているのは、主に馬や牛、豚、そして犬と猫である。エキゾチックアニマルといわれる動物については、実際の獣医臨床の場においては大きな比重を占めつつあるにもかかわらず、大学で十分な教育が行われているとはいいがたい。
それでは、臨床に従事する獣医師の先生方は、どのようにしてエキゾチックアニマルに関する知識を得ているかというと、様々な方法での独学が中心になっているのだろうと思う。近年は、エキゾチックアニマルに関する多くの成書が出版され、臨床については比較的容易に概要を知ることができるようになっている。
しかし、こうした成書のほとんどは、臨床家向けである。そのため、毎日の診療にすぐに役立つということを目指しているのであろう。各種の疾病について、その診断法や治療法が記載の大半を占めており、それぞれの種の生物学的特徴や解剖学、生理学に関する記載は、多少は述べられているにしても、ほんの申し訳程度であることが多い。臨床に関係する事項を厳選して記載したといえば、そのとおりであるかもしれないが、これではやはり基礎を欠いた臨床であり、砂上の楼閣になってしまわないだろうか。
ここに紹介する『Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species』は、“Clinical”とタイトルにあるように、完全な基礎としての解剖学と生理学の書物ではないけれども、各種のエキゾチックアニマルの形態と生理機能を詳細に記載したものである。従来の書物に比べれば、解剖学と生理学に関してはきわめて充実した内容になっている。日常的な臨床検査や手術に際しては、本書の内容で十分に対応できると思う。また、“CLINICAL NOTE”というコラムを随所に設けたりして、読者としての臨床家に対するサービスも忘れてはいない。
本書が取り上げた動物は、両生類と爬虫類、鳥類、哺乳類である。とくに爬虫類については、カメ類とトカゲ類、ヘビ類に分けて記載されている。また、哺乳類では、ウサギとモルモット、ラット、ハムスター類、フェレットについて解説されている。哺乳類に関しては、エキゾチックアニマルの全般にわたって動物種が選択されているわけではなく、ダマヤブワラビーなどの有袋目やハリネズミ類などの食虫目の動物についての記載も欲しいところではあるが、診療の機会が多いものはおおよそ網羅しているといえるだろう。
エキゾチックアニマルの臨床について基礎からしっかりと考えたいという獣医師の先生には是非お奨めしたい1冊である。「獣医畜産新報」2005年11月号掲載
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Richard W. Nelson & C.Guillermo Couto
『Manual of Small Animal Internal Medicine 2nd ed.』2005年・Mosby 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部教授 長谷川篤彦今般『Manual of Small Animal Internal Medicine』 の第2版が梓上された。本書は先に出版された『Small Animal Internal Medicine』 の第3版を親本とした縮小版と言うべきものである。いわゆる要約したポケット版である。われわれ日本人とっては、診療衣のポケットには収まりきれないが、米国の獣医師は診療衣のポケットに携帯して常時参照できる大きさに作成されている。コンピュータやインターネットの時代であるが、やはり、時に応じて一寸知識を確認したりするには活字書が必要にされるのである。
内容的には、親本に沿ってそれぞれの項目と頁をあげて要点を抜粋して纏めたものである。したがって、詳細については親本を読めば良いことになる。獣医内科学が質量ともに拡大し増大したために、このような要約縮小版が前版に引き続いて発刊されたものと思われる。一方では、このような重要なところのみを抜粋した本があれば十分のようであるが、知識にはやはりその背景や広がりが必要なのである。編者も出版社も親本と縮小本の両方を利用されることを期待していると思われる。
われわれは、日常本を読んだりして情報を受け入れると、それを消化吸収して理解し、さらに要点を記述しておく。この過程を考えれば、本書はその一部をすでに代行してしまったようなものである。いずれにしても、このような方式が定着しつつあるが、問題は利用者で、それぞれが活用法を工夫して臨床にいかに役立てるかである。本書には要約本としての価値が十分備わっていると思われる。「獣医畜産新報」2005年6月号掲載
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Ann L. Johnson & Dianne Dunning
『Atlas of Orthopedic Surgical Procedures of the Dog and Cat』2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
ダクタリ動物病院広尾セントラル病院 Angell Memorial International JAHA認定獣医外科専門医 院長 加藤 元
ダクタリ動物病院広尾セントラル病院 Angell Memorial International JAHA認定獣医外科専門医 外科部長 池田人司1967年に設立された、米国獣医外科専門医制度のもとに、合格・認定されてきた外科専門医の数は、2004年には、1024名に達している。その中で小動物整形外科は、外科の明確な一分野として素晴らしい発達を遂げてきた。そこに本書のような素晴らしいテキストが生まれるのである。
本書は、米国獣医外科専門医でイリノイ州立獣医科大学の整形外科の教授であるAnn. L Johnson先生と同じく米国獣医外科専門医で準教授であるDianne Dunning先生との共著である。
本書の特徴は実際に日常的に遭遇しやすい整形外科疾患・神経外科疾患(椎間板ヘルニアおよび馬尾症候群)の手術法が87疾患にわたりきわめて具体的かつ実用的に記載されており、そのいずれもが実際にイリノイ州立獣医科大学でルーチンに行われているアプローチ方法として簡明に述べられている。
見開きの左頁には適応症、客観的視点、解剖上の注意点、必要な外科器具機材、準備とポジショニング、実際の手技、手術後の注意点、術後の評価、術後管理、予後などについて実に簡潔に記載されている。
また、右頁には実際の臨床局所外科解剖のイラストがわかりやすく記載されている。そのため、本書をそのまま手術室に持ち込み活用することができる。このことは実際に整形外科で必要な“やるべきことをやり、やってはいけないことをしない”という鉄則を守りながら各疾患ごとに正しいアプローチと正しい手技を実践することができる。
われわれの実際の整形外科臨床の現場においてもただ単に整形外科的治療を行うだけではなく、近年、ヒューマン・アニマル・ボンドの大切さが認識されるようになるにしたがって、若い動物に行われる整形外科疾患の予防的矯正骨切術や、担癌動物に適応される形成外科的骨切除術など、クライアント社会側からの高度獣医療の要求と期待がますます強くなってきている。
本書には、今まさにクライアントからの要望と信頼に応えるべき現代獣医学における整形外科的疾患が網羅されており、すべての大学で、研修医、学生の指導トレーニングにあたる先生方、さらに後進の指導にあたる各病院の院長、専門医、第一線の整形外科に対応すべき獣医師、また整形外科専門医を志す若きレジデント、すべてのジェネラリストとして開業している獣医師にとって必携の書であるといえる。「獣医畜産新報」2005年6月号掲載
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James W.Carpenter
『Exiotic Animal Formulary 3rd ed.』2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
エキゾチック ペット クリニック、日本獣医畜産大学 霍野晋吉本書はエキゾチックアニマルの獣医臨床学的な薬用量、および必要とされる情報を集めた処方集である。従来、これらの動物の薬用量や情報は一部の文献に記載され、必要に迫られた時には、多大な時間と労力を使って調べたものである。今や、エキゾチックアニマルの診察も本邦でも常識になりつつあり、犬や猫と同様の知識も必要に迫られてきている。
構成も魚類、両生類、爬虫類、鳥類、フクロモモンガ、ハリネズミ、げっ歯類、ウサギ、フェレット、ミニブタ、霊長類と多彩な動物種毎に分類されている。薬剤も抗菌剤、抗真菌剤、駆虫薬、麻酔剤、ホルモン剤、栄養剤などに細分され、信頼性が高い文献で報告されている各薬用量が列記されている。さらに、臨床獣医師にとって、切実なる緊急薬、代表的な疾病における投薬処方、獣医学的予防のプログラム、そして、動物の生理学的値や血液正常値までもが、明確にまとめてある。まさに、エキゾチックアニマルを診察する臨床獣医師にとってのバイブルと言える1冊であろう。本書は獣医系学生、検査技師あるいは動物園関係者などにとっても、参考になることは間違いない。
近年のエキゾチックアニマルの獣医学は発展が早く、数年前の情報が過去の遺産となりつつある。このような状況のなかで、最新の情報を増補改定し、第3版を出版したことは、一臨床家としても感謝している。明日からの診察で、ぜひ傍らに置いておきたい。「獣医畜産新報」2005年5月号掲載
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Stuart McArthur, Roger Wilkinson & Jean Meyer
『Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles』2004年・Blackwell Publ. 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門 助教授 深瀬 徹カメ類は、爬虫類のなかでも、とくにペットとしての人気が高く、多くの種が飼育されている動物である。カメ類にはおよそ250種が知られているが、CITES*1などによって保護されている種を除き、ほとんどすべてがペットとして流通しているといっても過言ではない。
しかし、カメ類の多くは、飼育が非常に難しい。コンラート・ローレンツ*2は、その著書『Er redete mit dem Vieh, den Vgeln und den Fischen』(彼、けものと鳥ども、魚どもと語りき)のなかで、“「飼いやすい」という性質は、「飼える」とか、「抵抗力がある」とかいう概念とはまったくきりはなして考えるべきものである”といい、“たんに抵抗力が強くて死ににくい動物、もっとはっきりいうならば、死ぬまでに長い時間かかるにすぎない動物を「飼える」というのがふつうである”と述べている。そして、この“典型的な例は、ギリシャリクガメである”とし、このカメは“「飼われだした」その日から死にはじめるのである”とさえいっている*3。
現在では、ローレンツがこの本を著した当時とは多少は事情が異なり、飼育下におけるリクガメ類の繁殖例もみられるようになっているが、しかし、一般的にいえば、カメ類、とくにリクガメ類の飼育がきわめて難しく、ほとんどの個体は捕獲された時点から強制的にゆっくりとした死に向かわせられていることにかわりはないように思われる。
カメに対する獣医学的な対応は、困難をきわめる。各々の種に関する解剖学的、生理学的な基礎知見に乏しく、疾病についても不明な点が多いのに加え、飼育されているカメは必ずしも(というより、ほとんどが、というべきか)良好な管理状態にないからである。極言すれば、たいていの場合、死に向かうカメをいかに延命するかがカメ類に対する獣医臨床であるともいえるのではないだろうか。
『Medicine and Surgery of Tortoises and Turtles』は、こうした現状においてもカメの診療に全力を尽くし、カメの飼育を成功させたいと願うすべての獣医師にとって必読の書である。本書は、カメ類の解剖と生理から飼育法、そして各種疾病の診および治療、その他、現時点におけるカメに関する獣医学ならびに周辺領域の知見を網羅した内容となっている。記載内容の充実は語り尽くせず、写真が多用されていて、英語を母国語としないわれわれにとっても理解しやすい。
書評というと、なんとなくお世辞を書いてしまいがちだが、本書に限っては、目次がわかりにくいという難を除き、本当によくぞここまでまとめたという大書である。
カメを真の意味で「飼いやすい」動物とするために、是非、本書を一読していただきたい。
*1 Convention of International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)。ワシントン条約ともいわれる。
*2 Lorenz, Konrad Zacharias (1903-1989)。オーストリアの動物学者。動物行動学を確立し、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞。
*3 引用は日本語訳『ソロモンの指輪 −動物行動学入門−』(改訂版、日高敏隆 訳、早川書房、1987)による。「獣医畜産新報」2005年4月号掲載
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Stephen J.Ettinger & Edward C.Feldman
『Textbook of Veterinary Internal Medicine, 6th ed.』2005年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
日本大学生物資源科学部 教授 長谷川篤彦2005年の年頭、5年振りの改訂となった第6版が発刊された。この5年間における獣医学および獣医療の進歩は過去のそれと比べても著しいことから、新版の上梓が待望されていた。現在その分野の第一線で活躍している約300名の執筆者が各自の経験を通して得た成果を編者であるStephen J.Ettinger と Edward C.Feldmanの両先生が現時点における獣医内科学の金字塔を目標として集大成した大著である。編集方針はこれまでの版と大差はないようで、2巻から構成されている。
内容は、第1章が臨床徴候の解説で、第2章が中毒、第3章が診療手技、第4章が救急処置、第5章が血圧、第6章が治療法、第7章が栄養管理、第8章が感染症、第9章が腫瘍、第10章が神経疾患で、以上が第1巻に収載されている。第2巻は第11章から第19章で、循環器、耳鼻咽喉、呼吸器、消化器、肝膵、内分泌器、生殖器、泌尿器、血液免疫の各疾患である。写真はそれほど多くはないが、図表は豊富で理解を容易にしている。特に鑑別用の流れ図は実際的で参考になるものと思われる。索引は両巻にあって便利であり、前後の表紙扉には異常検査所見のみられる疾患ないし病態が列挙されているので役立つものと考えられる。
参考文献は割愛されているが、付録のCD-ROMに収められている。このCD-ROMには飼い主への説明ないし指導に際して有益な情報も別途収められている。
これまでの獣医内科学関係の著書として、循環器、泌尿器、血液、腫瘍、感染症、神経、免疫など、各種専門分野別にそれぞれ細部にわたり網羅した優れたものが出版されている。これらを参照するといささか不満足に感じる点もあるが、紙面の関係など本書の目的からして納得しなければならない。
いずれにしても、獣医内科学を俯瞰するのに好適な実用的な佳著である。これまでの版同様に、獣医師を志す学生は勿論のこと、臨床に関与するしないにかかわらず多くの人々に活用していただきたい成書である。
「獣医畜産新報」2005年3月号掲載
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Alex Gough & Alison Thomas
『Breed Predispositions to Disease in Dogs & Cats』2004年・Blackwell Publ. 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹生物には種(species)が存在する。 そして、近縁の種をまとめて属(genus)というグループを作り、さらに属をまとめて科(family)を作り、科をまとめて目(order)、目をまとめて綱(class)、綱をまとめて門(phylum)というように、生物は何層ものグループに分けられ、階層的な分類体系が構築されている。
このとき、種は現実に存在するものであるが、属や科はそれをまとめたグループの名称であり、概念上の存在である。と、一般に考えられている。 だが、実際に種というものが“実在”するかというと、様々な考えがある。この点については、かなり難解でもあるし、ここでの主題でもないので、また別の機会に述べることにしたい。ここでは、獣医学上の一般的な理解にしたがって、生物には種があるとしておこう。
さて、では種とは何かというと、これもまた難しい問題だが、一般的にいえば、相互に交配し、なおかつ、そのほかのそうした集団とは生殖的に隔離されている自然の集団ということができる。つまり、犬は犬という種、猫は猫という種である。
ところが、種をこのように定義しても、種によっては、さらに分けるべきとされる場合がある。こうしたとき、分類学者によってはそれを亜種(subspecies)とする。亜種の指定の基準はきわめて不明瞭だが、一応は、固有の特徴を共有し、特定の地域に分布する集団のことを亜種という。亜種間においては潜在的に交配が可能である。
また、家畜や栽培植物では、種のなかに品種(breed variety)が設けられている。品種とは、実用的な形質に関して他の集団と区別できる遺伝的特性を有する集団のことをいう。
犬や猫にも多くの品種が存在する。とくに犬の場合は、その起源であるオオカミが遺伝的に変異しやすい性質を有していたためと思われるが、実に様々な形質を示す品種が作り出されている。
こうした品種は、犬という種、あるいは猫という種のなかの小さなグループであり、品種間の交配が可能である。もっとも、極端な大型犬と極端な小型犬では、体格のうえから交配が難しいこともあろうが、基本的には繁殖が可能といえる。
とはいえ、同一の種であっても、品種が異なると、外貌に限らず、様々な形質が大きく異なっている。また、品種によっては、ある特定の疾病に罹患しやすいことがあったり、また、ある種の薬物にとくに高い感受性を示すことがある。
本書は、犬と猫の様々な品種について、好発する疾病を列挙し、さらに必要に応じて、薬物に対する感受性に関する記載を行ったものである。第1章が犬、第2章が猫で、各々の内容は箇条書きであるが、それゆえに非常に読みやすくなっている。また、第3章に種々の疾病に関する簡単な説明があり、第1章と第2章を補足している。
本書の記載は、第1章と第2章の犬、猫の品種別の記載、そして第3章の疾病の解説ともに、アルファベット順である。この点からも本書は「事典」として使用されることを意図していると思われる。診療に際して、常に参照したい書籍の1冊として、是非、多くの先生方にお奨めしたい。
なお、本書は、品種ごとに好発疾病などを列挙しているが、品種そのものに関する説明を欠いている。これはとくに臨床に特化したということであろうけれども、これを補うために、やや古い本であるが、『犬種と疾病』(文永堂出版、1989)を併読されるのもよいだろう。
以前は、犬も猫も、同じ食肉目の動物ということで、同様の対応によって診療が行われていた。しかし、いまは違う。犬と猫はまったく異なる別種の動物として扱われている。そしてさらに、犬と猫の品種ごとに臨床上の対応が行われる時代がすぐそこまで来ているのではないだろうか。
「獣医畜産新報」2005年2月号掲載
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Katherine E. Quesenberry,James W. Carpenter
『Ferrets, Rabbits, and Rodents Clinical Medicine and Surgery, 2nd ed.』2004年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
明治薬科大学薬学部薬学教育研究センター基礎生物学部門専任講師 深瀬 徹エキゾチックアニマルといわれる種々の動物がペットしてふつうに飼育されるようになって久しい。この間、様々な問題が発生し、たとえばヒトと動物の共通感染症の予防という観点から、コウモリ類やプレーリードッグ類などの輸入が禁止されたりもしている。こうした変遷を経て、最近では、非常に変わった種類の動物が飼育されることは比較的少なくなり、哺乳類でいえばフェレットやウサギ、ハムスター類など、ある程度限られた種が飼育の対象となってきたように思われる。
さて、本書は、エキゾチックアニマルの診療に関する成書としてよく知られた『Ferrets, Rabbits, and Rodents Clinical Medicine and Surgery』の第2版である。初版は1997年の発行で、多くの獣医師に利用され、日本でも翻訳書が出版されている。
第2版は、基本的には初版の構成を踏襲しつつ、新たにプレーリードッグやフクロモモンガ、ヨツユビハリネズミに関する記載を加えている。また、編者の1名が入れ替わり、多くの新しい著者が迎えられている。著者が変更した部分の記述が変わったのはもちろんのこと、同一著者が執筆した項目であっても、第2版では内容がさらに充実し、多くの図版が加えられた点は特筆すべきである。
内容は、第1編 フェレット、第2編 ウサギ、第3編 モルモットとチンチラ、プレーリードッグ類(とくにオグロプレーリードッグ)、第4編 小型齧歯類(スナネズミ、ハムスター類、マウス、ラット)、第5編 その他の小型哺乳類(フクロモモンガ、ヨツユビハリネズミ)となっている。なお、プレーリードッグ類は現在は日本への輸入が禁止されているが、以前から飼育されている個体を診療する機会も多く、本書の記載は有用である。加えて、第6編には、麻酔法などの診療手技や歯科などの診療科別の記載があり、さらにヒトと動物の共通感染症について述べられている。そして、最後の第7編は、各種の動物に対する種々の薬物の投与量の一覧である。取り上げられている動物の種類はそれほど多くはないが、代表的な哺乳類のエキゾチックアニマルについては、ほぼ網羅されたものになっているといえるだろう。 ところで、国内の学会あるいは研究会の抄録やプロシーディングをみると、本書の初版が引用されていることが多い。ただし、その引用はほとんどが翻訳書である。翻訳書には翻訳書の良さがあり、これを否定する気はない。私も日常的に多くの翻訳書を利用している。だが、翻訳書というものは、意図したものではないにしても、多かれ少なかれ、翻訳者の意思を含んでいることは否めない。学術書の場合、翻訳書を読んでも、必要に応じて原書も併読すべきである。とくに文献として引用するのであれば、可能な限り原書を用いるべきであろう。
近年は、洋書といえども、簡単に入手できるものが多い。本書も入手が容易である。是非とも、この第2版をエキゾチックアニマルの臨床を行う多くの先生方の書棚に備えていただきたい。
「獣医畜産新報」2004年8月号掲載
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Donald L. Piermattei,Kenneth A. Johnson
『An Atlas of Surgical Approaches to the Bones and Joints of the Dog and Cat 4th ed.』2004年・Saunders 定価は最新の「洋書」ページをご参照下さい
北川動物病院院長 山村穂積本書は、犬・猫の骨手術のアプローチのバイエルとして、1996年の初版以来同じスタイルを保ちながらの第4版である。一見して各版とも同じように見られるが、図は以前より大きくなったぶん、見やすくなり、また多用され、実写に近い